[index] CentreCOM AR100 シリーズ コマンドリファレンス 2.3

ISDN/概要・基本設定

対象機種:AR130、AR160


  - 基本設定
   - 物理インターフェース
   - ISDNコール(接続先情報)の作成
   - データリンク層とのインターフェース
  - 詳細設定
   - 同時発呼時の調停
   - 自動リトライ
   - ISDNコールバック
   - ISDN S/Tバスに複数の機器を接続している場合
  - 着信設定(着信呼の識別と認証)
   - 着呼までの流れ
   - 呼の識別・認証に使う情報の設定
    - 発呼時に送信する情報(OUT...パラメーター)
    - 着信呼の識別に使う情報(SEARCH...パラメーター)
    - 着信呼の認証に使う情報(CHECK...パラメーター:オプション)


ここでは、BRIインターフェースを使って、ISDN回線に接続するための方法について解説します。

 

基本設定


 

物理インターフェース

ISDN網との接続には、BRIインターフェースを使います。BRIインターフェースはデフォルトでISDNモードに設定されているため、特に設定を行うことなく使用できます。

本製品では、接続先の情報をISDNコールとして定義することにより、上位のデータリンク層モジュールからISDNコールを物理回線として使用できるようになります。


 

ISDNコール(接続先情報)の作成

「ISDNコール」は、ISDNにおける接続先登録情報です。この情報は、ISDN網経由で相手先に発信接続するとき、および、ISDN網経由で接続を受け入れるときに使用されます。ISDN経由で発信・着信を行うためには、必ずISDNコールを定義する必要があります。

ISDNコールは、ADD ISDN CALLコマンドで定義します。作成したISDNコールは、指定した相手との間に張られる呼(コール)を示すもので、専用線接続におけるTDMグループやLAN接続におけるETHインターフェースと同様、物理インターフェースとして扱われます。したがって、PPPインターフェースを作成するときに、下位回線としてISDNコール名を指定することができます。

■ ISDNコールを定義するには、ADD ISDN CALLコマンドを使います。CALLパラメーターには任意の名前を、NUMBERパラメーターには相手の電話番号を、PRECEDENCEパラメーターには両側から同時に通信が開始された場合に発呼(OUT)、着呼(IN)のどちらを優先するかを指定します。以上3つのパラメーターは必須で省略できません。


「SEARCHCLI=ON」は着信時の動作設定で、NUMBERで指定した相手から着信したときのみ応答することを示します。ISPにダイヤルアップするときのように、着信の必要がない場合はこの設定は必要ありません。次のように指定できます


着信条件を指定するパラメーターはほかにもあります。詳しくは「着信設定(着信呼の識別と認証)」をご覧ください。


 

データリンク層とのインターフェース

ISDNコールは、上位モジュール(データリンク層)からは指定した接続相手との間に張られた物理回線(インターフェース)として扱われます。

ISDN回線(ISDNコール)上で使用できるデータリンク層プロトコルはPPP(Point-to-Point Protocol)の1種類のみです。

■ ISDNコール「office」上にPPPインターフェース「0」を作成するには次のようにします。CREATE PPPコマンドのOVERパラメーターに「ISDN-callname」の形式でコール名を指定してください。「ISDN-」はISDNコールであることを示す固定文字列、「callname」はコール名です。



 

詳細設定


 

同時発呼時の調停

通信相手と同時に発呼しようとした場合は、ISDNコールのPRECEDENCEパラメーターの設定によって、着信・発信のどちらを優先するかが決まります。ISDNコールを定義するときは、次に示すように、必ず一方をINにもう一方をOUTに設定してください。

ルーターA


ルーターB



 

自動リトライ

発信接続に失敗した場合、あらかじめ指定した回数再接続を試みるよう設定することもできます。これはISDNコールのRN1(グループ内でのリトライ回数)、RN2(初回をのぞく追加のリトライグループ数)、RT1(グループ内でのリトライ間隔)、RT2(リトライグループ間の間隔)パラメーターで設定します。デフォルトはリトライなしです。

リトライは、次の順序で行われます。
  1. 初回の接続を試みる。

  2. 接続できなかった場合、RT1(秒)間隔でRN1回までリトライする。

  3. RN1回リトライしても接続できなかった場合は、RT2(秒)待機した後、再び手順1〜2をRN2回まで繰り返す。

  4. それでも接続できない場合、ALTNUMBERパラメーターが指定されていれば、1回だけALTNUMBERに発呼し、それでも失敗した場合はリトライをあきらめる。ただし、KEEPUPパラメーターにYESが設定されている場合は、接続できるまで手順1〜4を繰り返し実行する。


 

ISDNコールバック

コールバックとは、かかってきた電話をかけなおす機能です。コールバック機能をうまく使用すれば、地域によって料金体系が異なるところで常に安い側がコールバックを行ったり、料金の請求先をまとめたり、より強力なセキュリティー体制を築いたりすることができます。

