[index] CentreCOM 8700SLシリーズ コマンドリファレンス 2.9

スイッチング/スパニングツリープロトコル(STP/RSTP)


  - 基本設定
  - マルチプルSTPドメイン
  - スパニングツリーパラメーターの設定変更


スパニングツリープロトコルは、スイッチ(ブリッジ)ネットワークにおいて、冗長経路(複数経路)の設定を可能とし、ネットワークの耐障害性を高めるプロトコルです。

ネットワーク上に複数の経路を設定し、障害発生時に迂回路を使えるようにすることは自然な発想ですが、Ethernetではループ状の経路がブロードキャストストームによるネットワーク停止を招くため、そのままでは複数経路の設定自体ができません。

スパニングツリープロトコルを使用すると、ブリッジ同士がメッセージを交換し合うことにより、すべてのブリッジを含むツリー状の論理経路(スパニングツリー)が自立的に構築されます。物理的にループが存在しても、ツリーを構成しないポートは自動的にブロックされるため、パケットがループすることはありません。

また、障害が発生して一部の経路が不通になったときは、ツリーの再計算が行われ、自動的に新しい経路に切り替わる冗長機能も備えています。

スパニングツリープロトコルにはいくつかの種類がありますが、本製品では以下のバージョンをサポートしています。

表 1:スパニングツリープロトコルの種類
名称
略称
対応規格
スパニングツリープロトコル(STANDARDモード) STP IEEE 802.1D
スパニングツリープロトコル(RAPIDモード) RSTP (Rapid STP) IEEE 802.1w
マルチプルスパニングツリープロトコル MSTP (Multiple STP) IEEE 802.1s


この章では、このうちのSTPとRSTPの使用方法について説明します。MSTPについては、「スイッチング」/「マルチプルスパニングツリープロトコル(MSTP)」をご覧ください。

Note - STP/RSTPとMSTPを同時に有効化することはできません。

 

基本設定

本製品は、VLANグループ(1つ以上のVLANで構成)ごとに個別のスパニングツリーを構成するマルチプルSTPドメインに対応していますが、デフォルトの設定ではVLAN default、ユーザー定義のVLANとも、すべてのVLANがデフォルトのSTPドメイン「default」所属となります。

以下、スパニングツリープロトコルの基本設定コマンドについて解説します。

Note - 802.1X認証のAuthenticator/SupplicantポートとMACベース認証ポートでは、スパニングツリープロトコルを使用できません。

■ スパニングツリープロトコルを有効にするには、ENABLE STPコマンドを使います。各STPドメインのデフォルト設定は無効です。デフォルトSTPドメイン「default」でスパニングツリープロトコルを有効にするには、次のようにします。


■ スパニングツリープロトコルを無効にするには、DISABLE STPコマンドを使います。


■ スパニングツリーの設定を確認するには、SHOW STPコマンドを使います。


■ スパニングツリーのポート情報を確認するには、SHOW STP PORTコマンドを使います。


■ スパニングツリーの統計カウンターを確認するには、SHOW STP COUNTERコマンドを使います。


 

マルチプルSTPドメイン

本製品は、VLANグループ(1つ以上のVLANで構成)ごとに個別のスパニングツリーを構成するマルチプルSTPドメインに対応しています。各STPドメインは、それぞれ個別のスパニングツリーパラメーターを持ち、別々にルートブリッジを選出してスパニングツリーを構成します。

複数のSTPドメインを設定するときは、以下の点に注意してください。


なお、通常の環境では複数のSTPドメインを作成する必要はありません。

デフォルトの設定では、VLAN default、ユーザー定義のVLANとも、すべてのVLANがデフォルトのSTPドメイン「default」所属となります。

■ デフォルト以外のSTPドメインを作成するには、CREATE STPコマンドを使います。


■ STPドメインにVLANを追加するには、ADD STP VLANコマンドを使います。


Note - 本コマンドでは、デフォルトSTPドメインにVLANを追加することはできません。DELETE STP VLANコマンドを使ってVLANをデフォルト以外のSTPドメインから削除すると、自動的にデフォルトSTPの所属となります。

■ STPドメインからVLANを削除するには、DELETE STP VLANコマンドを使います。デフォルト以外のSTPドメインから削除されたVLANは、デフォルトSTPドメインの所属に戻ります。


■ STPドメインを削除するには、DESTROY STPコマンドを使います。所属VLANがあるSTPドメインは削除できないので、DELETE STP VLANコマンドで削除してから本コマンドを実行してください。所属VLANを削除後、STPドメインを削除するには次のようにします。


 

スパニングツリーパラメーターの設定変更

設定タイマーの変更方法など、より詳細な設定について解説します。

■ STPドメインのスパニングツリーパラメーター(各種タイマーとブリッジプライオリティー)を変更するには、SET STPコマンドを使います。変更できるパラメーターは次のとおりです。

