インターフェース / Power over Ethernet


PoE給電機能のオン・オフ
電力配分方法
給電拒否動作
給電時の優先順位
ポートからの出力電力の上限
その他


本製品のPoE(Power over Ethernet)給電機能について説明します。

Note
FS980Mシリーズにおいて、PoE給電機能に対応しているのはAT-FS980M/9PS、AT-FS980M/18PS、AT-FS980M/28PS、AT-FS980M/52PSです。以下では、「本製品」=「AT-FS980M/28PS」となります。
Note
本製品のPoE給電仕様はファームウェアのバージョンアップによって仕様変更されており、本項は変更後の仕様にもとづいて記載されています。どのバージョンで仕様変更が行われたかについてはリリースノートでご確認ください。また、変更前の仕様については、対応するファームウェアバージョンのコマンドリファレンスをご参照ください。

PoE(Power over Ethernet)は、UTPケーブルを使って、データと電力を同時に伝送する技術です。PoEの規格(IEEE 802.3af、IEEE 802.3at)では、電力を供給する側を「給電機器(PSE: Power Sourcing Equipment)」、電力の供給を受ける側を「受電機器(PD: Powered Device)」と呼びます。

本製品は、PoE規格に準拠した給電機器として、1ポートあたり最大30Wの電力供給が可能です。
装置全体の最大供給電力は、機種によって下記のとおり異なります。

Note
PoE利用時は、意図せずに給電優先度の高いPoE受電機器がダウンしないように、あらかじめpower-inline priorityコマンドで優先的に電力を提供するポートを設定してください。

PoE給電機能のオン・オフ

PoE給電機能に対応しているのは、本体内蔵の10BASE-T/100BASE-TX PoEポート1~8(AT-FS980M/9PS)、1~16(AT-FS980M/18PS)、1~24(AT-FS980M/28PS)、1~48(AT-FS980M/52PS)です。

初期状態では、すべてのPoEポートでPoE給電機能が有効になっており、接続された受電機器(PD)の検出、電力クラスの識別を自動的に行い、必要に応じて給電を開始します。
接続されている機器が受電機器ではなく通常のEthernet機器だった場合は、給電を行わず通常の10BASE-T/100BASE-TX Ethernetポートとして動作します。

Note
本製品を給電機器(PSE)とカスケード接続する場合は、本製品のカスケードポートのPoE給電機能を無効に設定してください(power-inline enableコマンドをno形式で実行する)。

■ 指定したポートでPoE給電機能を無効にするには、該当ポートを対象とするインターフェースモードにおいて、power-inline enableコマンドをno形式で実行します。
awplus(config)# interface port1.0.1-1.0.4
awplus(config-if)# no power-inline enable

■ 指定したポートでPoE給電機能を再度有効にするには、power-inline enableコマンドを通常形式で実行します。
awplus(config)# interface port1.0.1-1.0.4
awplus(config-if)# power-inline enable

電力配分方法

本製品では、受電機器が接続されたポートに対して、受電機器が必要とする分だけ電力を供給するという電力配分方法を採用しています。
システム全体の供給電力に余裕があるかぎり、新たに接続された受電機器への給電を開始する仕様で、ポートへの出力電力は、受電機器の実際の電力使用量にもとづいて決まります。

受電機器が必要とする分だけ電力を供給するため、PoE 電源の電力を無駄なく割り振ることができますが、不意の給電停止を避けるため、ケーブルでの内部損失分や受電機器の電力使用量の変動を考慮して、電力配分の見積もりを行う必要があります。

給電拒否動作

前述のとおり、本製品はシステム全体の供給電力に余裕があるかぎり、新たに接続された受電機器への給電を開始する仕様ですが、不意の給電停止を避けるため、電力使用量が一定量を超えた場合には、新たに接続された受電機器への給電を拒否するという動作を行います。

最初にこれ以降の説明で使用する用語についてまとめておきます。
用語
show power-inlineコマンドの表示項目名
解説
PoE電源の最大供給電力 Nominal Power 本製品に搭載されているPoE用電源(システム全体)の最大給電電力
PoE電源の電力使用量 Actual Power Consumption 本製品に搭載されているPoE用電源(システム全体)の実際の電力使用量
PoE電源の余剰電力 - 「PoE電源の最大供給電力」から「PoE電源の電力使用量」を差し引いた値

空きポートに新たに受電機器が接続されると、本製品は受電機器の電力クラスを識別し、該当クラスで規定されている最大電力と、受電機器が接続された時点でのPoE電源の余剰電力とを比較して、新たな受電機器への給電を開始するかどうかを判断します。

新たな受電機器接続時に、「該当クラスの電力」が「余剰電力」を上回る場合は受電機器への給電を拒否し、「該当クラスの電力」が「余剰電力」を下回る場合は受電機器への給電を開始します。

