IPv6 / 経路制御(OSPFv3)
OSPFv3 はルーター間の接続状態から構成されるトポロジーとDijkstraアルゴリズムによる最短経路計算に基づくIPv6 用のルーティングプロトコルです。ルーターID とエリアID はOSPF(IPv4) と同様32 ビット数です。OSPF とOSPFv3 はそれぞれ独立して動作します。
ここでは、OSPFv3の基本的な設定について解説します。
OSPFv3経路のフィルタリングについては「IP」の「経路制御(フィルタリング)」をご覧ください(「IP」の章ですが、共通のコマンドが多いため同章ではIPv6の経路フィルタリングについても触れています)。
本製品のIPv6ホスト機能はつねに有効なため、インターフェースにIPv6アドレスを設定するだけでIPv6ホストとしての動作が可能です。ただし、IPv6パケットの転送機能(IPv6ルーティング)は初期設定で無効なため、IPv6ルーターとして動作させる場合は同機能の有効化(ipv6 forwardingコマンド)が必要です。詳しくは「IPv6」/「一般設定」をご覧ください。
IPv6 スタティック経路をOSPFv3 で再配布する場合は、スタティック経路のネクストホップをリンクローカルアドレスで指定してください。
OSPFv3 の特長
OSPFv3 は、通常一つのAS 内での経路決定に使用されます。OSPFv3 では、AS 内のすべての接続状態から構成するトポロジーのデータベースが各ルーターにあり、このデータベースに基づいて最短経路を計算します。このため、OSPFv3 はRIPng と比較して、次のような特長があります。
- 経路情報トラフィックの削減
OSPFv3 では、ルーター間の接続状態が変化したときだけ、接続状態の情報をほかのルーターに通知します。このため、OSPFv3 はRIPng のように定期的にすべての経路情報を通知するルーティングプロトコルと比較して、ルーティングプロトコルが占有するトラフィックが小さくなります。なお、OSPFv3では30分周期で、自ルーターの接続状態の情報を他ルーターに通知します。
- ルーティングループの抑止
OSPFv3 を使用しているすべてのルーターは、同じデータから成るデータベースを保持しています。各ルーターは共通のデータに基づいて経路を選択します。したがって、RIPng のようなルーティングループ( 中継経路の循環) は発生しません。
- コストに基づく経路選択
OSPFv3 では、宛先まで到達できる経路が複数存在する場合、宛先までの経路上のコストの合計が最も小さい経路を選択します。これによって、RIPng と異なり経路へのコストを柔軟に設定できるため、中継段数に関係なく望ましい経路を選択できます。
- 大規模なネットワークの運用
OSPFv3 では、コストの合計が16,777,214 以内の経路を扱えます。このため、メトリックが1 ~ 15 までの範囲であるRIPng と比較して、より大規模で経由ルーター数の多い経路が存在するネットワークの運用に適しています。
経路選択アルゴリズム
OSPFv3 では、経路選択のアルゴリズムとして、SPF(Shortest Path First) アルゴリズムを使用します。
各ルーターには、OSPFv3 が動作しているすべてのルーターと、ルーター- ルーター間およびルーター- ネットワーク間のすべての接続から成るデータベースがあります。このデータベースから、ルーターおよびネットワークを頂点とし、ルーター- ルーター間およびルーター- ネットワーク間の接続を辺とするトポロジーを構成します。
このトポロジにSPF アルゴリズムを適用して最短経路木を生成し、これを基に各頂点への経路を決定します。
エリア分割
OSPFv3 では、ルーティングに必要なトラフィックと、経路選択に使用するアルゴリズムの処理に必要な時間を削減するために、AS を複数のエリアに分割できます。
- バックボーン
エリアID が0.0.0.0 であるエリアをバックボーンと呼びます。AS が複数のエリアに分割されている場合、バックボーンには特別な役割があります。AS を複数のエリアに分割する場合には、エリアのどれか一つをバックボーンエリアとして定義する必要があります。ただし、一つのAS にバックボーンを二つ以上ある構成にしないでください。そのような構成の場合、情報がそれぞれのバックボーンに分散されるため、到達不能である経路が発生したり、最適な経路を選択しなかったりすることがあります。
- エリア境界ルーター
複数のエリアに所属するルーターを、エリア境界ルーターと呼びます。エリア境界ルーターでは、所属しているすべてのエリアについて、それぞれ別個にSPF アルゴリズムに基づいて経路選択を行います。なお、エリア境界ルーターは、バックボーンを通じてエリア間の経路情報の交換を行うため、必ずバックボーンに所属する必要があります。
- スタブエリア
バックボーンではなく、AS 境界ルーターが存在しないエリアをスタブエリアとして定義できます。エリア境界ルーターは、スタブエリアとして定義したエリアにAS 外経路を導入しません。このため、スタブエリア内では経路情報を減らし、ルーターの情報の交換や経路選択の負荷を減らすことができます。AS 外経路の代わりとして、スタブエリアにデフォルトルートを導入するようにエリア境界ルーターを設定できます。この設定によって、スタブエリア内のAS 外経路の扱いについては、デフォルトルートへのコストとエリア境界ルーターまでのコストの合計に基づいて、経路を選択します。ただし、デフォルトルートに基づいて経路が選択されるため、スタブエリア内では、AS 外経路について比較的遠い経路を選択することがあります。
基本設定
動作中の機器にOSPFv3の設定をした場合、機器を再起動するか、Ethernetインターフェースをリンクアップさせてください。
■ OSPFv3のルーティングプロセスを起動し、OSPFv3モードに移行するには、router ipv6 ospfコマンドを使います。
awplus(config)# router ipv6 ospf ↓
■ OSPFv3のルーターIDを設定するには、router-idコマンド(OSPFv3モード)を使います。
awplus(config-router)# router-id 1.1.1.1 ↓
OSPFv3を使用する場合は、必ずrouter-idコマンド(OSPFv3モード)でルーターIDを設定してください。
■ インターフェースの所属エリアを指定し、OSPFv3を有効にするには、ipv6 router ospf areaコマンドを使います。
awplus(config)# interface eth2 ↓
awplus(config-if)# ipv6 router ospf area 0 ↓
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