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左から アライドテレシス中村、後藤、秋田県由利本荘市 情報政策課 今野氏、KUコンサルティング 高橋氏

自治体DXで目指す、実現すべき未来とは~前編~

自治体DXで目指す、実現すべき未来とは ~前編~

総務省は「三層分離対策の見直し」や「クラウド・バイ・デフォルト原則」など、自治体DXの実現に向けた施策や取り組みを提唱している。しかしながら、もともとのITインフラの導入や活用水準は自治体の大小や予算、また地域での差が大きく、どの自治体でも一足飛びに自治体DXを進められるものではない。

そこで、地方自治体のDX推進ご担当者様と、さまざまな地方自治体のITコンサルティングを行ってきたエキスパートそれぞれの目線から、自治体のデジタルトランスフォーメーションを中心に、今後自治体が行っていくべき施策とその考え方を聞いた。

目 次

自治体DXの現在

高橋様はさまざまな自治体様にDXやセキュリティのコンサルティング、アドバイスをされていらっしゃいますが、自治体様の「自治体DX」の進み具合はどうでしょうか。

KUコンサルティング 高橋氏

高橋氏

KUコンサルティング 高橋氏(「高」は正式には、はしごだか)
国が推進する「Society 5.01」や「誰1人取り残されない、人に優しいデジタル化」の実現には、自治体が大きな役割を担っています。
令和2年に策定された総務省の「自治体DX2推進計画」では、自治体がデジタルツールを使ってまずは自らがスマートになり業務を効率化すること、そこで生み出された余力で新しいサービスを作り出していくと書かれています。しかしその意味するところ“自治体DXの本質”をなかなか理解されていない自治体が多くいらっしゃいます。しっかりと住民に説明できるくらいにまず本質を理解することが大切です。
自治体DX化計画が進めば、自治体のスリム化・効率化といったメリットがあると思います。しかしそれ以上に大切なのは、自治体間のデータ連携やそのためのデータ/システムの標準化が整うことによって、データを中心とした新しい産業の創出や、新しいサービスの提供ができることです。単にシステムにかかる経費を安くすることをゴールにしてはいけないと思います。

用語解説
  • 1

    Society 5.0:サイバー空間(仮想空間)とフィジカル空間(現実空間)を高度に融合させたシステムにより、経済発展と社会的課題の解決を両立する、人間中心の社会(Society)。狩猟社会(Society 1.0)、農耕社会(Society 2.0)、工業社会(Society 3.0)、情報社会(Society 4.0)に続く、新たな社会を指すもので、第5期科学技術基本計画において我が国が目指すべき未来社会の姿として初めて提唱された。

  • 2

    DX(ディーエックス):Digital Transformationの略。企業や組織が社会的な現象やビジネスを取り巻く激しい変化に対して、IoTやAIなど最新のデジタル技術を活用し、経済や社会に新たな価値を生み出しより良い変革を起こすこと。デジタル化が進んだ今日、企業や組織が生き残るためのキーワードとして注目を集めている。

データ活用まで進んでいる自治体様はどのくらいでしょうか。

KUコンサルティング 高橋氏

高橋氏

KUコンサルティング 高橋氏
まだまだ業務やシステムのスリム化、もしくはその前段階の自治体が多いですね。業務がアナログである限り、データは溜まりません。データが無くてはその活用もできないのです。
やはり、まずは業務をデジタル化して、それによってデータが蓄積されていくという流れを作ることが大切です。

