教職員と児童・生徒のICT活用の基盤となる高速・高信頼の教育ネットワークを拡充
「新潟県上越市教育委員会」
「教育の情報化」に向けて、先進的な取り組みで知られるのが新潟県上越市教育委員会である。教職員や児童・生徒が意識せずにICTを活用するためには、高速かつ安定したネットワークが不可欠になるとの判断から、市内76の小・中学校を光回線で結ぶとともに、ギガビットの校内LANを整備。そのインフラとして、センター側にアライドテレシスのVCS対応コア・スイッチ「x900シリーズ」、各学校に「x600シリーズ」及び「GS900Mシリーズ」を導入。PCや電子情報ボードなどを活用した質の高い授業や効率的な校務などを推進している。教育に求められるネットワークの要件や今後の展望などを聞いた。
プロフィール
■上越市教育委員会
「ふるさと上越を愛し、学ぶ力、豊かな心、健やかな体をもって、自立と共生ができる子どもを育てる」を学校教育の目標に掲げる。情報教育では、授業改善のためのICT利活用研修の実施など、各教科の特性に応じたICTの有効活用を進め、より分かりやすい授業の展開や、家庭、地域と連携した取り組みの充実を図っている。
http://www.jecomite.jorne.ed.jp
■特定非営利活動法人・上越地域学校教育支援センター
「地域の子どもは、地域で育てる」の理念のもと、学校の教育活動を支援。主な支援事業は、学校教育を支援するボランティアの育成及び連絡調整・派遣、学習情報の提供及び学習教材作成の支援などを行っている。
http://www.jsirc.jp
「日常的なICT活用」に向け重要なネットワークの役割
VCS対応のx900シリーズを導入し高信頼の教育ネットワークを整備
センターにサーバーを集中配置する「クラウド型サービス」へ移行
パソコン教室の開催など地域に開かれた学校づくり
上越市教育委員会
学校教育課
指導主事 藤田 賢一郎氏
文部科学省では2009年3月、小・中学校等の新学習指導要領に対応した「教育の情報化に関する手引き」を公表した。情報教育や教科指導におけるICT活用、校務の情報化などについての具体的な進め方とともに、学校におけるICT環境の整備や、教育の情報化に関わる取り組みをサポートする教育委員会、学校の推進体制などについての詳細を記載している。例えば、校務の情報化の目的について、「効率的な校務処理により、教育活動の質を改善することにある。教職員が児童・生徒の指導に対して、より多くの時間を割くことができるようになるなど、ICTを有効に活用して、よりよい教育を実現させるためのものである」と手引きでは解説している。
こうしたICTを活用した教育の情報化にいち早く取り組み、大きな成果をあげてきたのが上越市教育委員会である。同教育委員会学校教育課指導主事の藤田賢一郎氏は現在の取り組みについて、「日常化をキーワードに、校内のICT活用を推進しています。一つの道具としてICTを用いて教員の授業改善や、児童・生徒の学力の向上などに役立てることができます」と話す。例えば、教室の電子情報ボードを用いて教師がわかりすく説明したり、児童・生徒が自ら考える授業を行なったりするなど、ICTは学校教育に欠かせない「便利な道具」になっているという。
そして、日常的にICTを活用するためには、「いつでも使いたいときに使える安全で安定したネットワークがポイントになります」と、特定非営利活動法人上越地域学校教育支援センター(JSIRC)の理事を務める曽田耕一氏は述べる。上越市教育委員会とJSIRCでは「地域のこどもは、地域で育てる」の理念のもと、地域全体で学校の教育活動を支援。市内の小・中学校を結ぶ上越教育ネットワークを構築・運用し、ICTを活用した学校教育を推進してきた。
特定非営利活動法人
上越地域学校教育支援センター
理事 曽田 耕一氏
上越教育ネットワークは1996年に市内約50の小・中学校を結ぶネットワークとしてスタート。その後、市町村の合併などを経て、現在は市内76の小・中学校を接続している。そして、校務支援サーバーや学習支援サーバー、データバックアップ用ストレージなどを配置する上越教育ネットワークセンターと各小・中学校との接続にブロードバンド回線を導入。ギガビットイーサネットやCATV網、ADSL、ISDNなど市内の各地域の通信環境に応じ教育ネットワークを整備、運用してきた経緯がある。
「学校のICT活用を推進するためには、より高速で高信頼性のネットワーク環境が欠かせません」(曽田氏)として、段階的に教育ネットワークの機能を拡充してきた。例えば、上越地域のISPであるジェーミックスのデータセンター内に教育ネットワークセンターのシステムを設置するとともに、教育ネットワーク用のコア・スイッチをハウジングしている。
Jマテ.ランドコム株式会社
取締役 滝澤 雅巳氏
