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CentreCOM AR300/AR700 シリーズ 設定例集 2.3 #100

L2TPによるLAN間接続(IP/IPX。両側アドレス固定。インターネットアクセスあり)


L2TPを使って、インターネット経由でIPとIPXのプライベートLAN同士を接続します。両側のルーターにグローバルアドレスが固定的に設定されている場合の基本設定です。この例では、ファイアウォールとダイナミックENATの設定により、各拠点からインターネットへのアクセスも可能です。

Note - L2TPはPPPをトンネリングするだけで、暗号化などのセキュリティー機能は持っていません。暗号化が必要なときは、IPsec(トランスポートモード)と併用する必要があります。なお、L2TPとIPsecの併用が必要なのは、VPN上でIP以外のプロトコル(IPXやAppleTalk)を使いたいときだけです。VPN上で使うプロトコルがIPだけであれば、IPsec(トンネルモード)単体で目的を達成できます。

L2TPとファイアウォールを併用する場合は、次の点がポイントになります。


ここでは、次のような構成のネットワークを例に解説します。

IPレベルでのネットワーク構成は次のようになります。ISPとの接続に特別なところはありません。LAN側インターフェースをマルチホーミングして、ISPから割り当てられたグローバルアドレスをeth0-0に、クライアント用のプライベートアドレスをeth0-1に割り当てています。

表 1:ISP接続の設定
 
ルーターA
ルーターB
TDMグループ名 ISPA ISPB
回線速度 128Kbps 128Kbps
WAN側物理インターフェース bri0 bri0
WAN側(ppp0)IPアドレス Unnumbered Unnumbered
LAN側(eth0-0)IPアドレス(1) 200.100.10.1/28 200.100.20.1/28
LAN側(eth0-1)IPアドレス(2) 192.168.10.1/24 192.168.20.1/24



インターネット接続環境を前提とするL2TPの設定は次のとおりです。L2TPトンネルは、ルーターAのグローバルアドレス(200.100.10.1)とルーターBのグローバルアドレス(200.100.20.1)の間に張られます。トンネル上に張った仮想PPPコネクション(ppp1−ppp1)はプライベートLAN間を接続するためのもので、IPとIPXのパケットを通します。

表 2:L2TP・IP・IPX設定
 
ルーターA
ルーターB
L2TPコール名 remote remote
L2TP終端アドレス 200.100.10.1 200.100.20.1
L2TP発着優先 発呼優先 着呼優先
L2TPサーバーモード LAC/LNS兼用(BOTH) LAC/LNS兼用(BOTH)
L2TPサーバーパスワード l2tpA l2tpB
WAN側(ppp1)IPアドレス Unnumbered Unnumbered
WAN側(ppp1)IPXネットワーク番号 129 129
LAN側(eth0)IPXネットワーク番号 401 12
ルーターMACアドレス 0000f4740012 0000f4740022
Ethernetフレームタイプ 802.3 802.3
ファイルサーバー名 Accounts (なし)
ファイルサーバー内部ネットワーク番号 7500 (なし)
ファイルサーバー内部ステーション番号 00000001 (なし)
NCPソケットアドレス 0451 (なし)





ルーターAの設定

  1. 専用線の設定をします。


  2. PPPインターフェース「0」を作成します。


  3. IPモジュールを有効にします。


  4. LAN側(eth0)インターフェースをマルチホーミングし、eth0-0にグローバルアドレスを、eth0-1にプライベートアドレスを設定します。


  5. WAN側(ppp0)インターフェースをUnnumberedに設定します。


  6. デフォルトルートを設定します。


  7. L2TPモジュールを有効にします。


  8. L2TPサーバーの動作モードをBOTHにします。


  9. 他のL2TPサーバーから接続要求を受けた際の認証用パスワードを設定します。


  10. L2TPコール「remote」を作成し、L2TPの接続先情報を登録します。IPには相手ルーターのIPアドレスを指定します。TYPEは呼の種類を示すもので、LAN間接続の場合はVIRTUALを指定します。REMOTEには、このL2TPコールに応じて相手側が起動するL2TPコール名を指定します。PRECEDENCEはL2TPの通信が同時に開始された場合に発呼・着呼のどちらを優先するかを指定します。PASSWORDには、接続先で認証を受けるためのパスワードを指定します。


