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無線LAN

5年前とは違う!これからの無線LAN環境の
“課題と解決”&“新たな活用”のポイントとは

第1回
最新無線LAN規格「Wi-Fi6」で拡がる新たな活用

今やあらゆる業種・業界で無線LANの活用が進み、次世代無線LAN通信規格「Wi-Fi6」の登場により、それはさらに加速している。しかし活用が進むことで新たに生まれる課題もある。そうした課題をいかに解決し、活用を推進、拡大していくべきか。当連載は4回にわたり、これからの無線LAN活用に求められる、さまざまな情報を紹介する。第1回となる今回は、近年の無線LAN活用状況や、最新の無線LAN規格として話題の「Wi-Fi6」のメリットや活用法、さらに「5G」との組み合わせによる効率的な利用法も紹介する。

飛躍的に利便性が向上する
次世代無線LAN通信規格「Wi-Fi6」

無線LANは今やビジネスを進める上で「あって当たり前」と言える状況だ。ひと昔前であれば、セキュリティや運用管理への懸念から導入に足踏みをしていたところ(例えば、自治体など)でさえも近年は無線LANの活用に積極的だ。

加藤

加藤

無線LANの活用は急速に拡大しています。理由としては、どこでも使えるという無線通信の強みだけでなく、Wi-Fiの通信スピードも速くなり、ノートPCやスマートフォンの機能が拡張したことでより多くの業務が無線でも問題なく行えるようになったこと。つまり、無線自体もそこにつながる端末も使い勝手が良くなったことが一つ。もう一つは以前と比べてセキュリティが強化されたことです。今のセキュリティは非常に高度です。しかも万一脅威がすり抜けても、ネットワーク全体で、ゼロトラストセキュリティ1で守るという考え方も浸透してきています。無線だから危険と考える方は少なくなっていると思います。

用語解説
  • 1

    ゼロトラストセキュリティ:「信頼しない(ゼロトラスト)」ことを前提とするセキュリティ対策の考え方。モバイル端末の活用拡大、テレワークなどの働き方の変化により、これまでの「社内ネットワークの端末は安全」という境界型ではなく、全ての通信を信頼しない前提でさまざまなセキュリティ対策を行うことが必要となっている。
    ※FASHIONISTAではゼロトラストセキュリティをテーマにした記事も連載。詳しくはこちらから。

関口

関口

コロナ禍で業務の概念が変わったことも大きいですね。オンラインで、しかもどこにいても仕事ができるという風に意識が変わりました。オフィスのどこにいても仕事ができるといったマインドもあります。以前よりはるかに機動性が重宝されていることが無線LAN拡大の一つの理由になっていると思います。

加藤

加藤

コミュニケーションに対する考え方の変化もありますね。昔はそれこそ自分のデスクに置かれた電話が中心でしたが、今はネットワークで映像・音声によるコミュニケーションが問題なく行えます。PBX2のような専用の機器がなくてもネットワークインフラだけでコミュニケーションが実現できます。自分のデスクだけでなく会議室やサテライトオフィスでも常にコミュニケーションが取れるようにするのであれば、やはり無線LANは必須と言えます。

そして今、次世代無線LAN通信規格である「Wi-Fi63」が無線LANの導入・活用をさらに加速させている。2019年後半あたりからは対応製品(アクセスポイントや対応PC・モバイル端末)が出揃い始め、現実的に導入・活用ができる状況が整ってきた。
すでにWi-Fi6を導入して活用を始めている企業・組織も多いだろうし、まだ導入していないところも、次のネットワーク更新や拡張のタイミングでWi-Fi6を導入するかの検討をすることだろう。

用語解説
  • 2

    PBX:Private Branch eXchangeの略。外線からの着信を内線に発信したり、内線から外線への発信を制御する電話回線の交換機のこと。オフィスの特定の位置に配置されていることが多い。ソフトウェア型やクラウド型のPBXもある。

  • 3

    Wi-Fi6:無線LANの接続方式において標準規格化された最新技術。IoTなどの無線接続端末の数・種類の増加が背景にある。ひとつ前のWi-Fi5に比べ理論値で通信速度が1.4倍になるほか、複数端末の同時通信の待機時間減少(低遅延)、一台のアクセスポイントに接続可能な台数増大などが主なメリット。正式な規格名は「IEEE 802.11ax」。

