設定例集#25: PPPoEによるLAN型インターネット接続(LAN側グローバル)
  
  
   
   
  
  
  
  
PPPoEを使ってインターネットサービスプロバイダー(ISP)に接続します。
この例は、グローバルアドレスを8個、16個などのブロック単位で固定的に割り当てられるLAN型接続の設定例です。
ここでは、NATを使用せず、LAN側端末にグローバルアドレスを直接割り当てます。
また、ファイアウォールを使って外部からのアクセスを原則拒否しつつ、特定のサーバーだけを外部に公開します。 
構成

  | ISPから提供された情報 | 
  | ISP接続用ユーザー名 | user@isp | 
  | ISP接続用パスワード | isppasswd | 
  | PPPoEサービス名 | 指定なし | 
  | 使用できるアドレス | 10.0.0.0/29(10.0.0.0~10.0.0.7) | 
  | 接続形態 | LAN型(アドレス8個固定) | 
  | ルーターの基本設定 | 
  | WAN側物理インターフェース | eth1 | 
  | WAN側(ppp0)IPアドレス | Unnumbered | 
  | LAN側(vlan1)IPアドレス | 10.0.0.1/29 | 
  | DHCPサーバー機能 | 使わない | 
 
ここでは、次の方針で設定を行います。
- LAN側端末はすべてグローバルアドレスで運用します。NATは使用しません。
 ISPから割り当てられているアドレス(10.0.0.0/29)は8個(10.0.0.0~10.0.0.7)ですが、ネットワークアドレス(10.0.0.0)、ブロードキャストアドレス(10.0.0.7)、ルーター自身のvlan1アドレス(10.0.0.1)にそれぞれ1個ずつ消費されるため、端末に設定できるアドレスは10.0.0.2 ~ 10.0.0.6の5個となります。
 
 
- WAN側インターフェースはUnnumberedで運用します。ルーター自身がWAN側にパケットを送信するときは、vlan1のアドレスを借用します。
 
 
- ファイアウォールを利用して、外部からの不正アクセスを遮断しつつ、内部からは自由にインターネットへのアクセスができるようにします。
 
 
- 外部からのアクセスは基本的にすべて遮断しますが、下記のサーバーにはアクセスを許可します。また、内部へのPingも許可します。
 
- DNSサーバー(10.0.0.2:53/tcp、53/udp)
 
- SMTPサーバー(10.0.0.3:25/tcp)
 
 
設定開始前に
自動設定の確認と削除
本設定例に掲載されているコマンドは、設定がまったく行われていない本製品の初期状態(スタートアップコンフィグなしで起動した状態)から入力することを前提としています。
そのため、通常は erase startup-config を実行し、スタートアップコンフィグが存在しない状態で起動してから、設定を始めてください。
ただし、本製品はスタートアップコンフィグなしで起動した場合でも、特定の条件を満たすと自動的な設定を行うことがあるため、その場合は設定例にしたがってコマンドを入力しても、コマンドがエラーになったり、全体として意図した動作にならない可能性があります。
これを避けるため、設定開始にあたっては次のいずれかの方法をとることをおすすめします。
- ネットワークケーブルを接続せずに起動する。
 起動時に自動設定が実行されるための条件の一つに、特定インターフェースのリンクアップがあります。
 ネットワークケーブルを接続しない状態で起動することにより、自動設定の適用を回避できます。
 
 
- 自動設定を手動で削除してから設定を行う。
 前記の方法を採用できず自動設定が適用されてしまった場合は、「自動的な設定内容の削除」にしたがって、これらを手動で削除してから設定を開始してください。
 
自動設定が行われる条件などの詳細については、AMF応用編のAMFネットワーク未検出時の拡張動作をご参照ください。
システム時刻の設定
ログなどの記録日時を正確に保ち、各種機能を適切に動作させるため、システム時刻は正確にあわせて運用することをおすすめします。
特に本製品はリアルタイムクロックを内蔵していないため、起動するたびに時刻をあわせる必要があります。
ご使用の環境にあわせ、次のいずれかの方法でシステム時刻を設定してください。
ルーターの設定
- WANポートeth1上にPPPoEインターフェースppp0を作成します。これには、encapsulation pppコマンドを使います。
 PPPの詳細は「PPP」/「一般設定」をご覧ください。
 interface eth1
 encapsulation ppp 0
 
- PPPインターフェースppp0に対し、PPPoE接続のための設定を行います。
 
 ・LCP EchoによるPPP接続状態の確認(keepalive)
 ・提示されたIPアドレスを無条件で受け入れる設定(ppp ipcp ip-override)
 ・ユーザー名(ppp username)
 ・パスワード(ppp password)
 ・Unnumbered IPインターフェースの設定(ip unnumbered)
 ・MSS書き換え(ip tcp adjust-mss)
 
