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エクストリコム無線LANシリーズ ユーザーガイド v4.6.18.10
お使いになる前に/無線LANシステムの概要
- エクストリコム無線LANシステムの概要
- 特長と利点
エクストリコム無線LANシステムは、単一フロアの中小規模の企業から複数のビルを持つ大規模の企業にまで幅広く対応した企業向けワイヤレスインフラストラクチャーです。チャンネルブランケットという独自の技術によって、エクストリコム無線LANスイッチに接続された複数のエクストリコム無線LANアクセスポイント(AP)を干渉させずに同一チャンネルで運用します。無線クライアントは個々の無線LAN APではなくスイッチにアソシエートし、すべての無線LANアクセスポイントが同一チャンネルを使用するため、ブランケット内で無線クライアントが移動してもローミングが発生しません。
また、既存の有線ネットワークインフラストラクチャーとシームレスに連携することにより、将来的にデータ、音声などが混在するネットワークにも柔軟に対応可能です。エクストリコムの無線LANシステムは、IEEE 802.11に準拠したチャンネルブランケットによってIT管理者とワイヤレスユーザーに革新的な無線LAN環境をもたらすソリューションを提供します。
エクストリコム無線LANシステムは、無線AP(RP-22n、RP-22En、RP-32n)と無線LANスイッチ(MS-500、MS-1000、MS-1000-C、LS-3000)で構成されます。エクストリコム無線LANシステムでは、これまでのセルプランニングの考え方を“チャンネルブラケットアーキテクチャー”で置き換えます。チャンネルブランケットは同一チャンネルの複数のアクセスポイント(無線AP)をサービスエリアに配置することにより、サービスエリア全体を同一チャンネルで覆う技術で、無線LANスイッチで複数の無線APを集中管理することにより、下図のように、システム全体が多数のアンテナを持つ巨大なAPとして機能します。

エクストリコム無線LANシステムのソリューションでは、ワイヤレスネットワーク上のパケット処理をすべて無線LANスイッチが行う集中型無線LANアーキテクチャーを採用しています。この構成では、各無線APは、ソフトウェア、記憶機能、IPアドレスなどを持たない単純な無線機(アンテナ)として機能します。また、基本的な無線LANへの接続方法も異なります。各クライアントは無線APではなく無線LANスイッチに直接アソシエーションします。無線APは、クライアントと無線LANスイッチとの間のトラフィックを高速に通過させる“無線経路”として機能します。エクストリコムアーキテクチャーは、802.11に準拠した無線LAN処理を無線LANスイッチ内に集約し、無線回路を無線APに分散します。
Wi-Fi環境を集中管理し、各無線APに複数の802.11a/b/g/n無線モジュールを搭載することで、それぞれの無線チャンネルを利用する複数の “チャンネルブランケット”を重ねて生成することが可能です。各チャンネルの帯域幅は、ブランケットのサービスエリア (無線LANスイッチに接続されたすべての無線APのカバレッジを組み合わせたもの)内で配分され、干渉のない動作と一貫した通信パフォーマンスを提供します。
クライアントがブランケット内を移動する場合、常にそのクライアントに無線LANサービスを行う最適な無線APと通信します。無線LANスイッチは、常にクライアントの通信に対して最適なアップリンクパスとダウンリンクパスを選択します。これを“バックグラウンド”で実行するため、クライアントには無線AP-AP間の移動に伴うハンドオフ (ディアソシエーションとリアソシエーション処理)が発生せず、シームレスなモビリティーを実現します。
エクストリコム無線LANシステムは802.11n規格をサポートしています。802.11n規格は既存の802.11規格を踏襲しています。802.11nは5GHz帯と2.4GHz帯の両方で使うことができ、MACおよびPHY層を向上させ、またMIMO (multiple-input multiple-output) 技術を採用しています。MIMOは複数の送信および受信アンテナを使用して同時データストリームを可能にする技術です。空間多重 (データストリーム)、40 MHzチャンネルボンディング、Block Acknowledgmentとフレームアグリゲーション、およびレンジを増大させるための空間ダイバーシティーなどの機能強化を利用して、データスループットを増やすことができます。
