[index] CentreCOM AR450S コマンドリファレンス 2.9

VRRP/概要・基本設定


  - プロトコル概要
  - 基本設定
  - トリガー


VRRP(Virtual Router Redundancy Protocol)は、複数のルーターをグループ化し、あたかも1台のルーターであるかのように見せかけることで、IPネットワークに冗長性を与えるプロトコルです。

 

プロトコル概要

VRRPの基本的な考え方は次のとおりです。


 

基本設定

次に、実際に2台のルーターを用いてIPネットワークに冗長性を持たせるための設定方法を示します。ここでは、次のようなネットワーク構成を例に解説します。


この例では通常ルーターAが使用されますが、ルーターAが故障すると、同ルーターが定期的に送信しているVRRP AdvertisementパケットをルーターBが受信できなくなります。この場合、ルーターBはルーターAがダウンしたものと見なしてバックアップルーターからマスタールーターに移行し、両方のセグメントに対するデフォルトゲートウェイアドレスを引き継ぎます。ルーターAが復旧すると、ルーターBは元のバックアップルーターに戻ります。

ルーターAの設定

  1. IPモジュールを有効にし、各インターフェースにIPアドレスを割り当てます。


  2. VRRPを有効にします。


  3. eth0にVRID=1を割り当てます。バーチャルIPアドレスは192.168.1.1とします。こちらをデフォルトのマスタールーターにするため、優先度をデフォルトの 100 よりも高い 101 に設定します。


  4. vlan1にVRID=2を割り当てます。バーチャルIPアドレスは192.168.2.1とします。こちらをデフォルトのマスタールーターにするため、優先度をデフォルトの 100 よりも高い 101 に設定します。


  5. vlan1がダウンした場合に eth0側(VRID=1)の優先度を 99 に下げ、ルーターBがマスタールーターになるよう設定します。


  6. eth0がダウンした場合に vlan1側(VRID=2)の優先度を 99 に下げ、ルーターBがマスタールーターになるよう設定します。


ルーターBの設定

  1. IPモジュールを有効にし、各インターフェースにIPアドレスを割り当てます。


  2. VRRPを有効にします。


  3. eth0にVRID=1を割り当てます。バーチャルIPアドレスは192.168.1.1とします。優先度はデフォルト値の 100 とします。


  4. vlan1にVRID=2を割り当てます。バーチャルIPアドレスは192.168.2.1とします。優先度はデフォルト値の 100 とします。


基本設定は以上です。

LAN上の各ホストには、デフォルトゲートウェイとして、バーチャルルーターのIPアドレスを設定します。通常時には、ルーターAがマスタールーターとして機能し、LAN間のトラフィックを転送します。ルーターAのインターフェースのどちらか(eth0、vlan1)がダウンした場合は、ルーターBがマスタールーターとなりバーチャルルーターとしての役割を引き継ぎます。このとき、バーチャルルーターのIPアドレスとMACアドレスは変化しないため、LAN上のホストがルーターの切り替えを意識することはありません。

 

トリガー

VRRPモジュールは、2つのトリガーイベントを発生させます。これらのイベントは、モジュールトリガーを利用して捕捉できます。

CREATE TRIGGER MODULEコマンド、SET TRIGGER MODULEコマンドに、VRRPモジュール固有のパラメーターを加えたコマンド構文は次のようになります。



VRIDパラメーターには対象となるバーチャルルーターのID(VRID)を、EVENTパラメーターにはDOWNMASTER(バックアップに降格)かUPMASTER(マスターに昇格)のいずれかを指定します。VRIDの有効範囲は1〜255です。

このトリガーは、VRIDパラメーターで指定したバーチャルルーターがバックアップからマスターに昇格するか(EVENT=UPMASTERのとき)、マスターからバックアップに降格するか(EVENT=DOWNMASTERのとき)したときに起動されます。

DOWNMASTERイベントは、優先度255を持つルーター(preferred router)上でバーチャルルーターが無効にされたか削除された場合に発生します。また、255以外の優先度を持つマスタールーターが他のルーターに取って代わられた場合(バックアップルーターに移行した場合)にも本イベントが発生します。

UPMASTERイベントは、優先度255を持つルーター(preferred router)上でバーチャルルーターが有効にされたか、優先度255を持つバーチャルルーターが作成された場合に発生します。また、255以外の優先度を持つルーターがマスタールーターに昇格した場合にも本イベントが発生します。

トリガーから実行されるスクリプトには、特殊な引数として%D(日付)、%T(時刻)、%N(システム名)、%S(シリアル番号)が渡されます。また、引数%1としてバーチャルルーターID(VRID)も渡されます。

次にトリガーの例を示します。

■ 本筐体がバーチャルルーター「10」のマスタールーターになったら、スクリプト「bemaster.scp」を実行するモジュールトリガー「1」を作成します。








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