今野様は由利本荘市で自治体DXを進められていますが、現在多くの自治体が進めている「DX」をどのようにお考えでしょうか。

秋田県由利本荘市 情報政策課 今野氏

今野氏

秋田県由利本荘市 情報政策課 今野 薫氏
今、多くの自治体が慌ただしく対応しているのは、基幹系業務システムの標準化だと思います。それに加えて、キャッシュレス、書かない窓口、遠隔相談、移動式期日前投票など、さまざまな案件が次々と出てきています。そうした個別の案件を、言葉が適切かは分かりませんが、「モグラ叩き」のように急いで対応していくので精一杯、というのが多くの自治体の実情です。
ですが、「モグラ叩き」だと全体最適にならない。高橋さんからデータ連携・データ活用のお話がありましたが、個別の案件に追われてしまうと、デジタル化していてもそこでデータが止まってしまいます。あらかじめデータ活用の仕方や連携の方法を決めて標準化していくなら良いのですが、個別の業務・システムの標準化が先行し、データの標準化が後回しになってしまっていて、最近ようやく追い付きつつあるという印象です。

個別に対応すべき案件は多いですよね。

秋田県由利本荘市 情報政策課 今野氏

今野氏

秋田県由利本荘市 情報政策課 今野 薫氏
個別の業務・システムやプロセスの構築、標準化が先行してしまうと、それをどうまとめていくのか、どう全体最適化していくのか、後になって乱雑とした状態を片付ける作業が必要になってしまいます。ある程度、あらかじめ全体を見据えて進めないと今後運用負荷に耐えられませんし、サービスデザインや住民の目線に基づいたUX(ユーザーエクスペリエンス)は実現できません。そうした課題があると思っています。

デジタル庁もでき、全体を見据えた施策も出始めています。

秋田県由利本荘市 情報政策課 今野氏

今野氏

秋田県由利本荘市 情報政策課 今野 薫氏
デジタル庁でもグランドデザインやビジョンを描いています。ただ、短期的にある程度の成果を上げるための施策も多く、中長期的な課題とどのように上手く折り合わせながら進めていくのかが難しいと思います。

先ほど「自治体DXの意味が浸透していない」というお話がありましたが、高橋様は自治体DXの課題と感じられることは他にありますか。

KUコンサルティング 高橋氏

高橋氏

KUコンサルティング 高橋氏
今野さんが今おっしゃった通り、「モグラ叩き」のように場当たり的なトレンドに振り回されている状況はあると思います。その背景にあるのは、先述のとおり、そもそも自治体DXの意味や目的をはっきり理解していないという面があります。自治体のトップや経営層が理解していない=トレンドやトピックに追われてしまう、ということではないかと感じます。
担当者に聞いても、経営層の理解は非常に悩ましいところだとおっしゃる方も多いです。トップや経営層に対してどう働きかけていくか。そのために総務省は外部人材の活用を促していますが、外部人材だけで解決するわけではありません。その辺りを自治体がどう適切に整理していくかは、これからの課題ですね。

今野様は外部人材の活用や、意見を聞くということなどについてどう考えられますか。

秋田県由利本荘市 情報政策課 今野氏

今野氏

秋田県由利本荘市 情報政策課 今野 薫氏
まさに悩ましい話だと思います。由利本荘市でお願いしたCIO補佐官の方は、常勤の任期付き職員として来てもらいましたので、充分に内部の課題にコミットしていただけていますが、そうでないとなかなか難しいですよね。
どうしても今対応しなければいけないものがあるとき、外部人材は確かにカンフル剤になり良い面もあります。しかし、非常勤で月に数回しか来ない、任期も2年、3年しかないとなると、中長期的に物事を見ていただけないという面が心配です。
実際のところ、本当に重要な課題は5年後、10年後を考えて取り組まなければならないものです。そう考えると、やはり内部の職員で対応できる人がいるのが理想だとは思います。
とはいえ、あまりにプロパー過ぎるのもそれはそれで問題があります。自治体にとっての当たり前、国にとっての当たり前、世間にとっての当たり前がそれぞれ違うので、自治体に閉じてしまってはいけません。しっかりアンテナを張れる人なら良いですが、なかなかそうもいかないでしょうから。国が一時期言っていたように、人材交流などがあるとなお良いと思います。