  11. L2TPコールを仮想的な物理回線と見なし、その上にPPPインターフェースを作成します。OVERパラメーターにL2TPコールを指定するときは、コール名の前に「TNL-」を付けます。また、ここでは「IDLE=ON」を指定して、必要なときだけ接続するよう設定します。


  12. L2TP仮想回線上のPPPインターフェース「1」をUnnumberedに設定します。このインターフェースは、両拠点のプライベートLAN同士を接続する仮想インターフェースです。


  13. 経路情報を設定します。ルーターBのLAN側(192.168.20.0/24)宛てのパケットは、L2TP上のPPPインターフェース「1」を通じて送り出します。


  14. ここからIPXの設定を行います。最初にIPXモジュールを有効にします。


  15. LAN側(eth0)インターフェースにIPXネットワーク番号を設定します。


  16. L2TP仮想回線上のPPPインターフェース「1」にIPXネットワーク番号を設定します。また、「DEMAND=ON」を指定し、RIPパケットやSAPパケットの定期交換を行わないようにします。


  17. ルーターB側IPXネットワーク(12)への経路情報を設定します。この例ではRIP/SAPを使用していないため、スタティックルートの登録が必須です。


  18. ファイアウォール機能を有効にします。


  19. ファイアウォールの動作を規定するファイアウォールポリシーを作成します。


  20. ICMPパケットはPing(Echo/Echo Reply)と到達不可能(Unreachable)のみ双方向で許可します。


    Note - デフォルト設定では、ICMPはファイアウォールを通過できません。

  21. ルーターのidentプロキシー機能を無効にし、外部のメール(SMTP)サーバーなどからのident要求に対して、ただちにTCP RSTを返すよう設定します。


  22. ファイアウォールポリシーの適用対象となるインターフェースを設定します。


  23. ダイナミックENATの設定を行います。NAT用グローバルアドレスには、eth0-0に設定したインターフェースアドレス200.100.10.1を共用します。


  24. 相手ルーターから受信したL2TPパケット(UDP1701番)がファイアウォールを通過できるように設定します。


  25. 設定は以上です。設定内容をファイルに保存し、SET CONFIGコマンドで起動時設定ファイルに指定します。



ルーターBの設定

  1. 専用線の設定をします。


  2. PPPインターフェース「0」を作成します。


  3. IPモジュールを有効にします。


  4. LAN側(eth0)インターフェースをマルチホーミングし、eth0-0にグローバルアドレスを、eth0-1にプライベートアドレスを設定します。


  5. WAN側(ppp0)インターフェースをUnnumberedに設定します。


  6. デフォルトルートを設定します。


  7. L2TPモジュールを有効にします。


  8. L2TPサーバーの動作モードをBOTHにします。


  9. 他のL2TPサーバーから接続要求を受けた際の認証用パスワードを設定します。


  10. L2TPコール「remote」を作成し、L2TPの接続先情報を登録します。IPには相手ルーターのIPアドレスを指定します。TYPEは呼の種類を示すもので、LAN間接続の場合はVIRTUALを指定します。REMOTEには、このL2TPコールに応じて相手側が起動するL2TPコール名を指定します。PRECEDENCEはL2TPの通信が同時に開始された場合に発呼・着呼のどちらを優先するかを指定します。PASSWORDには、接続先で認証を受けるためのパスワードを指定します。


  11. L2TPコールを仮想的な物理回線と見なし、その上にPPPインターフェースを作成します。OVERパラメーターにL2TPコールを指定するときは、コール名の前に「TNL-」を付けます。また、ここでは「IDLE=ON」を指定して、必要なときだけ接続するよう設定します。


