設定例集#55: インターネットアクセスログ(閲覧履歴)の取得
PPPoEによるインターネット接続環境において、URLフィルター機能を使用して特定サイトへのアクセスを遮断しつつ、配下の端末からインターネットへのアクセスログ(閲覧履歴)を取得するための設定を行います。
本設定例では、URLフィルター機能、ファイアウォール機能の通常ログに加え、下記のアクセスログを有効化して、これらをSyslogサーバーに送信します。
また、アプリケーションコントロール(DPI)を有効にすることで、DPIによって判別されたアプリケーションの情報がファイアウォールのログに含まれるよう設定します。
この例では、アプリケーションコントロール(DPI)機能において、サンドバイン社が提供するアプリケーションシグネチャデータベースを用いていますが、製品内蔵のアプリケーションシグネチャデータベースを使う場合の設定については、備考 をご覧ください。
サンドバイン社が提供するアプリケーションシグネチャデータベースを使用するにはアニュアルライセンスが必要です
構成
ISPから提供された情報
ISP接続用ユーザー名
user@isp
ISP接続用パスワード
isppasswd
PPPoEサービス名
指定なし
WAN側IPアドレス
動的割り当て(IPCP)
DNSサーバー
自動取得(IPCP)
ルーターの基本設定
WAN側物理インターフェース
eth1
WAN側(ppp0)IPアドレス
接続時にISPから取得
LAN側(vlan1)IPアドレス
192.168.10.1/24
Syslogサーバー
192.168.10.2
DHCPサーバー機能
有効
DHCPサーバーの設定
DHCPプール名
pool10
リース時間
2時間
対象サブネット
192.168.10.0/24
デフォルトゲートウェイ
192.168.10.1
DNSサーバー
192.168.10.1
提供するIPアドレスの範囲
192.168.10.100~192.168.10.131(32個)
設定開始前に
自動設定の確認と削除
本設定例に掲載されているコマンドは、設定がまったく行われていない本製品の初期状態(スタートアップコンフィグなしで起動した状態)から入力することを前提としています。
そのため、通常は erase startup-config を実行し、スタートアップコンフィグが存在しない状態で起動してから、設定を始めてください。
ただし、本製品はスタートアップコンフィグなしで起動した場合でも、特定の条件を満たすと自動的な設定を行うことがあるため、その場合は設定例にしたがってコマンドを入力しても、コマンドがエラーになったり、全体として意図した動作にならない可能性があります。
これを避けるため、設定開始にあたっては次のいずれかの方法をとることをおすすめします。
ネットワークケーブルを接続せずに起動する。
起動時に自動設定が実行されるための条件の一つに、特定インターフェースのリンクアップがあります。
ネットワークケーブルを接続しない状態で起動することにより、自動設定の適用を回避できます。
自動設定を手動で削除してから設定を行う。
前記の方法を採用できず自動設定が適用されてしまった場合は、「自動的な設定内容の削除」 にしたがって、これらを手動で削除してから設定を開始してください。
自動設定が行われる条件などの詳細については、AMF応用編のAMFネットワーク未検出時の拡張動作 をご参照ください。
システム時刻の設定
ログなどの記録日時を正確に保ち、各種機能を適切に動作させるため、システム時刻は正確にあわせて運用することをおすすめします。
ご使用の環境にあわせ、次のいずれかの方法でシステム時刻を設定してください。
ルーターの設定
LANポートにおいて初期状態で有効化されているスパニングツリープロトコル(RSTP)を無効化します。これにはspanning-tree enable コマンドをno形式で実行します。
スパニングツリープロトコルの詳細は「L2スイッチング」/「スパニングツリープロトコル」 をご覧ください。
no spanning-tree rstp enable
WANポートeth1上にPPPoEインターフェースppp0を作成します。これには、encapsulation ppp コマンドを使います。
PPPの詳細は「PPP」/「一般設定」 をご覧ください。
interface eth1
encapsulation ppp 0
PPPインターフェースppp0に対し、PPPoE接続のための設定を行います。
・IPCPによるDNSサーバーアドレスの取得要求(ppp ipcp dns )
・LCP EchoによるPPP接続状態の確認(keepalive )
・IPCPによるIPアドレスの取得要求(ip address negotiated )
・ユーザー名(ppp username )
・パスワード(ppp password )
・MSS書き換え(ip tcp adjust-mss )
PPPの詳細は「PPP」/「一般設定」 をご覧ください。
interface ppp0
ppp ipcp dns request
keepalive
ip address negotiated
ppp username user@isp
ppp password isppasswd
ip tcp adjust-mss pmtu
LAN側インターフェースvlan1にIPアドレスを設定します。これにはip address コマンドを使います。
IPインターフェースの詳細は「IP」/「IPインターフェース」 をご覧ください。
interface vlan1
ip address 192.168.10.1/24
URLフィルター機能の設定を行います。
これには、url-filter 、blacklist 、protect の各コマンドを使います。