エクストリコム無線LANシステムソリューションは次の機能を提供します。
- シンプルな配置設計
エクストリコム無線LANシステムは、無線LANスイッチが全無線APを集中制御するため、同一チャンネルで動作する無線APの干渉を防ぎます。干渉を気にせずに必要な場所に無線APを設置するだけで最適なカバレッジが得られます。これによってエクストリコム無線LANシステムは煩雑なRFサーベイとセル設計の作業を軽減できます。
- 階層型無線LAN
複数の無線通信を搭載した無線APを使うと、1セットの無線APによりカバレッジを重ね合わせた複数の高速データチャンネルブランケットの配備が可能になるため、数倍のパフォーマンスを実現することができます。また、個々のチャンネルブランケットは、様々なサービスレベル、ユーザータイプ、トラフィック、それぞれのチャンネルの役割を物理的に分離することにより、サービス品質を保証する独自の機能を提供します。
- 同一帯域のチャンネル同時使用
エクストリコム無線LANシステムは、同一帯域内 (例えば、2.4GHzではチャンネル1、6および11)かつ同一無線AP内で複数の無線LANチャンネルを同時に使用して、同一物理セットの無線APを使う重複チャンネルブランケットを構成することができます。
- ゼロレイテンシーモビリティー
無線クライアントがチャンネルブランケット内を移動しても無線AP間のローミング、再認証、遅延が発生しないため、企業向け無線LANに理想的な途切れないモビリティーをもたらします。
- Wi-Fiコラボレーション
同一チャンネル上ですべての無線APが受信できるWi-Fiコラボレーション技術がクライアントの送信に対してアップリンクパスダイバーシティーを提供するため、システムはRFの不安定性と外部干渉に対して強い耐久性があります。
- 無線APの高密度配備
エクストリコム無線LANシステムは、企業に都合の良い便利な密度で無線APを配備できるため、すべてのユーザーに対してブランケットカバレッジと通信レートを保証することができます。事実、セルベースのソリューションでは固有のRF障害があるため高密度の配備を回避しますが、エクストリコム無線LANシステムは実際に無線APの密度が高くなると共に向上します。
- VoWLAN回線品質
エクストリコム無線LANシステムの干渉がないアーキテクチャーはゼロレイテンシーモビリティー、音声とデータの分離、消費電力の削減、RFの高い弾力性を組み合わせて優れた音声性能を提供するため、VoWLANに最適です。
- IEEE 802.11n
エクストリコム無線LANシステムのアーキテクチャーは、20MHz幅と40MHz幅の両方のチャンネルを使用することにより、2.4GHz帯と5GHz帯の両方において802.11n規格をサポートしています。この802.11n規格が採用された環境では、エクストリコム無線LANシステムのアーキテクチャーには多くの利点があります。その1つは、802.11nおよび802.11b/gデバイスの両方に対して2.4GHz帯の全帯域パフォーマンスを提供するというユニークな能力です。これに対して、802.11nの40MHzチャンネルボンディングでは、セルプランニングアーキテクチャーはチャンネルの数が不足するため使うことができません。
- IEEE 802.11iのサポート
エクストリコム無線LANシステムの製品には、WEP-64、WEP-128、WPA-TKIP、WPA2-AES (CCMP)暗号をサポートしています。認証モードのサポートには、RADIUS (802.1X)とWPA Pre-Shared Key (PSK)のサポートが含まれます。
- 省電力
ユニキャスト、マルチキャスト、ブロードキャストの各フレームに対して対応するモバイルデバイスの消費電力マネージメント機能が使用されます。この機能は802.11a/b/gデバイス用PS-PollおよびU-APSD、あるいは802.11nデバイス用SM&U-PSMPパワーセーブなどの各種IEEE 802.11規格準拠省電力仕様に基づいています。
- 集中管理設定
ネットワークに追加する新しい無線LANスイッチは、1つのWebインターフェースを介してユーザーが手動で、またはエクストリコムプロトコルを使って自動で行うことができます。
- システムの冗長化
エクストリコム無線LANシステムは、2台の無線LANスイッチをカスケードまたはホットスタンバイ構成をとることにより冗長化を実現します。切り替えパラメーターはユーザー設定可能で、アクティブからスタンバイへの切り替えはユーザーに対してシームレスに行われます。