  12. L2TP仮想回線上のPPPインターフェース「1」をUnnumberedに設定します。このインターフェースは、両拠点のプライベートLAN同士を接続する仮想インターフェースです。


  13. 経路情報を設定します。ルーターAのLAN側(192.168.10.0/24)宛てのパケットは、L2TP上のPPPインターフェース「1」を通じて送り出します。


  14. ここからIPXの設定を行います。最初にIPXモジュールを有効にします。


  15. LAN側(eth0)インターフェースにIPXネットワーク番号を設定します。


  16. L2TP仮想回線上のPPPインターフェース「1」にIPXネットワーク番号を設定します。また、「DEMAND=ON」を指定し、RIPパケットやSAPパケットの定期交換を行わないようにします。


  17. ルーターA側IPXネットワーク(401)への経路情報を設定します。この例ではRIP/SAPを使用していないため、スタティックルートの登録が必須です。


  18. ルーターA側にあるNetWareサーバーへの経路と、サーバーが提供するサービスをスタティックに登録します。ROUTEにはサーバーのインターナルネットワーク番号を指定します。SERVICEにはサーバー名を、ADDRESSにはファイルサーバーのインターナルネットワーク番号:ステーション番号:NCPソケットアドレスを指定します。TYPEにはサービスの種類を、HOPSにはサーバーまでのホップ数を指定します。


  19. ファイアウォール機能を有効にします。


  20. ファイアウォールの動作を規定するファイアウォールポリシーを作成します。


  21. ICMPパケットはPing(Echo/Echo Reply)と到達不可能(Unreachable)のみ双方向で許可します。


    Note - デフォルト設定では、ICMPはファイアウォールを通過できません。

  22. ルーターのidentプロキシー機能を無効にし、外部のメール(SMTP)サーバーなどからのident要求に対して、ただちにTCP RSTを返すよう設定します。


  23. ファイアウォールポリシーの適用対象となるインターフェースを設定します。


  24. ダイナミックENATの設定を行います。NAT用グローバルアドレスには、eth0-0に設定したインターフェースアドレス200.100.20.1を共用します。


  25. 相手ルーターから受信したL2TPパケット(UDP1701番)がファイアウォールを通過できるように設定します。


  26. 設定は以上です。設定内容をファイルに保存し、SET CONFIGコマンドで起動時設定ファイルに指定します。

まとめ

ルーターAのコンフィグ [テキスト版]
SET BRI=0 MODE=TDM ACTIVATION=ALWAYS TDMSLOTS=1-2
CREATE TDM GROUP=ISPA INT=bri0 SLOTS=1-2
CREATE PPP=0 OVER=TDM-ISPA LQR=OFF
ENABLE IP
ADD IP INT=eth0-0 IP=200.100.10.1 MASK=255.255.255.240
ADD IP INT=eth0-1 IP=192.168.10.1 MASK=255.255.255.0
ADD IP INT=ppp0 IP=0.0.0.0
ADD IP ROUTE=0.0.0.0 INT=ppp0 NEXT=0.0.0.0
ENABLE L2TP
ENABLE L2TP SERVER=BOTH
SET L2TP PASSWORD=l2tpA
ADD L2TP CALL=remote IP=200.100.20.1 TYPE=VIRTUAL REMOTE=remote PRECEDENCE=OUT PASSWORD=l2tpB
CREATE PPP=1 OVER=TNL-remote IDLE=ON BAP=OFF LQR=OFF
ADD IP INT=ppp1 IP=0.0.0.0
ADD IP ROUTE=192.168.20.0 MASK=255.255.255.0 INT=ppp1 NEXT=0.0.0.0
ENABLE IPX
ADD IPX CIRCUIT=1 INTERFACE=eth0 NETWORK=401 ENCAPSULATION=802.3
ADD IPX CIRCUIT=2 INTERFACE=ppp1 NETWORK=129 DEMAND=ON
ADD IPX ROUTE=12 CIRCUIT=2 NEXTHOP=129:0000f4740022
ENABLE FIREWALL
CREATE FIREWALL POLICY=net
ENABLE FIREWALL POLICY=net ICMP_F=PING,UNREACH
DISABLE FIREWALL POLICY=net IDENTPROXY
ADD FIREWALL POLICY=net INT=eth0-0 TYPE=PRIVATE
ADD FIREWALL POLICY=net INT=eth0-1 TYPE=PRIVATE
ADD FIREWALL POLICY=net INT=ppp0 TYPE=PUBLIC
ADD FIREWALL POLICY=net INT=ppp1 TYPE=PRIVATE
ADD FIREWALL POLICY=net NAT=ENHANCED INT=eth0-1 GBLINT=ppp0 GBLIP=200.100.10.1
ADD FIREWALL POLICY=net RU=1 AC=ALLOW INT=ppp0 PROT=UDP GBLPO=1701 GBLIP=200.100.10.1 PO=1701 IP=200.100.10.1


