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バーチャルシャーシスタック(VCS) / 概要


特長
構成要素
VCSグループ
VCSグループのIPアドレス
VCSグループのMACアドレス
スタックメンバー
マスター
スレーブ
スタックメンバーID
プライオリティー
スタックリンク
基本動作
通常時
起動
マスター選出
仮想シャーシとしての動作
障害発生時
障害検出メカニズム
障害発生箇所と影響
マスター切り替え


バーチャルシャーシスタック(VCS)の概要について説明します。

特長

バーチャルシャーシスタック(以下、VCS)は、2台のシャーシをスタック接続することにより、仮想的に1台のシャーシとして動作させる機能です。

Note - 本製品のVCS機能を「VCS plus」と呼ぶ場合がありますが、これはシャーシ単体でもコントロールファブリックカード(CFC)や電源の2重化が可能な本製品において、さらにシャーシをスタックすることで2×2の4重化を実現できるという意味合いを込めたネーミングであり、基本的には他機種の「VCS」と同じものです。本マニュアルでは原則として「VCS plus」という呼称を用いず、「VCS」と表記します。

Note - VCSはコントロールファブリックカードAT-SBx81CFC960搭載時のみ使用可能です。また、VCSを使用するにはシャーシ台数分のフィーチャーライセンスが必要です。

Note - AT-StackOP/9.0では長距離のスタック接続が可能なため、AT-StackOP/0.3を利用した短距離接続のVCSと対比する意味で「ロングディスタンスVCS(LD-VCS)」と呼ぶ場合がありますが、どのモジュールを使ってもVCSの基本的動作に違いはなく、設定や運用の方法もほぼ同じです。本マニュアルではLD-VCSという呼称を用いず、「AT-StackOP/9.0を使用する場合は〜」のように、モジュールによって対応が異なる部分のみ注記しています。

VCSを利用すると、次のことを実現できます。


構成要素

VCSの主要な構成要素および設定要素について解説します。

VCSグループ

VCS機能によって作られる仮想的なシャーシをVCSグループと呼びます。VCSグループは2台のシャーシ(スタックメンバー)で構成されます。

VCSグループのIPアドレス

VCS構成時、IPアドレスの設定は個々のスタックメンバーではなく、VCSグループに対して行います。そのため、マスター(後述)が切り替わっても、IPアドレスはそのまま引き継がれます。

VCSグループのMACアドレス

VCSグループのMACアドレスとしては、VCSグループ専用のバーチャルMACアドレスを使います。マスターが切り替わってもVCSグループのMACアドレスは変更されないため、MACアドレス変更にともなう通信への影響はありません。
Note - バーチャルMACアドレス機能はコマンドで無効化できますが、VCS使用時はバーチャルMACアドレス機能を必ず有効化してください。無効状態での運用はサポート対象外となります。

スタックメンバー

VCSグループを構成する個々のシャーシをスタックメンバー(メンバー)と呼びます。スタックメンバーは、役割によってマスターとスレーブの2つに分類されます。

マスター

マスターはVCSグループの動作を制御するメンバーです。各VCSグループには必ず1台マスターが存在します。マスターは、VCSグループのコンフィグファイル、MACアドレステーブル(FDB)、ARPテーブル、IPルーティングテーブルを維持・管理し、その他のメンバー(スレーブ)に配布します。
マスターは、VCSグループの起動時にメンバー間のメッセージ交換により自動的に選出されます。選出基準は次のとおりです。どちらのパラメーターも値が小さいほど優先度が高くなります。
  1. プライオリティー
  2. MACアドレス

スレーブ

マスター以外のメンバーはスレーブになります。スレーブはVCSグループの制御は行いませんが、各種テーブルをマスターと同期し、VCSグループの一員としてレイヤー2/レイヤー3のフレームおよびパケット転送動作を行います。
またスレーブは、マスターの状態をつねに確認しており、マスターに障害が発生したときは次点のスレーブがマスターに昇格してVCSグループの制御権を引き継ぎます。

スタックメンバーID

VCSグループ内の各メンバーを識別するため、各メンバーには1〜2のスタックメンバーIDを割り当てます。

一度設定したスタックメンバーIDはシステムファイルに保存され、それ以降は自動的に変更されることはありません。
スタックメンバーIDはマスターの選出とは無関係ですが、VCSグループの設定を行うときには大きな意味を持ちます。これは、スイッチポートを「スタックメンバーID」.「スロット番号」.「ポート番号」の形式で指定するためです。たとえば、スタックメンバーID「2」のスロット1のスイッチポート12は、「port2.1.12」のように表します。

プライオリティー

VCSグループのマスターを選出するときの第一の基準は、各メンバーのプライオリティーです。VCSグループの各メンバーが起動したとき、どのメンバーがマスターになるかを決定しますが、このときプライオリティー値のもっとも小さいメンバーがマスターに選出されます。同一プライオリティー値のメンバーが複数存在している場合は、第二の基準であるMACアドレスのもっとも小さいメンバーがマスターに選出されます。
各メンバーのプライオリティーはCLIコマンドで変更することができます。有効範囲は0〜255、初期値は128です。明示的にプライオリティーを設定していない場合はすべてのメンバーが同じプライオリティー(128)を持つため、もっとも小さいMACアドレスを持つメンバーがマスターに選出されることとなります。