- 無線LANスイッチ間ハンドオフ/ファストローミング
エクストリコム無線LANシステムはスイッチ間のファストハンドオフをサポートしているため、モバイル音声無線LANクライアントはシームレスにローミングをすることが可能です。これにより無線LANクライアントは遅延なしで以前認証した無線APに再ローミングすることが可能です。
- SNMP
エクストリコム無線LANシステムは、標準MIBとプライベートMIBに基づくSNMP V2をサポートするため、ユーザーはSNMP Setコマンドを使って無線LANスイッチを設定し、SNMP Getコマンドを使って無線LANスイッチステータスを読み出し、無線APステータスや冗長化などのシステムステータスを取得することができます。SNMPは、既存のネットワークマネージメントシステムを使って複数のエクストリコム無線LANスイッチを管理するユーザー様向けに提供しています。
- 複数のRADIUS構成およびRADIUS冗長化
エクストリコム無線LANシステムは、ESSIDごとに複数のRADIUSサーバーをサポートするため、複数RADIUSサーバー間で冗長化を実現することができます。RADIUSは802.1Xで利用され、無線LANでも採用される一般的な認証プロトコルです。WEPによる暗号化方式よりセキュリティーが向上し、EAP-PEAPなどで使用されます。エンタープライズの環境においては、バックアップとして、または物理的に異なる拠点で、複数のRADIUSサーバーを使用することがありますが、ESSIDごとに最大4台のRADIUSサーバーを登録することが可能です。冗長化として登録するすべてのRADIUSサーバーは同じユーザーアカウント情報を登録していることが前提です。無線LANスイッチからRADIUSサーバーに対するタイムアウトが発生した場合、次のRADIUSサーバーへ切り替わります。RADIUSサーバーの優先度は1から4です。
- ネットワークタイムプロトコル (NTP)
エクストリコム無線LANシステムは、ネットワーク内でシステムクロックの同期をサポートするため、イントラネットおよび/またはインターネット内にある電波時計を基準とする正確なローカル時刻を維持することができます。
- ファストハンドオフ (適宜キーキャッシング)
1台の無線LANスイッチのカバレッジエリアにある同一チャンネルブランケット内では、複数無線AP間での無線LANクライアントのローミングは発生しません。異なるエクストリコム無線LANスイッチ間でのクライアントのローミングには標準の802.11iハンドオフメカニズムを使用し、これはさらに802.11i規格の適宜キーキャッシングメカニズムよって助長されます。この他に、エクストリコム無線LANシステムは、エクストリコム無線LANスイッチ間プロトコルを使ってエクストリコム無線LANスイッチ間での802.11iハンドオフを高速化します。これによりクライアントは802.1X認証の繰り返しを回避することができるため、セッション中断を最小にして異なる無線LANスイッチに接続された無線AP間の切り替えを高速化することができます。
- キャプティブポータル
クライアントが最初にHTTPアクセスするとき、特定のWebページに(通常は認証用として)リダイレクトさせる機能です。キャプティブポータルは、Webブラウザーをセキュアな認証ページとして機能させます。このとき、クライアントのインターネットへのアクセスをインターセプトし、エクストリコム内部にあるログインページにリダイレクトさせます。このページは認証を有効にしたり、または認証なしで利用に関するポリシーを表示させユーザーが合意することを確認するだけのページも設定することが可能です。キャプティブポータルはWi-Fiホットスポットに利用されることが多く、有線アクセス(アパート、ホテル客室、ビジネスセンター、空港、キャンパスなど)の制御にも使うことができます。
- Lobby Ambassador
ゲストネットワークにおいて一時的に無線LANを使用するユーザーのアカウントを発行、管理することが可能です。管理するユーザーインターフェースはWebベースになっており、Web GUIと独立しているため、ホテルのフロントなどユーザーと接する担当者がネットワークアクセスの管理を行うことが可能です。
- MAC認証
MAC認証技術は、802.1Xをサポートしていない無線LANデバイスに対してRADIUSサーバーを介して認証することが可能です。通常、MAC認証はバーコードリーダーのようなDumbデバイスを管理する際などに使用されます。
