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CentreCOM ARX640S 設定例集 5.1.5 #18

PPPoE接続環境における2点間IPsec VPN(ARXルーター側アドレス不定、SSG550対向)


PPPoEでインターネットに接続している拠点間をIPsecで結ぶVPN構築例です。インターネットサービスプロバイダー(以下ISP)から動的にIPアドレスが割り当てられるルーター(ルーターA:ARX640S)と固定IPアドレスが割り当てられているルーター(ルーターB:SSG550)をIPsec(ESP)トンネルで接続します。


ここでは、次のようなネットワーク構成を例に解説します。


ISPからは、次の情報が提供されているものとします。

表 1:ISPの情報
 
ルーターA
ルーターB
PPPユーザー名 user2@example user1@example
PPPパスワード password
PPPoEサービス名 指定なし
使用できるIPアドレス グローバルアドレス1個(動的割り当て) 10.10.10.1/32
接続形態 端末型(アドレス1個不定) 端末型(アドレス1個固定)
DNSサーバー 接続時に通知される


ルーターA、Bは以下のように設定するものとします。

表 2:ルーターの基本設定
 
ルーターA
ルーターB
WAN側物理インターフェース gigabitEthernet 0 ethernet0/2
WAN側(gigabitEthernet 0.1)IPアドレス 動的割り当て 10.10.10.1/32
LAN側(vlan 1)IPアドレス 192.168.20.1/24 192.168.10.1/24
VPN接続設定
ローカルセキュアグループ 192.168.20.0/24 192.168.10.0/24
リモートセキュアグループ 192.168.10.0/24 192.168.20.0/24
トンネル終端アドレス 10.10.10.1 不定
IKE設定
交換モード Aggressiveモード
認証方式 事前共有鍵(pre-shared key)
事前共有鍵 secret(文字列)
ローカルID/リモートID client/なし なし/client
暗号化認証アルゴリズム 3DES & SHA1-DH2
有効期限 3600秒(1時間) 3600秒(1時間)(デフォルト)
DPDによる死活監視 行わない
起動時のISAKMPネゴシエーション 行う 行わない
IPsec設定
SAモード トンネルモード
セキュリティープロトコル ESP
暗号化認証アルゴリズム 3DES & SHA1
PFSグループ なし
有効期限 3600秒(1時間)(デフォルト)

本構成における設定のポイントは、次の通りです。


ルーターA(ARXルーター)の設定

  1. ISPから通知されたPPPユーザー名やパスワード等のPPP設定情報を作成します。


  2. WAN0インターフェース(gigabitEthernet 0)を有効にします。


  3. WAN0インターフェース上にPPPoEインターフェース(gigabitEthernet 0.1)を作成し、インターフェースを使用できるようにします。
    接続時にIPアドレス割り当ての要求を行うように設定し、このインターフェース上で使用するPPP設定情報を括り付けます。
    また、LAN側ネットワークに接続されているすべてのコンピューターがENAT(NAPT)機能を使用できるよう設定します。
    外部からのアタック検出時やアタック発生中にパケットを破棄するように設定します。


  4. LAN側インターフェース(vlan 1)にIPアドレスを設定します。


  5. IPインターフェースがリンクダウンしているときでも、そのインターフェース宛の通信に応答できるように設定します。


  6. デフォルトルートを設定します。


  7. 外側からの通信を遮断しつつ、内側からの通信は自由に行えるようにするファイアウォール機能の設定をし、PPPoEインターフェース上に割り当てます。


  8. Phase1のProposal、およびISAKMPポリシーを設定します。


  9. Phase2のProposal、およびIPsecポリシーを設定します。


  10. トンネルインターフェース(tunnel 0)を作成し、インターフェースを使用できるようにします。
    このトンネルインターフェースに対応するIPsecポリシーを設定します。


  11. ルーターBのLAN側(192.168.10.0/24)宛のルートを設定します。
    また、ルーター間のVPN接続が有効になるまでは、このルートを使用できないように設定します。


  12. 設定は以上です。設定内容をstartup-configに保存します。


ルーターB(SSG550)の設定

  1. あらかじめ 192.168.1.0/24 のサブネット内のIPアドレスを設定したコンピューターを接続して「http://192.168.1.1」をWebブラウザーで開くと、「Rapid Deployment Wizard」メニュー画面が表示されます。
    この設定例ではWizardを使用しませんので、[No, skip the Wizard and go straight to the WebUI management session instead.]を選択して[Next >>]をクリックします。

  2. LOGIN画面が表示されます。ユーザー名とパスワードを入力して[Login]をクリックします。
    初期状態でのユーザー名、パスワードは「netscreen」「netscreen」です。

  3. Main画面が表示されます。

  4. まず、LAN インターフェースの設定を行います。
    画面左のメニューから[Network]-[Interfaces]を選択し、インターフェースリスト画面が表示されたら、「ethernet0/0」の「Edit」をクリックします。