アライドテレシスは日々自治体様ともお話をしていますが、お客様の課題はどのようなことでしょう。

アライドテレシス 後藤

後藤

アライドテレシス 後藤
私どもは自治体様の中でも特に情報政策課の方々とお話をさせていただくことが多いのですが、DX推進という前にまず既存のインフラ運用が大変だというお話が多いです。
情報通信は第4のインフラと言われますが、例えばビルの空調や電気、ガス、水道といった社会インフラは、約15年堅牢に動いています。ところが、第4のインフラである情報通信はたいてい5年、7年周期で更改となってしまいます。電気や水道などのインフラと比べて、運用の煩雑さも段違いです。つまり、情報通信は三大インフラと並んで使えて当たり前のインフラなのに、運用に費やされる時間とコストが多いという事実があります。
情報政策課様がDXを進めていくためには、本業の運用を簡素化していく部分と、それに伴うセキュリティの両輪をご提案しなくてはいけないと考えています。

アライドテレシス 中村

中村

アライドテレシス 中村
民間企業でも、ここまでのお話と通じる部分があります。DXを進めていく中で、これは当社内でも言えることなのですが、特に業務のフローやプロセスに歴史がある場合、業務システムを変える=業務のやり方を変える、という非常に高いハードルがあります。
また、業務システムにフローを合わせるのか、業務フローにシステムを合わせるのか、これも非常に難しい問題です。

由利本荘市が進める自治体DX

今野様は由利本荘市で自治体DXを進められています。由利本荘市の自治体DXは、10年前にCIO補佐官を外部からお招きしたことから始まったと言って良いでしょうか。

秋田県由利本荘市 情報政策課 今野氏

今野氏

秋田県由利本荘市 情報政策課 今野 薫氏
そうですね、そこからです。いろいろと事業は進めていたのですが、それでもあまりDXという実感は得られていませんでした。そうしているうちに新型コロナウイルスの感染拡大が起きて加速したという感じです。
「何をもってDXと言うか」は論点の一つだと思います。具体的な例として、今回アライドテレシスさんでの講演でお話した、LGWAN3接続系からMicrosoft 365の活用を実現した事業について言えば、コロナがきっかけとなり、直接的にはテレワークをどうするかという話です。これは確かにDXっぽい。
ただ、そういうあからさまなDX案件でなくても、どんな事業であってもDXを常に意識しないといけないと思っています。DXだとかデジタル化だとかいう言葉のニュアンスはさまざまあるわけですが、結局やろうとしていることは「デジタルを通じて、どうやってその業務、自治体をより良い方向に変革していくか」なのです。先ほど全体最適化とも言いましたが、デジタイゼーション4、デジタライゼーション5、あるいはOA化、IT化、それからDX、と言葉は少しずつ変わってはいるものの、そういう意味では、やっていることも目指すところも昔からあまり変わっていないですね。10年間ずっと同じことをやっているという気持ちではいます。

用語解説
  • 3

    LGWAN(エルジーワン):Local Government Wide Area Networkの略。地方公共団体の組織内ネットワークを相互に接続し、地方公共団体間のコミュニケーションの円滑化、情報の共有による情報の高度利用を図ることを目的とする、高度なセキュリティを維持した行政専用のネットワーク。

  • 4

    デジタイゼーション:アナログデータ、物理データのデジタルデータ化のこと。例えば紙で保管している顧客データや資料などをデータベース化することなどで、単純な業務の効率化を目指すことが目標。

  • 5

    デジタライゼーション:各業務やプロセスのデジタル化のことで、デジタイゼーションによってデジタル化したものをベースに、組織のビジネスモデル全体を一新して、サービスを提供するより良い方法を構築すること。

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由利本荘市様では2021年、コミュニケーションの課題を解決するために、LGWAN系接続端末から直接Microsoft 365を利用可能にする取り組みを実施しました。三層分離を維持しながら、Microsoft 365のトラフィックだけをローカルブレイクアウト6する方式で、安全性を担保しながら、利便性を大きく向上しました。この事業については、アライドテレシスが開催した「第6回 NETREND 自治体ネットワークオンラインセミナー 知っておきたい!クラウドを活用した新たな自治体ワークスタイル -自治体職員の働き方改革の普及促進に向けて-」で今野様にご講演いただきました。詳しい内容については、こちらからアーカイブ動画をご覧いただけます。

