<前頁 次頁> << >> 目次 (番号順 (詳細)回線別 (詳細)機能別 (詳細)

CentreCOM AR300/AR700 シリーズ 設定例集 2.3 #49

PPPoEによるLAN型インターネット接続(LAN側グローバル)


PPPoEを使ってインターネットサービスプロバイダー(ISP)に接続します。グローバルアドレスを8個、16個などのブロック単位で固定的に割り当てられるLAN型接続の設定例です。この例では、NATを使用せず、LAN側端末にグローバルアドレスを直接割り当てます。また、ファイアウォールを使って外部からのアクセスを原則拒否しつつ、特定のサーバーだけを外部に公開します。

ISPからは次の情報を提供されているものとします。

表 1:ISPから提供された情報
PPPユーザー名 user@isp
PPPパスワード isppasswd
PPPoEサービス名 指定なし
使用できるIPアドレス 4.4.4.0/29(4.4.4.0〜4.4.4.7)


ルーターには、次のような方針で設定を行います。



以下、ルーターの基本設定についてまとめます。

表 2:ルーターの基本設定
WAN側物理インターフェース eth1
WAN側(ppp0)IPアドレス Unnumbered
LAN側(eth0)IPアドレス 4.4.4.1/29
DHCPサーバー機能 使わない



Note - 本設定例では、PPPインターフェースのリンクアップ・ダウンによって、トリガーの状態が動的に変化します。そのため、以下の設定コマンドはルーターのWAN側インターフェース(eth1)にケーブルを接続していない状態(PPPインターフェースがリンクアップしない状態)で入力してください。詳細については章末の「メモ」をご覧ください。

ルーターの設定

  1. WAN側Ethernetインターフェース(eth1)上にPPPインターフェースを作成します。「OVER=eth1-XXXX」の「XXXX」の部分には、ISPから通知されたPPPoEの「サービス名」を記述します。ISPから指定がない場合は、どのサービス名タグでも受け入れられるよう、「any」を設定します。


  2. ISPから通知されたPPPユーザー名とパスワードを指定し、接続時にIPアドレス割り当ての要求を行うように設定します。LQRはオフにし、代わりにLCP Echoパケットを使ってPPPリンクの状態を監視するようにします。また、ISDN向けの機能であるBAPはオフにします。


    Note - PPPoEのLAN型接続におけるWAN側(PPP)インターフェースは、厳密にはUnnumberedではありません。この構成例ではその違いを意識する必要はありませんが、ルーター自身がパケットを送信するような環境、たとえばIPsec等を使用する場合はアドレスの設定方法などに注意が必要です。詳しくは「メモ」をご覧ください。

  3. IPモジュールを有効にします。


  4. IPCPネゴシエーションで与えられたIPアドレスをPPPインターフェースで使用するように設定します。


  5. LAN側(eth0)インターフェースにISPから割り当てられたグローバルアドレスの先頭アドレス(4.4.4.1)を設定します。アドレスを8個や16個といった単位で割り当てられる場合は、ネットマスクが変則的になるので注意してください。


  6. WAN側(ppp0)インターフェースをUnnumberedに設定します。


  7. デフォルトルートを設定します。


  8. ファイアウォール機能を有効にします。


  9. ファイアウォールの動作を規定するファイアウォールポリシー「net」を作成します。


  10. ICMPパケットはPing(Echo/Echo Reply)と到達不可能(Unreachable)のみ双方向で許可します。


    Note - デフォルト設定では、ICMPはファイアウォールを通過できません。

  11. ルーターのidentプロキシー機能を無効にし、外部のメール(SMTP)サーバーなどからのident要求に対して、ただちにTCP RSTを返すよう設定します。


  12. ファイアウォールポリシーの適用対象となるインターフェースを指定します。


  13. 外部からのパケットをすべて拒否するファイアウォールの基本ルールに対し、LAN側サーバーへのパケットを通すための設定を行います。

  14. PPPoEセッションを自動再接続するためのトリガースクリプトを作成します。


    Note - ADD SCRIPTコマンドは、コンソールなどからログインした状態で、コマンドラインから実行するコマンドです。そのため、EDITコマンド(内蔵フルスクリーンエディター)等を使って設定スクリプトファイル(.CFG)にこのコマンドを記述しても意図した結果にならない場合がありますのでご注意ください。

  15. トリガー機能を有効にします。


  16. PPPoEセッションを自動再接続するためのトリガーを作成します。


  17. 設定は以上です。設定内容をファイルに保存し、SET CONFIGコマンドで起動時設定ファイルに指定します。


    Note - WAN側のケーブルを抜いた状態でここまでの設定を行った場合は、ファイル保存後にケーブルを接続してください。


メモ

■ 本構成例では、PPPリンクのアップ・ダウンによってトリガー「1」の状態(有効・無効)が動的に変化します。そのため、WAN側インターフェースにケーブルを接続したまま設定を行うと、コマンド入力時と設定保存時でトリガー「1」の状態が変わってしまうことがあります。その場合、PPP の自動再接続機能が働かなくなりますので、必ず次のいずれかの方法で設定を行ってください。


