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CentreCOM AR560S 設定例集 2.9 #108

IPマルチキャスト(DVMRP)


IGMPとDVMRPを利用したマルチキャストルーティングの設定例です。ここでは、CUG(Closed Users Group)サービスを利用したL2TP(Layer 2 Tunneling Protocol)による2点間接続の構成をもとに解説します。


DVMRP(Distance Vector Multicast Routing Protocol)は、RPM(Reverse Path Multicasting)をもとにマルチキャスト配送木を動的に構築します。RIPをもとにした経路情報交換メカニズムによって、マルチキャスト用の経路表を独自に管理します。

DVMRPはRIPのように経路情報を定期的に送信しあうことによって経路表を更新するので経路の変更が反映されるまで時間がかかります。そのため、マルチキャストサーバーおよびマルチキャストリスナーが移動しない(=マルチキャスト配送ツリーの変動ない)構成に適しています。


ここでは、次のようなネットワーク構成を例に解説します。

表 1:グループ管理者から提供された情報
 
ルーターA
ルーターB
PPPユーザー名 userA@isp userB@isp
PPPパスワード isppasswdA isppasswdB
IPアドレス(端末型) 172.16.0.1/32 172.16.0.2/32


表 2:L2TPの設定
 
ルーターA
ルーターB
L2TPコール名 remote1 remote1
L2TP終端アドレス 172.16.0.1/32 172.16.0.2/32
L2TPサーバーモード LAC/LNS兼用(BOTH) LAC/LNS兼用(BOTH)
L2TPサーバーパスワード l2tpA l2tpB


表 3:マルチキャストネットワークの構成
 
ルーターA
ルーターB
DVMRPで使用するPPP(ppp11)上のアドレス 172.16.1.1(PPP11) 172.16.1.2(PPP11)



ルーターAの設定

  1. マルチキャストパケットをL2TPでカプセリングして送受信するために使用する L2TP を有効にします。



  2. L2TPサーバーをLNS/LACの兼用モードで起動します。



  3. 相手側からL2TPのコネクション確立要求が来たときに相手を認証するためのパスワードを設定します。



  4. L2TPコールを定義します。これはISDNにおけるISDNコールに相当するもので、接続先のL2TPサーバーとの間に仮想回線を張るための情報を定義します。CALLには任意の名前を、REMOTEには相手側で定義されているL2TPコールの名前を指定します。 LAN間接続の場合、TYPEにはVIRTUALを指定します。IPは接続先のL2TPルーター、PRECEDENCEは優先する呼の方向です。また、相手側にL2TPパスワードが設定されている場合は、PASSWORDパラメーターで接続パスワードを指定します。




  5. WAN側Ethernetインターフェース(eth0)上にCUGサービス接続用のPPPインターフェースを作成します。
    「OVER=eth0-XXXX」の「XXXX」の部分には、ISPから通知されたPPPoEの「サービス名」を記述します。ISPから指定がない場合は、どのサービス名タグでも受け入れられるよう、「ANY」を設定します。




  6. ISPから通知されたPPPユーザー名とパスワードを指定し、接続時にIPアドレス割り当ての要求を行うように設定します。LQRはオフにし、代わりにLCP Echoパケットを使ってPPPリンクの状態を監視するようにします。また、ISDN向けの機能であるBAPはオフにします。



  7. 各ルーター間でIGMPおよびDVMRPを有効にするインターフェースとしてL2TPコール上にPPPインターフェースを作成します。CREATE PPPコマンドでL2TPコールを物理インターフェースとして指定するときは、L2TPコール名の前に「TNL-」を付けます。ルーターB向けのPPPインターフェースを作成します。



  8. IPモジュールを有効にします。



  9. IPCPネゴシエーションでISPから取得したIPアドレスをPPPインターフェースで使用できるように設定します。



  10. LAN側(vlan1)インターフェースにIPアドレスを設定します。



  11. WAN側(ppp0)インターフェースにIPアドレス「0.0.0.0」を設定します。これは、ISPとの接続が確立するまでIPアドレスが確定しないことを示します。また、DVMRPが使用するソースアドレスとしてL2TP上のPPPインターフェース(ppp11)にIPアドレスを割り当てます。


  12. L2TPトンネルを設定するためのルートを設定します。


  13. DVMRPはユニキャストのルートテーブルを利用するので、対向ネットワーク(192.168.20.0/24)へのルートテーブルを作成します。


  14. グループメンバー管理のためIGMPを有効にします。



  15. 各インターフェースでIGMPを有効にします。


  16. DVMRPを有効にします。



  17. 各インターフェースでDVMRPを有効にします。


  18. 設定は以上です。設定内容をファイルに保存し、SET CONFIGコマンドで起動時設定ファイルに指定します。




ルーターBの設定

  1. マルチキャストパケットをL2TPでカプセリングして送受信するために使用する L2TP を有効にします。



  2. L2TPサーバーをLNS/LACの兼用モードで起動します。



  3. 相手側からL2TPのコネクション確立要求が来たときに相手を認証するためのパスワードを設定します。



  4. L2TPコールを定義します。これはISDNにおけるISDNコールに相当するもので、接続先のL2TPサーバーとの間に仮想回線を張るための情報を定義します。CALLには任意の名前を、REMOTEには相手側で定義されているL2TPコールの名前を指定します。 LAN間接続の場合、TYPEにはVIRTUALを指定します。IPは接続先のL2TPルーター、PRECEDENCEは優先する呼の方向です。また、相手側にL2TPパスワードが設定されている場合は、PASSWORDパラメーターで接続パスワードを指定します。ルーターA向けコールの設定を行います。




