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無線LAN

5年前とは違う!これからの無線LAN環境の
“課題と解決”&“新たな活用”のポイントとは

第2回
無線LANの活用が広がるがゆえの課題と解決法

今やあらゆる業種・業界で無線LANの活用が進み、次世代無線LAN通信規格「Wi-Fi6」の登場により、それはさらに加速している。しかし活用が進むことで新たに生まれる課題もある。そうした課題をいかに解決し、活用を推進、拡大していくべきか。当連載は4回にわたり、これからの無線LAN活用に求められる、さまざまな情報を紹介する。第2回の今回は、無線LANで多く寄せられる悩みごとと、その解決法を紹介する。

無線LANを取り巻く課題

今や無線LANの活用は“当たり前”だ。しかし無線LAN活用の拡大、モバイル端末の増加と普及がもたらしたのはメリットばかりではない。
下記グラフは当社が昨年、無線LANの構築・運用に関する悩みごとを調査したものだ。

無線LAN を構築・運用のお困りごと

管理の煩雑化や通信の不安定さ、トラブル対応などが多いことが分かる。ひと昔前は、無線LANの悩みと言えばその構築やセキュリティへの懸念だった。しかし、近年では無線LANをうまく使いこなす上での、あるいは運用・管理上の課題が多くなっている。

ここからはネットワーク担当者や利用者が実際どのような課題を抱えているのか、そしてアライドテレシスでどのような解決策を提案しているのかを見ていこう。

構築時の快適な無線LAN環境を維持するのは難しい

無線LANといえば、「繋がりにくい」「時々すごく遅くなる」「たまに切断されて再接続になる」などといった悩みがよく聞かれる。
それでも、「大勢で繋いでいるから仕方がない」「朝の時間だけだからちょっと我慢しよう」などと諦めていないだろうか? 無線LANが繋がりにくかったり、遅かったりするのには必ず理由がある。

加藤

加藤

しっかりと原因を調査して改善すべきです。快適な無線LAN環境は容易に作れる時代です。

無線LANをオフィスなどに構築する際は、「サーベイ」と呼ばれる事前調査を行い、電波の強さやチャンネルを調整する。したがって、導入当初は電波状態も良く、快適に利用できるものだ。しかし、しばらくすると繋がりにくくなったり、通信が遅くなったりする。問題は電波干渉にある。

寺澤

寺澤

これは、電波は設置したアクセスポイントだけでなく利用環境から発生している場合があり、さらにその環境が変化するからです。例えば、隣のビルの電波や、携帯型のモバイルルーターの電波など、無線LAN環境はさまざまなものから電波干渉を受けます。家庭ですと電子レンジなどを使うときだけインターネットがつながらないというイメージと同じですね。

【ミニコラム】なんだか無線LANの通信が遅い…。
もしかして電子レンジのせいかも?

業務中もしくは、自宅でネットサーフィン中、たまに「あれ?ちょっとWi-Fiが遅いかな?」と感じた経験ってありませんか?Wi-Fiが遅くなる要因はその利用環境などによって様々ですが、ここではその一例をご紹介します。
オフィスに無線LAN環境を構築する場合、先述の通りサーベイを行いあらかじめ外的要因が分かっていることが多いですが、一般家庭の場合はコンシューマー向けのプロバイダーと契約して届いたルーターをなんとなく設置することが普通ですよね。そのWi-Fiが遅くなる理由のひとつを解説します。
一般的にWi-Fiには、障害物にも強く広範囲に電波が届く周波数2.4GHz帯と、障害物には弱く範囲は狭いが高速通信が可能な5GHz帯の2種類があります。が、実はこの2.4GHz帯、なんと電子レンジにも使用されている周波数なのです。電子レンジは利用時に強力な電磁波を放っていて、それがWi-Fiへの電波干渉になり、Wi-Fiの速度が遅いとか、たまに通信が途切れてしまうとか、そもそもつながらないという状況を起こしてしまっている可能性があります。
そういった場合、Wi-Fiを5GHz帯に切り替えるか、電子レンジとルーターの位置を離すなどの対策が有効です。なお、携帯ゲーム機なども電波干渉の要因になるケースもありますので、そういった場合も周波数を切り替えてみてください。