スタックリンク

スタックメンバー間は、各メンバーに装着されたコントロールファブリックカードAT-SBx81CFC960間を専用のスタックモジュールAT-StackOP/0.3、または、AT-StackOP/9.0と対応ケーブル(光ファイバー)で接続します。この接続をスタックリンクと呼びます。スタックリンクは、メンバー間で通常のネットワークトラフィックを転送するために使用されるほか、リンクステータスを監視することによりマスター・スレーブ間の状態確認にも使用されます。

基本動作

通常時

起動

2台のシャーシをスタック接続して電源を入れると、各シャーシはメッセージを交換しあってスタック内の他のシャーシ(スタックメンバー)を検出し、自律的にスタックトポロジーを構築します。

マスター選出

次にどのメンバーがマスターになるかを決定します。選出方法は次のとおりです。
  1. プライオリティー値のもっとも小さいメンバーが1台だけ存在する場合は、そのメンバーがマスターになります。
  2. プライオリティー値のもっとも小さいメンバーが複数存在する場合は、MACアドレスのもっとも小さいスイッチがマスターになります。

仮想シャーシとしての動作

起動、マスター選出を経て、VCSグループの起動が完了し、仮想シャーシとしての通常動作が始まります。
マスターは、VCSグループ全体としてのコンフィグ、MACアドレステーブル(FDB)、ARPテーブル、IPルーティングテーブルを維持管理し、これをスレーブに配布します。
スレーブは、マスターから配布された情報をもとにこれらテーブルの同期をとり、つねに最新の状態を保つことにより、VCSグループ全体で同じ情報が保持されるようにします。
これらの情報をもとに、マスター、スレーブの両方のメンバーが、仮想シャーシとしてレイヤー2・レイヤー3の転送動作を行います。なお、このとき、仮想シャーシのMACアドレスとしては、VCSグループ専用のバーチャルMACアドレスを使います。
Note - バーチャルMACアドレス機能はコマンドで無効化できますが、VCS使用時はバーチャルMACアドレス機能を必ず有効化してください。無効状態での運用はサポート対象外となります。

障害発生時

障害検出メカニズム

VCSでは、スタックポートのリンク状態を監視することでVCSグループの障害を検出します。

スタックリンク すべてアップ 正常
一部分のみダウン スタックリンクの部分障害
すべてダウン マスター障害


障害発生箇所と影響

実際のネットワークでは、VCSグループだけでなく、VCSグループに接続された回線の障害なども起こりえます。以下では、VCS構成で起こりうる障害とそれらの影響についてまとめます。


障害発生箇所
アクション
通信停止時間(目安)(a)
マスター
スレーブ
1 マスター障害
システム停止
マスター昇格
約0.5秒〜
2 スレーブ障害
変化なし
システム停止
数ミリ秒単位
3 スタックリンク障害 一部のケーブルのみダウン(b)
変化なし
変化なし
数ミリ秒単位
4 回線障害(トランクリンク)
変化なし
変化なし
数ミリ秒単位

Note - (a) 実際の通信停止時間はネットワークの構成や規模、使用しているプロトコルなどによって変動します。ここに示した時間はあくまでも目安です。お客様の使用環境で事前にご確認の上、ご使用ください。
Note - (b) 各シャーシにCFCを2台ずつ装着している場合は1〜7本、CFCを1台ずつ装着している場合は1〜3本。

VCSネットワークにおいて想定されるこれらの障害のうち、VCSグループ自体の障害は1〜3の3種類です。さらに、これらのうちで実際にVCSグループとしてのアクションがとられるのは1(マスター障害)だけです。以下では、マスター障害時にVCSグループがとるアクションを説明します。

マスター切り替え
本製品は、マスター/スレーブ間でコンフィグ情報やL2/L3 テーブル情報を事前に共有することで、VCSマスター障害発生時のマスター切り替えをスムーズに行う動作に対応しています。

マスターに障害が発生し、マスターが完全に停止した場合は、次の流れでマスターの切り替えが行われます。


  1. マスターに障害が発生する
    これによりスレーブはマスターとのスタックリンクがすべてダウンしたことをただちに検出する。

  2. スレーブがマスターに昇格する
    バーチャルMACアドレス機能により、VCSグループのMACアドレスは変化しないため、MACアドレスの変更に起因する通信断はありません。
    Note - バーチャルMACアドレス機能はコマンドで無効化できますが、VCS使用時はバーチャルMACアドレス機能を必ず有効化してください。無効状態での運用はサポート対象外となります。

  3. マスター切り替え完了
    VCSグループはシャーシ1台の構成で動作を続けます。
    障害が発生したメンバーシャーシを交換すればVCSグループは再び2台シャーシ構成となります。

ナビゲーション

■ VCSの導入手順については、第2部 導入編をご覧ください。


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