VPN / IPsec


プロファイル
デフォルトプロファイル
デフォルトISAKMPプロファイル
デフォルトIPsecプロファイル
カスタムプロファイル
カスタムISAKMPプロファイル
作成
適用
カスタムIPsecプロファイル
作成
適用
その他
IPsec DPD
IKEv1
IKEv2


IPsec(IP security)は、IPプロトコルファミリーに暗号化や認証などのセキュリティー機能を提供する一連のプロトコル群です。

本製品はパブリッククラウドサービス上で使用することが可能ですが、その場合にパブリッククラウドサービスが提供するVPNゲートウェイを介さず、ユーザーネットワークと本製品を直接VPN接続するための機能として、VPN機能(IPsecとL2TPv3)をサポートしています。また、これらの機能は本製品を仮想化環境(vSphere/XenServer/Hyper-V)上で直接実行する場合にも使用可能です。
これらは、弊社 AlliedWare Plus ルーター製品(AR4050Sなど)に実装されているのと同等の機能を提供します。

本製品は、次のIPsec関連機能をサポートしています。
Note
暗号化アルゴリズム、認証アルゴリズムなど各種パラメーターの組み合わせや優先度については、「プロファイル」をご覧ください。本製品では、一般的なパラメーターの組み合わせが「デフォルトプロファイル」としてあらかじめ定義されているため、本製品同士の接続では複雑な設定は不要ですが、他機器と接続する場合などには必要に応じて「カスタムプロファイル」を定義して使用することも可能です。

Note
IPsecトンネルインターフェースでは、デリバリー(外側)パケットとペイロード(内側)パケットのプロトコルが一致している必要があります。すなわち、IPsec over IPv4トンネルインターフェース(tunnel mode ipsec ipv4)にはIPv4アドレス(ip address)しか設定できず、IPsec over IPv6トンネルインターフェース(tunnel mode ipsec ipv6)にはIPv6アドレス(ipv6 address)しか設定できません。

IPsec機能は、IPsecトンネルインターフェースだけでなく、L2TPv3トンネルインターフェースでも利用できますが、本解説編ではIPsecトンネルインターフェースに特化した説明を行います。IPsecを利用可能な他のトンネルインターフェースについては下記の各解説編をご参照ください。


トンネルインターフェース全般については「VPN」の「トンネルインターフェース」を、インターフェース全般については「インターフェース」の「一般設定」をご覧ください。

パブリッククラウド環境におけるVPN機能の具体的な設定方法については、「インストールガイド」/「アマゾン ウェブ サービス(AWS)編」「インストールガイド」/「Microsoft Azure編」「アライドテレシスマネージメントフレームワーク(AMF)」/「応用」をご覧ください。

プロファイル

IPsec機能で使用する暗号化アルゴリズム、認証アルゴリズムなど各種パラメーターの組み合わせは、「プロファイル」と呼ぶ設定要素で定義します。プロファイルにはISAKMPプロファイルとIPsecプロファイルの2種類があり、それぞれISAKMP、IPsecの通信方式を規定します。

本製品では、一般的なパラメーターの組み合わせが「デフォルトプロファイル」としてあらかじめ定義されているため、本製品同士の接続では複雑な設定は不要ですが、他機器と接続する場合などには必要に応じて「カスタムプロファイル」を定義して使用することも可能です。

以下、デフォルトプロファイルの内容と、カスタムプロファイルの定義・使用方法について説明します。

デフォルトプロファイル

本製品では、ISAKMP、IPsecそれぞれの通信で使用する一般的なパラメーターの組み合わせが、優先順位とともに「デフォルトプロファイル」としてあらかじめ定義されています。後述するカスタムプロファイルの設定を行っていない場合は、自動的にデフォルトプロファイルが使用されます。