こうした他からの電波(外来波)による電波干渉に加え、サーベイの時にはその場にいなかった人や物が影響を与えることもある。構築時の快適な状況を維持することは難しい。

そこでアライドテレシスが提案しているのが「AWC(Autonomous Wave Controls)」だ。AWCは各無線LANアクセスポイントから無線LANの状態や状況を日々学習し(マシンラーニング)利用環境を最適化し、チャンネルや電波出力を「自律的に調整」することで、無線エリア内の電波干渉を最小化、安定した無線LAN環境を提供する。

AWC

これで日々管理画面をにらみながらチャンネルや電波出力を調整しなくてもよくなる。AWCがチャンネルや電波出力の自動調整を行うことに加え、アクセスポイントへの設定適用やファームウェアバージョンアップなど、一元管理の機能も提供する。

移動して端末を利用する際に生じる問題

チャンネルや電波出力が最適でもなお遅い、というケースもあるかもしれない。それはいわゆる「スティッキー端末1」の問題かもしれない。無線LANに接続した端末を持って移動した際に、遠くに離れてしまっても一度接続した無線LANアクセスポイントへ接続したままになる問題だ。

無線LANアクセスポイントから離れたスティッキー端末では遅延や切断が発生しやすい。本来であれば、移動した先にある近くの無線LANアクセスポイントへ再接続(ローミング2)すれば良いのだが、端末によって移動先での最適なアクセスポイントを理解できず、一度接続したアクセスポイントにしがみつくことでスティッキー端末となることが往々にしてある。更に、移動時に異なるアクセスポイントに再接続する際にはパケットロスや通信遅延が発生することがある。

例えば、病院において看護師が病棟を移動しながら電子カルテ端末を使う際、あるいは企業で自席から会議室へ端末を持って移動する際など、スティッキー端末はもちろん、ローミングするのも困るというケースもある。またノートPCだけでなく、近年はIP電話の普及も進んでおり、移動すると音声が途切れるのでは使い物にならないだろう。

用語解説
  • 1

    スティッキー端末:無線LAN環境内で移動した際に、前に接続された無線LANアクセスポイントとの接続を引きずってしまい、本来接続されるべきより条件の良い無線LANアクセスポイントに接続を切り替えられない端末のこと。通信速度の低下など接続状況悪化の原因となる。

  • 2

    ローミング:一般的には携帯キャリアを超えた利用を可とするサービスを指すが、ここでは、端末が移動にともない接続する無線LANアクセスポイントを乗り換える仕組みを指す。

加藤

加藤

無線LANは接続先が見えないため、自分の端末がどこの無線LANアクセスポイントに繋がっているか分かり難く、端末の機能・性能により接続方法が異なります。そのためこうしたスティッキー端末の問題が起きます。

スティッキー端末やローミングの問題に対してアライドテレシスは、「AWC-CB(Channel Blanket)」を提案している。AWC-CBは、独自のシングルチャンネルテクノロジーにより端末の移動に合わせて接続するアクセスポイントを切り換え、端末の再接続を解消し、途切れないローミングレス通信を実現する。

AWC-CB

つまり複数の無線LANアクセスポイントで同一のチャンネルを用い、BSSID3を共有することで、利用する端末からはどこで接続しても1台の無線LANアクセスポイントとして認識し、ローミングレスな通信となる。つまり簡単に言うと、複数の無線LANアクセスポイントを、仮想的に広い範囲をカバーするひとつの無線LANアクセスポイントであるかのようにすることで、どこにいても端末が繋がっている状態を保つことができる。もちろんスティッキー端末問題も発生しない。

なおアライドテレシスでは、1台のアクセスポイントにAWCとAWC-CB両方の通信方式を組み込み、「ハイブリッド無線LANシステム」としての提案も行っている。移動を必要としない固定の端末にはAWCを、移動端末の多いエリアにはAWC-CBを、といった具合に、両ソリューションを組み合わせて多様化する無線LANの使い方に対応した無線LAN環境を提供している。