また、デフォルトでは拒否したURLのログしか記録されないため、log url-requests コマンドですべてのURLリクエストを記録するよう設定します。
URLフィルターの詳細は「UTM」/「URLフィルター」 をご覧ください。
url-filter
blacklist blacklist.txt
log url-requests
protect
ファイアウォールのログにアプリケーションの情報を含めるため、アプリケーションコントロール(DPI)機能の設定を行います。
これには、dpi 、provider 、enable の各コマンドを使います。
アプリケーションコントロール(DPI)の詳細は「UTM」/「アプリケーションコントロール(DPI)」 をご覧ください。
dpi
provider procera
enable
アクセスログをSyslogサーバーに送信するため、hostログ(syslog送信先)を定義します。
これには、log 、log(filter) の各コマンドを使います。
ログフィルター(log(filter) コマンド)では、各機能が出力する local5ファシリティー、informationalレベルのログをsyslogで送信するよう設定します。
log host 192.168.10.2
log host 192.168.10.2 level informational facility local5
ファイアウォール/NATセッションの開始・終了ログを有効にします。
connection-log events new end
ファイアウォールやNATのルール作成時に使うエンティティー(通信主体)を定義します。
エンティティー定義の詳細は「UTM」/「エンティティー定義」 をご覧ください。
内部ネットワークを表すゾーン「private」を作成します。
これには、zone 、network 、ip subnet の各コマンドを使います。
zone private
network lan
ip subnet 192.168.10.0/24
外部ネットワークを表すゾーン「public」を作成します。
前記コマンドに加え、ここではhost 、ip address の各コマンドも使います。
zone public
network wan
ip subnet 0.0.0.0/0 interface ppp0
host ppp0
ip address dynamic interface ppp0
外部からの通信を遮断しつつ、内部からの通信は自由に行えるようにするファイアウォール機能の設定を行います。
これには、firewall 、rule 、protect の各コマンドを使います。
・rule 10 - 内部から内部への通信を許可します(ここでは本製品・端末間の通信)
・rule 20 - 内部から外部への通信を許可します
・rule 30 - 本製品のWAN側インターフェースから外部へのDNS通信を許可します
・rule 40, 50, 60 - アプリケーションシグネチャデータベースのダウンロード用に、本製品のWAN側インターフェースから外部へのHTTPS、SSL、TCP通信を許可します
・rule 70 - 本製品のWAN側インターフェースから外部への通信について、DPIによる判別が完了していないトラフィックを許可します
(DPI機能の有効時には事前定義アプリケーション「dns」よりもDPIアプリケーション「dns」が優先されるため、ルール「30」を機能させるためにこのルールが必要です)
ファイアウォールの詳細は「UTM」/「ファイアウォール」 をご覧ください。
firewall
rule 10 permit any from private to private
rule 20 permit any from private to public log
rule 30 permit dns from public.wan.ppp0 to public.wan
rule 40 permit https from public.wan.ppp0 to public.wan
rule 50 permit ssl from public.wan.ppp0 to public.wan
rule 60 permit TCP from public.wan.ppp0 to public.wan
rule 70 permit undecided from public.wan.ppp0 to public.wan
protect
LAN側ネットワークに接続されているすべてのコンピューターがダイナミックENAT機能を使用できるよう設定します。
これには、nat 、rule 、enable の各コマンドを使います。
NATの詳細は「UTM」/「NAT」 をご覧ください。
nat
rule 10 masq any from private to public
enable
LAN側ネットワークに接続されているコンピューターのためにDHCPサーバー機能の設定を行います。
DHCPサーバー機能の詳細は「IP付加機能」/「DHCPサーバー」 をご覧ください。
これには、ip dhcp pool コマンドでDHCPプールを作成し、以下の情報を設定します。
・サブネット(network )
・リースするIPアドレス(range )
・DNSサーバーアドレス(dns-server )
・デフォルトゲートウェイ(default-router )
・リース時間(lease )
ip dhcp pool pool10
network 192.168.10.0 255.255.255.0
range 192.168.10.100 192.168.10.131