以下にその内容を示します。

デフォルトISAKMPプロファイル

デフォルトISAKMPプロファイルの内容は下記のとおりです。
ISAKMPパラメーターの組み合わせは、優先度の高いほうから順にトランスフォーム 1 ~ 12の12通りが定義されています。
トランスフォーム
1
2
3
4
5
6
暗号化アルゴリズム
AES256 AES256 AES256 AES256 AES128 AES128
認証アルゴリズム
SHA256 SHA256 SHA1 SHA1 SHA256 SHA256
Diffie-Hellmanグループ
14 16 14 16 14 16
IKEバージョン
IKEv2
認証方式
事前共有鍵
SA有効期間
24時間
DPDキープアライブ間隔
30秒
トランスフォーム
7
8
9
10
11
12
暗号化アルゴリズム
AES128 AES128 3DES 3DES 3DES 3DES
認証アルゴリズム
SHA1 SHA1 SHA256 SHA256 SHA1 SHA1
Diffie-Hellmanグループ
14 16 14 16 14 16
IKEバージョン
IKEv2
認証方式
事前共有鍵
SA有効期間
24時間
DPDキープアライブ間隔
30秒
Note
IKEバージョン、認証方式、SA有効期間、DPDキープアライブ間隔は、同一ISAKMPプロファイル内で共通です。

デフォルトIPsecプロファイル

デフォルトIPsecプロファイルの内容は下記のとおりです。
IPsecパラメーターの組み合わせは、優先度の高いほうから順にプロポーザル 1 ~ 6の6通りが定義されています。
プロポーザル
1
2
3
4
5
6
IPsecプロトコル
ESP ESP ESP ESP ESP ESP
暗号アルゴリズム(CBC)
AES256 AES256 AES128 AES128 3DES 3DES
認証アルゴリズム(HMAC)
SHA256 SHA1 SHA256 SHA1 SHA256 SHA1
PFS
使用しない
SA有効期間
8時間
Note
PFS、SA有効期間は、同一IPsecプロファイル内で共通です。

Note
IPsec動作モード(トンネルモード、トランスポートモード)は、IPsecトンネルインターフェースではトンネルモードとなります。

カスタムプロファイル

デフォルトプロファイルでは一般的なパラメーターの組み合わせを網羅していますが、対向機器のサポートしているパラメーターが異なり、デフォルトプロファイルで接続できない場合は、カスタムプロファイルを定義することにより対応が可能です。

カスタムISAKMPプロファイル

カスタムISAKMPプロファイルは、crypto isakmp profileコマンドで命名・作成し、同コマンド実行後の移行先であるISAKMPプロファイルモードで具体的な内容を定義します。

カスタムISAKMPプロファイルでは、本製品がサポートしている範囲内で、下記パラメーターの組み合わせを自由に定義できます。
ISAKMPプロファイルの構造は、「デフォルトISAKMPプロファイル」の表をご覧いただくとイメージしやすいでしょう。

Note
認証方式は事前共有鍵のみサポートのため、カスタムISAKMPプロファイルにおける設定項目はありません。

作成
次に、カスタムISAKMPプロファイルの具体的な定義例を示します。

■ IKEv1 Mainモード、SA有効期間1時間、暗号化/認証アルゴリズム/Diffie-Hellmanグループの組み合わせは「AES128/SHA1/Group2」の1つだけ。
awplus(config)# crypto isakmp profile legacy-main
awplus(config-isakmp-profile)# version 1 mode main
awplus(config-isakmp-profile)# lifetime 3600
awplus(config-isakmp-profile)# transform 1 integrity sha1 encryption aes128 group 2

■ IKEv1 Aggressiveモード、SA有効期間1時間、暗号化/認証アルゴリズム/Diffie-Hellmanグループの組み合わせは「AES128/SHA1/Group2」の1つだけ。
awplus(config)# crypto isakmp profile legacy-aggr
awplus(config-isakmp-profile)# version 1 mode aggressive
awplus(config-isakmp-profile)# lifetime 3600
awplus(config-isakmp-profile)# transform 1 integrity sha1 encryption aes128 group 2

適用
カスタムISAKMPプロファイルは、crypto isakmp peerコマンドを使って、対向装置またはインターフェースごとに適用します。

■ 対向装置10.2.2.2との間でカスタムISAKMPプロファイルlegacyを使用するには、次のようにします。
awplus(config)# crypto isakmp peer address 10.2.2.2 profile legacy

