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CentreCOM x610シリーズ コマンドリファレンス 5.4.2
IPルーティング / VRF-Lite
- 基本設定
- VRFインスタンス内での通信
- VRFインスタンス間通信
- スイッチA
- スイッチB
VRF(Virtual Routing and Forwarding)は1台のルーターやスイッチ上に複数のルーティングテーブル(ルーティングインスタンス)を持つことができるようにする機能です。この各ルーティングインスタンスをVRFインスタンスと呼びます。それぞれのVRFインスタンスは独立しているため、同一機器上であってもVRFインスタンス間で重複するIPアドレスを使用することができます。また、ルーティングプロトコルもVRFインスタンスごとに独立して動作させることができます。これらの機能により、1台の機器を複数台の機器のように動作させることができます。
VRFはMPLSネットワーク上で使用することを想定したプロトコルですが、VRF-LiteはMPLSネットワークに依存しない設計となっており、よりシンプルな実装となっています。
Note - VRF-Liteを使用するにはフィーチャーライセンスが必要です。
基本設定
VRFインスタンス内での通信
VRF-Liteを用いたネットワークを構築するための基本的な手順について説明します。
ここではVRF-Liteを用いて2個のVRFインスタンスを作成します。また、作成したVRFインスタンスに所属していないVLANが所属するVRFインスタンスであるグローバルVRFインスタンスも利用します。どのVRFインスタンスも通信は同じVRFインスタンスに所属する機器間のみ可能となり、他のVRFインスタンスにパケットが送信されることはありません。
Note - VRF-Lite使用時は、L3マルチキャスト通信ができません。
Note - VRFインスタンスではSNMP、Syslog、NTP、Telnet、DHCPサーバー、Telnetサーバー、SSHサーバー、ファイルコピー、DHCPリレー等が動作しません。これらを使用したいときにはグローバルVRFインスタンスで行ってください。

なお、以下の例では、VLANの作成とスイッチポートへの割り当ては完了しているものとします。VLANの設定については、「L2スイッチング」の「バーチャルLAN」をご覧ください。
- VRFインスタンス「VRF-BLUE (VRFインスタンスID 1)」を作成し、VRFモードに移行します。
awplus(config)# ip vrf VRF-BLUE 1 ↓
awplus(config-vrf)# exit ↓
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- VRFインスタンス「VRF-PINK (VRFインスタンスID 2)」を作成し、VRFモードに移行します。
awplus(config)# ip vrf VRF-PINK 2 ↓
awplus(config-vrf)# exit ↓
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- グローバルVRFインスタンスははじめから作成されているため、ここで作成する必要はありません。
- VLAN10にVRFインスタンス「VRF-BLUE (VRFインスタンスID 1)」を関連づけます。
awplus(config)# interface vlan10 ↓
awplus(config-if)# ip vrf forwarding VRF-BLUE ↓
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- VLAN10にIPアドレス「10.0.0.1/8」を設定します。
awplus(config-if)# ip address 10.0.0.1/8 ↓
awplus(config-if)# exit ↓
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- 同様にVLAN11にVRFインスタンス「VRF-BLUE (VRFインスタンスID 1)」を関連づけ、IPアドレス「192.168.1.1/24」を設定します。
awplus(config)# interface vlan11 ↓
awplus(config-if)# ip vrf forwarding VRF-BLUE ↓
awplus(config-if)# ip address 192.168.1.1/24 ↓
awplus(config-if)# exit ↓
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- VLAN20にVRFインスタンス「VRF-PINK (VRFインスタンスID 2)」を関連づけます。
awplus(config)# interface vlan20 ↓
awplus(config-if)# ip vrf forwarding VRF-PINK ↓
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- VLAN20にIPアドレス「10.0.0.1/16」を設定します。VLAN10のIPアドレス「10.0.0.1/8」とサブネットマスク違いで重複するIPアドレスとなりますが、VRFインスタンスが異なるため問題なく設定・使用することができます。
awplus(config-if)# ip address 10.0.0.1/16 ↓
awplus(config-if)# exit ↓
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- 同様にVLAN21にVRFインスタンス「VRF-PINK (VRFインスタンスID 2)」を関連づけ、IPアドレス「192.168.1.1/24」を設定します。VLAN11のIPアドレス「192.168.1.1/24」とサブネットマスクも含めまったく同じIPアドレスとなりますが、VRFインスタンスが異なるため問題なく設定・使用することができます。
awplus(config)# interface vlan21 ↓
awplus(config-if)# ip vrf forwarding VRF-PINK ↓
awplus(config-if)# ip address 192.168.1.1/24 ↓
awplus(config-if)# exit ↓
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- 最後にグローバルVRFインスタンスに所属するVLAN31にIPアドレス「192.168.1.1/24」を設定します。グローバルVRFインスタンスにははじめから所属しているため、VRFインスタンスを関連づける必要はありません。VLAN11、VLAN21のIPアドレス「192.168.1.1/24」とサブネットマスクも含めまったく同じのIPアドレスとなりますが、VRFインスタンスが異なるため問題なく設定・使用することができます。
awplus(config)# interface vlan31 ↓
awplus(config-if)# ip address 192.168.1.1/24 ↓
awplus(config-if)# exit ↓
awplus(config)# exit ↓
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設定は以上です。
VRFインスタンス間通信
各VRFインスタンスは独立しているため、通常はVRFインスタンス間での通信はできないですが、機器内部で各VRFインスタンスの経路情報をやりとりすることによりVRFインスタンス間での通信を実現できます。VRFインスタンス間のルーティングには、スタティックルーティングを利用します。
Note - 各VRFインスタンスではVRFインスタンス間でのルーティングとは別にスタティックルーティング、RIP、OSPFを使用することができます。
