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無線LAN

5年前とは違う!これからの無線LAN環境の
“課題と解決”&“新たな活用”のポイントとは

第3回
市場別無線LANのトレンド、課題と解決法 その1 文教・医療

今やあらゆる業種・業界で無線LANの活用が進み、次世代無線LAN通信規格「Wi-Fi6」の登場によりさらに加速している。しかし活用が進むことで新たに生まれる課題もある。そうした課題をいかに解決し、活用を推進、拡大していくべきか。当連載は4回にわたり、これからの無線LAN活用に求められる、さまざまな情報を紹介する。第3回、第4回では市場別に無線LANのトレンドや動向、課題とその解決法を紹介する。第3回の今回は、文教と医療、2つの市場について紹介する。

文教市場における無線LANの状況と課題

ここ数年でネットワーク環境がもっとも変化したと言えるのが教育現場、つまり文教市場だ。GIGAスクール構想1により、生徒一人ひとりに一台のコンピューター端末が配備され、無線LAN環境の整備が進んだ。さらにコロナ禍により教育環境におけるネットワークの重要性はますます高まっている。

GIGAスクール構想に基づき、すでに多くの小中学校で高速大容量の通信ネットワークが導入されている状況だが、今後生徒に配備されたコンピューター端末の利活用が進むことで、ネットワークの改善や拡張が必要となるケースもあるだろう。
特に改善や拡張が必要になると思われるのが、無線LAN環境だ。構築時の電波状況がそのまま続くわけではないし、使い方が変わっていけば通信量も変わってくる。そもそも生徒数が毎年異なるためその増減にも対応する必要がある。
学校という特殊な環境で無線LANを活用するにあたっての課題は、第一に同時接続性だ。教育で利用する以上、「窓側は問題ないが、廊下側では接続が途切れる」や「教室の後方だけ速度が遅い」といった“不公平”は許されない。

用語解説
  • 1

    GIGAスクール構想:2019年12月に文部科学省から発表された。2023年度までに義務教育段階にある児童・生徒に1人1台端末と高速大容量の通信ネットワークを一体的に整備することが目標とされている。

加藤

加藤

生徒一人ひとりが一台ずつ端末を利用する際、1クラス40人だとして少なくとも40台の、場合によってはそれ以上の端末が同時接続されます。もちろん検証・テストを行った上で導入が進められるものの、教育委員会の方々は本当に問題ないのか心配された面もあったかと思います。ただ現段階では、無線LANアクセスポイント(以降、アクセスポイント)へ繋がらない、繋がりにくいなどといった問題はほとんど聞かれません。同時接続で動画を視聴といったケースでも実使用上問題は起きていません。

アライドテレシスでは2018年の段階で、当時の最新アクセスポイント「AT-TQ5403」による60台同時映像配信の実証検証に成功しており、同時接続という面では多台数でも問題は極めて少なかった。また現在の最新機種である、Wi-Fi62対応の「AT-TQ6602」「AT-TQ6702 GEN2」は、OFDMA3に対応することでさらなる端末の収容数増大を実現している。

用語解説
  • 2

    Wi-Fi6:無線LANの接続方式において標準規格化された最新技術。IoTなどの無線接続端末の数・種類の増加が背景にある。ひとつ前のWi-Fi5に比べ理論値で通信速度が1.4倍になるほか、複数端末の同時通信の待機時間減少(低遅延)、一台のアクセスポイントに接続可能な台数増大などが主なメリット。正式な規格名は「IEEE 802.11ax」。

  • 3

    OFDMA:Orthogonal Frequency Division Multiple Accessの略。特定の端末にチャンネルを占有させず、すべての端末が効率良く通信できるように伝送する技術。端末の電波状況に応じて電波を細かく割り当てることが可能で、トラフィックの効率化や低遅延などのメリットがある。

●実際の教室を利用してのタブレット端末60台同時映像配信の検証動画

※音声がございますので、再生の際には、お気を付けください。

しかしアクセスポイントを設置すべき教室は一つではない。しかも場所によっては複数台のアクセスポイントを設置するようなケースもある。そこで問題となるのが「電波干渉」だ。学校では多くの数のアクセスポイントを設置することになるが、その場合にはチャンネルや電波出力の調整が不可欠となる。だが通常、学校にネットワーク専門の担当者はいない。

そこでアライドテレシスが学校の無線LAN構築で提案しているのが「AWC(Autonomous Wave Control)」だ。AWCは、無線LANシステムをインテリジェント化し、チャンネルや電波出力の自律的な調整で無線エリア内の電波干渉を最小化、安定した通信を実現する。利用中のアクセスポイントだけでなく、管理外のアクセスポイントや外来ノイズなどを収集し、それらのデータと過去からの推移をもとに、無線LANコントローラーが各アクセスポイントの利用環境に最適なチャンネル・電波出力を自動的に算出、適用するのだ。