用語解説
  • 3

    BSSID:Basic Service Set Identifierの略。無線LANネットワークおよび、無線LANアクセスポイント自体を識別するためのID。48ビットの数字で表わされる。MACアドレスがそのまま用いられることが多い。

見えないネットワークをいかに運用・管理するか

無線LANの活用が当たり前になって、利用する端末の台数が増えると、ネットワーク担当者の運用・管理の負荷も当然ながら増す。何かトラブルがあった場合に、その端末がどこにあって、どの無線LANアクセスポイントに接続しているかが分からないと素早い対応は難しい。
アライドテレシスではネットワークを可視化して運用・管理を助ける、ネットワーク統合管理ソリューション「Vista Managerシリーズ」を提供している。アライドテレシス製のスイッチ、ルーターや無線LANアクセスポイントだけでなく他社製品のネットワーク機器も含め、WAN4/LANも、有線/無線も、一元管理するネットワーク管理ソリューションだ。

用語解説
  • 4

    WAN(ワン):Wide Area Networkの略。広域情報通信網。いくつかの遠隔地のLAN(ラン、Local Area Network)を接続するネットワーク。一般の公衆回線やISDN、専用回線などを介して構築される。

Vista Manager

有線/無線のネットワークを可視化し、直感的な画面操作により、簡単でシンプルにネットワーク管理を実現。ネットワークの状況、トラブルを即座に確認し、タイムリーに問題を解決する。
また、無線LANが当たり前になっても、有線LANがなくなるわけではなく、ネットワーク担当者は有線LANと無線LAN、それぞれの管理ツールを立ち上げて運用・管理する必要がある。Vista Managerシリーズを使えばそうした必要はなく、ひとつの管理ツールであらゆるネットワークを統合管理できる。

寺澤

寺澤

当然ですが無線は目に見えません。そのうえ移動しながら端末を利用するような環境では、利用端末の位置も重要です。AWC-CBでは端末の位置情報・軌跡管理の機能を提供しており、Vista Managerシリーズでそうした位置情報を3Dフロアマップで視覚的に表示することも可能です。

Vista Managerシリーズには、大規模なネットワークも“見える化”で統合管理するネットワークマネージメントソフトウェア「AT-Vista Manager EX5」、オールインワンのネットワーク管理アプライアンスボックス「Vista Manager APL」、手軽な導入が可能な「Vista Manager mini」がラインナップされている。ネットワーク規模に合わせて柔軟な導入が可能だ。

用語解説
  • 5

    AT-Vista Manager EX:アライドテレシスが提供している有線/無線、WAN/LANの一元管理を可能とするネットワーク管理ソリューション。ネットワークを可視化し、直感的な画面操作で簡単にネットワークの管理を実現できる。無線に接続された端末のリアルタイムの状況や位置情報も画面上で確認が可能。

無線LANを構築・拡張する際の課題

ここまで無線LAN活用や運用・管理の課題と解決法を見てきたが、構築についての課題がなくなったわけではない。これまで一部のエリアだけだった無線LANエリアを拡張したい場合や、学術会議やスポーツイベント会場などでも無線LAN環境が求められることが多くなっている。

無線LAN環境を構築・拡張するには、有線LANのスイッチからケーブルで無線LANアクセスポイントを接続する必要がある。もちろんサーベイ(事前調査)も必要だ。しかしこれにはコストも時間もかかる。場所によってはケーブルを通せない/追加工事が出来ない場所もある。
そこでアライドテレシスでは、ケーブルの敷設やサーベイの煩雑さを考えることなく、無線LAN環境を構築・拡張する「AWC-SC(Smart Connect)」を提案している。AWC-SCは、無線LANアクセスポイント間を無線でつなぎ、自律的に無線エリアを拡大するソリューションだ。

AWC-SC
加藤

加藤

イベント会場など、無線LANアクセスポイントを設置できる場所が限られていて増設しにくいなどといった場合には、AWC-SCは特に有効です。
例えば、配線工事が困難な場所 ―防火壁が間にあって配線工事が困難であるような場所 でも、低コストで無線LAN環境の構築が可能となる。

