[index] CentreCOM 9600シリーズ コマンドリファレンス 2.7

IPマルチキャスト/PIM

備考:フィーチャーライセンス AT-FL-03 が必要


  - PIM-DM
  - PIM-SM
   - 基本設定
   - RPを静的に設定する方法


 

PIM-DM

PIM-DM(Protocol Independent Multicast - Dense Mode)は、Reverse Path Multicasting(RPM)を利用したマルチキャスト用経路制御プロトコルです。PIM-DMはシンプルさに重きを置いたプロトコルであり、広い帯域が利用可能でグループのメンバーが密集しているような環境に適しています。PIM-DMでは、明示的に配送停止の要求を受けるまでは、隣接するすべてのルーターにマルチキャストトラフィックを転送します。配送経路は送信者(始点)をルートとするツリー(始点木)状となります。

PIM-DMはDVMRPとよく似ていますが、マルチキャスト用の経路表を持たずにユニキャストの経路表を流用する点と、受信インターフェース以外のすべてのインターフェースにパケットを転送する点が異なります(DVMRPは「下流」と判断されるインターフェースにだけ出力します)。

また、後述するPIM-SMとは、名前と一部の制御メッセージが似ているだけで、まったく別のプロトコルです。PIM-DMは、PIM-SMとは異なり、ランデブーポイント(RP)やブートストラップルーター(BSR)といった特殊な役割を持ったルーターを使用しません。

ここでは、次のような構成のネットワークを例に、スイッチAとスイッチB(スイッチCとDはBとほぼ同様の設定になります)の設定について解説します。PIM-DMでは、PIM-SMとは異なりBSRやRPといった特殊なルーターは使いません。基本的にすべてのルーター(スイッチ)で同じ設定となります。

表 1
VLAN名
VID
ネットワークアドレス
所属スイッチポート
VLAN AB 2 192.168.2.0/24 スイッチA(1-2)、スイッチB(1)
VLAN AC 3 192.168.3.0/24 スイッチA(3-4)、スイッチC(1)
VLAN AD 4 192.168.4.0/24 スイッチA(5-6)、スイッチD(1)
VLAN BB 20 192.168.20.0/24 スイッチB(2-6)
VLAN CC 30 192.168.30.0/24 スイッチC(2-6)
VLAN DD 40 192.168.40.0/24 スイッチD(2-6)



スイッチAの設定

  1. VLANの設定を行います。


  2. IPモジュールを有効にします。


  3. VLANインターフェースにIPアドレスを割り当てます。


  4. 各VLANインターフェースでRIPを有効にします。


  5. グループメンバー管理のためIGMPを有効にします。


  6. 各VLANインターフェースでIGMPを有効にします。


  7. PIMを有効にします。


  8. 各VLANインターフェースでPIM-DMを有効にします。


スイッチBの設定(CとDもほぼ同様です)

  1. VLANの設定を行います。


  2. IPモジュールを有効にします。


  3. VLANインターフェースにIPアドレスを割り当てます。


  4. 各VLANインターフェースでRIPを有効にします。


  5. グループメンバー管理のためIGMPを有効にします。


  6. 各VLANインターフェースでIGMPを有効にします。


  7. PIMを有効にします。


  8. 各VLANインターフェースでPIM-DMを有効にします。


以上で設定は完了です。

■ PIMの設定を確認するにはSHOW PIMコマンドを使います。

■ IGMPの設定を確認するにはSHOW IP IGMPコマンドを使います。

 

PIM-SM

PIM-SM(Protocol Independent Multicast - Sparse Mode)は、DVMRPやPIM-DMとは異なり、明示的に要求を出したネットワークにだけトラフィックを届けるSparseモードのマルチキャスト経路制御プロトコルです。このプロトコルは、グループのメンバーがネットワーク上に広くまばらに分散しているような環境で最適な動作をするよう設計されています。グループへの参加を表明していないルーターにトラフィックが配送されることは原則としてありません。これを実現するため、グループのトラフィックをとりまとめるRP(Rendezvous Point)というセンタールーターを用意し、RPを起点とする共有木を作成してトラフィックを配送します。

 

基本設定

PIM-SMでは、次のような役割のルーターが必要です。

■ DR(Designated Router:代表ルーター:各サブネットに1台)
各サブネットにおいて、実際にマルチキャストパケットの転送を担当するルーターをDR(代表ルーター)といいます。PIM-SMでは、マルチキャストクライアントが存在するIPサブネットごとにDR(代表ルーター)が必要です。サブネット内に複数のPIMルーターが存在する場合、インターフェースに設定されたDRPRIORITYの値がもっとも大きなルーターがDRとなります。DRPRIORITYが同じときは、IPアドレスの大きなルーターがDRになります。同一サブネット上のPIMルーターは定期的にHelloパケットを送信して互いの状態を監視しており、DRがダウンした場合は次点のルーターがDRになります。

■ RP(Rendezvous Point:ランデブーポイント:各マルチキャストグループに1台)
PIM-SMネットワークの中核をなす重要なルーター。マルチキャストグループごとに用意します。マルチキャストパケットの送信者と受信者(のDR)は、送受信を始めるにあたってRPにメッセージを送り、このような送信者・受信者が存在するということを伝えます。最初、送信者はマルチキャストパケットをRPにユニキャストします。すると、RPは通知のあった受信者に対してのみ、パケットをマルチキャストで転送します。RPの候補(C-RP)が複数存在する場合、PRIORITY値のもっとも小さいルーターがRPに選出されます。