- WMM
Wi-Fi Alliance WMMは802.11eドラフト規格のサブセットに基づいた、802.11におけるQoSです。WMM仕様には4つのアクセスカテゴリー(音声、ビデオ、ベストエフォート、バックグラウンド)に基づいてデータパケットの基本的な優先順序が定められています。優先ネットワークからのパケットは802.1pまたはTOS/DSCPの値をもとにアクセスカテゴリーにマッピングされます。
優先順序決定は802.11規格のCarrier Sense Multiple Access/Collision Avoidance Protocolに基づいています。802.11では、DCF Distributed Coordination Function (DCF)メカニズムはlisten-before-talkアルゴリズムを使うことにより、複数のデバイスが無線メディアに同時にアクセスしようとするときに生じるパケット衝突の可能性を最小限にします。クライアントはまずランダムに選択された時間だけ待ち、交信するデバイスが他にないかどうかを「聞き」、それから伝送を開始します。このランダムなバックオフ(待機)時間により、すべてのデバイスに公平な送信の機会が与えられます。
WMM(802.11e規格に準拠)では、DCFを拡張してEnhanced Distributed Channel Access (EDCA) を定義しています。EDCAは4つの優先区分に対してそれぞれ異なる固定されたランダムの待ち時間を指定し、これにより、パケット遅延に影響を受けやすいアプリケーションに対して、より高いネットワークアクセスのチャンスが与えられます。待ち時間が短いデバイスは、待ち時間が長いデバイスより送信可能のチャンスが高くなります。優先順序は音声、ビデオ、ベストエフォート、バックグラウンドの順で低くなります。これらのWMM優先カテゴリーはEthernet 802.1p優先タグに静的にマッピングされ、無線および優先ネットワークセグメント全体に対して一定のQoSが得られます。802.1p優先順序タグが付いた優先デバイスからのフローは、適切なアクセスカテゴリーにマッピングされます。これに対して、無線メディアから届いたWMMフローはカプセル化され、適切な802.1p優先順序タグが付けられます。
各アクセスカテゴリーのバックオフ(待機)時間は、Arbitrary Inter-Frame Space Number (AIFSN) と呼ばれる固定期間と、Contention Window (CW) と呼ばれるランダム期間から構成されます。いずれもスロットタイムの倍数で指定されます。CWはDCFランダムバックオフコンポーネントを維持し、これによって同じアクセスカテゴリーのパケットの衝突を回避します。CWレンジは衝突のたびに2倍になり(CWminからCWmaxまで)、送信が実行されると最小値にリセットされます。
EDCAはTransmit Opportunity (TXOP) と呼ばれるアルゴリズム(クライアントがいくらでもフレームを送信することが可能な時間)を使用しますが、送信時間はTXOPの最大期間を超えることはできません。各優先レベルにはTXOPが割り当てられ、この仕組みにより、送信しようとする他のクライアント(優先順序がより高いキューのトラフィックを持つクライアントを含む)が存在するときに、低速のクライアントが長時間にわたってメディアを独占するのを防止することができます。
WMMの別の機能に、per access category Acknowledgment policy (Normal または No ACK) があります。Normalは、受信したパケットごとに確認応答 (ACK) パケットが返されることを意味します。これによって伝送の信頼性は向上しますが、トラフィック負荷は増え、結果としてパフォーマンスは低下します。ただし、確認応答をキャンセルすることができます。その場合は、アクセスカテゴリーごとにNo Ackを選択します。音声で、例えば伝送速度が重要でパケットロスはある程度許されるような場合には有効です。
- Blanket balancing
クライアント台数によって無線LANスイッチが各Radioに接続するクライアントをロードバランスします。
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PN: 613-002288 Rev.B