  5. インターフェース設定画面が表示されます。
    以下のようにLAN側インターフェースの設定を変更し、[OK]をクリックします。

    [IP Address/Netmask] 192.168.10.1/24
    [Manage IP] 初期設定を削除し、空欄に変更

    Note - OKを押すと機器のIPアドレスが変更されるため、設定画面は更新されません。

  6. コンピューターのIPアドレス設定を「192.168.10.0/24」内のIPアドレスに変更した後、「http://192.168.10.1」をWebブラウザーで開き、再度Main画面を表示させます。
    Note - ルーターBのDHCPサーバー機能は無効になっていますので、コンピューターの設定はご自身で変更してください。

  7. 次に、WAN インターフェースの設定を行います。
    画面左のメニューから[Network]-[Interface]を選択し、インターフェースリスト画面が表示されたら、「ethernet0/2」の「Edit」をクリックします。


  8. インターフェース編集画面が表示されます。
    以下のようにWAN側インターフェースの設定を変更したら、[OK]をクリックします。

    [IP Address/Netmask] 10.10.10.1/32
    [Manageable] 無効(チェックなし)
    [Manage IP] 初期設定を削除し、空欄に変更


  9. 画面左のメニューから[Network]-[PPP]-[PPPoE Profile]を選択し、PPPoE リストが表示されたら画面右上の[New]をクリックします。


  10. PPPoE Profile編集画面が表示されます。
    以下のようにPPPoEの設定を変更したら、[OK]をクリックします。

    [PPPoE Instance] ISP-B(任意の名前)
    [Bound to Interface] ethernet0/2
    [Username] user1@example
    [Password] password
    [Auto-Connect]を選択し、[Auto-Connect右の入力ボックス]に「10」を入力
    [Static IP] 有効(チェックあり)
    [Automatic Update of DHCP Servers’ DNS Parameters] 無効(チェックなし)
    [PPP lcp Echo Retries] 5
    [PPP lcp Echo Timeout] 30


  11. 次に、IPsecで使用するトンネルインターフェース用のゾーンを作成します。
    画面左のメニューから[Network]-[Zones]を選択して、ゾーンリスト画面が表示されたら画面右上の[New]をクリックします。


  12. ゾーン設定編集画面が表示されます。
    以下のようにゾーンの設定を変更したら、[OK]をクリックします。

    [Zone Name] VPN-ZONE
    [Zone Type] Layer 3


  13. 次に、IPsecで使用するトンネルインターフェースを作成します。
    画面左のメニューから[Network]-[Interfaces]を選択し、インターフェースリスト画面が表示されたら、画面右上のリストから[Tunnel IF]を選択して[New]をクリックします。


  14. インターフェース設定画面が表示されます。
    以下のようにトンネルインターフェースの設定を変更したら、[OK]をクリックします。

    [Zone(VR)] VPN-ZONE(trust-vr)
    [Unnumbered] を選択し、[Interface]で「ethernet0/2(trust-vr)」を選択


  15. 次に、ルーターA と通信するためのIPsec Phase 1 Proposal設定を作成します。
    画面左のメニューから[VPNs]-[Autokey Advanced]-[P1 Proposal]を選択して、P1 Proposalリスト画面が表示されたら、画面右上の[New]をクリックします。


  16. P1 Proposal設定画面が表示されます。
    以下のようにPhase1 Proposalの設定を変更したら、[OK]をクリックします。

    [Name] ar-p1
    [Lifetime] 1 Hours


  17. 次に、ルーターA と通信するためのIPsec Phase 2 Proposal設定を作成します。
    画面左のメニューから[VPNs]-[Autokey Advanced]-[P2 Proposal]を選択して、P2 Proposalリスト画面が表示されたら、画面右上の [New]をクリックします。


  18. P2 Proposal設定画面が表示されます。
    以下のようにPhase2 Proposalの設定を変更したら、[OK]をクリックします。

    [Name] ar-p2
    [Perfect Forward Secrecy] NO-PFS
    [Encapsulation] Encryption
    [Encapsulation Algorithm] 3DES-CBC
    [Authentication Algorithm] SHA-1
    [Lifetime] 1 Hours


  19. 次に、IPsecの接続先の設定を作成します。
    画面左のメニューから[VPNs]-[Autokey Advanced]-[Gateway]を選択して、Gatewayリスト画面が表示されたら、画面右上の [New]をクリックします。


  20. Gateway設定画面が表示されます。
    以下のように設定を変更したら、さらに詳細設定を行うために[Advanced]をクリックします。

    [Gateway Name] ar-gw
    [Remote Gateway]-[Dynamic IP Address] を選択し、[Peer ID]に「client」を入力


  21. 詳細設定が表示されます。
    以下のように設定を変更したら、画面下部の[Return]をクリックします。

    [Preshared Key] secret
    [Outgoing Interface] ethernet0/2
    [Security Level]で「Custom」を選択し、[Phase 1 Proposal]で「ar-p1」のみを選択、他の3つは「None」
    [Mode(Initiator)] Aggressive


  22. 手順20.の画面に戻るので、[OK]をクリックします。


  23. 次に、IPsecトンネルの設定を行います。
    画面左のメニューから[VPNs]-[Autokey IKE]を選択して以下の画面が表示されたら、画面右上の[New]をクリックします。