表 2
パラメーター
説明
FORWARDDELAY ルートブリッジのポートがフォワーディング状態に遷移するまでの時間を調整するためのパラメーター。MODEがSTANDARDのときは、ルートブリッジ内のポートがリスニングからラーニング、ラーニングからフォワーディング状態に遷移するまでの時間(秒)を示す。MODEがRAPIDのときは、ディスカーディングからラーニング、ラーニングからフォワーディング状態に遷移するまでの最大時間(秒)を示す。有効範囲は4〜30秒。デフォルトは15秒。
HELLOTIME ハロータイム。ルートブリッジがBPDU(Bridge Protocol Data Unit)を送信する間隔(秒)。有効範囲は1〜10秒。デフォルトは2秒。
MAXAGE 最大エージタイム。ルートブリッジからBPDUが届かなくなったことを認識するまでの時間(秒)。この時間内にBPDUを受信できなかった場合、STPD内の各ブリッジはスパニングツリーの再構成を開始する。2×(HELLOTIME + 1) 以上、かつ、2× (FORWARDDELAY - 1) 以下でなくてはならない。有効範囲は6〜40秒。デフォルトは20秒。
PRIORITY ブリッジプライオリティー。小さいほど優先度が高く、ルートブリッジになる可能性が高くなる。MODEがRAPIDのときは4096の倍数で指定する(4096の倍数でない値を指定したときは、指定値より小さい直近の倍数に変換される)。有効範囲は0〜65535。デフォルトは32768。
MODE STPの動作モード。STANDARD(802.1d)、RAPID(802.1w)から選択する。動作モードを変更すると、STPのプロセスが初期化される。デフォルトはSTANDARD。
RSTPTYPE Rapid STP(MODE=RAPID)の動作モード。NORMAL(RSTP BPDUを使う)、STPCOMPATIBLE(標準のBPDUを使う)から選択する。デフォルトはNORMAL。


■ STPドメインのスパニングツリーパラメーター(MODEとRSTPTYPEを除く)をデフォルト値に戻したいときは、SET STPコマンドのDEFAULTオプションを使います。


■ スイッチポートのスパニングツリーパラメーターを変更するには、SET STP PORTコマンドを使います。変更できるパラメーターは次のとおりです。

表 3
パラメーター
説明
PATHCOST パスコスト。該当ポートを通過する際のコストを示すもので、一般的にはポートの通信速度に応じて設定する。有効範囲はSTPの動作モードによって異なり、STANDARDモードでは1〜1000000、RAPIDモードでは1〜200000000。通信速度ごとのデフォルト値と推奨範囲は別表を参照のこと。
PORTPRIORITY ポートプライオリティー。小さいほど優先度が高く、ルートポートになる可能性が高くなる。MODEがRAPIDのときは16の倍数で指定する(16の倍数でない値を指定したときは、指定値より小さい直近の倍数に変換される)。有効範囲は0〜255。デフォルトは128。
EDGEPORT MODEがRAPIDのとき、該当ポートがエッジポートかどうかを指定する。エッジポートとは、他のブリッジが存在しない末端(エッジ)のLANに接続されているポートのこと。ただし、EDGEPORT=YESを指定した場合でも、同ポートでRSTP BPDUを受信した場合はエッジポートとしては扱われなくなる。デフォルトはNO。
PTP MODEがRAPIDのとき、該当ポートが他のブリッジとポイントツーポイントで接続されているかどうかを指定する。AUTOを指定した場合は、本製品が自動判別する。デフォルトはAUTO。


表 4:STANDARDモードにおけるパスコストの推奨範囲とデフォルト値
通信速度
推奨範囲
デフォルト値
10Mbps 50〜600 100
100Mbps 10〜60 19
1000Mbps 3〜10 4


表 5:RAPIDモードにおけるパスコストの推奨範囲とデフォルト値
通信速度
推奨範囲
デフォルト値
10Mbps 200000〜2000000 2000000
100Mbps 20000〜200000 200000
1000Mbps 2000〜20000 20000


■ スイッチポートのスパニングツリーパラメーター(EDGEPORTとPTPを除く)をデフォルト値に戻したいときは、SET STP PORTコマンドのDEFAULTオプションを使います。


■ 特定ポートでスパニングツリープロトコルを無効にしたいときは、DISABLE STP PORTコマンドを使います。


■ 特定ポートでスパニングツリープロトコルを再度有効にするには、ENABLE STP PORTコマンドを使います。


■ スパニングツリーの再初期化を行うにはRESET STPコマンドを実行します。


■ スパニングツリープロトコルの設定をすべて消去するには、PURGE STPコマンドを使います。デフォルト以外のSTPドメインはすべて削除され、パラメーターはすべてデフォルトに戻ります。


Note - ランタイムメモリー上にあるスパニングツリープロトコル関連の設定がすべて削除されるため、運用中のシステムで本コマンドを実行するときは十分に注意してください。







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