■ IPアドレスが不定な対向装置との間でカスタムISAKMPプロファイルを使用したいときは、次のようにdynamicキーワードを使います。この場合、IPアドレスが不定なすべての対向装置とのISAKMP通信において、指定したカスタムISAKMPプロファイルが使われます。
awplus(config)# crypto isakmp peer dynamic profile legacy-aggr

■ 特定のトンネルインターフェースで使用するカスタムISAKMPプロファイルを固定的に設定したいときは、次のようにpolicyパラメーターにトンネルインターフェース名を指定します。この場合、該当トンネルインターフェースを使用するすべてのISAKMP通信において、指定したカスタムISAKMPプロファイルが使われます。
awplus(config)# crypto isakmp peer policy tunnel0 profile myprof

crypto isakmp peerコマンドでカスタムISAKMPプロファイルを指定していない対向装置との間ではデフォルトISAKMPプロファイルが使われます。

カスタムIPsecプロファイル

カスタムIPsecプロファイルは、crypto ipsec profileコマンドで命名・作成し、同コマンド実行後の移行先であるIPsecプロファイルモードで具体的な内容を定義します。

カスタムIPsecプロファイルでは、本製品がサポートしている範囲内で、下記パラメーターの組み合わせを自由に定義できます。
IPsecプロファイルの構造は、「デフォルトIPsecプロファイル」の表をご覧いただくとイメージしやすいでしょう。

Note
IPsecプロトコルはESPのみサポートのため、カスタムIPsecプロファイルの設定ではつねに「protocol esp」を指定します。

作成
次に、カスタムIPsecプロファイルの具体的な定義例を示します。

■ SA有効期間1時間、暗号化/認証アルゴリズムの組み合わせは「AES128/SHA1」の1つだけ。
awplus(config)# crypto ipsec profile legacy
awplus(config-ipsec-profile)# lifetime seconds 3600
awplus(config-ipsec-profile)# transform 1 protocol esp integrity sha1 encryption aes128

■ SA有効期間1時間、暗号化/認証アルゴリズムの組み合わせは優先度の高い順に「AES256/SHA256」、「AES128/SHA256」の2つ。
awplus(config)# crypto ipsec profile shortlife
awplus(config-ipsec-profile)# lifetime seconds 3600
awplus(config-ipsec-profile)# transform 1 protocol esp integrity sha256 encryption aes256
awplus(config-ipsec-profile)# transform 2 protocol esp integrity sha256 encryption aes128

適用
カスタムIPsecプロファイルは、tunnel protection ipsecコマンドのprofileパラメーターを使って、トンネルインターフェースごとに適用します。

■ トンネルインターフェースtunnel0にカスタムIPsecプロファイルlegacyを適用するには、次のようにします。
awplus(config)# interface tunnel0
...
awplus(config-if)# tunnel protection ipsec profile legacy

tunnel protection ipsecコマンドのprofileパラメーターでカスタムIPsecプロファイルを指定していない場合、該当トンネルインターフェースではデフォルトIPsecプロファイルが使われます。

その他

IPsec DPD

IPsec DPDは、IPsecの対向側の接続断を検知する機能です。
本製品では、DPD要求パケットを定期的に対向側に送信するキープアライブ方式を使用しています。
対向側は、DPD要求パケットに応答することで自身が動作していることを証明します。

IKEv1とIKEv2ではSAを削除するまでの動作が次のように異なります。

IKEv1

IKEv1の場合、最後に成功した(応答があった)DPD要求から dpd-timeout秒後にSAが削除されます。

初期設定(dpd-interval 30、dpd-timeout 150)の場合のシーケンスを次に示します。


IKEv2

IKEv2の場合、最後に成功した(応答があった)DPD要求から dpd-interval + 166 秒後にSAが削除されます。

DPD要求に失敗した場合(応答がなかった場合)、4秒後にIKE再送要求(IKE retransmit request)が動作し、5回リトライします。
リトライするたびに送信間隔が徐々に大きくなります。

初期設定(dpd-interval 30)の場合のシーケンスを次に示します。


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