AWC
関口

関口

電波は障害物があると届かないので、基本的にアクセスポイントの数はなるべく増やした方が良いのです。それが安定性に繋がります。ただしアクセスポイントの数が増えると干渉も起きてしまう。そこで複数台のアクセスポイントを置いても干渉しないようにするためのソリューションであるAWCをご提案しています。

また、生徒がタブレット端末やノートPCを移動しながら利活用することも考え、アライドテレシスが文教市場へ提案しているのが、「AWC-CB(Channel Blanket)」だ。AWC-CBは、単一のチャンネルでアクセスポイント間の移動時にローミングレス4で通信が途切れることなく快適な通信を実現する。AWCの電波出力・チャンネルの自動調整はそのままに、複数のアクセスポイントで同一チャンネルを利用して、仮想的な1台のアクセスポイントとして動作する。これによりローミングしない通信を実現するのだ。

用語解説
  • 4

    ローミングレス:一般的には携帯キャリアを超えた利用を可とするサービスを指すが、ここでは、端末が移動にともない接続する無線LANアクセスポイントを乗り換える仕組みを指す。

AWC-CB

多台数の安定した端末接続には問題がないとしても、必ずしもそれだけで十分とは言えない。

加藤

加藤

今後、さまざまな教育コンテンツ、特にインタラクティブなものが出てきたときに、WAN5側へ抜けるところで問題が起きる可能性はあります。例えば、ルーターやインターネット回線そのものがボトルネックになることもあるかもしれません。

例えばWi-Fi6対応のアクセスポイントを設置して、アクセスポイントと端末間の無線通信を広帯域化・高速化したとしても、その先の校内ネットワークやインターネット回線が遅ければ通信の遅延が発生してしまうことになる。校内ネットワークの10G化やWAN回線の増強なども考える必要があるだろう。

関口

関口

それから持ち込み端末ですね。生徒が学校に持ち込むBYOD6端末をいかに管理するかです。学校が端末を支給し、メンテナンスも学校側が全部行うというのはなかなか難しいところもありますので、今後は持ち込み端末への対応は必要になります。

用語解説
  • 5

    WAN:Wide Area Networkの略。広域情報通信網。いくつかの遠隔地のLAN(ラン、Local Area Network)を接続するネットワーク。一般の公衆回線やISDN、専用回線などを介して構築される。

  • 6

    BYOD:Bring Your Own Deviceの略。自分のデバイスを持ち込むという意味で使われ、個人で所有している端末を社内に持ち込んで業務に利用することを指す。管理やセキュリティ面で課題となる場合が多い。

こうした持ち込み端末の管理に対してアライドテレシスは、「AWC-SDF(無線資産アドバンスド・コントロール)」の提供を2021年からスタートしている。AWC-SDFは、BYODのような持ち込み端末の管理・運用を容易にする機能だ。

例えば、生徒が指定画面から簡単な登録を行うだけで、管理者はBYODのMACアドレスと名前やクラスなど任意の情報とを紐づけて収集/管理することができる。登録した端末がしっかり繋がる、セキュアなネットワークを容易に実現できる。

安全・簡単なBYOD管理

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医療市場における無線LANの状況と課題

多くの医療機関ではすでに無線LANの導入が進んでいる。例えば医療情報システムのインフラとして、スタッフのインターネット接続用、ナースコール用、あるいは撮影装置や検査装置などのデータ転送用としての利用も増えている。
電子カルテシステムの端末を利用するためであれば、院内を移動して利用することも考慮して、ローミングが発生しない「AWC-CB」を無線LANインフラとして採用する事例も多くなっている。

関口

関口

医療関係のお客様からの“ローミングの問題を何とかしたい”という声はよくお聞きします。移動する端末用にはAWC-CBでシングルチャンネル、業務用PCなど固定の端末用にはAWCでチャンネルや電波を自律調整という、ハイブリッド型の無線LAN環境に興味を持っていただけるケースも多いです。

そして近年特に増えているのが、医療IoT(IoMT)7のデータ収集用インフラとしての無線LAN活用だ。

用語解説
  • 7

    IoT(IoMT):Internet of Things の略。モノのインターネットの意味。パソコンやサーバーだけでなく、クルマやカメラ、センサーなどさまざまな端末がインターネットとつながることを指す。IoMTはInternet of Medical Thingsの略で医療分野におけるIoTのこと。医療現場で利用する機器や端末がインターネットとつながることを指す

