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CentreCOM AR570S 設定例集 2.9 #199
広域Ethernetの回線冗長化サービスとVRRPを使用した冗長構成
VRRP(Virtual Router Redundancy Protocol)は、複数のルーターを連携させ1台のルーターであるかのように見せかけることで、IPネットワークの冗長構成を可能にする機能です。ここでは、広域Ethernetの回線冗長化サービスを利用しVRRPを構成する例を示します。
センター側に2台のルーターを設置し、広域Ethernetの回線冗長化サービスとVRRPでネットワークを冗長化します。また、センターと拠点間のルーターで経路情報を交換するためにルーティングプロトコルとしてOSPFを使用します。
広域Ethernetサービスからは、次の情報が提供されているものとします。
表 1:広域Ethernetサービスから提供された情報
| |
メイン回線 |
バックアップ回線 |
| センター |
10.0.0.10/24 |
10.0.0.20/24 |
| 拠点 |
10.0.0.30/24 |
なし |
センタールーターは、次のVRRPの設定値とLAN側インターフェースIPアドレスを使用します。
表 2:センタールーターのVRRP構成とLAN側インターフェース設定
| |
ルーターA |
ルーターB |
| VRID |
1 |
| VRIP |
192.168.1.254 |
| ステート |
MASTER |
BACKUP |
| LAN側インターフェースIPアドレス |
192.168.1.10/24 |
192.168.1.20/24 |
ネットワーク構成は以下の通りです。
■ 通常接続時(メイン回線使用)
センター側ルーターAのVRRPステートをMASTERに設定します。通常の状態であれば、ルーターAのWAN側インターフェース(eth0)はリンクアップしています。
センター側ルーターBのVRRPステートをBACKUPに設定します。ルーターBのWAN側インターフェース(eth0)はあらかじめリンクダウンさせておきます。
広域Ethernetは、ルーターAのリンクアップ、ルーターBのリンクダウンを検出し、メイン回線を有効にします。
Note
- ここでは、広域Ethernetの回線冗長化サービスがメイン回線とバックアップ回線の切り替えを物理インターフェースのリンク状態(リンクアップ/リンクダウン)で行うことを想定しています。

■ 障害発生時(バックアップ回線使用)
ルーターAの故障やvlan1インターフェースのダウンが発生すると、ルーターBのVRRPステートがMASTERに変わります。ルーターAはWAN側インターフェース(eth0)をリンクダウンし、ルーターBはリンクアップします。広域Ethernetは、リンク状態が変わったことを検出しバックアップ回線を有効にします。
また、広域Ethernet網のメイン回線で障害が発生した場合、広域Ethernet網はメイン回線のリンクをダウンし、バックアップ回線のリンクをアップします。ルーターAはこのWAN側インターフェースのリンクダウンを検出するとVRRPのPriorityを変更し、VRRPのステートはルーターBがMASTERとなりバックアップ回線を使用します。

- IPモジュールを有効にし、各インターフェースにIPアドレスを割り当てます。
ENABLE IP ↓
ADD IP INT=eth0 IP=10.0.0.10 MASK=255.255.255.0 ↓
ADD IP INT=vlan1 IP=192.168.1.10 MASK=255.255.255.0 ↓
- VRRPを有効にします。
- vlan1にVRID=1を割り当てます。バーチャルIPアドレスは192.168.1.254とします。本ルーターをデフォルトのMASTERにするため、優先度をデフォルトの 100 よりも高い 101 に設定します。
CREATE VRRP=1 OVER=vlan1 IP=192.168.1.254 PRIORITY=101 ↓
- eth0がダウンした場合に vlan1側(VRID=1)の優先度を 99 に下げ、ルーターBがマスタールーターになるよう設定します。
ADD VRRP=1 MONITOREDINTERFACE=eth0 NEWPRIORITY=99 ↓
