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CentreCOM AR740 設定例集 2.6 #51 
PPPoEによるLAN型インターネット接続(スタティックNAT)
PPPoEを使ってインターネットサービスプロバイダー(ISP)に接続します。グローバルアドレスを8個、16個などのブロック単位で固定的に割り当てられるLAN型接続の設定例です。この例では、ISPから割り当てられたアドレスをルーターやホストに直接割り当てず、LAN側コンピューターはプライベートアドレスで運用します。クライアントはダイナミックENAT経由でインターネットにアクセスさせます。また、ファイアウォールを使って外部からのアクセスを原則拒否しつつ、スタティックNATを使って特定のサーバーだけを外部に公開します。
ISPからは次の情報を提供されているものとします。
表 1:ISPから提供された情報
  | PPPユーザー名 | 
  user@isp | 
  | PPPパスワード | 
  isppasswd | 
  | PPPoEサービス名 | 
  指定なし | 
  | 使用できるIPアドレス | 
  4.4.4.0/29(4.4.4.0〜4.4.4.7) | 
ルーターには、次のような方針で設定を行います。
- LAN側はすべてプライベートアドレスで運用します。LAN側のクライアントがインターネットにアクセスできるよう、ダイナミックENATを使用します。グローバルアドレスには、4.4.4.1を使います。
 - LAN側のサーバーにもプライベートアドレスを割り当てますが、外部からアクセスさせるため、スタティックNATを使って外からはグローバルアドレスを持っているように見せかけます。変換ルールは次のとおりとします。
- Webサーバー:192.168.10.2 → 4.4.4.2
 - SMTPサーバー:192.168.10.3 → 4.4.4.3
 - DNSサーバー:192.168.10.4 → 4.4.4.4
 
 - ファイアウォールを利用して、外部からの不正アクセスを遮断しつつ、内部からは自由にインターネットへのアクセスができるようにします。
 - 外部からのアクセスは基本的にすべて遮断しますが、スタティックNATで公開しているWebサーバー(4.4.4.2のTCP80番)、SMTPサーバー(4.4.4.3のTCP25番)、DNSサーバー(4.4.4.4のTCP、UDP53番)へのアクセスだけは特例として許可します。
 
以下、ルーターの基本設定についてまとめます。
表 2:ルーターの基本設定
  | WAN側物理インターフェース | 
  eth1 | 
  | WAN側(ppp0)IPアドレス | 
  Unnumbered | 
  | LAN側(eth0)IPアドレス | 
  192.168.10.1/24 | 
  | DHCPサーバー機能 | 
  使わない | 

- WAN側Ethernetインターフェース(eth1)上にPPPインターフェースを作成します。「OVER=eth1-XXXX」の「XXXX」の部分には、ISPから通知されたPPPoEの「サービス名」を記述します。ISPから指定がない場合は、どのサービス名タグでも受け入れられるよう、「ANY」を設定します。
  
    CREATE PPP=0 OVER=eth1-ANY ↓
  
 - ISPから通知されたPPPユーザー名とパスワードを指定し、接続時にIPアドレス割り当ての要求を行うように設定します。LQRはオフにし、代わりにLCP Echoパケットを使ってPPPリンクの状態を監視するようにします。また、ISDN向けの機能であるBAPはオフにします。
  
    SET PPP=0 OVER=eth1-ANY BAP=OFF IPREQUEST=ON USER=user@isp PASSWORD=isppasswd LQR=OFF ECHO=ON ↓
  
Note
 - ファームウェアバージョン2.6以降、「IDLE=OFF」(デフォルト)に設定されたPPPoEインターフェースでは、PPPoEセッションキープアライブ機能が働くため、リンクダウン時に自動的に再接続を試みます(リンクダウンを検出するため「ECHO=ON」の設定は必要)。そのため、以前のバージョンで使用していた自動再接続のためのインターフェーストリガーは必要なくなりました。ただし、トリガーの設定があっても問題はありません。以前の設定もそのまま使用できます。
Note
 - バージョン2.6よりも前のファームウェアでPPPoEの自動再接続を行うにはインターフェーストリガーの設定が必要です。設定方法については、ご使用中のバージョンに対応したマニュアルをご覧ください。
 - IPモジュールを有効にします。
  
