[index] CentreCOM x610シリーズ コマンドリファレンス 5.4.1

IPルーティング / VRRP


  - プロトコル概要
  - 基本設定
   - ルーターA
   - ルーターB
  - 詳細設定
   - 認証

VRRP(Virtual Router Redundancy Protocol)は、複数のルーターをグループ化し、あたかも1台のルーターであるかのように見せかけることで、デフォルトゲートウェイを冗長化し、IPネットワークに冗長性を与えるプロトコルです。

プロトコル概要

VRRPの基本的な考え方は次のとおりです。


基本設定

次に、実際に2台のルーターを用いてデフォルトゲートウェイを冗長化するための設定方法を示します。ここでは、次のようなネットワーク構成を例に解説します。


この例では通常ルーターAが使用されますが、ルーターAが故障すると、同ルーターが定期的に送信しているVRRP AdvertisementパケットをルーターBが受信できなくなります。この場合、ルーターBはルーターAがダウンしたものと見なしてバックアップルーターからマスタールーターに移行し、両方のセグメントに対するデフォルトゲートウェイアドレスを引き継ぎます。ルーターAが復旧すると、ルーターBは元のバックアップルーターに戻ります。

なお、以下の各例では、VLANの作成とIPアドレスの設定は完了しているものとします。VLANの設定については、「L2スイッチング」の「バーチャルLAN」をご覧ください。IPアドレスの設定については、「IPルーティング」の「IPインターフェース」をご覧ください。

ルーターA

  1. router vrrpコマンドを実行して、vlan100インターフェース上にVRID=100のバーチャルルーター(以下、VR100)を作成し、該当バーチャルルーターの設定を行うためのVRRPモードに移行します。

    RouterA(config)# router vrrp 100 vlan100
    


  2. virtual-ipコマンドでVR100のバーチャルIPアドレスを設定します。バーチャルIPアドレス10.100.100.32はインターフェースの実アドレスではないので、キーワードbackupを指定します。

    RouterA(config-router)# virtual-ip 10.100.100.32 backup
    


  3. priorityコマンドでVR100における優先度を設定します。こちらをデフォルトのマスタールーターにするため、優先度を初期値の100よりも高い101に設定します。

    RouterA(config-router)# priority 101
    


  4. circuit-failoverコマンドを用いて、vlan200(VR200)がダウンした場合にvlan100側(VRID=100)の優先度を引き下げ、ルーターBがマスタールーターになるよう設定します。

    RouterA(config-router)# circuit-failover vlan200 2
    


  5. enableコマンドを実行してVR100の動作を有効化します。これでVR100の設定は完了です。exitコマンドでグローバルコンフィグモードに戻り、次にVR200の設定に移ります。

    RouterA(config-router)# enable
    RouterA(config-router)# exit
    


  6. router vrrpコマンドを実行して、vlan200インターフェース上にVRID=200のバーチャルルーター(以下、VR200)を作成し、該当バーチャルルーターの設定を行うためのVRRPモードに移行します。

    RouterA(config)# router vrrp 200 vlan200
    


  7. virtual-ipコマンドでVR200のバーチャルIPアドレスを設定します。バーチャルIPアドレス10.100.200.32はインターフェースの実アドレスではないので、キーワードbackupを指定します。

    RouterA(config-router)# virtual-ip 10.100.200.32 backup
    


  8. priorityコマンドでVR200における優先度を設定します。こちらをデフォルトのマスタールーターにするため、優先度を初期値の100よりも高い101に設定します。

    RouterA(config-router)# priority 101
    


  9. circuit-failoverコマンドを用いて、vlan100(VR100)がダウンした場合にvlan200側(VR200)の優先度を引き下げ、ルーターBがマスタールーターになるよう設定します。

    RouterA(config-router)# circuit-failover vlan100 2
    


  10. enableコマンドを実行してVR200の動作を有効化します。

    RouterA(config-router)# enable
    


ルーターB

  1. router vrrpコマンドを実行して、vlan100インターフェース上にVRID=100のバーチャルルーター(以下、VR100)を作成し、該当バーチャルルーターの設定を行うためのVRRPモードに移行します。