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用語解説
  • 6

    ローカルブレイクアウト:特定のアプリケーションを抽出して、データセンターを経由せずに拠点から直接インターネットへ接続し、センター側回線のトラフィックを削減する機能もしくはその方法のこと。インターネットブレイクアウトとも。

なるほど。由利本荘市が自治体DXで最終的に目指されていることはなんでしょう。

秋田県由利本荘市 情報政策課 今野氏

今野氏

秋田県由利本荘市 情報政策課 今野 薫氏
何をもって最終的なゴールとするのかというと、表現はその時々によっても違ってくると思います。ただ一つ、よりどころにするのであれば、地方自治法第2条だと考えています。地方自治法第2条には「最少の経費で最大の効果を」、そして「住民の福祉の増進に努めなければならない」と書いてあります。間違いなくこれがゴールの一つです。
今回講演した事業に関して言うと、「コミュニケーションを活性化させて、それによって職員の意識を変えて、より良い政策を出せるようになって、その政策を通じて住民の福祉を増大させていく」というストーリーになると思います。

講演では、生産性の向上効果が年間1億5000万円くらいという数字も出されていました。

秋田県由利本荘市 情報政策課 今野氏

今野氏

秋田県由利本荘市 情報政策課 今野 薫氏
それは中間成果ですね、KPI(Key Performance Indicator)です。KGI(Key Goal Indicator)ではありません。経費節減になったのは確かに一つの中間ゴールではありますが、それは何のためかと言うと、住民の税金をより効果的に使うためです。つまり先ほどの地方自治法第2条の「最小の経費で」というところですので、ゴールではないのです。

その意味ではコミュニケーションの向上もゴールではないのですね

秋田県由利本荘市 情報政策課 今野氏

今野氏

秋田県由利本荘市 情報政策課 今野 薫氏
コミュニケーションを向上することも中間成果ですね。コミュニケーションを向上して、職員のレベルを上げて、政策のレベルを上げて、最終的に「住民の福祉を増大させる」のがゴールです。
中間にさまざまなハードル、ゴールがあって、一つずつステップを踏んで、最終的なゴールがあります。ここがポイントで、やはり住民の福祉の増大という最終のゴールを忘れてしまうと、KPIの達成がゴールになってしまい、KPIさえ達成すればいいという話になってしまいます。
総務省が言う「自治体システムの経費3割削減」も本来はKPIです。つまり、何のために3割削減するのか、ということです。例えば、DXが進んでいくと、どんどん新しいシステムを入れるのですから、普通に考えてシステムの経費は増えますよね。その中で3割削減ってどうなのだろうと思うわけです。もちろん経費節減は大切ですが。
何が何でも3割削減で、その結果、職員が疲弊しようが住民サービスが劣化しようが関係ないという話になってしまってはいけません。最終ゴールは常に高いビジョンをもって意識して忘れないようにしなければいけないと思います。

自治体DXのゴールについて高橋様はどう思われますか。

KUコンサルティング 高橋氏

高橋氏

KUコンサルティング 高橋氏
自治体DX推進計画の中には、6つの重点取り組み項目があります。それら項目は今野さんが言われたようにKPIなのですが、その6項目だけやれば良いといったジレンマに陥ってしまう例も見受けられます。「そうじゃないですよね、もっと大きな目標が書いてありますよね。それをしっかりと踏まえた上で、その取り組むプロセスとしてこの6項目を進めてみてはどうですか」と、そのような視点で進めていってほしいと思っています。

由利本荘市様の自治体DXの話に戻りますが、ネットワークはいわゆる三層分離のαモデルに当たると思います。課題の解決にはβモデルへの移行という選択肢もあったと思うのですが。