 - IPCPネゴシエーションで与えられたIPアドレスをPPPインターフェースで使用するように設定します。
  
 - LAN側(eth0)インターフェースにIPアドレスを設定します。
  
    ADD IP INT=eth0 IP=192.168.10.1 MASK=255.255.255.0 ↓
  
 - WAN側(ppp0)インターフェースをUnnumberedに設定します。
  
    ADD IP INT=ppp0 IP=0.0.0.0 ↓
  
 - デフォルトルートを設定します。
  
    ADD IP ROUTE=0.0.0.0 INT=ppp0 NEXTHOP=0.0.0.0 ↓
  
 - ファイアウォール機能を有効にします。
  
 - ファイアウォールの動作を規定するファイアウォールポリシー「net」を作成します。
  
    CREATE FIREWALL POLICY=net ↓
  
 - ICMPパケットはPing(Echo/Echo Reply)と到達不可能(Unreachable)のみ双方向で許可します。
  
    ENABLE FIREWALL POLICY=net ICMP_F=PING,UNREACH ↓
  
Note
 - デフォルト設定では、ICMPはファイアウォールを通過できません。
 - ルーターのidentプロキシー機能を無効にし、外部のメール(SMTP)サーバーなどからのident要求に対して、ただちにTCP RSTを返すよう設定します。
  
    DISABLE FIREWALL POLICY=net IDENTPROXY ↓
  
 - ファイアウォールポリシーの適用対象となるインターフェースを指定します。
- LAN側(eth0)インターフェースをPRIVATE(内部)に設定します。
  
    ADD FIREWALL POLICY=net INT=eth0 TYPE=PRIVATE ↓
  
 - WAN側(ppp0)インターフェースをPUBLIC(外部)に設定します。
  
    ADD FIREWALL POLICY=net INT=ppp0 TYPE=PUBLIC ↓
  
 
 - スタティックNATによるサーバー公開設定を行います。
- Webサーバー(192.168.10.2)を、外部からは4.4.4.2であるかのように見せかけます。
  
    ADD FIREWALL POLICY=net NAT=STANDARD INT=eth0 IP=192.168.10.2 GBLINT=ppp0 GBLIP=4.4.4.2 ↓
  
 - SMTPサーバー(192.168.10.3)を、外部からは4.4.4.3であるかのように見せかけます。
  
    ADD FIREWALL POLICY=net NAT=STANDARD INT=eth0 IP=192.168.10.3 GBLINT=ppp0 GBLIP=4.4.4.3 ↓
  
 - DNSサーバー(192.168.10.4)を、外部からは4.4.4.4であるかのように見せかけます。
  
    ADD FIREWALL POLICY=net NAT=STANDARD INT=eth0 IP=192.168.10.4 GBLINT=ppp0 GBLIP=4.4.4.4 ↓
  
 
 - ダイナミックENATの設定を行います。LAN側のプライベートIPアドレスを、ISPから与えられたグローバルIPアドレス4.4.4.1に変換するよう設定します。
  
    ADD FIREWALL POLICY=net NAT=ENHANCED INT=eth0 GBLINT=ppp0 GBLIP=4.4.4.1 ↓
  
 - 外部からのパケットをすべて拒否するファイアウォールの基本ルールに対し、サーバーへのパケットを通すための設定を行います。
- Webサーバー(4.4.4.2のTCP80番)へのパケットは通過させます。スタティックNATを使用しているため、NAT後のグローバルアドレス(GBLIP、GBLPORT)とNAT前のプライベートアドレス(IP、PORT)の両方を指定します。
  
    ADD FIREWALL POLICY=net RULE=1 AC=ALLOW INT=ppp0 PROTO=TCP GBLIP=4.4.4.2 GBLPORT=80 IP=192.168.10.2 PORT=80 ↓
  
 - SMTPサーバー(4.4.4.3のTCP25番)へのパケットは通過させます。
  
    ADD FIREWALL POLICY=net RULE=2 AC=ALLOW INT=ppp0 PROTO=TCP GBLIP=4.4.4.3 GBLPORT=25 IP=192.168.10.3 PORT=25 ↓
  
 - DNSサーバー(4.4.4.4のTCP、UDP53番)へのパケットは通過させます。
  
    
ADD FIREWALL POLICY=net RULE=3 AC=ALLOW INT=ppp0 PROTO=TCP GBLIP=4.4.4.4 GBLPORT=53 IP=192.168.10.4 PORT=53 ↓
ADD FIREWALL POLICY=net RULE=4 AC=ALLOW INT=ppp0 PROTO=UDP GBLIP=4.4.4.4 GBLPORT=53 IP=192.168.10.4 PORT=53 ↓
    