    RouterB(config)# router vrrp 100 vlan100
    


  2. virtual-ipコマンドでVR100のバーチャルIPアドレスを設定します。バーチャルIPアドレス10.100.100.32はインターフェースの実アドレスではないので、キーワードbackupを指定します。

    RouterB(config-router)# virtual-ip 10.100.100.32 backup
    


  3. priorityコマンドでVR100における優先度を設定します。こちらをデフォルトのスレーブルーターにするため、優先度は初期値100のままとします。

    RouterB(config-router)# priority 100
    


    Note - 優先度100は初期値なので、実際には本コマンドを入力する必要はありません。

  4. enableコマンドを実行してVR100の動作を有効化します。これでVR100の設定は完了です。exitコマンドでグローバルコンフィグモードに戻り、次にVR200の設定に移ります。

    RouterB(config-router)# enable
    RouterB(config-router)# exit
    


  5. router vrrpコマンドを実行して、vlan200インターフェース上にVRID=200のバーチャルルーター(以下、VR200)を作成し、該当バーチャルルーターの設定を行うためのVRRPモードに移行します。

    RouterB(config)# router vrrp 200 vlan200
    


  6. virtual-ipコマンドでVR200のバーチャルIPアドレスを設定します。バーチャルIPアドレス10.100.200.32はインターフェースの実アドレスではないので、キーワードbackupを指定します。

    RouterB(config-router)# virtual-ip 10.100.200.32 backup
    


  7. priorityコマンドでVR200における優先度を設定します。こちらをデフォルトのスレーブルーターにするため、優先度は初期値100のままとします。

    RouterB(config-router)# priority 100
    


    Note - 優先度100は初期値なので、実際には本コマンドを入力する必要はありません。

  8. enableコマンドを実行してVR200の動作を有効化します。

    RouterB(config-router)# enable
    


基本設定は以上です。

LAN上の各ホストには、デフォルトゲートウェイとして、バーチャルルーターのIPアドレス(バーチャルIPアドレス)を設定します。通常時には、ルーターAがマスタールーターとして機能し、VLAN間のトラフィックを転送します。ルーターAのインターフェースのどちらか(vlan100、vlan200)がリンクダウンした場合は、ルーターBがマスタールーターとなりバーチャルルーターとしての役割を引き継ぎます。このとき、バーチャルルーターのIPアドレスとMACアドレスは変化しないため、LAN上のホストがルーターの切り替えを意識することはありません。

Note - VLANインターフェースは、所属ポートがすべてリンクダウンして初めて「リンクダウン」状態になります。一方、VLAN所属ポートが1ポートでもリンクアップすれば、該当VLANインターフェースは「リンクアップ」状態になります。VRRPでは、VLANインターフェースのリンクアップ、リンクダウンを検出してマスタールーターを切り替えるため、VLAN所属ポートの設定に注意してください。上図のように、マスター、スレーブともVLAN所属ポートを1ポートのみとし、レイヤー2スイッチを介してクライアントや他のルーターと接続すると、確実にリンクダウンを検出させることができます。

詳細設定

認証

VRRPでは、バーチャルルーター間で簡易パスワードによるVRRPパケットの認証を行うことができます。認証の設定はVRRPパケットを送受信するインターフェースごとに行います。

  1. インターフェースモードでip vrrp authentication modeコマンドを実行し、対象インターフェースで認証(簡易パスワード認証)を有効にします。初期状態では認証は行わない設定になっています。

    awplus(config)# interface vlan20
    awplus(config-if)# ip vrrp authentication mode text
    


  2. 該当インターフェースで使用するパスワードを8文字以内で指定します。これにはip vrrp authentication stringコマンドを使います。

    awplus(config-if)# ip vrrp authentication string 4auRe!
    


設定は以上です。

該当インターフェースとVRRPパケットを交換するすべてのバーチャルルーターに対し、同じパスワードを設定してください。


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