「該当クラスの電力」とは次表の「給電機器の電力」のことで、この値とPoE電源の余剰電力とを比較します。
表 2:電力クラス(参考)
クラス
受電機器の電力(最大)
給電機器の電力
0 13.0 W 15.4 W
1 3.84 W 4.0 W
2 6.49 W 7.0 W
3 13.0 W 15.4 W
4 25.5 W 30.0W
Note
本製品では受電機器のクラス0 はクラス3 と同等に扱われますので、以降の説明ではクラス0 の表記は省略します。

PoE 電源の余剰電力に対して、新たに接続された受電機器への給電が拒否されるクラスの分類は以下のとおりです。
PoE 電源の余剰電力
新たに接続された受電機器への給電可否
15.4W 以上30W未満 クラス4 受電機器への給電拒否(クラス1 ~ 3 は給電可)
7W 以上15.4W未満 クラス3 ~ 4 受電機器への給電拒否(クラス1 ~ 2は給電可)
4W 以上7W 未満 クラス2 ~ 4 受電機器への給電拒否(クラス1 は給電可)
4W 未満 全クラスの受電機器への給電拒否
Note
電力使用量は常に一定ではないため、実環境においてしきい値は多少増減する可能性があります。

たとえば、最大供給電力が150W のAT-FS980M/9PS において、PoE 電源の電力使用量が140W だった場合、余剰電力は10W となります。この状態で、新たにクラス3 受電機器を接続した場合、クラス3= 15.4W > 10W となり、実際の電力使用量が10W 未満であっても、給電は開始されません。同じ条件でクラス1~ 2 の受電機器を接続した場合は、給電が行われます。

なお、接続ポートに「ポートからの出力電力の上限」が設定されている場合は、給電可否の判断には受電機器の該当クラスではなく、設定値が使用されます。たとえば、余剰電力が10Wの状態で、新たな受電機器の接続ポートに8Wの上限値が設定されている場合は、8W<10Wとなるため、給電が開始されます。ただし、受電機器が必要とする電力が設定値を上回れば、該当ポートへの給電は停止されます。


給電時の優先順位

PoE電源の電力使用量が装置全体の最大供給電力を上回った場合は、給電中のポートのうち、もっとも優先順位の低いポートへの給電を停止します。優先順位は次のようにして決定されます。
  1. ポートの給電優先度(power-inline priorityコマンドで設定)。critical(最高)、high(高)、low(低)の3段階。

  2. 給電優先度の同じポート間では、ポート番号の小さいほうが優先順位が高くなる。
Note
PoEポートからの出力電力が受電機器の電力クラスで規定された上限値(クラス1:4W、クラス2:7W、クラス3:15.4W、クラス4:30W)、または、power-inline maxコマンドで設定した「ポートからの出力電力の上限」を超えた場合は、給電優先順位に関係なく該当ポートへの給電を停止します。

初期状態では、すべてのPoEポートで給電優先度がlowに設定されています。したがって、給電時の優先順位はポート番号の順になります(ポート1が優先順位最高)

■ ポートの給電優先度を変更するには、power-inline priorityコマンドを使います。
awplus(config)# interface port1.0.2
awplus(config-if)# power-inline priority critical

ポートからの出力電力の上限

power-inline maxコマンド を使用すると、ポートごとに最大出力電力を任意に設定することができます。

給電中のポートにおいて、なんらかの理由で出力電力が上限値を超えた場合は、給電優先順位に関係なく該当ポートへの給電が停止されます。

初期状態では、すべてのPoEポートで上限値が未設定です。未設定時は、接続された受電機器の電力クラスにおける最大出力電力が上限となります。
ポートからの出力電力が、クラス1 受電機器の場合4W、クラス2 受電機器の場合7W、クラス3 受電機器の場合15.4W、クラス4 受電機器の場合30W を超えると、該当ポートへの給電が停止されます。

power-inline maxコマンド設定時は、接続された受電機器の電力クラスにおける最大出力電力よりも小さい値の場合、設定された上限値を超えると給電を停止します。

■ ポート1.0.1からの出力電力を6000mW(6W)までに制限するには次のようにします。
awplus(config)# interface port1.0.1
awplus(config-if)# power-inline max 6000

その他

■ PoE電源の電力使用量を監視するため、ログメッセージの出力、および、SNMPトラップ送信のしきい値を設定することができます。これには、power-inline usage-thresholdコマンドを使います。しきい値は、装置全体の最大供給電力に対する割合(%)で指定します。初期設定は80%です。
awplus(config)# power-inline usage-threshold 90

PoE電源の電力使用量がしきい値を下から上、あるいは、上から下にまたぐと、ログメッセージが出力されます。また、SNMPトラップの設定がなされている場合はSNMPトラップメッセージも送信されます。

Note
SNMPトラップの設定については、「運用・管理」の「SNMP」をご覧ください。

■ PoE給電機能の各種情報を確認するには、show power-inlineコマンド、show power-inline countersコマンド、show power-inline interfaceコマンドを使います。



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