インターフェース / Power over Ethernet
本製品のPoE(Power over Ethernet)給電機能について説明します。
PoE(Power over Ethernet)は、UTPケーブルを使って、データと電力を同時に伝送する技術です。PoEの規格(IEEE 802.3at)では、電力を供給する側を「給電機器(PSE: Power Sourcing Equipment)」、電力の供給を受ける側を「受電機器(PD: Powered Device)」と呼びます。
本製品は、PoE規格に準拠した給電機器として、1 ポートあたりの最大供給電力は30W、1 ラインカードあたりの最大供給電力は720W、システム全体の最大供給電力は、PoE 電源ユニット×1 台使用時で1200W、PoE 電源ユニット×2台使用時で2400Wです。
PoE利用時は、意図せずに給電優先度の高いPoE受電機器がダウンしないように、あらかじめpower-inline priorityコマンドで優先的に電力を提供するポートを設定してください。
ポートをシャットダウンすると、PoE受電機器が接続済み、かつ給電されていても、PoE LEDが点灯しません。
PoE電源ユニットが挿入された状態で、電源が入っていない場合、LEDとエラーメッセージで異常を知らせますが、数秒後には通常の状態に戻ってしまうことがあります。
PoE給電機能のオン・オフ
PoE給電機能に対応しているのは、ラインカードの、AT-SBx81GP24です。
初期状態では、すべてのPoEポートでPoE給電機能が有効になっており、接続された受電機器(PD)の検出、電力クラスの識別を自動的に行い、必要に応じて給電を開始します。
接続されている機器が受電機器ではなく通常のEthernet機器だった場合は、給電を行わず通常のEthernetポートとして動作します。
本製品を給電機器(PSE)とカスケード接続する場合は、本製品のカスケードポートのPoE給電機能を無効に設定してください(power-inline enableコマンドをno形式で実行する)。
■ 指定したポートでPoE給電機能を無効にするには、該当ポートを対象とするインターフェースモードにおいて、power-inline enableコマンドをno形式で実行します。
awplus(config)# interface port1.1.1-1.1.4 ↓
awplus(config-if)# no power-inline enable ↓
■ 指定したポートでPoE給電機能を再度有効にするには、power-inline enableコマンドを通常形式で実行します。
awplus(config)# interface port1.1.1-1.1.4 ↓
awplus(config-if)# power-inline enable ↓
ポートへの電力の割り当て
本製品では、コントロールファブリックカードがIEEE 802.3at で規定されている電力クラスの情報にもとづいて給電制御を行います。
たとえば、PoEポートで検出された受電機器がクラス1だった場合、本製品は、この受電機器が実際に使用する電力量に関係なく、4W分の電力を該当ポートに割り当てます。これは、最大4W までの出力に対応できるように、最大供給電力のうち4W分をあらかじめ確保するという意味です。
同様に、接続された受電機器がクラス2の場合は7W、クラス3の場合は15.4W、クラス4の場合は30Wの電力を確保します。
また、電力の割り当ては、電力クラスにもとづいて自動的に行う方法以外に、CLIコマンドを使用してポートごとに手動で設定することも可能です。指定したポートの電力を予約しておくようなもので、受電機器が実際に接続された時点で、接続ポートに設定値分の電力が割り当てられます。
CLIコマンドでは任意の上限を設けることができるので、たとえば、実際の電力使用量が8Wのクラス3受電機器が接続された場合、クラス分けによる電力の割り当てでは、接続ポートには自動的に15.4Wの電力が割り当てられますが、手動の場合は10Wにするなど、より細やかな電力の割り振りが可能です。
ポートに割り当てる電力を予約する(ポートの出力電力に上限値を設ける)には、power-inline maxコマンドを使います。
ポートに割り当てられる電力は、show power-inlineコマンドの「Max(mW)」で確認できます。クラス分けによる割り当ての場合は「[C]」、手動設定による割り当ての場合は、「[U]」が表示されます。受電機器の実際の電力使用量は「Power」に表示されます。
受電機器の電力使用量やポートの出力電力の設定によっては、同時に給電可能なポートの最大数が増加する場合があります。
IEEE 802.3at で規定されている電力クラス分けと、本製品が同時に給電可能なポートの最大数については、下表をご覧ください。
表 1
クラス |
受電機器の電力(最大) |
給電機器の電力 |
同時に給電可能なポートの最大数 |
PoE 電源ユニット× 1 台(1200W) |
PoE 電源ユニット× 2 台(2400W) |
0 |
13.0 W |
15.4 W |
77 |
155 |
1 |
3.84 W |
4.0 W |
240 |
240 |
2 |
6.49 W |
7.0 W |
171 |
240 |
3 |
13.0 W |
15.4 W |
77 |
155 |
4 |
25.5 W |
30.0W |
40 |
80 |
ラインカードへの電力の割り当て
コントロールファブリックカードは、受電機器が接続されているポートに割り当てられた電力の合計値を、システムの最大供給電力から差し引いた値(残りの電力)を、装着されているラインカード間で均等に分配することで、各ラインカードに割り当てる電力を管理しています。この処理は、受電機器の接続数が変わるたびに行われます。
たとえば、システム全体の最大供給電力が1200W、ラインカードA とラインカードB の2つのラインカードが装着されていると仮定します。