関口

関口

お客様の仕様書などでも「Wi-Fi6」という要望をよく見かけるようになっています。それにベンダーもシステムインテグレーターも、より良いもの、効率的なものをお客様にお勧めしたいのは当然なので、今はWi-Fi6をご提案する機会が増えています。今後ますます導入が進んでいくと思います。

Wi-Fi6(IEEE 802.11ax)は、次世代無線LANの通信規格。その主なメリットには、以下の表の4つが挙げられる。

Wi-Fi6のメリット

従来のWi-Fi5(IEEE 802.11ac)4と比較して、通信速度が約1.4倍高速化。広く普及しているWi-Fi4(IEEE 802.11n)5との比較では約16倍も高速だ。またOFDMA(直交周波数分割多元接続)6という通信方式が採用されており、複数の端末が同時に接続している状態でも、通信の順番待ち(待機時間)が発生せず、同時通信が可能だ。さらに、スマートフォンやタブレット端末など子機側のバッテリー消費を抑える技術(Target Wake Time)も搭載されている。

用語解説
  • 4

    Wi-Fi5(IEEE 802.11ac):無線LANの接続方式において標準規格化された技術の一つ(正式な規格名は「IEEE 802.11ac」)。第4世代通信技術のWi-Fi4に比べ10倍以上の高速通信が可能。使われる帯域もWi-Fiでしか使用されない5GHz帯のため生活家電などの電波干渉が少なく安定した高速通信が実現できることが主なメリット。

  • 5

    Wi-Fi4(IEEE 802.11n):無線LANの接続方式において標準規格化された第4世代通信技術(正式な規格名は「IEEE 802.11n」)。現在でも多く使用されているWi-Fi規格の一つで、通信速度は理論値で600Mbps。2.4GHz帯と5GHz帯の二つの周波数帯を使えることが特長の一つである。

  • 6

    OFDMA(直交周波数分割多元接続):Orthogonal Frequency Division Multiple Accessの略。特定の端末にチャンネルを占有させず、すべての端末が効率良く通信できるように伝送する技術。端末の電波状況に応じて電波を細かく割り当てることが可能で、トラフィックの効率化や低遅延などのメリットがある。

加藤

加藤

Wi-Fi6を活用するのであれば、端末側もそれに対応しなければならないという話もありますが、Wi-Fi5までしか対応していないPC端末やモバイル端末でも、ファームウェアのアップデートなどソフトウェアが対応することでWi-Fi6に接続できるケースも多くあります。性急に端末を買い換えるのではなく、まずはメーカーにご確認されるのが良いと思います。

Wi-Fi6で拡がる新たな無線LAN活用

そもそも無線LANと言えば、会議や打ち合わせの場でノートPCを利用する程度の活用がメインで、デスク上には大きなデスクトップPC、というのが主流だった。だが、無線LANの活用は年々多様化、進化している。
そして、Wi-Fi6を利用することで、さらなる無線LANの活用が考えられる。

①エッジネットワークを全て無線化

多くの端末を収容でき、しかも高速・低遅延のWi-Fi6なら、すべての社内端末を無線LAN接続にしても業務に支障は出にくい。フロアを這い回るLANケーブルを無くすことができるし、会議や打ち合わせには無線LANに接続したPC端末をそのまま持って移動すれば良い。
さらにコロナ禍の昨今、テレワークとオフィスワークを併用している企業・組織も多いが、例えば、出社する社員を交代で3割に抑え、残り7割は自宅でテレワークとする場合、社員固有のデスクは廃止してフリーアドレスとし、出社したときにロッカーからPC端末を出して席に着くといったスタイルにすれば、デスク(とそのスペース)を7割削減できることになる。こうしたスタイルを取り入れるにもWi-Fi6は最適だ。

②大容量通信のさらなる活用

オンライン会議システムは参加者が多くなると重くて使い物にならないという課題もあるが、その原因の一つとして無線LANがボトルネックになるケースがある。動画と音声を利用するオンライン会議システムのようなアプリケーションでは、無線LANを高速化するメリットは大きい。
全国の小中学校では「GIGAスクール構想7」により生徒一人一台の端末が配布されている。教室で生徒全員が一斉に動画を視聴したり、インタラクティブなアプリを利用したりする場合にも、高速・低遅延、しかも端末収容台数の多いWi-Fi6は適していると言える。