加藤

加藤

IoMTの活用により、患者様のリアルタイムなデータを収集したり、医療機器などの現在の状態を監視したりすることができます。これまでには取れなかったデータを集め、利用するというのは、医療の質向上にも繋がります。このデータを集めるところを無線化し、機動性を持っていただくというのが私たちの提案です。

例えば、IoMTに対応した点滴スタンドには、無線と接続し、点滴の残量や流量をリアルタイムで監視し、薬剤の流量を調整することなどが可能なものもある。こうしたIoMT対応デバイスが病院内に多く導入されると、その管理も大変になる。
アライドテレシスのAMF8(Autonomous Management Framework)を利用すれば、医療機器などのIoTデバイスも、ネットワーク機器として情報を参照でき、管理が可能だ。

関口

関口

AMFを導入すれば、有線/無線を問わず、ネットワークの一元管理が可能です。マネージメント・ソフトウェアの「Vista Managerシリーズ9」で、IoMT対応医療機器の活用状況を可視化し、資産管理も可能です。

用語解説
  • 8

    AMF:Autonomous Management Frameworkの略。アライドテレシスが独自開発した技術で、複数のネットワーク機器の一括設定や一括アップデート、遠隔地からの管理・設定変更、事前設定不要の機器交換といった運用を可能とする。AMFの導入により運用・管理工数とコストの大幅な削減、障害時の自動復旧を実現する。

  • 9

    Vista Managerシリーズ:アライドテレシスが提供している有線/無線、WAN/LANを問わずネットワークを一元管理するマネージメントソリューション。ソフトウェア型の「AT-Vista Manager EX」、アプライアンス型の「AT-VST-APLシリーズ」、機器バンドル型の「Vista Manager mini」がある。グラフィカルで直感的な画面操作により、簡単、シンプル、リアルタイムにネットワークの運用・管理ができる。

AWC

さらに無線環境の端末利用履歴を残すことで、それを効率化やサービスの質向上に繋げることも可能だ。
アライドテレシスの「AWC-VAS(Vista Appliance Storage)」は、ネットワーク統合管理ソリューションVista Managerシリーズの「AT-VST-APLシリーズ」を外部ストレージ専用機とすることで、無線LAN端末の接続履歴やフロアマップデータなどを長期保存することができ、過去の任意の日時の無線環境を表示することが可能だ。
IoMT対応の医療機器がどのような頻度・流れで、どのように使われているかを分析することで、台数や配置の最適化、導線の見直しなどのサービスの質向上を図ることができる。
また近年はコロナ禍により面会を制限している医療機関も多いが、そうした中で病棟・病室に患者用Wi-Fiを設置する動きが加速している。
医療機関では従来、Wi-Fiはもちろん携帯電話の利用も禁止のケースが多かったが、状況は変わってきている。

加藤

加藤

コロナ禍でお見舞いもできないということもありますが、今や日常生活の中でインターネットを使わないというのがまずあり得ない状況ですよね。それくらい生活の一部になっていると思います。

患者が個人で契約しているモバイルWi-Fiルーターなどを持ち込むと、それが原因で病院システム用の無線LANと電波干渉を起こし、通信が不安定になるケースもある。それであれば病院側で患者用Wi-Fiを構築したほうが、病院全体のネットワーク管理・運用の面からも好ましいと言える。
アライドテレシスは、「#病室WiFi協議会10」の取り組みに賛同し、医療機関の患者用Wi-Fi整備を支援している。
「#病室WiFi協議会」はフリーアナウンサーの笠井信輔さんら有志でつくられた、民間団体だ。この団体の活動は、患者用Wi-Fiの整備等にかかる費用が補助金対象となったことに大きく貢献した。

用語解説
  • 10

    #病室WiFi協議会:「1つでも多くの病院の病室に無料Wi-Fiを!」をスローガンに掲げる、フリーアナウンサーの笠井信輔氏を中心として設立された民間団体。主な活動は、全国の病院を対象に患者が病室で無料Wi-Fiを使用できるかを調査・公表し、患者用Wi-Fiの設置推進を支援する。

加藤

加藤

医療市場も文教市場も今まさに無線LANの導入、拡張が進んでいる市場です。コロナ禍や働き方・学び方改革でネットワークの利用が大きく変化している今だからこそ、将来を見据えた構築・拡張が必要です。多くの導入実績を持つアライドテレシスにぜひお問い合わせください。

登場者

加藤 紀康

アライドテレシス株式会社
Global Product Marketing部
シニアマネージャー
加藤 紀康

関口 颯

アライドテレシス株式会社
Global Product Marketing部
関口 颯

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