dns-server 192.168.10.1
default-router 192.168.10.1
lease 0 2 0
DHCPサーバーを有効化します。これには、service dhcp-server コマンドを使います。
service dhcp-server
DNSリレー機能を有効にします。これには、ip dns forwarding コマンドを使います。
DNSリレー機能の詳細は「IP付加機能」/「DNSリレー」 をご覧ください。
ip dns forwarding
デフォルト経路をPPPインターフェースppp0に向けます。これにはip route コマンドを使います。
IP経路設定の詳細は「IP」/「経路制御」 をご覧ください。
ip route 0.0.0.0/0 ppp0
以上で設定は完了です。
end
備考:製品内蔵のアプリケーションシグネチャデータベースを使う場合
サンドバイン社が提供するアプリケーションシグネチャデータベースではなく、製品内蔵のデータベースを使用する場合は一部の設定を変更する必要があります。
以下、変更点だけを示します。
アプリケーションシグネチャデータベースの提供元を製品内蔵のもの(built-in)に変更します。
dpi
provider built-in
enable
ファイアウォールの設定を変更します。
rule 30以降をまとめて1つのルールにします。
firewall
rule 10 permit any from private to private
rule 20 permit any from private to public log
rule 30 permit any from public.wan.ppp0 to public
protect
設定の保存
■ 設定が完了したら、現在の設定内容を起動時コンフィグとして保存してください。これには、copy コマンドを「copy running-config startup-config
」の書式で実行します。
awplus# copy running-config startup-config ↓
Building configuration...
[OK]
また、write file コマンド、write memory コマンドでも同じことができます。
awplus# write memory ↓
Building configuration...
[OK]
その他、設定保存の詳細については「運用・管理」/「コンフィグレーション」 をご覧ください。
ルーターのコンフィグ
!
no spanning-tree rstp enable
!
interface eth1
encapsulation ppp 0
!
interface ppp0
ppp ipcp dns request
keepalive
ip address negotiated
ppp username user@isp
ppp password isppasswd
ip tcp adjust-mss pmtu
!
interface vlan1
ip address 192.168.10.1/24
!
url-filter
blacklist blacklist.txt
log url-requests
protect
!
dpi
provider procera
enable
!
log host 192.168.10.2
log host 192.168.10.2 level informational facility local5
!
connection-log events new end
!
zone private
network lan
ip subnet 192.168.10.0/24
!
zone public
network wan
ip subnet 0.0.0.0/0 interface ppp0
host ppp0
ip address dynamic interface ppp0
!
firewall
rule 10 permit any from private to private
rule 20 permit any from private to public log
rule 30 permit dns from public.wan.ppp0 to public.wan
rule 40 permit https from public.wan.ppp0 to public.wan
rule 50 permit ssl from public.wan.ppp0 to public.wan
rule 60 permit TCP from public.wan.ppp0 to public.wan
rule 70 permit undecided from public.wan.ppp0 to public.wan
protect
!
nat
rule 10 masq any from private to public
enable
!
ip dhcp pool pool10
network 192.168.10.0 255.255.255.0
range 192.168.10.100 192.168.10.131
dns-server 192.168.10.1
default-router 192.168.10.1
lease 0 2 0
!
service dhcp-server
!
ip dns forwarding
!
ip route 0.0.0.0/0 ppp0
!
end
ブラックリストファイル
■ blacklist.txt
example.com
example.net
(C) 2015 - 2025 アライドテレシスホールディングス株式会社
PN: 613-002107 Rev.BF