設定が正しく保存されているかどうかを確認するには、SHOW FILEコマンドかSHOW SCRIPTコマンドで設定ファイルを表示し、トリガー「1」の設定内容を確認してください。正しく保存されている場合、トリガー「1」の設定は次のようになります。


手順が正しくなかった場合は、次のように「state=disabled」というパラメーターが付きます。この設定では、ルーター起動直後に再接続機能が働きません。


この場合は、EDITコマンドで設定ファイルを開き、「state=disabled」を削除して上書き保存してください。


■ PPPoEのLAN型接続では、IPCPネゴシエーションによって、WAN側(PPP)インターフェースにネットワークアドレス(ホスト部が0のアドレス)が割り当てられます。ネットワークアドレスはホストアドレスとしては使用できないため事実上Unnumberedと同じですが、厳密に言うと専用線接続などで使用するUnnumberedとは異なります。

ルーター自身がWAN側インターフェースからIPパケットを送出する場合を考えます。純粋なUnnumberedでは、送出インターフェースにアドレスが設定されていないため、他のインターフェースのアドレスを使用します。しかし、PPPoE LAN型の場合は、まがりなりにもWAN側インターフェースにアドレスが設定されているため、パケットの始点アドレスとして本来使用できないネットワークアドレスが使用されてしまいます。

通常は、ルーター自身がパケットを送信することがないため、このことを意識する必要はありません。しかし、IPsecを使用するときなどは、始点アドレスに有効なアドレスが使われるよう注意が必要です。これには、WAN側インターフェースをマルチホーミングし、一方に有効なアドレスを設定した上で、デフォルトルートをそちらに向ける必要があります。ここでは、ISPから4.4.4.0/29のアドレスを割り当てられているものと仮定します。


これにより、LAN側からWAN側へのパケットはppp0-1にルーティングされ、始点アドレスとして4.4.4.1が使用されるようになります。


■ ファイアウォールで遮断されたパケットのログをとるには、次のコマンドを実行します。


記録されたログを見るには、次のコマンドを実行します。ここでは、「TYPE=FIRE」により、ファイアウォールが出力したログメッセージだけを表示させています。



■ インターネット側からのPING(ICMP Echo Requestパケット)を拒否するには、次のようなIPフィルターをWAN側インターフェースに設定します。この例では、「LOG=HEADER」により、フィルターで拒否したパケットをログに記録しています。


記録されたログを見るには、次のコマンドを実行します。ここでは、「TYPE=IPFIL」により、IPフィルターが出力したログメッセージだけを表示させています。

まとめ

ルーターのコンフィグ [テキスト版]
CREATE PPP=0 OVER=eth1-any
SET PPP=0 OVER=eth1-any BAP=OFF IPREQUEST=ON USER=user@isp PASSWORD=isppasswd LQR=OFF ECHO=ON
ENABLE IP
ENABLE IP REMOTEASSIGN
ADD IP INT=eth0 IP=4.4.4.1 MASK=255.255.255.248
ADD IP INT=ppp0 IP=0.0.0.0
ADD IP ROUTE=0.0.0.0 INT=ppp0 NEXTHOP=0.0.0.0
ENABLE FIREWALL
CREATE FIREWALL POLICY=net
ENABLE FIREWALL POLICY=net ICMP_F=PING,UNREACH
DISABLE FIREWALL POLICY=net IDENTPROXY
ADD FIREWALL POLICY=net INT=eth0 TYPE=PRIVATE
ADD FIREWALL POLICY=net INT=ppp0 TYPE=PUBLIC
ADD FIREWALL POLICY=net RULE=1 AC=ALLOW INT=ppp0 PROTO=TCP IP=4.4.4.2 PORT=25
ADD FIREWALL POLICY=net RULE=2 AC=ALLOW INT=ppp0 PROTO=TCP IP=4.4.4.2 PORT=53
ADD FIREWALL POLICY=net RULE=3 AC=ALLOW INT=ppp0 PROTO=UDP IP=4.4.4.2 PORT=53
ENABLE TRIGGER
CREATE TRIGGER=1 PERIODIC=3 SCRIPT=reset.scp
CREATE TRIGGER=2 INTERFACE=ppp0 EVENT=UP CP=IPCP SCRIPT=up.scp
CREATE TRIGGER=3 INTERFACE=ppp0 EVENT=DOWN CP=IPCP SCRIPT=down.scp


スクリプト「reset.scp」 [テキスト版]
RESET PPP=0


スクリプト「up.scp」 [テキスト版]
DISABLE TRIGGER=1


スクリプト「down.scp」 [テキスト版]
ENABLE TRIGGER=1





CentreCOM AR300/AR700 シリーズ 設定例集 2.3 #49

Copyright (C) 1997-2003 アライドテレシス株式会社

PN: J613-M0507-00 Rev.G

<前頁 次頁> << >> 目次 (番号順 (詳細)回線別 (詳細)機能別 (詳細)