無線LANを取り巻く課題を積極的に改善

ここまで無線LANで多く寄せられる悩みごとと、その解決法を紹介してきた。しかし無線LANはまだ新しい技術で、規格や標準の移り変わりも激しい。第1回で紹介したWi-Fi66もその一つだ。

用語解説
  • 6

    Wi-Fi6:無線LANの接続方式において標準規格化された最新技術。IoTなどの無線接続端末の数・種類の増加が背景にある。ひとつ前のWi-Fi 5に比べ理論値で通信速度が1.4倍になるほか、複数端末の同時通信の待機時間減少(低遅延)、一台のアクセスポイントに接続可能な台数増大などが主なメリット。正式な規格名は「IEEE 802.11ax」。

加藤

加藤

無線LANは便利ですが、近年は通信自体の規格が3~5年程度で更新しています。導入や更新のタイミングが見えづらいですが、一つ言えるのは最新の規格が通信速度も速く、セキュリティも高いということです。

つまり可能な限り最新規格を導入していけば良いわけだが、最新規格が登場するたびに機器を買い直すのは現実的ではない。最低限、次の更新タイミングを見据えて製品や技術を選定し、できる限り新しいものを利用していくのが良いだろう。
また新しい技術が出てきても、機器を買い換えるのではなく、アップデートで対応したり、オプションで利用できたりするようになることもある。

アライドテレシスではここまで紹介してきた無線LAN技術・ソリューション以外にも、新しい技術を追加機能として発表している。

無線資産アドバンスド・コントロール(AWC-SDF)

BYOD7のような持ち込み無線端末資産を、簡単・安全に管理することができる。現場のVista Manager miniが管理している無線環境を、リモートモニター機能によって集中管理するケースでは、端末の管理者は利用者端末の登録を無線資産アドバンスド・コントロールのGUI画面8上で簡単に処理することができる。各端末の接続状況はリアルタイムに把握可能。詳細はこちら

用語解説
  • 7

    BYOD:Bring Your Own Deviceの略。自分のデバイスを持ち込むという意味で使われ、個人で所有している端末を社内に持ち込んで業務に利用することを指す。管理やセキュリティ面で課題となる場合が多い。

  • 8

    GUI画面:GUIはGraphical User Interfaceの略。画面上に表示されるボタンやメニューなどをポインティングデバイス等を用いて操作するインターフェイス。コマンド入力など文字を使うインターフェイスである「CLI(Command Line Interface)」と対比して使われる。

無線エリアの自動補完(AWC-SAC)

あらかじめスタンバイモードとして電波を発しない無線LANアクセスポイントを配置しておくことで、周囲の無線LAN環境の変化や無線LANアクセスポイントの故障など、何らかの理由により電波状態が悪化した場合、自律的に電波送信を開始し、無線LANカバレッジの自動補完を実現。

履歴データの蓄積(AWC-VAS)

無線環境の履歴を長期間蓄積する機能。AT-VST-APLシリーズを外部ストレージ専用機とすることで利用可能。無線LAN端末の接続履歴やフロアマップデータ等を長期保存することで、過去の任意の日時の無線環境を表示することが可能。詳細はこちら

これら2021年に追加された新機能は、AT-Vista Manager EXやVista Manager APLの新機能として利用が可能となっている。増大するモバイル端末、無線LANデータの運用・管理を容易にする機能だ。

加藤

加藤

アライドテレシスでは、こうした機能追加も積極的に行い、無線LAN活用、運用・管理の支援を行っています。無線LANは、その環境を学習して自律最適化できる時代です。無線LANの活用、運用・管理、構築や拡張に悩まれている企業・組織のご担当者は是非ご相談ください。

登場者

加藤 紀康

アライドテレシス株式会社
Global Product Marketing部
シニアマネージャー
加藤 紀康

寺澤 雛

アライドテレシス株式会社
Global Product Marketing部
寺澤 雛

  • 本記事の内容は公開日時点の情報です。
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