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CentreCOM AR300/AR700 シリーズ 設定例集 2.3 #124

BGP-4:1つのISPに対するマルチホーム(MED値による負荷分散)


ドメイン間経路制御プロトコルBGP-4(Border Gateway Protocol version 4)の設定例です。ここでは、1つのISPに複数回線で接続するマルチホームの構成例を示します。BGP-4では、経路情報にさまざまな「属性」を付加することにより、他ASの経路選択プロセスに影響を与えることができます。この例では、MULTI_EXIT_DISC(MED)属性を利用して下りトラフィックの負荷分散を試みます。

ここでは、次のような構成のネットワークを例に解説します。


ルーター(AS 65020)は配下に2つのサブネット(プレフィックス)を持ち、ISP(AS 65010)と2つの回線で接続しています。AS 65020では、ISPからの下りトラフィックが次のように負荷分散されることを望んでいます。


これを実現するため、AS 65020はISPに対し、各プレフィックス(192.168.10.0/24と192.168.20.0/24)に次のようなMED(MULTI_EXIT_DISC)値を付加してISPに通知します。


MED値は、他ASと複数点で接続している場合に、特定プレフィックス宛てのトラフィックをどの回線経由で送信すべきか選択するときに使うメトリック(コスト)値です。値が小さい経路ほど優先的に使用されます。ASは経路制御ポリシーを実現する目的でMED値を設定し、他のASに通知します。このMED値をもとに経路選択を行うのは、通知を受ける側であることに注意してください。

ISP側から見た場合、AS 65020内の2つのプレフィックス宛ての経路は次のように見えます。


結果として、ISPは192.168.10.0/24宛ての経路としてppp0側回線を、192.168.20.0/24宛ての経路としてppp1側回線を選ぶことが期待されます。また、ppp0側回線がダウンした場合は、192.168.10.0/24宛て、192.168.20.0/24宛ての両方がppp1側経由で送られてきます。


ルーターの設定

  1. 専用線の設定を行います。


  2. PPPインターフェースを作成します。


  3. IPモジュールを有効にします。


  4. 各インターフェースにIPアドレスを割り当てます。


  5. 自AS番号を設定します。


  6. ppp0側のBGPピアを指定します。自分と異なるAS番号を持つピアはE-BGPピア(外部ピア)となります。


  7. ppp1側のBGPピアを指定します。自分と異なるAS番号を持つピアはE-BGPピア(外部ピア)となります。


  8. コミュニティー値「65020:10」を設定するルートマップ「prefix10」を作成します。COMMUNITYパラメーターにはコミュニティー値を10進数で指定しなくてはならないため、65020×65536+10=4261150730を指定します。


    Note - BGPコミュニティー(COMMUNITIES属性)は32ビットの符号なし整数値です。通常は、前半16ビットを自AS番号(a)、後半16ビットを任意の値(b)とし、これを「a:b」のように表します(a、bともに0〜65535の範囲の10進数)。ただし、本製品のコマンドではコミュニティー値を32ビットの10進数値1つで指定しなくてはならないため、「a × 65536 + b」を計算し、その結果を指定します。たとえば、「10:100」は「10 × 65536 + 100」で655460となります。

  9. BGPで配布するプレフィックスとして192.168.10.0/24を指定します。同プレフィックスにはルートマップ「prefix10」を適用し、コミュニティー値「65020:10」を付加します。


  10. コミュニティー値「65020:20」を設定するルートマップ「prefix20」を作成します。COMMUNITYパラメーターにはコミュニティー値を10進数で指定しなくてはならないため、65020×65536+20=4261150740を指定します。


  11. BGPで配布するプレフィックスとして192.168.20.0/24を指定します。同プレフィックスにはルートマップ「prefix20」を適用し、コミュニティー値「65020:20」を付加します。


  12. コミュニティー値「65020:10(4261150730)」にマッチするコミュニティーフィルター「1」を作成します。


  13. コミュニティー値「65020:20(4261150740)」にマッチするコミュニティーフィルター「2」を作成します。


  14. E-BGP経由で通知する経路のデフォルトMED値として「10」を指定します。


  15. ルートマップ「set_med_ppp0」を作成し、コミュニティーフィルター「2」にマッチする経路(192.168.20.0/24)にMED値「300」を設定するエントリー「1」を追加します。その他の経路については、デフォルトのMED値の10が設定されます。