ここで、ラインカードA にクラス1 受電機器を接続すると、ラインカードA の接続ポートに4W 分の電力が割り当てられるので、1200W - 4W = 1196W で、1196W がシステムに残された電力になります。これを2 台のカードで均等に分けると、1196W÷2 = 598Wで、
ラインカードA に割り当てられる電力: 598W + 4W = 602W
ラインカードB に割り当てられる電力: 598W
となります。
受電機器の接続数が増えるにしたがって、ラインカードに割り当てられる電力も大きくなります。
なお、システムに残された電力をラインカード間で分ける際に、均等に割り切れない場合、たとえば、1196W の電力をラインカード10 台で分けるような場合、1196W÷10 = 119W 余り6W となりますが、余りの6W については、もっとも優先度の高いラインカードに割り当てられます。
運用中に電源ユニットを取りはずすなどして最大供給電力量が変わった場合も、コントロールファブリックカードはすぐに再計算を行い、各ラインカードに割り当てる電力値を変更します。
show power-inlineコマンドでラインカードごとにPoE電源の使用状況を確認できます。ラインカードに割り当てられた電力は「Power Allocated」、受電機器の接続ポートに割り当てられた電力(受電機器が要求する電力)の合計値は「Power Requested」、受電機器が実際に使用する電力の合計値は「Actual Power Consumption」に表示されます。前述のラインカードA を例にすると、602W が「Allocated」、4W が「Requested」にあたります。
ラインカードの実際の電力使用量(Actual)が、ラインカードに割り当てられた電力(Allocated)を上回った場合は、給電中のポートのうち、もっとも優先順位の低いポートへの給電を停止します。
本製品の仕様では、受電機器が1 台も接続されていないラインカードに対しても、最低37W の電力が確保されます。1 つのラインカードに割り当てる電力を37W より下回らせることはできませんので、ご注意ください。
給電時の優先順位
ラインカードの実際の電力使用量がラインカードに割り当てられた電力を上回った場合は、給電中のポートのうち、もっとも優先順位の低いポートへの給電を停止します。 優先順位は次のようにして決定されます。
- ポートの給電優先度(power-inline priorityコマンドで設定)。critical(最高)、high(高)、low(低)の3段階。
- 給電優先度の同じポート間では、ポート番号の小さいほうが優先順位が高くなる。
PoEポートからの出力電力が受電機器の電力クラスで規定された上限値(クラス1:4W、クラス2:7W、クラス3:15.4W、クラス4:30W)、または、power-inline maxコマンドで設定した「ポートからの出力電力の上限」を超えた場合は、給電優先順位に関係なく該当ポートへの給電を停止します。
初期状態では、すべてのPoEポートで給電優先度がlowに設定されています。給電優先度の同じポート間では、スロット番号、ポート番号ともに小さいほうが優先順位が高くなります(スロット1 のポート1 がもっとも優先度が高く、スロット12 のポート24 がもっとも優先度が低い)。たとえば、スロット6 のポート2 と、スロット8 のポート1 では、スロット6のポート2のほうが優先度が高くなります。
■ ポートの給電優先度を変更するには、power-inline priorityコマンドを使います。
awplus(config)# interface port1.1.2 ↓
awplus(config-if)# power-inline priority critical ↓
ポートからの出力電力の上限
power-inline maxコマンド を使用すると、ポートごとに最大出力電力を任意に設定することができます。
給電中のポートにおいて、なんらかの理由で出力電力が上限値を超えた場合は、給電優先順位に関係なく該当ポートへの給電が停止されます。
初期状態では、すべてのPoEポートで上限値が未設定です。未設定時は、接続された受電機器の電力クラスにおける最大出力電力が上限となります。
ポートからの出力電力が、クラス1 受電機器の場合4W、クラス2 受電機器の場合7W、クラス3 受電機器の場合15.4W、クラス4 受電機器の場合30W を超えると、該当ポートへの給電が停止されます。
power-inline maxコマンド設定時は、接続された受電機器の電力クラスにおける最大出力電力よりも小さい値を設定している場合、設定された上限値を超えると給電を停止します。
■ ポート1.1.1からの出力電力を6000mW(6W)までに制限するには次のようにします。
awplus(config)# interface port1.1.1 ↓
awplus(config-if)# power-inline max 6000 ↓
その他
■ PoE電源の電力使用量を監視するため、ログメッセージの出力、および、SNMPトラップ送信のしきい値を設定することができます。これには、power-inline usage-thresholdコマンドを使います。しきい値は、システム全体の最大供給電力に対する割合(%)で指定します。初期設定は80%です。
awplus(config)# power-inline usage-threshold 90 ↓
PoE電源の電力使用量がしきい値を下から上、あるいは、上から下にまたぐと、ログメッセージが出力されます。また、SNMPトラップの設定がなされている場合はSNMPトラップメッセージも送信されます。
SNMPトラップの設定については、「運用・管理」の「SNMP」をご覧ください。
■ PoE給電機能の各種情報を確認するには、show power-inlineコマンド、show power-inline countersコマンド、show power-inline interfaceコマンドを使います。
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