本製品は、「ISDNコールバック」と「PPPコールバック」の2通りのコールバック方式をサポートしています。


ここでは、ISDNコールバックの使用方法について解説します。PPPコールバックについては、「PPP」の章をご覧ください。

■ コールバック(かけなおす)する側は、ISDNコールの定義でCALLBACK=ONを指定します。


■ コールバック時に最初の呼を切断してからコールバックするまでの待機時間は、CBDELAYパラメーターで調整できます。時間は0.1秒単位で指定します。デフォルトは41(4.1秒)です。


■ ISDNコールバックを無効にするには、CALLBACKパラメーターにOFFを指定します。


■ ISDNコールバックを要求する側には、特別な設定は必要ありません。


 

ISDN S/Tバスに複数の機器を接続している場合

ISDN S/Tバス上に複数の機器を接続している場合は、個々のISDN機器にサブアドレスを設定し、着信呼がどの機器に宛てられたものかを識別できるようにする必要があります。本製品のサブアドレスは、SET Q931コマンドのSUB1パラメーターで設定します。

■ たとえば次の図では、ルーターAにサブアドレス「001」を、FAXに「002」を割り振っています。この場合、ルーターAの設定は次のようにして行います。



これにより、本製品は着サブアドレスが「001」の呼に対してのみ何らかの処理(識別、認証など)を開始するようになります。「NOSUB=REJECT」ではなく「NOSUB=ACCEPT」(デフォルト)を指定すると、サブアドレスのない着信呼に対しては無条件で処理を開始します。

S/Tバス上のISDN機器が本製品だけの場合は、SET Q931コマンドを実行する必要はありません。


 

着信設定(着信呼の識別と認証)

ISDNでは、発呼時に「呼設定メッセージ」が接続先へ送られます。呼設定メッセージにはさまざまな情報を入れるフィールド(Q.931では情報要素またはIE = Information Elementと呼びます)があり、本製品はそのうち以下のフィールドを使って情報を送ることができます。接続先では、これらの情報をもとに着信呼を識別し、呼に応答するかどうかを決定できます。


どの着信呼を受け付け、どの着信呼を拒否するかといった条件は、基本的にADD ISDN CALLコマンド/SET ISDN CALLコマンドの各種パラメーターを使って設定します。

 

着呼までの流れ

本製品が着信呼に応答するまでの流れを示します。

  1. 着サブアドレスとルーター自身のサブアドレスの比較

    ISDN S/Tバスに複数の機器が接続されている場合など、SET Q931コマンドでルーター自身にサブアドレスが設定されている場合は、着信呼の着サブアドレスがSET Q931コマンドのSUB1パラメーターで設定されたサブアドレスと一致する場合にのみ手順2に進み、それ以外の場合は他の機器に宛てた呼とみなして応答しません。SET Q931コマンドでサブアドレスが設定されていない場合は無条件で手順2に進みます。

  2. SEARCH...パラメーターによる着信用ISDNコールの選択(SEARCHフェーズ)

    着サブアドレスまたはユーザー間情報が送られてくるか、発信者番号が通知されてきた場合は、送られてきた情報とADD ISDN CALLコマンド/SET ISDN CALLコマンドのSEARCHSUB、SEARCHUSER、SEARCHCLIパラメーターで指定された情報を比較し、一致するISDNコール定義が見つかればそれを選択して手順3に進みます。

    条件にマッチするISDNコールが見つからなかった場合は、ADD ISDN CALLコマンド/SET ISDN CALLコマンドで「INANY=ON」が指定されているコール名を探し、見つかった場合はそれを選択します。見つからなかった場合は、着信呼を拒否して切断します。

  3. CHECK...パラメーターによる呼認証(CHECKフェーズ)

    手順2で選択したISDNコール定義にCHECKSUB、CHECKUSER、CHECKCLIのいずれかのパラメーターが指定されていた場合は、さらに呼の認証(チェック)を行います。すべての認証にパスして初めて着信呼に応答します。CHECK...パラメーターが指定されていなかった場合は無条件で応答します。いずれかの認証に失敗した場合は、着信呼を拒否して切断します。


 

呼の識別・認証に使う情報の設定


 

発呼時に送信する情報(OUT...パラメーター)

発呼時に接続先へ送信する情報は、ADD ISDN CALLコマンド/SET ISDN CALLコマンドのOUTSUB、OUTUSER、OUTCLI、SUBADDRESSパラメーターで指定します。これらの情報は、接続先で着信判断を行うときに使用されます。

■ サブアドレスを送るにはOUTSUBパラメーターを使います。「OUTSUB=LOCAL」を指定すると、自コール名(CALLパラメーター)が相手に送られます。発呼時に着サブアドレスとして自コール名「TOOS」を送るには、次のようにします。