  
 
 - 設定は以上です。設定内容をファイルに保存し、SET CONFIGコマンドで起動時設定ファイルに指定します。
  
    
CREATE CONFIG=router.cfg ↓
SET CONFIG=router.cfg ↓
    
  
 
■ ファイアウォールで遮断されたパケットのログをとるには、次のコマンドを実行します。
  
    ENABLE FIREWALL POLICY=net LOG=DENY ↓
  
記録されたログを見るには、次のコマンドを実行します。ここでは、「TYPE=FIRE」により、ファイアウォールが出力したログメッセージだけを表示させています。
  
■ インターネット側からのPING(ICMP Echo Requestパケット)を拒否するには、次のようなIPフィルターをWAN側インターフェースに設定します。この例では、「LOG=HEADER」により、フィルターで拒否したパケットをログに記録しています。
  
    
ADD IP FILTER=0 SO=0.0.0.0 PROTO=ICMP ICMPTYPE=ECHO LOG=HEADER ACTION=EXCLUDE ↓
ADD IP FILTER=0 SO=0.0.0.0 ACTION=INCLUDE ↓
SET IP INT=ppp0 FILTER=0 ↓
    
  
記録されたログを見るには、次のコマンドを実行します。ここでは、「TYPE=IPFIL」により、IPフィルターが出力したログメッセージだけを表示させています。
  
ルーターのコンフィグ
[テキスト版]
CREATE PPP=0 OVER=eth1-ANY ↓ 
SET PPP=0 OVER=eth1-ANY BAP=OFF IPREQUEST=ON USER=user@isp PASSWORD=isppasswd LQR=OFF ECHO=ON ↓ 
ENABLE IP ↓ 
ENABLE IP REMOTEASSIGN ↓ 
ADD IP INT=eth0 IP=192.168.10.1 MASK=255.255.255.0 ↓ 
ADD IP INT=ppp0 IP=0.0.0.0 ↓ 
ADD IP ROUTE=0.0.0.0 INT=ppp0 NEXTHOP=0.0.0.0 ↓ 
ENABLE FIREWALL ↓ 
CREATE FIREWALL POLICY=net ↓ 
ENABLE FIREWALL POLICY=net ICMP_F=PING,UNREACH ↓ 
DISABLE FIREWALL POLICY=net IDENTPROXY ↓ 
ADD FIREWALL POLICY=net INT=eth0 TYPE=PRIVATE ↓ 
ADD FIREWALL POLICY=net INT=ppp0 TYPE=PUBLIC ↓ 
ADD FIREWALL POLICY=net NAT=STANDARD INT=eth0 IP=192.168.10.2 GBLINT=ppp0 GBLIP=4.4.4.2 ↓ 
ADD FIREWALL POLICY=net NAT=STANDARD INT=eth0 IP=192.168.10.3 GBLINT=ppp0 GBLIP=4.4.4.3 ↓ 
ADD FIREWALL POLICY=net NAT=STANDARD INT=eth0 IP=192.168.10.4 GBLINT=ppp0 GBLIP=4.4.4.4 ↓ 
ADD FIREWALL POLICY=net NAT=ENHANCED INT=eth0 GBLINT=ppp0 GBLIP=4.4.4.1 ↓ 
ADD FIREWALL POLICY=net RULE=1 AC=ALLOW INT=ppp0 PROTO=TCP GBLIP=4.4.4.2 GBLPORT=80 IP=192.168.10.2 PORT=80 ↓ 
ADD FIREWALL POLICY=net RULE=2 AC=ALLOW INT=ppp0 PROTO=TCP GBLIP=4.4.4.3 GBLPORT=25 IP=192.168.10.3 PORT=25 ↓ 
ADD FIREWALL POLICY=net RULE=3 AC=ALLOW INT=ppp0 PROTO=TCP GBLIP=4.4.4.4 GBLPORT=53 IP=192.168.10.4 PORT=53 ↓ 
ADD FIREWALL POLICY=net RULE=4 AC=ALLOW INT=ppp0 PROTO=UDP GBLIP=4.4.4.4 GBLPORT=53 IP=192.168.10.4 PORT=53 ↓ 
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CentreCOM AR740 設定例集 2.6 #51 
(C) 1997 - 2008 アライドテレシスホールディングス株式会社
PN: 613-000216 Rev.C
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