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CentreCOM x900シリーズ・SwitchBlade x908 コマンドリファレンス
IPルーティング / VRRP
- プロトコル概要
- 基本設定
- ルーターA
- ルーターB
- 詳細設定
- 認証
VRRP(Virtual Router Redundancy Protocol)は、複数のルーターをグループ化し、あたかも1台のルーターであるかのように見せかけることで、デフォルトゲートウェイを冗長化し、IPネットワークに冗長性を与えるプロトコルです。
プロトコル概要
VRRPの基本的な考え方は次のとおりです。
- 同一ネットワーク上にある複数のルーターをグループ化し、1台のように見せかける。このグループ全体をバーチャルルーター(VR = Virtual Router)と呼ぶ。
- バーチャルルーターを構成する各ルーターは次のものを共有し、互いに連携して動作する。
- VRID: バーチャルルーターを識別するための番号(1〜255)。
- バーチャルMACアドレス: バーチャルルーターへのARP要求に対して返されるMACアドレス。VRIDから導出される。
- バーチャルIPアドレス: バーチャルルーターのIPアドレス。クライアントホストには、このIPアドレスをデフォルトゲートウェイとして設定する。
- バーチャルルーターを構成する各ルーターは、1〜255の優先度を持つ。バーチャルIPアドレスとインターフェースの実アドレスが一致している場合、そのルーターの優先度は自動的に最高値の255となる(preferred master)。それ以外のルーターには、1〜254の優先度を設定する(初期値は100)。
- バーチャルルーターは、マスタールーター1台と、バックアップルーター1台以上から構成される。バーチャルルーター内でもっとも高い優先度を持つルーターがマスタールーターとなる。
- マスタールーターは、バーチャルIPアドレスとバーチャルMACアドレスを使い、実際にルーターとしての動作を行う。また、VRRP Advertisementパケットをマルチキャストグループアドレス224.0.0.18宛てに定期的に送信し、自らの健在をバックアップルーターに知らせる。また、自分より高い優先度を持つAdvertisementパケットを受信した場合は、バックアップルーターに移行する。
- バックアップルーターは、ルーターとしての動作は行わずに、Advertisementパケットを監視している。バックアップルーターは、Advertisementパケットが途絶えるとマスタールーターに障害が発生したものと見なし、新しいマスタールーターの選出プロセスに入る。
基本設定
次に、実際に2台のルーターを用いてデフォルトゲートウェイを冗長化するための設定方法を示します。ここでは、次のようなネットワーク構成を例に解説します。

この例では通常ルーターAが使用されますが、ルーターAが故障すると、同ルーターが定期的に送信しているVRRP AdvertisementパケットをルーターBが受信できなくなります。この場合、ルーターBはルーターAがダウンしたものと見なしてバックアップルーターからマスタールーターに移行し、両方のセグメントに対するデフォルトゲートウェイアドレスを引き継ぎます。ルーターAが復旧すると、ルーターBは元のバックアップルーターに戻ります。
なお、以下の各例では、VLANの作成とIPアドレスの設定は完了しているものとします。VLANの設定については、「L2スイッチング」の「バーチャルLAN」をご覧ください。IPアドレスの設定については、「IPルーティング」の「IPインターフェース」をご覧ください。
Note - CPU宛て通信の負荷が非常に高い環境では、VRRPパケットを適切に処理できず、VRRPの動作に支障をきたす場合があります。VRRPを使用する場合は、VRRPパケットを優先的にCPUへ送るQoS設定の追加をおすすめします。詳細は「トラフィック制御」の「Quality of Service」をご覧ください(「高負荷環境における制御パケットの優先設定」の節)。
ルーターA
- router vrrpコマンドを実行して、vlan100インターフェース上にVRID=100のバーチャルルーター(以下、VR100)を作成し、該当バーチャルルーターの設定を行うためのVRRPモードに移行します。
RouterA(config)# router vrrp 100 vlan100 ↓
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- virtual-ipコマンドでVR100のバーチャルIPアドレスを設定します。バーチャルIPアドレス10.100.100.32はインターフェースの実アドレスではないので、キーワードbackupを指定します。
RouterA(config-router)# virtual-ip 10.100.100.32 backup ↓
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- priorityコマンドでVR100における優先度を設定します。こちらをデフォルトのマスタールーターにするため、優先度を初期値の100よりも高い101に設定します。
RouterA(config-router)# priority 101 ↓
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- circuit-failoverコマンドを用いて、vlan200(VR200)がダウンした場合にvlan100側(VRID=100)の優先度を引き下げ、ルーターBがマスタールーターになるよう設定します。
RouterA(config-router)# circuit-failover vlan200 2 ↓
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- enableコマンドを実行してVR100の動作を有効化します。これでVR100の設定は完了です。exitコマンドでグローバルコンフィグモードに戻り、次にVR200の設定に移ります。
RouterA(config-router)# enable ↓
RouterA(config-router)# exit ↓
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- router vrrpコマンドを実行して、vlan200インターフェース上にVRID=200のバーチャルルーター(以下、VR200)を作成し、該当バーチャルルーターの設定を行うためのVRRPモードに移行します。
RouterA(config)# router vrrp 200 vlan200 ↓
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- virtual-ipコマンドでVR200のバーチャルIPアドレスを設定します。バーチャルIPアドレス10.100.200.32はインターフェースの実アドレスではないので、キーワードbackupを指定します。
RouterA(config-router)# virtual-ip 10.100.200.32 backup ↓
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- priorityコマンドでVR200における優先度を設定します。こちらをデフォルトのマスタールーターにするため、優先度を初期値の100よりも高い101に設定します。