また、「OUTSUB=REMOTE」を指定すると、REMOTECALLパラメーターで指定した文字列が相手先に送られます。サブアドレスとしてコール名以外の文字列を送る場合はこちらを使用してください。着サブアドレスとして「001」を送るには、次のようにします。


■ また、数字のみのサブアドレスを送信したいときは、SUBADDRESSパラメーターを使うこともできます。SUBADDRESSパラメーターを指定した場合、OUTSUBパラメーターは無効となります。



 

着信呼の識別に使う情報(SEARCH...パラメーター)

本製品は、外部から着信があった場合、ADD ISDN CALLコマンド/SET ISDN CALLコマンドで指定したSEARCHSUB、SEARCHUSER、SEARCHCLI、INANYの各パラメーターの値をもとに、どのISDNコールを使って応答すればよいかを判断します。

ADD ISDN CALLコマンド/SET ISDN CALLコマンドで「SEARCHSUB=LOCAL」を指定すると、コール名と同じサブアドレスの着信呼にのみ応答します。「SEARCHSUB=REMOTE」を指定した場合は、リモートコール名と同じサブアドレスの着信呼にのみ応答します。

次の例では、着信呼のサブアドレスが「TOOS」と一致する場合にのみ応答します。


■ 「SEARCHUSER=LOCAL」を指定すると、ユーザー間情報が自分のコール名と一致する呼にのみ応答します。「SEARCHUSER=REMOTE」を指定すると、ユーザー間情報が自分のリモートコール名と一致する着信呼にのみ応答します。

次の例では、ユーザー間情報として「TOOS」が送られてきた場合(発呼側のコール名が「TOOS」で「OUTUSER=LOCAL」が指定されていたような場合)にのみ応答します。


■ 「SEARCHCLI=ON」を指定すると、発信者番号が接続先番号(NUMBERパラメーターで指定)と一致する場合にのみ応答させることもできます。

次の例では、発信者番号が「06-1234-2222」の着信呼にのみ応答します。


■ また、発番号リストを使うと、あらかじめリストに登録しておいた番号からの着信呼にのみ応答させることができます。リストは100個まで作成できます。

発番号リストの作成はADD ISDN CLILISTコマンドで行います。CLILISTパラメーターには任意のリスト番号(0〜99)、NUMBERには登録する番号を指定します。


この例では、03-1234-1111と03-2345-2222の2つの番号を発番号リスト「0」番に登録しています。

リスト「0」番に登録されている番号からの着信呼にのみ応答するようISDNコール「TOOS」を設定するには、次のようにします。発番号リストを使うときは、SEARCHCLIパラメーターに発番号リストの番号を指定します。


■ ダイヤルアップサーバーのように不特定多数からの着信を受け付ける場合は「INANY=ON」を指定します。


Note - 複数のISDNコールに「INANY=ON」を指定することはできません(デフォルトは「INANY=OFF」)。また、SEARCH...パラメーターによる着信識別を行う場合は「INANY=ON」を指定しないでください。

■ ここまでの条件に一致しなかった着信呼は拒否(切断)されます。ISDNの着信を許可する場合は、少なくともSEARCHSUB、SEARCHUSER、SEARCHCLI=ON、INANY=ONのいずれか1つを指定してください。これらを指定しなかった場合、そのISDNコールは発呼専用になります。一方、発信専用でかまわない場合は、これらのパラメーターを指定しないでください。たとえば、ISP接続用のISDNコールは次のようになります。



 

着信呼の認証に使う情報(CHECK...パラメーター:オプション)

CHECKSUB、CHECKUSER、CHECKCLIの各パラメーターを指定することにより、SEARCHフェーズで条件に一致したISDNコールに対して、さらに追加のチェック(認証)を行うこともできます。CHECK...パラメーターが指定されていない場合は、この時点で着信呼に応答します。

■ CHECKSUB、CHECKUSERパラメーターの働きは、基本的にSEARCHSUB、SEARCHUSERパラメーターと同じです。LOCALが指定されていればコール名(CALL)と、REMOTEが指定されていればリモートコール名(REMOTECALL)と、送られてきた情報(サブアドレスやユーザー間情報)を突き合わせます。

■ CHECKCLIパラメーターを使用すると、あらかじめ発番号リストに登録しておいた番号からの着信呼にのみ応答させることができます。リストは100個まで作成できます。

発番号リストの作成はADD ISDN CLILISTコマンドで行います。CLILISTパラメーターには任意のリスト番号(0〜99)、NUMBERには登録する番号を指定します。


この例では、03-1234-1111と03-2345-2222の2つの番号を発番号リスト「0」番に登録しています。

リスト「0」番に登録されている番号からの着信呼にのみ応答するようISDNコール「TOOS」を設定するには、次のようにします。
















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