IPマルチキャスト / MSDP


基本設定


MSDP(Multicast Source Discovery Protocol)は、複数のPIM-SMドメインを相互に接続するためのプロトコルです。
PIM-SMドメインのランデブーポイント(RP)同士がTCPで接続され、SA(Source-Active)メッセージの送受信を行います。
このRPのことをMSDPピアといいます。

SA(Source-Active)メッセージは、マルチキャスト送信者の情報を他PIM-SMドメインに伝えるためのものです。
SAメッセージには次の情報が含まれます。

推奨される最大MSDPピア数は以下の通りです。
製品名
推奨される最大MSDPピア数
AT-SBx81CFC960 100
AT-SBx908 GEN2 100
AT-x950 100
AT-x930 100
AT-x550 16
AT-x530 16
AT-x320 16

次に、MSDPの基本的な設定手順について説明します。

なお、以下の例では、VLANとIPユニキャストルーティングの設定までは完了しているものとします。

Note
PIM-SMでは、マルチキャスト経路の制御に必要なユニキャスト経路情報は交換しないため、あらかじめ何らかの手段で各ルーター上にユニキャスト経路表を構築しておく必要があります。通常、そのためには、RIP、OSPFなどの設定を行っておく必要があります。

PIM-SMの詳細については「IPマルチキャスト」の「PIM」を、VLANの設定については「L2スイッチング」の「バーチャルLAN」をご覧ください。また、IPインターフェースの基本設定については「IP」の「IPインターフェース」を、静的な経路設定については「IP」の「経路制御」を、RIPについては「IP」の「経路制御(RIP)」を、OSPFについては「IP」の「経路制御(OSPF)」をご覧ください。

基本設定

ここでは次のようなネットワーク構成を例に説明します。


この例では、PIM-SMドメインAとPIM-SMドメインBのRPにMSDPピアの設定を行い、両ドメイン間でマルチキャストパケットのやりとりができるようにします。
なお、以下の設定例には、IPマルチキャストルーティングとPIM-SMの設定も含まれています。

■ RP Aでの設定
  1. IPマルチキャストルーティングを有効化します。これにはip multicast-routingコマンドを使います。
    awplus(config)# ip multicast-routing
    

  2. マルチキャストルーティングを行うすべてのインターフェースで、PIM-SMとIGMP Querier機能を有効にします。これにはip pim sparse-modeコマンドとip igmpコマンドを使います。
    awplus(config)# interface vlan10,vlan100
    awplus(config-if)# ip pim sparse-mode
    awplus(config-if)# ip igmp
    awplus(config-if)# exit
    

  3. PIM-SMドメインBのRPと通信を行うインターフェースが、PIM-SMドメインAの境界となるように設定します。これにはip pim bsr-borderコマンドを使います。
    awplus(config)# interface vlan100
    awplus(config-if)# ip pim bsr-border
    awplus(config-if)# exit
    

  4. ランデブーポイントとして動作するよう設定します。これにはip pim rp-candidateコマンドを使います。
    ここでは、すべてのマルチキャストグループに対するランデブーポイント候補(C-RP)として自らを広告するよう設定しています。広告時のアドレスとしては、vlan10のIPアドレスを使います。
    awplus(config)# ip pim rp-candidate vlan10
    

  5. ブートストラップルーターとして動作するよう設定します。これにはip pim bsr-candidateコマンドを使います。
    ここでは、ブートストラップルーター候補(C-BSR)として自らを広告するよう設定しています。広告時のアドレスとしては、vlan10のIPアドレスを使います。
    awplus(config)# ip pim bsr-candidate vlan10
    

  6. MSDPの通信相手(MSDPピア)を設定します。これにはip msdp peerコマンドを使います。
    awplus(config)# ip msdp peer 192.168.100.2 local-address 192.168.100.1
    

■ RP Bでの設定
  1. IPマルチキャストルーティングを有効化します。これにはip multicast-routingコマンドを使います。
    awplus(config)# ip multicast-routing
    

  2. マルチキャストルーティングを行うすべてのインターフェースで、PIM-SMとIGMP Querier機能を有効にします。これにはip pim sparse-modeコマンドとip igmpコマンドを使います。
    awplus(config)# interface vlan20,vlan100
    awplus(config-if)# ip pim sparse-mode
    awplus(config-if)# ip igmp
    awplus(config-if)# exit
    

  3. PIM-SMドメインAのRPと通信を行うインターフェースが、PIM-SMドメインBの境界となるように設定します。これにはip pim bsr-borderコマンドを使います。
    awplus(config)# interface vlan100
    awplus(config-if)# ip pim bsr-border
    awplus(config-if)# exit
    

  4. ランデブーポイントとして動作するよう設定します。これにはip pim rp-candidateコマンドを使います。
    ここでは、すべてのマルチキャストグループに対するランデブーポイント候補(C-RP)として自らを広告するよう設定しています。広告時のアドレスとしては、vlan20のIPアドレスを使います。
    awplus(config)# ip pim rp-candidate vlan20
    

  5. ブートストラップルーターとして動作するよう設定します。これにはip pim bsr-candidateコマンドを使います。
    ここでは、ブートストラップルーター候補(C-BSR)として自らを広告するよう設定しています。広告時のアドレスとしては、vlan20のIPアドレスを使います。
    awplus(config)# ip pim bsr-candidate vlan20
    

  6. MSDPの通信相手(MSDPピア)を設定します。これにはip msdp peerコマンドを使います。
    awplus(config)# ip msdp peer 192.168.100.1 local-address 192.168.100.2
    

設定は以上です。


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