- OSPFのバックボーンエリア(0.0.0.0)を作成します。
- バックボーンエリアに所属するIPアドレスの範囲を設定します。
ADD OSPF RANGE=192.168.1.0 MASK=255.255.255.0 AREA=0.0.0.0 ↓
ADD OSPF RANGE=10.0.0.0 MASK=255.255.255.0 AREA=0.0.0.0 ↓
- バックボーンエリアに所属するルーターインターフェースを設定します。
ADD OSPF INT=VLAN1 AREA=0.0.0.0 ↓
ADD OSPF INT=ETH0 AREA=0.0.0.0 ↓
- LAN側(vlan1)配下に隣接ルーターが存在しないため、LAN側へのOSPFのHelloパケットの送信を停止します。
SET OSPF INT=vlan1 PASSIVE=ON ↓
Note
- LAN側(vlan1)配下に隣接ルーターが存在する場合にはPASSIVEをOFF(デフォルト)に設定してください。
- OSPFを有効にします。
- vlan1インターフェースがダウンした場合にeth0インターフェースをリンクダウン状態で無効にし、ルーターBのVRID=1がMASTERになるようにvlan1側(VRID=1)の優先度を 99 に下げるためのスクリプト(vlandown.scp)を作成します。
ADD SCRIPT=vlandown.scp TEXT="DISABLE ETH=0 LINK=DISABLE" ↓
Note
- ADD SCRIPTコマンドは、コンソールなどからログインした状態で、コマンドラインから実行するコマンドです。そのため、EDITコマンド(内蔵フルスクリーンエディター)などを使って設定スクリプトファイル(.CFG)にこのコマンドを記述しても意図した結果にならない場合がありますのでご注意ください。
- vlan1インターフェースがアップした場合にeth0インターフェースを有効にし、ルーターAのVRID=1がMASTERになるようにvlan1側(VRID=1)の優先度を 101 に上げるためのスクリプト(vlanup.scp)を作成します。
ADD SCRIPT=vlanup.scp TEXT="ENABLE ETH=0" ↓
- トリガー機能を有効にします。
- vlan1インターフェースがダウンした時に、vlandown.scpを実行するインターフェーストリガーを作成します。
CREATE TRIGGER=1 INTERFACE=VLAN1 EVENT=DOWN SCRIPT=vlandown.scp ↓
- vlan1インターフェースがアップした時に、vlanup.scpを実行するインターフェーストリガーを作成します。
CREATE TRIGGER=2 INTERFACE=VLAN1 EVENT=UP SCRIPT=vlanup.scp ↓
- 設定は以上です。設定内容をファイルに保存し、SET CONFIGコマンドで起動時設定ファイルに指定します。
CREATE CONFIG=router.cfg ↓
SET CONFIG=router.cfg ↓
- IPモジュールを有効にし、各インターフェースにIPアドレスを割り当てます。
ENABLE IP ↓
ADD IP INT=eth0 IP=10.0.0.20 MASK=255.255.255.0 ↓
ADD IP INT=vlan1 IP=192.168.1.20 MASK=255.255.255.0 ↓
- 本ルーターは広域Ethernetのバックアップ回線に接続されるため、広域Ethernet網に物理インターフェースのリンクダウンを検出させるためにeth0をリンクダウンの状態で無効にします。
DISABLE ETH=0 LINK=DISABLE ↓
- VRRPを有効にします。
- vlan1にVRID=1を割り当てます。バーチャルIPアドレスは192.168.1.254とします。優先度はデフォルト値の 100 とします。
CREATE VRRP=1 OVER=vlan1 IP=192.168.1.254 ↓
- OSPFのバックボーンエリア(0.0.0.0)を作成します。
- バックボーンエリアに所属するIPアドレスの範囲を設定します。
ADD OSPF RANGE=192.168.1.0 MASK=255.255.255.0 AREA=0.0.0.0 ↓