  16. ルートマップ「set_med_ppp1」を作成し、コミュニティーフィルター「1」にマッチする経路(192.168.10.0/24)にMED値「300」を設定するエントリー「1」を追加します。その他の経路については、デフォルトのMED値の10が設定されます。


  17. ppp0側のBGPピア(192.168.100.2)に経路を通知するときに、ルートマップ「set_med_ppp0」を適用してから通知するよう設定します。また、COMMUNITIES属性を通知するため「SENDCOMMUNITY=YES」を付けます。


  18. ppp1側のBGPピア(192.168.110.2)に経路を通知するときに、ルートマップ「set_med_ppp1」を適用してから通知するよう設定します。また、COMMUNITIES属性を通知するため「SENDCOMMUNITY=YES」を付けます。


  19. 各BGPピアとのセッションを開始します。


メモ

■ 経路表を確認するには、SHOW IP ROUTEコマンドを使います。


■ BGPピアの状態はSHOW BGP PEERコマンドで確認します。


■ BGP-4の経路表を確認するには、SHOW BGP ROUTEコマンドを使います。


■ BGP-4の設定情報を確認するにはSHOW BGPコマンドを使います。


■ コミュニティーフィルターの設定内容はSHOW IP COMMUNITYLISTコマンドで確認します。


■ ルートマップの設定内容はSHOW IP ROUTEMAPコマンドで確認します。

まとめ

ルーターのコンフィグ [テキスト版]
SET PRI=0 MODE=TDM TDMSLOTS=1-24
SET PRI=1 MODE=TDM TDMSLOTS=1-24
CREATE TDM GROUP=ispl INT=pri0 SLOTS=1-24
CREATE TDM GROUP=ispr INT=pri1 SLOTS=1-24
CREATE PPP=0 OVER=TDM-ispl
CREATE PPP=1 OVER=TDM-ispr
ENABLE IP
ADD IP INT=eth0 IP=192.168.10.1 MASK=255.255.255.0
ADD IP INT=eth1 IP=192.168.20.1 MASK=255.255.255.0
ADD IP INT=ppp0 IP=192.168.100.1 MASK=255.255.255.0
ADD IP INT=ppp1 IP=192.168.110.1 MASK=255.255.255.0
SET IP AUTONOMOUS=65020
ADD BGP PEER=192.168.100.2 REMOTEAS=65010
ADD BGP PEER=192.168.110.2 REMOTEAS=65010
ADD IP ROUTEMAP=prefix10 ENTRY=1 SET COMMUNITY=4261150730
ADD BGP NETWORK=192.168.10.0/24 ROUTEMAP=prefix10
ADD IP ROUTEMAP=prefix20 ENTRY=1 SET COMMUNITY=4261150740
ADD BGP NETWORK=192.168.20.0/24 ROUTEMAP=prefix20
ADD IP COMMUNITYLIST=1 INCLUDE=4261150730
ADD IP COMMUNITYLIST=2 INCLUDE=4261150740
SET BGP MED=10
ADD IP ROUTEMAP=set_med_ppp0 ENTRY=1 MATCH COMMUNITY=2 ACTION=INCLUDE
ADD IP ROUTEMAP=set_med_ppp0 ENTRY=1 SET MED=300
ADD IP ROUTEMAP=set_med_ppp1 ENTRY=1 MATCH COMMUNITY=1 ACTION=INCLUDE
ADD IP ROUTEMAP=set_med_ppp1 ENTRY=1 SET MED=300
SET BGP PEER=192.168.100.2 OUTROUTEMAP=set_med_ppp0 SENDCOMMUNITY=YES
SET BGP PEER=192.168.110.2 OUTROUTEMAP=set_med_ppp1 SENDCOMMUNITY=YES
ENABLE BGP PEER=192.168.100.2
ENABLE BGP PEER=192.168.110.2





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