Note - VRFインスタンス間通信を行っているときはVRFインスタンス間で経路情報を送受信するため、各VRFインスタンスの独立性はなくなります。そのため、VRFインスタンス間で重複するIPアドレス空間は使用できません。
Note - VRFインスタンス間通信時は、 VRFインスタンス間でECMP経路は単一経路としてインポート/エクスポートされます。
ここではスタティックルーティングを用いてスイッチAに設定されている2つのVRFインスタンス間の通信を実現します。また、スイッチAのインスタンス「VRF-BLUE」とスイッチB間ではOSPFを用いてダイナミックルーティングを行います。

なお、以下の例では、VLANの作成とスイッチポートへの割り当ては完了しているものとします。VLANの設定については、「L2スイッチング」の「バーチャルLAN」をご覧ください。
スイッチA
- VRFインスタンス「VRF-BLUE (VRFインスタンスID 1)」を作成し、VRFモードに移行します。
awplus(config)# ip vrf VRF-BLUE 1 ↓
awplus(config-vrf)# exit ↓
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- VRFインスタンス「VRF-PINK (VRFインスタンスID 2)」を作成し、VRFモードに移行します。
awplus(config)# ip vrf VRF-PINK 2 ↓
awplus(config-vrf)# exit ↓
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- VLAN10にVRFインスタンス「VRF-BLUE (VRFインスタンスID 1)」を関連づけ、IPアドレス「192.168.10.1/24」を設定します。
awplus(config)# interface vlan10 ↓
awplus(config-if)# ip vrf forwarding VRF-BLUE ↓
awplus(config-if)# ip address 192.168.10.1/24 ↓
awplus(config-if)# exit ↓
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- 同様にVLAN20にVRFインスタンス「VRF-PINK (VRFインスタンスID 2)」を関連づけ、IPアドレス「192.168.20.1/24」を設定します。
awplus(config)# interface vlan20 ↓
awplus(config-if)# ip vrf forwarding VRF-PINK ↓
awplus(config-if)# ip address 192.168.20.1/24 ↓
awplus(config-if)# exit ↓
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- VRFインスタンス間のスタティックルーティングを有効にします。
awplus(config)# ip route static inter-vrf ↓
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- VRFインスタンス間通信用のスタティック経路を設定します。
VRFインスタンス「VRF-BLUE (VRFインスタンスID 1)」からVRFインスタンス「VRF-PINK (VRFインスタンスID 2)」のネットワーク192.168.20.0/24へのスタティック経路を設定します。
同一筐体内でのVRFインスタンス間通信用のスタティック経路を設定する場合は、ネクストホップ情報は不要ですが、出力先VLAN情報が必要となります。この場合、vlan20が出力先VLAN情報となります。
awplus(config)# ip route vrf VRF-BLUE 192.168.20.0/24 vlan20 ↓
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- VRFインスタンス「VRF-PINK (VRFインスタンスID 2)」からVRFインスタンス「VRF-BLUE (VRFインスタンスID )」のネットワーク192.168.10.0/24と192.168.11.0/24へのスタティック経路を設定します。
他の筐体へのVRFインスタンス間通信用のスタティック経路を設定する場合は、ネクストホップ情報と出力先VLAN情報は必要となります。
宛先ネットワークが192.168.10.0/24の場合は、同一筐体内でのVRFインスタンス間通信となるので、出力先VLAN情報としてvlan10を指定しています。
宛先ネットワークが192.168.11.0/24の場合は他の筐体へのVRFインスタンス間通信となるので、ネクストホップ情報として192.168.10.2を、出力先VLAN情報としてvlan10を指定しています。
awplus(config)# ip route vrf VRF-PINK 192.168.10.0/24 vlan10 ↓
awplus(config)# ip route vrf VRF-PINK 192.168.11.0/24 192.168.10.2 vlan10 ↓
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- 次にVRFインスタンスで用いるOSPFを設定します。
VRFインスタンス「VRF-BLUE (VRFインスタンスID 1)」にOSPFを設定します。OSPFメッセージの送受信を行うネットワークを「192.168.10.0/24」とし、所属エリアを「エリア0」とします。またVRFインスタンス間通信で設定したスタティック経路を再通知できるように設定します。
awplus(config)# router ospf 1 VRF-BLUE ↓
awplus(config-router)# network 192.168.10.0/24 area 0 ↓
awplus(config-router)# redistribute static ↓
awplus(config-router)# exit ↓
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スイッチB
スイッチBではVRF-Liteを使用せずにOSPFを動作させます。
- VLAN10にIPアドレス「192.168.10.2/24」を設定します。
awplus(config)# interface vlan10 ↓
awplus(config-if)# ip address 192.168.10.2/24 ↓
awplus(config-if)# exit ↓
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- 同様にVLAN11にIPアドレス「192.168.11.1/24」を設定します。
awplus(config)# interface vlan11 ↓
awplus(config-if)# ip address 192.168.11.1/24 ↓
awplus(config-if)# exit ↓
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- OSPFを設定します。
OSPFメッセージの送受信を行うネットワークを「192.168.10.0/24」とし、所属エリアを「エリア0」とします。またVLAN11のインタフェース経路を再通知できるように設定します。
awplus(config)# router ospf ↓
awplus(config-router)# network 192.168.10.0/24 area 0 ↓
awplus(config-router)# redistribute connected ↓
awplus(config-router)# exit ↓
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設定は以上です。
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