ADD OSPF RANGE=10.0.0.0 MASK=255.255.255.0 AREA=0.0.0.0 ↓
- バックボーンエリアに所属するルーターインターフェースを設定します。
ADD OSPF INT=vlan1 AREA=0.0.0.0 ↓
ADD OSPF INT=eth0 AREA=0.0.0.0 ↓
- LAN側(vlan1)配下に隣接ルーターが存在しないため、LAN側へのOSPFのHelloパケットの送信を停止します。
SET OSPF INT=vlan1 PASSIVE=ON ↓
Note
- LAN側(vlan1)配下に隣接ルーターが存在する場合にはPASSIVEをOFF(デフォルト)に設定してください。
- OSPFを有効にします。
- eth0インターフェースをリンクダウン状態で無効にするためのスクリプト(downmaster.scp)を作成します。
ADD SCRIPT=downmaster.scp TEXT="DISABLE ETH=0 LINK=DISABLE" ↓
Note
- ADD SCRIPTコマンドは、コンソールなどからログインした状態で、コマンドラインから実行するコマンドです。そのため、EDITコマンド(内蔵フルスクリーンエディター)などを使って設定スクリプトファイル(.CFG)にこのコマンドを記述しても意図した結果にならない場合がありますのでご注意ください。
- 次に、eth0インターフェースを有効にするためのスクリプト(upmaster.scp)を作成します。
ADD SCRIPT=upmaster.scp TEXT="ENABLE ETH=0" ↓
- トリガー機能を有効にします。
- バーチャルルーター「1」のMASTERルーターではなくなった時に、downmaster.scpを実行するモジュールトリガーを作成します。
CREATE TRIGGER=1 MODULE=VRRP EVENT=DOWNMASTER VRID=1 SCRIPT=downmaster.scp ↓
- バーチャルルーター「1」のMASTERルーターになった時に、upmaster.scpを実行するモジュールトリガーを作成します。
CREATE TRIGGER=2 MODULE=VRRP EVENT=UPMASTER VRID=1 SCRIPT=upmaster.scp ↓
- 設定は以上です。設定内容をファイルに保存し、SET CONFIGコマンドで起動時設定ファイルに指定します。
CREATE CONFIG=router.cfg ↓
SET CONFIG=router.cfg ↓
- IPモジュールを有効にし、各インターフェースにIPアドレスを割り当てます。
ENABLE IP ↓
ADD IP INT=eth0 IP=10.0.0.30 MASK=255.255.255.0 ↓
ADD IP INT=vlan1 IP=192.168.2.1 MASK=255.255.255.0 ↓
- OSPFのバックボーンエリア(0.0.0.0)を作成します。
- バックボーンエリアに所属するIPアドレスの範囲を設定します。
ADD OSPF RANGE=192.168.2.0 MASK=255.255.255.0 AREA=0.0.0.0 ↓
ADD OSPF RANGE=10.0.0.0 MASK=255.255.255.0 AREA=0.0.0.0 ↓
- バックボーンエリアに所属するルーターインターフェースを設定します。
ADD OSPF INT=vlan1 AREA=0.0.0.0 ↓
ADD OSPF INT=eth0 AREA=0.0.0.0 ↓
- LAN側(vlan1)配下に隣接ルーターが存在しないため、LAN側へのOSPFのHelloパケットの送信を停止します。
SET OSPF INT=vlan1 PASSIVE=ON ↓
Note
- LAN側(vlan1)配下に隣接ルーターが存在する場合にはPASSIVEをOFF(デフォルト)に設定してください。
- OSPFを有効にします。
- 設定は以上です。設定内容をファイルに保存し、SET CONFIGコマンドで起動時設定ファイルに指定します。
CREATE CONFIG=router.cfg ↓
SET CONFIG=router.cfg ↓
ルーターAのコンフィグ
[テキスト版]
ENABLE IP ↓
ADD IP INT=eth0 IP=10.0.0.10 MASK=255.255.255.0 ↓