③IoTの活用

IoT8の活用といえば、センサーなどからの情報をいかに収集するかが課題となる。端末の収容台数が多く、しかも省エネルギーのWi-Fi6なら、大規模なIoT端末ネットワークを構築することも可能となる。
例えば工場の生産装置やラインからの情報、病院では医療機器からの情報などをリアルタイムに収集することで、現在の情報を素早く把握することはもちろん、予兆検知や先を見据えた処置・方策を取るといったことも可能となる。

用語解説
  • 7

    GIGAスクール構想:2019年12月に文部科学省から発表された。2023年度までに義務教育段階にある児童・生徒に1人1台端末と高速大容量の通信ネットワークを一体的に整備することが目標とされている。

  • 8

    IoT:Internet of Things の略。モノのインターネットの意味。パソコンやサーバーだけでなく、クルマやカメラ、センサーなどさまざまな端末がインターネットとつながることを指す。

関口

関口

高速、大容量、多台数同時接続という特長を生かした活用はさまざまなことが考えられます。すでに無線LANを導入し活用しているところでも、Wi-Fi6に変更するだけでメリットは大きいですし、速度や同時接続などさまざまな問題が原因でこれまで実現できなかったこともできるようになります。

アライドテレシスでは2021年12月、Wi-Fi6 8ストリーム9対応の無線LANアクセスポイント「AT-TQ6702 GEN2」「AT-TQm6702 GEN2」の出荷を開始した。Wi-Fi6の8空間ストリームに対応し、超高速・大容量・大規模環境に適した無線LANアクセスポイントだ。

用語解説
  • 9

    8ストリーム:8×8(エイトバイエイト)とも表記される。送受信ともに8本ずつのアンテナがあり、上下左右360度の空間をカバーできる。従来の4ストリームよりも経路数が増えるため、接続可能端末数や通信速度は増加する。

製品写真(AT-TQ6702 GEN2)
加藤

加藤

無線LANの利便性が非常に高まっていますので、多くの引き合いをいただいています。今後もお客様のご期待にお応えできるよう、引き続き当社京橋イノベーションセンター10などフロア全体がショールームになっているような環境で実際に利用し、検証に検証を重ねて、研究開発に尽力していきます。

用語解説
  • 10

    京橋イノベーションセンター:2019年に最新無線LAN技術を導入した当社の最先端スマートオフィス。完全なフリーアドレスを採用し、通信端末を使用しながら移動しても途切れない、安定した環境を実現。

「5G」との組み合わせでIoTの効率的、
低コストでの導入も可能

Wi-Fi6とともに今話題となっているのが「5G11」だ。従来の4G12と比べ通信速度は20倍、同時接続数も10倍、遅延は1/10(すべて理論値)と、次世代通信規格に相応しいスペックを誇る。とはいえ、盛り上がっているのは従来の4Gスマートフォンからの移行の話が中心だ。

用語解説
  • 11

    5G(ファイブジー):5th Generationの略。携帯端末の通話やデータ通信で利用される無線移動通信システムの新規格。従来の4Gと比較して通信速度は20倍、遅延は1/10、最大接続台数は10倍。5Gに対応した端末で利用可能で、携帯端末以外にも家電製品などさまざまな場面での活用が期待されている。個人利用以外にも「ローカル5G」として地域や自社内で自営の5Gネットワークを活用する取り組みも進んでいる。

  • 12

    4G(フォージー):4th Generationの略。主に携帯電話の通話やデータ通信で利用されている、第4世代型の移動通信システム。通信速度は最大1Gbps程度で、一世代前の3G規格では難しかった高画質の動画サービスなどを携帯電話でも楽しめるようになった。

加藤

加藤

Wi-Fi6と5Gは同様に進化しています。どちらも無線技術の進化により高速・大容量・低遅延を実現するOFDMAやMU-MIMO13などの技術革新が進み、Wi-Fiは省電力でより多くの人と同時に通信する方向に進み、5Gは広域の端末へ高速通信を提供するといった方向に進みました。方向性が少し異なるだけで技術的な考え方は根が同じと言っても良いものです。

