[index] CentreCOM AR300/AR700 シリーズ コマンドリファレンス 2.3

IPマルチキャスト/概要・基本設定

対象機種:AR300 V2、AR300L V2、AR320、AR720、AR740


  - マルチキャスト経路制御プロトコル
   - DVMRP
  - スタティックなマルチキャスト設定


本製品のIPマルチキャスト機能について概説します。

IPマルチキャストとは、特定のホストグループに対してIPパケットを送信することを意味します。グループのメンバーは固定的でなく、ホストが個別に参加・脱退することができます。各グループはクラスD(224.0.0.0〜239.255.255.255)のIPアドレスによって一意に識別されます。

224.0.0.0〜224.0.0.255(224.0.0.0/24)の範囲のアドレスはルーティングプロトコルなどのために予約されており、RIPv2やOSPFなどもこの範囲のアドレスを使用しています。この範囲はルーターを超えて転送されてはならないローカル用アドレスです。たとえば、224.0.0.1はサブネット上のすべてのIPノードとIPルーターを、224.0.0.2はサブネット上のすべてのIPルーターを示します。予約済みのグループアドレスはこの他にもあります。

IPマルチキャストでは、送信者が宛先のグループに所属する必要はありません。送信者にとっては、単に宛先アドレスがクラスDであるというだけのことです。

あるホストがLAN上で送信したマルチキャストパケットは、同一LAN上であれば該当グループに参加しているすべてのホストに届きます。Ethernet上では決まった範囲のマルチキャストMACアドレスを用いてIPパケットを送信します。

一方、マルチキャストパケットが別サブネットのメンバーに届くためには、マルチキャスト対応ルーターの働きが必要です。LAN上でマルチキャストパケットを受信したルーターは、その設定によって他のインターフェースにパケットを転送します。

 

マルチキャスト経路制御プロトコル

ホストグループのメンバー構成は常に変化するため、マルチキャストパケットの転送判断はおのずとダイナミック(動的)なものになります。

通常、ルーターはマルチキャスト経路制御プロトコルを通じて得た情報に基づいて、マルチキャストパケットを転送するかどうか判断します。本製品は、マルチキャスト経路制御プロトコルDVMRP(Distance Vector Multicast Routing Protocol)に対応しています。

また、マルチキャストグループのメンバーを管理するためのプロトコルIGMP(Internet Group Management Protocol)にも対応しています。

 

DVMRP

DVMRP(Distance Vector Multicast Routing Protocol)は、RPM(Reverse Path Multicasting)の技術を用いて、送信者(始点)をルートとするマルチキャスト配送木を動的に構築、最適化するマルチキャスト経路制御プロトコルです。RIPをもとにした経路情報交換メカニズムによって、マルチキャスト用の経路表を独自に管理します。

ここでは、次のような構成のネットワークを例にDVMRPの基本設定を示します。


ルーターAの設定
  1. 専用線の設定をします。


  2. PPPインターフェースを作成します。


  3. IPモジュールを有効にします。


  4. 各インターフェースにIPアドレスを割り当てます。


  5. 経路情報を設定します。


  6. マルチキャストグループメンバーを管理するため、IGMPを有効にします。


  7. 各IPインターフェースでIGMPを有効にします。


  8. DVMRPを有効にします。


  9. 各IPインターフェースでDVMRPを有効にします。


ルーターBの設定
  1. 専用線の設定をします。


  2. PPPインターフェースを作成します。


  3. IPモジュールを有効にします。


  4. 各インターフェースにIPアドレスを割り当てます。


  5. 経路情報を設定します。


  6. マルチキャストグループメンバーを管理するため、IGMPを有効にします。


  7. 各IPインターフェースでIGMPを有効にします。


  8. DVMRPを有効にします。


  9. 各IPインターフェースでDVMRPを有効にします。


以上で設定は完了です。

■ DVMRPの設定を確認するにはSHOW DVMRPコマンドを使います。

■ IGMPの設定を確認するにはSHOW IP IGMPコマンドを使います。

■ マルチキャスト経路表を確認するには、SHOW IP ROUTE MULTICASTコマンドを使います。

 

スタティックなマルチキャスト設定

マルチキャスト経路制御プロトコルを使わない場合であっても、IPインターフェースごとにマルチキャストパケットの送受信を静的に設定できます。

デフォルトでは、マルチキャストパケットの受信のみを行い、送信(転送)は行いません。この動作を変更するには、ADD IP INTERFACEコマンド/SET IP INTERFACEコマンドのMULTICASTパラメーターを使います。

■ たとえば、IPインターフェースの作成時にマルチキャストパケットの送受信を行うよう設定するには、ADD IP INTERFACEコマンドを使います。


これにより、他のIPインターフェースで受信したマルチキャストパケットがeth0から送信(転送)されるようになります。

Note - MULTICASTパラメーターの設定は、マルチキャスト経路制御プロトコルを使用しているときは意味を持ちません。

■ 作成済みIPインターフェースの設定を変更するにはSET IP INTERFACEコマンドを使います。


■ マルチホーミングを使って物理インターフェース上に複数の論理IPインターフェースを作成している場合、MULTICASTパラメーターの設定はすべての論理インターフェースに適用されます。別のインターフェースで受信したマルチキャストパケットをマルチホーミングされたインターフェースから出力するときは、パケットを1個だけ送信します。

ただし、これはルーター自身が生成するマルチキャストパケットには必ずしも当てはまりません。たとえば、ルーターが生成するOSPF Helloパケットは、論理インターフェースごとに送信されます。







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