ADD IP INT=vlan1 IP=192.168.1.10 MASK=255.255.255.0 ↓
ENABLE VRRP ↓
CREATE VRRP=1 OVER=vlan1 IP=192.168.1.254 PRIORITY=101 ↓
ADD VRRP=1 MONITOREDINTERFACE=eth0 NEWPRIORITY=99 ↓
ADD OSPF AREA=0.0.0.0 ↓
ADD OSPF RANGE=192.168.1.0 MASK=255.255.255.0 AREA=0.0.0.0 ↓
ADD OSPF RANGE=10.0.0.0 MASK=255.255.255.0 AREA=0.0.0.0 ↓
ADD OSPF INT=VLAN1 AREA=0.0.0.0 ↓
ADD OSPF INT=ETH0 AREA=0.0.0.0 ↓
SET OSPF INT=vlan1 PASSIVE=ON ↓
ENABLE OSPF ↓
ENABLE TRIGGER ↓
CREATE TRIGGER=1 INTERFACE=VLAN1 EVENT=DOWN SCRIPT=vlandown.scp ↓
CREATE TRIGGER=2 INTERFACE=VLAN1 EVENT=UP SCRIPT=vlanup.scp ↓
|
スクリプト「vlandown.scp」
[テキスト版]
DISABLE ETH=0 LINK=DISABLE ↓
|
スクリプト「vlanup.scp」
[テキスト版]
ルーターBのコンフィグ
[テキスト版]
ENABLE IP ↓
ADD IP INT=eth0 IP=10.0.0.20 MASK=255.255.255.0 ↓
ADD IP INT=vlan1 IP=192.168.1.20 MASK=255.255.255.0 ↓
DISABLE ETH=0 LINK=DISABLE ↓
ENABLE VRRP ↓
CREATE VRRP=1 OVER=vlan1 IP=192.168.1.254 ↓
ADD OSPF AREA=0.0.0.0 ↓
ADD OSPF RANGE=192.168.1.0 MASK=255.255.255.0 AREA=0.0.0.0 ↓
ADD OSPF RANGE=10.0.0.0 MASK=255.255.255.0 AREA=0.0.0.0 ↓
ADD OSPF INT=vlan1 AREA=0.0.0.0 ↓
ADD OSPF INT=eth0 AREA=0.0.0.0 ↓
SET OSPF INT=vlan1 PASSIVE=ON ↓
ENABLE OSPF ↓
ENABLE TRIGGER ↓
CREATE TRIGGER=1 MODULE=VRRP EVENT=DOWNMASTER VRID=1 SCRIPT=downmaster.scp ↓
CREATE TRIGGER=2 MODULE=VRRP EVENT=UPMASTER VRID=1 SCRIPT=upmaster.scp ↓
|
スクリプト「downmaster.scp」
[テキスト版]
DISABLE ETH=0 LINK=DISABLE ↓
|
スクリプト「upmaster.scp」
[テキスト版]
ルーターCのコンフィグ
[テキスト版]
ENABLE IP ↓
ADD IP INT=eth0 IP=10.0.0.30 MASK=255.255.255.0 ↓
ADD IP INT=vlan1 IP=192.168.2.1 MASK=255.255.255.0 ↓
ADD OSPF AREA=0.0.0.0 ↓
ADD OSPF RANGE=192.168.2.0 MASK=255.255.255.0 AREA=0.0.0.0 ↓
ADD OSPF RANGE=10.0.0.0 MASK=255.255.255.0 AREA=0.0.0.0 ↓
ADD OSPF INT=vlan1 AREA=0.0.0.0 ↓
ADD OSPF INT=eth0 AREA=0.0.0.0 ↓
SET OSPF INT=vlan1 PASSIVE=ON ↓
ENABLE OSPF ↓
|
CentreCOM AR570S 設定例集 2.9 #199
(C) 2006-2013 アライドテレシスホールディングス株式会社
PN: 613-000274 Rev.N
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