ルーターBのコンフィグ [テキスト版]
SET BRI=0 MODE=TDM ACTIVATION=ALWAYS TDMSLOTS=1-2
CREATE TDM GROUP=ISPB INT=bri0 SLOTS=1-2
CREATE PPP=0 OVER=TDM-ISPB LQR=OFF
ENABLE IP
ADD IP INT=eth0-0 IP=200.100.20.1 MASK=255.255.255.240
ADD IP INT=eth0-1 IP=192.168.20.1 MASK=255.255.255.0
ADD IP INT=ppp0 IP=0.0.0.0
ADD IP ROUTE=0.0.0.0 INT=ppp0 NEXT=0.0.0.0
ENABLE L2TP
ENABLE L2TP SERVER=BOTH
SET L2TP PASSWORD=l2tpB
ADD L2TP CALL=remote IP=200.100.10.1 TYPE=VIRTUAL REMOTE=remote PRECEDENCE=IN PASSWORD=l2tpA
CREATE PPP=1 OVER=TNL-remote IDLE=ON BAP=OFF LQR=OFF
ADD IP INT=ppp1 IP=0.0.0.0
ADD IP ROUTE=192.168.10.0 MASK=255.255.255.0 INT=ppp1 NEXT=0.0.0.0
ENABLE IPX
ADD IPX CIRCUIT=1 INTERFACE=eth0 NETWORK=12 ENCAPSULATION=802.3
ADD IPX CIRCUIT=2 INTERFACE=ppp1 NETWORK=129 DEMAND=ON
ADD IPX ROUTE=401 CIRCUIT=2 NEXTHOP=129:0000f4740012
ADD IPX ROUTE=7500 CIRCUIT=2 NEXTHOP=129:0000f4740012
ADD IPX SERVICE=Accounts ADDRESS=7500:00000001:0451 TYPE=file CIRCUIT=2 HOPS=2
ENABLE FIREWALL
CREATE FIREWALL POLICY=net
ENABLE FIREWALL POLICY=net ICMP_F=PING,UNREACH
DISABLE FIREWALL POLICY=net IDENTPROXY
ADD FIREWALL POLICY=net INT=eth0-0 TYPE=PRIVATE
ADD FIREWALL POLICY=net INT=eth0-1 TYPE=PRIVATE
ADD FIREWALL POLICY=net INT=ppp0 TYPE=PUBLIC
ADD FIREWALL POLICY=net INT=ppp1 TYPE=PRIVATE
ADD FIREWALL POLICY=net NAT=ENHANCED INT=eth0-1 GBLINT=ppp0 GBLIP=200.100.20.1
ADD FIREWALL POLICY=net RU=1 AC=ALLOW INT=ppp0 PROT=UDP GBLPO=1701 GBLIP=200.100.20.1 PO=1701 IP=200.100.20.1





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