そのコア・スイッチを2008年にリプレースし、新たに「x900シリーズ」を2台導入した。従来、コア・スイッチとして使用していたレイヤー3ギガビットイーサネット・スイッチ「9924T/4SP」は冗長化していたものの、アクティブ/スタンバイの構成。「x900シリーズはVCS機能を用いてアクティブ/アクティブで動作でき、より信頼性の高いネットワークの運用が行なえます」と、教育ネットワーク用機器の選定と構築を担当するJマテ.ランドコム取締役、滝澤雅巳氏はx900シリーズを採用した理由を述べる。
株式会社ジェーミックス
情報ソリューション部門
データセンター長 矢萩 剛氏
そして、x900シリーズは光回線を収容する「9924T/4SP」とリンクアグリゲーションで接続され、教育ネットワークセンター内の経路の冗長化と広帯域化を図っている。「2008年1月からx900シリーズを運用していますが、大きなトラブルもなく、教育ネットワークに求められる高い安定性を実現しています」と、データセンターでの運用を担うジェーミックスの矢萩剛氏は評価する。
センターラック内のx900-24XS
データセンターと市内9支所との間は光回線で接続され、各支所と地域の小・中学校間の回線は順次、ギガビット・ネットワークに移行している。こうした広帯域ネットワークを活用し、教育ネットワークセンターでは各学校に分散配置された校務用サーバーやファイルサーバーのデータを定期的にバックアップしている。しかし、「サーバーのコストパフォーマンスや信頼性を考慮すると、センター側でサーバーを集中管理するほうが望ましいのです」と曽田氏は強調する。各学校側にサーバーを置いてデータをバックアップするよりも、センター側にクラスタ構成の高性能サーバーを集中配置して管理するほうが、耐障害性やセキュリティーを高められると見ている。
そして各学校は広帯域ネットワークを介してサーバーを利用する。教育ネットワークセンターを基点に、いわば地域内のクラウド型サービスとしてサーバーのリソースを各学校に提供することにより、校務用サーバーのデータを保全し、「止まらない校務」を実現する狙いがある。
現在、中学校の校務用サーバーはセンター側で集中管理され、今後、小学校のサーバーも移管する計画である。高速・広帯域のネットワークにより、教職員はサーバーの設置場所を意識することなく、校内と同様のアクセス環境で校務に必要なデータを活用しているという。
ラック内のx600-24Ts、GS924M
そして、教育ネットワークセンターと小・中学校間のネットワークの拡充とともに校内LANを刷新。校内の基幹スイッチは「8724SL」に代えて「x600シリーズ」を導入。フロアスイッチは「GS900Mシリーズ」を用いてギガビットの校内LANを全小・中学校で実現している。
校務では児童・生徒の個人情報などを扱うことから、「校内LANではセキュリティーの確保が必須になります」と藤田氏は述べる。そこで、教師用と児童・生徒用のそれぞれでタグVLANを構成。加えて、教育ネットワークセンターに認証アプライアンスを導入し、校内LANを利用する教職員の端末認証を行なうなどセキュリティーを強化するとともに、教職員が安全・安心に校務が行なえるICT環境を整備している。
城北中学校コンピューター室
上越市の学校ではどのようにICTを活用しているのだろうか。上越市立城北中学校を訪ねてみた。同中学ではコンピュータ室とメディアコーナーにそれぞれ40台のパソコンを設置。
上越市立城北中学校
校長 竹田 幸雄氏
「メディアコーナーでは生徒会の新聞を作成するなど、生徒会活動や部活動などでパソコンやインターネットを活用しています。また、地域の人たちのパソコン講習会に利用されるなど、開かれた学校づくりにICTが役立っています」と城北中学校の竹田幸雄校長は述べる。
そして、同中学校では全普通教室に電子情報ボードを導入。日常的に電子情報ボードを活用した授業が行なえるよう、教師が取り組みを開始しているところだという。
城北中学校メディアコーナー
電子情報ボードで利用するデジタルコンテンツはコンピュータ室のサーバーに蓄積されている。
普通教室の電子情報ボード
全教室で一斉にデジタルコンテンツを利用する場合でも、ギガビットの校内LANによって、快適な授業が行なえると期待されている。
こうしたICT活用を支援するため、JSIRCでは各学校からの問い合わせに対応したり、ネットワークマネージメント・ソフトウェア「Swim Manager」を用いて校内LANのネットワーク機器を監視したりするなど、安定運用を図っている。上越市教育委員会の先進的な取り組みに対し、各地から視察の申し込みが絶えないという。教育の情報化時代の一歩先を行く上越教育ネットワークの動向が注目される。 (取材:2010年6月)
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