 PPPの詳細は「PPP」/「一般設定」をご覧ください。
 interface ppp0
 keepalive
 ppp ipcp ip-override
 ppp username user@isp 
 ppp password isppasswd 
 ip unnumbered vlan1
 ip tcp adjust-mss pmtu
 
- LAN側インターフェースvlan1にIPアドレスを設定します。これにはip addressコマンドを使います。
 IPインターフェースの詳細は「IP」/「IPインターフェース」をご覧ください。
 interface vlan1
 ip address 10.0.0.1/29
 
- ファイアウォールのルール作成時に通信内容を指定するために使う「アプリケーション」を定義します。
 これには、application、protocol、sport、dport、icmp-type、icmp-codeの各コマンドを使います。
 アプリケーション定義の詳細は「UTM」/「アプリケーション定義」をご覧ください。
 
 ここでは、TCP上のDNS通信を表すカスタムアプリケーション「dns-tcp」を定義します。
 application dns-tcp
 protocol tcp
 dport 53
 
- ファイアウォールのルール作成時に使うエンティティー(通信主体)を定義します。
 エンティティー定義の詳細は「UTM」/「エンティティー定義」をご覧ください。
 
 内部ネットワークを表すゾーン「private」を作成します。
 これには、zone、network、ip subnet、host、ip addressの各コマンドを使います。
 zone private
 network lan
  ip subnet 10.0.0.0/29
  host dns
   ip address 10.0.0.2
  host smtp
   ip address 10.0.0.3
 
- 外部ネットワークを表すゾーン「public」を作成します。
 zone public
 network wan
  ip subnet 0.0.0.0/0 interface ppp0
 
- 外部からの通信を遮断しつつ、内部からの通信は自由に行えるようにするファイアウォール機能の設定を行います。
 これには、firewall、rule、protectの各コマンドを使います。
 
 ・rule 10 - 内部から内部への通信を許可します(ここでは本製品・端末間の通信)
 ・rule 20 - 内部から外部への通信を許可します
 ・rule 30 - 外部から内部DNSサーバーへのUDP通信を許可します
 ・rule 40 - 外部から内部DNSサーバーへのTCP通信を許可します
 ・rule 50 - 外部から内部SMTPサーバーへの通信を許可します
 ・rule 60 - 外部から内部へのPingを許可します
 
 ファイアウォールの詳細は「UTM」/「ファイアウォール」をご覧ください。
 firewall
 rule 10 permit any from private to private
 rule 20 permit any from private to public
 rule 30 permit dns from public.wan to private.lan.dns
 rule 40 permit dns-tcp from public.wan to private.lan.dns
 rule 50 permit smtp from public.wan to private.lan.smtp
 rule 60 permit ping from public.wan to private.lan
 protect
 
- デフォルト経路をPPPインターフェースppp0に向けます。これにはip routeコマンドを使います。
 IP経路設定の詳細は「IP」/「経路制御」をご覧ください。
 ip route 0.0.0.0/0 ppp0
 
- 以上で設定は完了です。
 end
 
設定の保存
■ 設定が完了したら、現在の設定内容を起動時コンフィグとして保存してください。これには、copyコマンドを「copy running-config startup-config」の書式で実行します。
awplus# copy running-config startup-config ↓
Building configuration...
[OK]
また、write fileコマンド、write memoryコマンドでも同じことができます。
awplus# write memory ↓
Building configuration...
[OK]
その他、設定保存の詳細については「運用・管理」/「コンフィグレーション」をご覧ください。
ファイアウォールログについて
■ ファイアウォールのログをとるには、次のコマンド(log(filter))を実行します。
awplus(config)# log buffered level informational facility kern msgtext Firewall ↓
■ 記録されたログを見るには、次のコマンド(show log)を実行します。ここでは、ファイアウォールが出力したログメッセージだけを表示させています。
awplus# show log | include Firewall ↓
ルーターのコンフィグ
!
interface eth1
 encapsulation ppp 0
!
interface ppp0
 keepalive
 ppp ipcp ip-override
 ppp username user@isp 
 ppp password isppasswd 
 ip unnumbered vlan1
 ip tcp adjust-mss pmtu
!
interface vlan1
 ip address 10.0.0.1/29
!
application dns-tcp
 protocol tcp
 dport 53
!
zone private
 network lan
  ip subnet 10.0.0.0/29
  host dns
   ip address 10.0.0.2
  host smtp
   ip address 10.0.0.3
!
zone public
 network wan
  ip subnet 0.0.0.0/0 interface ppp0
!
firewall
 rule 10 permit any from private to private
 rule 20 permit any from private to public
 rule 30 permit dns from public.wan to private.lan.dns
 rule 40 permit dns-tcp from public.wan to private.lan.dns
 rule 50 permit smtp from public.wan to private.lan.smtp
 rule 60 permit ping from public.wan to private.lan
 protect
!
ip route 0.0.0.0/0 ppp0
!
end
(C) 2019 - 2020 アライドテレシスホールディングス株式会社
PN: 613-002735 Rev.J