  24. VPN設定編集画面が表示されます。
    以下のように設定を変更したら、さらに詳細設定を行うために[Advanced]をクリックします。

    [VPN Name] ar-vpn
    [Remote Gateway]−[Predefined] 「ar-gw」を選択


  25. 詳細設定が表示されます。
    以下のように設定を変更したら、画面下部の[Return]をクリックします。

    [Security Level]で「Custom」を選択し、[Phase 2 Proposal]で「ar-p2」のみを選択、他の3つは「None」
    [Bind-to]-[Tunnel Interface] tunnel.1
    [Proxy ID] 有効(チェックあり)
    [Local IP/Netmask] 192.168.10.0/24
    [Remote IP/Netmask] 192.168.20.0/24


  26. 手順24.の画面に戻るので、[OK]をクリックします。


  27. 次に、ルーティングについての設定を行います。
    画面左のメニューから[Network]-[Routing]-[Destination]を選択して、Routing Entries画面が表示されたら、画面右上のリストから[trust-vr]を選択して[New]をクリックします。


  28. Routing設定画面が表示されます。
    以下のように設定を変更したら、[OK]をクリックします。

    [IP Address/Netmask] 192.168.20.0/24
    [Next Hop]で「Gateway」を選択し、[Interface]で「tunnel.1」を選択


  29. 次に、ファイアウォールポリシーの設定を行います。
    画面左のメニューから[Policy]-[Policies]を選択して、ポリシーリスト画面を表示します。
    まず、LAN→IPsecトンネル方向の設定を行うため、以下のようにFrom/ToのZoneを選択して[New]をクリックします。

    [From] Trust
    [To] VPN-ZONE


  30. Policy設定編集画面が表示されるので、[OK]をクリックします。
    ここでは「すべて許可」のルールを作成するので、特に設定を変更する必要はありません。


  31. ポリシーリスト画面が再度表示されるので、引き続きIPsec→LAN方向のファイアウォールポリシーの設定を行います。
    以下のようにFrom/ToのZoneを選択して[New]をクリックします。

    [From] VPN-ZONE
    [To] Trust


  32. Policy設定編集画面が表示されるので、[OK]をクリックします。
    ここでも「すべて許可」のルールを作成するので、特に設定を変更する必要はありません。


  33. ポリシーリスト画面が再度表示されるので、引き続きIPsec→LAN方向のファイアウォールポリシーの設定を行います。
    以下のようにFrom/ToのZoneを選択して[New]をクリックします。

    [From] Trust
    [To] Untrust


  34. Policy設定編集画面が表示されるので、[OK]をクリックします。
    ここでも「すべて許可」のルールを作成するので、特に設定を変更する必要はありません。


  35. ポリシーリスト画面が再度表示されます(手順29.〜34.で設定したポリシーが再度表示されます)。
    なお、設定情報は、これまでの操作を行なった際に自動的に更新されていますので、保存操作は不要です。

まとめ

ルーターA(ARXルーター)のコンフィグ
!
service password-encryption
!
clock timezone JST 9
!
!
ip address-up-always
ppp profile pppoe0
 my-username user2@example password 8 e$QOccTYhEXbMdnN4uqTQgYCAAA
!
interface gigabitEthernet 0
 no shutdown
!
interface gigabitEthernet 0.1
 ip address ipcp
 ip tcp mss auto
 no shutdown
 pppoe enable
  ppp bind-profile pppoe0
 ip napt inside any
 ip traffic-filter pppoe0-in in
 ip traffic-filter pppoe0-out out
 ip ids in protect
!
interface gigabitEthernet 1
 shutdown
!
interface gigabitEthernet 2
 no shutdown
!
interface gigabitEthernet 3
 no shutdown
!
interface gigabitEthernet 4
 no shutdown
!
interface gigabitEthernet 5
 no shutdown
!
interface loop 0
 shutdown
!
interface loop 1
 shutdown
!
interface tunnel 0
 tunnel mode ipsec
 ip unnumbered vlan 1
 ip tcp mss auto
 no shutdown
 tunnel policy vpn
!
interface vlan 1
 ip address 192.168.20.1/24
 no shutdown
!
ip route default gigabitEthernet 0.1
ip route 192.168.10.0/24 tunnel 0
ip route 192.168.10.0/24 Null 254
!
access-list ip extended ipsec
 permit ip any any
access-list ip extended pppoe0-in
access-list ip extended pppoe0-out
 dynamic permit ip any any
!
isakmp proposal isakmp encryption 3des hash sha1 group 2
isakmp proposal isakmp lifetime 3600
!
isakmp policy i
 peer 10.10.10.1
 mode aggressive
 auth preshared key 8 e$I3eQu7yNuLxQA
 local-id client
 proposal isakmp
!
ipsec proposal ipsec esp encryption 3des hash sha1
!
ipsec policy vpn
 peer 10.10.10.1
 access-list ipsec
 local-id 192.168.20.0/24
 remote-id 192.168.10.0/24
 proposal ipsec
 always-up-sa
!
!
!
!
end





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PN: 613-001568 Rev.E

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