  5. WAN側Ethernetインターフェース(eth0)上にCUGサービス接続用のPPPインターフェースを作成します。
    「OVER=eth0-XXXX」の「XXXX」の部分には、ISPから通知されたPPPoEの「サービス名」を記述します。ISPから指定がない場合は、どのサービス名タグでも受け入れられるよう、「ANY」を設定します。




  6. ISPから通知されたPPPユーザー名とパスワードを指定し、接続時にIPアドレス割り当ての要求を行うように設定します。LQRはオフにし、代わりにLCP Echoパケットを使ってPPPリンクの状態を監視するようにします。また、ISDN向けの機能であるBAPはオフにします。



  7. 各ルーター間でIGMPおよびDVMRPを有効にするインターフェースとしてL2TPコール上にPPPインターフェースを作成します。CREATE PPPコマンドでL2TPコールを物理インターフェースとして指定するときは、L2TPコール名の前に「TNL-」を付けます。ルーターA向けのPPPインターフェースを作成します。


  8. IPモジュールを有効にします。



  9. IPCPネゴシエーションでISPから取得したIPアドレスをPPPインターフェースで使用できるように設定します。



  10. LAN側(vlan1)インターフェースにIPアドレスを設定します。



  11. WAN側(ppp0)インターフェースにIPアドレス「0.0.0.0」を設定します。これは、ISPとの接続が確立するまでIPアドレスが確定しないことを示します。DVMRPが使用するソースアドレスとしてL2TP上のPPPインターフェース(ppp11)にIPアドレスを割り当てます。


  12. L2TPトンネルを設定するためのルートを設定します。


  13. DVMRPはユニキャストのルートテーブルを利用するので、対向ネットワーク(192.168.10.0/24)へのルートテーブルを作成します。


  14. グループメンバー管理のためIGMPを有効にします。



  15. 各インターフェースでIGMPを有効にします。



  16. DVMRPを有効にします。



  17. 各インターフェースでDVMRPを有効にします。


  18. 設定は以上です。設定内容をファイルに保存し、SET CONFIGコマンドで起動時設定ファイルに指定します。

まとめ

ルーターAのコンフィグ [テキスト版]
ENABLE L2TP
ENABLE L2TP SERVER=BOTH
ADD L2TP PASSWORD=l2tpA
ADD L2TP CALL=remote1 REMOTE=remote1 TYPE=VIRTUAL IP=172.16.0.2 PRECEDENCE=IN PASSWORD=l2tpB
CREATE PPP=0 OVER=eth0-ANY
SET PPP=0 OVER=eth0-ANY BAP=OFF IPREQUEST=ON USER=userA@isp PASSWORD=isppasswdA LQR=OFF ECHO=ON
CREATE PPP=11 OVER=TNL-remote1 IDLE=ON BAP=OFF LQR=OFF
ENABLE IP
ENABLE IP REMOTEASSIGN
ADD IP INT=vlan1 IP=192.168.10.1 MASK=255.255.255.0
ADD IP INT=ppp0 IP=0.0.0.0
ADD IP INT=ppp11 IP=172.16.1.1 MASK=255.255.255.0
ADD IP ROUTE=172.16.0.2 MASK=255.255.255.255 INTERFACE=ppp0 NEXTHOP=0.0.0.0
ADD IP ROUTE=192.168.20.0 MASK=255.255.255.0 INTERFACE=ppp11 NEXTHOP=0.0.0.0
ENABLE IP IGMP
ENABLE IP IGMP INT=ppp11
ENABLE IP IGMP INT=vlan1
ENABLE DVMRP
ADD DVMRP INT=vlan1
ADD DVMRP INT=ppp11


ルーターBのコンフィグ [テキスト版]
ENABLE L2TP
ENABLE L2TP SERVER=BOTH
ADD L2TP PASSWORD=l2tpB
ADD L2TP CALL=remote1 REMOTE=remote1 TYPE=VIRTUAL IP=172.16.0.1 PRECEDENCE=OUT PASSWORD=l2tpA
CREATE PPP=0 OVER=eth0-ANY
SET PPP=0 OVER=eth0-ANY BAP=OFF IPREQUEST=ON USER=userB@isp PASSWORD=isppasswdB LQR=OFF ECHO=ON
CREATE PPP=11 OVER=TNL-remote1 IDLE=ON BAP=OFF LQR=OFF
ENABLE IP
ENABLE IP REMOTEASSIGN
ADD IP INT=vlan1 IP=192.168.20.1 MASK=255.255.255.0
ADD IP INT=ppp0 IP=0.0.0.0
ADD IP INT=ppp11 IP=172.16.1.2 MASK=255.255.255.0
ADD IP ROUTE=172.16.0.1 MASK=255.255.255.255 INTERFACE=ppp0 NEXTHOP=0.0.0.0
ADD IP ROUTE=192.168.10.0 MASK=255.255.255.0 INTERFACE=ppp11 NEXTHOP=0.0.0.0
ENABLE IP IGMP
ENABLE IP IGMP INT=ppp11
ENABLE IP IGMP INT=vlan1
ENABLE DVMRP
ADD DVMRP INT=vlan1
ADD DVMRP INT=ppp11





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