RouterA(config-router)# priority 101 ↓
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- circuit-failoverコマンドを用いて、vlan100(VR100)がダウンした場合にvlan200側(VR200)の優先度を引き下げ、ルーターBがマスタールーターになるよう設定します。
RouterA(config-router)# circuit-failover vlan100 2 ↓
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- enableコマンドを実行してVR200の動作を有効化します。
RouterA(config-router)# enable ↓
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ルーターB
- router vrrpコマンドを実行して、vlan100インターフェース上にVRID=100のバーチャルルーター(以下、VR100)を作成し、該当バーチャルルーターの設定を行うためのVRRPモードに移行します。
RouterB(config)# router vrrp 100 vlan100 ↓
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- virtual-ipコマンドでVR100のバーチャルIPアドレスを設定します。バーチャルIPアドレス10.100.100.32はインターフェースの実アドレスではないので、キーワードbackupを指定します。
RouterB(config-router)# virtual-ip 10.100.100.32 backup ↓
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- priorityコマンドでVR100における優先度を設定します。こちらをデフォルトのスレーブルーターにするため、優先度は初期値100のままとします。
RouterB(config-router)# priority 100 ↓
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Note - 優先度100は初期値なので、実際には本コマンドを入力する必要はありません。
- enableコマンドを実行してVR100の動作を有効化します。これでVR100の設定は完了です。exitコマンドでグローバルコンフィグモードに戻り、次にVR200の設定に移ります。
RouterB(config-router)# enable ↓
RouterB(config-router)# exit ↓
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- router vrrpコマンドを実行して、vlan200インターフェース上にVRID=200のバーチャルルーター(以下、VR200)を作成し、該当バーチャルルーターの設定を行うためのVRRPモードに移行します。
RouterB(config)# router vrrp 200 vlan200 ↓
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- virtual-ipコマンドでVR200のバーチャルIPアドレスを設定します。バーチャルIPアドレス10.100.200.32はインターフェースの実アドレスではないので、キーワードbackupを指定します。
RouterB(config-router)# virtual-ip 10.100.200.32 backup ↓
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- priorityコマンドでVR200における優先度を設定します。こちらをデフォルトのスレーブルーターにするため、優先度は初期値100のままとします。
RouterB(config-router)# priority 100 ↓
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Note - 優先度100は初期値なので、実際には本コマンドを入力する必要はありません。
- enableコマンドを実行してVR200の動作を有効化します。
RouterB(config-router)# enable ↓
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基本設定は以上です。
LAN上の各ホストには、デフォルトゲートウェイとして、バーチャルルーターのIPアドレス(バーチャルIPアドレス)を設定します。通常時には、ルーターAがマスタールーターとして機能し、VLAN間のトラフィックを転送します。ルーターAのインターフェースのどちらか(vlan100、vlan200)がリンクダウンした場合は、ルーターBがマスタールーターとなりバーチャルルーターとしての役割を引き継ぎます。このとき、バーチャルルーターのIPアドレスとMACアドレスは変化しないため、LAN上のホストがルーターの切り替えを意識することはありません。
Note - VLANインターフェースは、所属ポートがすべてリンクダウンして初めて「リンクダウン」状態になります。一方、VLAN所属ポートが1ポートでもリンクアップすれば、該当VLANインターフェースは「リンクアップ」状態になります。VRRPでは、VLANインターフェースのリンクアップ、リンクダウンを検出してマスタールーターを切り替えるため、VLAN所属ポートの設定に注意してください。上図のように、マスター、スレーブともVLAN所属ポートを1ポートのみとし、レイヤー2スイッチを介してクライアントや他のルーターと接続すると、確実にリンクダウンを検出させることができます。
詳細設定
認証
VRRPでは、バーチャルルーター間で簡易パスワードによるVRRPパケットの認証を行うことができます。認証の設定はVRRPパケットを送受信するインターフェースごとに行います。
- インターフェースモードでip vrrp authentication modeコマンドを実行し、対象インターフェースで認証(簡易パスワード認証)を有効にします。初期状態では認証は行わない設定になっています。
awplus(config)# interface vlan20 ↓
awplus(config-if)# ip vrrp authentication mode text ↓
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- 該当インターフェースで使用するパスワードを8文字以内で指定します。これにはip vrrp authentication stringコマンドを使います。
awplus(config-if)# ip vrrp authentication string 4auRe! ↓
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設定は以上です。
該当インターフェースとVRRPパケットを交換するすべてのバーチャルルーターに対し、同じパスワードを設定してください。
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