■ BSR(Bootstrap Router:ブートストラップルーター:PIM-SMネットワークに1台)
PIM-SMネットワークにおいて、RP候補とマルチキャストグループの一覧、および、各グループのRP一覧を管理・広告するルーター。複数のBSR候補(C-BSR)が存在するときは、PREFERENCE値のもっとも大きいルーターがBSRに選出されます。

ここでは、次のような構成のネットワークを例に、スイッチA(RP兼BSR)とスイッチB(スイッチCとDはBとほぼ同様の設定になります)の設定について解説します。

この例では、スイッチAにBSR(Bootstrap Router)とRP(Rendezvous Point)を兼務させます。

RPはマルチキャストグループごとに用意する必要があります。この例では、RP(スイッチA)に239.255.0.0〜239.255.0.255の範囲のマルチキャストトラフィックを担当させます。

表 2
VLAN名
VID
ネットワークアドレス
所属スイッチポート
VLAN AB 2 192.168.2.0/24 スイッチA(1-2)、スイッチB(1)
VLAN AC 3 192.168.3.0/24 スイッチA(3-4)、スイッチC(1)
VLAN AD 4 192.168.4.0/24 スイッチA(5-6)、スイッチD(1)
VLAN BB 20 192.168.20.0/24 スイッチB(2-6)
VLAN CC 30 192.168.30.0/24 スイッチC(2-6)
VLAN DD 40 192.168.40.0/24 スイッチD(2-6)



スイッチA(RP兼BSR)の設定

  1. VLANの設定を行います。


  2. IPモジュールを有効にします。


  3. VLANインターフェースにIPアドレスを割り当てます。


  4. 各VLANインターフェースでRIPを有効にします。


  5. グループメンバー管理のためIGMPを有効にします。


  6. 各VLANインターフェースでIGMPを有効にします。


  7. PIMを有効にします。


  8. PIM-SMインターフェースを作成します。


  9. BSR(ブートストラップルーター)として動作するよう設定します。PIM-SMネットワークには、最低1つのBSR候補が必要です。


  10. マルチキャストグループアドレス239.255.0.0〜239.255.0.255のRP(ランデブーポイント)として動作するよう設定します。PIM-SMネットワークでは、マルチキャストグループごとに最低1つのRP候補が必要です。


スイッチBの設定(CとDもほぼ同様です)

  1. VLANの設定を行います。


  2. IPモジュールを有効にします。


  3. VLANインターフェースにIPアドレスを割り当てます。


  4. 各VLANインターフェースでRIPを有効にします。


  5. グループメンバー管理のためIGMPを有効にします。


  6. 各VLANインターフェースでIGMPを有効にします。


  7. PIMを有効にします。


  8. PIM-SMインターフェースを作成します。


以上で設定は完了です。

■ PIMの設定を確認するにはSHOW PIMコマンドを使います。

■ IGMPの設定を確認するにはSHOW IP IGMPコマンドを使います。

 

RPを静的に設定する方法

本製品では、BSRを使わずに、RPを静的設定する方法もサポートしています。

ここでは、前の例と同じ構成のネットワークを例に、スイッチA(RP)とスイッチB(スイッチCとDはBとほぼ同様の設定になります)の設定について解説します。

この例では、すべてのスイッチに対し、スイッチAがRP(Rendezvous Point)であると、静的に設定します。BSR(Bootstrap Router)は使用しません。

RPはマルチキャストグループごとに用意する必要があります。この例では、RP(スイッチA)に239.255.0.0〜239.255.0.255の範囲のマルチキャストトラフィックを担当させます。

スイッチA(RP)の設定

  1. VLANの設定を行います。


  2. IPモジュールを有効にします。


  3. VLANインターフェースにIPアドレスを割り当てます。


  4. 各VLANインターフェースでRIPを有効にします。


  5. グループメンバー管理のためIGMPを有効にします。


  6. 各VLANインターフェースでIGMPを有効にします。


  7. PIMを有効にします。


  8. PIM-SMインターフェースを作成します。


  9. マルチキャストグループアドレス239.255.0.0〜239.255.0.255のRP(ランデブーポイント)として、スイッチAを指定します。RPCANDIDATEには、スイッチAのPIMインターフェースのうち、どれか1つのIPアドレスを指定します。


スイッチBの設定(CとDもほぼ同様です)

  1. VLANの設定を行います。


  2. IPモジュールを有効にします。


  3. VLANインターフェースにIPアドレスを割り当てます。


  4. 各VLANインターフェースでRIPを有効にします。


  5. グループメンバー管理のためIGMPを有効にします。


  6. 各VLANインターフェースでIGMPを有効にします。


  7. PIMを有効にします。


  8. PIM-SMインターフェースを作成します。


  9. マルチキャストグループアドレス239.255.0.0〜239.255.0.255のRP(ランデブーポイント)として、スイッチA(192.168.2.254)を指定します。


以上で設定は完了です。

■ PIMの設定を確認するにはSHOW PIMコマンドを使います。

■ IGMPの設定を確認するにはSHOW IP IGMPコマンドを使います。







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