ビジネス利用の観点では「ローカル5G」への取り組みが徐々にスタートしている。ローカル5Gは、携帯キャリアによる全国向けの5Gサービスとは別に、地域の企業や自治体が自らの建物や敷地内でスポット的にネットワークを構築し利用を可能とする仕組みだ。これまでもプライベートLTE14として4Gネットワークの自社内活用の例はあったが、5Gを活用することでさらに効率的、実用的なプライベート無線ネットワークを構築しようという取り組みだ。

関口

関口

しかし、一般的なローカル5Gには課題も多いです。例えば、組織的なゲートウェイ15管理がなく、セキュリティリスクが非常に高いことや、導入する企業側で無線免許16の申請が必要なこと、コストが高いこと、ローカル5G対応クライアントを導入する必要があることなどです。

これに対しては、Wi-Fi6を組み合わせることで、こうしたローカル5Gの課題の多くを解決することも可能だ。

用語解説
  • 13

    MU-MIMO(エムユー・マイモ):Multi-User MIMO。MIMO(Multiple Input Multiple Output)という無線通信技術をより発展させた技術。従来は一つのWi-Fiに複数の端末を接続する際に並列したデータ通信はできなかったが、対応する複数無線端末に対して同時に送信処理を行うことができるようになり、従来規格と比較して低遅延での通信が可能となる。

  • 14

    LTE:Long Term Evolutionの略。第3世代移動通信システム(3G)を4Gに向けて長期的に進化(Long Term Evolution)させた通信規格。高速、低遅延、接続端末数の増大に対応するための通信規格で、大手通信キャリアが電波を発している。「3.9G」と呼ばれる場合もある。

  • 15

    ゲートウェイ:異なる通信プロトコルを中継する機器、ソフトウェア。LANとWANの境界などに設置される。「GW」と略されることも多い。

  • 16

    無線免許:無線を利用するために必要な免許。この場合、総務省がローカル5G向けに割り当てた専用の周波数帯を、大手携帯会社以外の企業が限られた特定の場所で5Gネットワークを利用するために必要な免許。

加藤

加藤

この場合、基地局と拠点を5Gの通信でつなぎ、拠点内はWi-Fi6のネットワークとして、シームレスな相互乗り入れを実現するという考え方があります。ゲートウェイを設けることで高セキュリティも実現でき、無線免許も不要で、しかもすでに利用しているWi-Fi端末でもアクセスが可能です。導入や運用のコスト、効率などを考え、当社はこの構成のご提案を始めています。

アライドテレシスが提案する「5G×Wi-Fi6」の活用方法

アライドテレシスではこのソリューションの提供を開始している。すでに引き合いもあり、検証を進めている例もあるという。
分散する拠点のうち、例えばIoTを活用する工場をこのネットワーク構成で構築し、他の拠点とは従来通りVPN17で結ぶといったことももちろん可能。ネットワーク全体の見える化、一元管理するソリューションとしてAMF18(Autonomous Management Framework)およびAT-Vista Manager EX19も活用可能だ。

用語解説
  • 17

    VPN(ブイピーエヌ):Virtual Private Networkの略。インターネットのように誰もが利用できる公共のネットワークを利用して、プライベートなネットワークを作ること。VPN環境の実現にはパケットのトンネリングや暗号化の技術が必要になる。

  • 18

    AMF:Autonomous Management Frameworkの略。アライドテレシスが独自開発した技術で、複数のネットワーク機器の一括設定や一括アップデート、遠隔地からの管理・設定変更、事前設定不要の機器交換といった運用を可能とする。AMFの導入により運用・管理工数とコストの大幅な削減、障害時の自動復旧を実現する。

  • 19

    AT-Vista Manager EX:アライドテレシスが提供している有線/無線、WAN/LANの一元管理を可能とするネットワーク管理ソリューション。ネットワークを可視化し、直感的な画面操作で簡単にネットワークの管理を実現できる。無線に接続された端末のリアルタイムの状況や位置情報も画面上で確認が可能。

当連載では、これからの時代に求められる無線LAN環境とその活用のポイントを紹介していく。第2回では無線LANの活用が拡がるがゆえの課題と、その解決法について紹介する。

登場者

加藤 紀康

アライドテレシス株式会社
Global Product Marketing部
シニアマネージャー
加藤 紀康

関口 颯

アライドテレシス株式会社
Global Product Marketing部
関口 颯

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