秋田県由利本荘市 情報政策課 今野氏

今野氏

秋田県由利本荘市 情報政策課 今野 薫氏
私たちはゼロトラスト7の観点から見ています。βモデルだとセキュリティ対策が不十分なのです。EDR8や外部監査を入れてという話もありますが、ゼロトラストの観点、データ管理の観点にはほとんど言及されていませんので、それを看過してβモデルを採用するのはまだ少しリスクがあると思っています。
では、αモデルで十分かというと、そのままではクラウドが利用できません。クラウドを利用するにはどうしたらいいかと考え、講演でお話したように特定通信を拡張して、LGWAN接続系からMicrosoft 365を利用できるようにしました。
繰り返しになりますが、私たちが目指すのはゼロトラストアーキテクチャなので、αモデルからアプローチしても、βモデルからアプローチしても、話の本質は同じです。しかし、ある程度大きな組織では、βモデルからアプローチする場合は膨大なコストがかかります。αモデルから少しずつアプローチする方がコスト面でも段階的な移行ができ、まだ安心だと考えαモデルを選択しています。
ただ、αモデルだと言ってはいますが、段階を経て移行する形という意味では、厳密にはαモデルでもないのです。アライドテレシスさんでは、そのαモデルをベースとした独自モデルを提案していますよね。

用語解説
  • 7

    ゼロトラストセキュリティ:「信頼しない(ゼロトラスト)」ことを前提とするセキュリティ対策の考え方。モバイル端末の活用拡大、テレワークなどの働き方の変化により、これまでの「社内ネットワークの端末は安全」という境界型ではなく、全ての通信を信頼しない前提でさまざまなセキュリティ対策を行うことが必要となっている。

  • 8

    EDR(イーディーアール):Endpoint Detection and Responseの略。ネットワーク配下に接続されているパソコンなどいわゆるエンドポイントを監視し、疑わしい挙動や脅威を検知して対策などを講じる機能もしくは方法のこと。

たしかに、アライドテレシスは独自モデルを提案していますね。

アライドテレシス 後藤

後藤

アライドテレシス 後藤
私たちも議論を重ね、高橋さんにもご意見を伺いながら進めてきました。αだβだという言葉選びには本質的に意味はないというのは今野さんのおっしゃる通りです。ただやはり、三層対策の見直しの話をしていく中では、そうした分け方も必要という面もあるかなと思います。
自治体のお客様に、見直しについてアンケートを取らせていただいたことがあります。お聞きすると、「β、β'モデルへの移行ハードルがあまりにも高すぎるのでαに残ります」というご意見が圧倒的に多かったのです。
ですので、加えてαモデルの中で何を改善していけば良いのかをお伺いしました。その中で、インターネット分離9の改善、つまりLGWAN接続系の業務PCからインターネットを閲覧する際の利便性とコスト面を課題とするお客様が多くいらっしゃいました。そこで新しい方式のインターネット分離など、いろいろとご提案をしてきました。
でも結局、インターネット分離を改善しても、クラウド・バイ・デフォルト10の原則から考えると、過渡期だからこそのねじれといいますか、ある種の矛盾があるのは仕方の無い面もあるかと思っています。国としても自治体様自身としても、近い将来にゼロトラストの方向で、クラウドを利用した働き方改革、コミュニケーション強化、アイディアの創出に繋げていかなくてはならない。それが先ほど今野さんもおっしゃっていた福祉の向上に繋がり、本質だと思います。

用語解説
  • 9

    インターネット分離:重要な情報を扱うネットワークと、インターネットに接続するネットワークを分離して、情報漏えいやマルウェア感染などのリスクを排除する方法。安全性は高いが、業務用端末とインターネット閲覧用端末が個々に必要となり、使い分けや情報資産端末としての管理をする手間が発生する課題もある。

  • 10

    クラウド・バイ・デフォルト:政府情報システムにおいて、クラウドサービスを第一候補として検討するという考え方のことで、2018年に政府が公表した原則。民間企業と同じように、クラウドをうまく使用して自治体など公共市場においても柔軟な働き方を実現するための考え方。

アライドテレシス 中村

中村

アライドテレシス 中村
ガイドラインは一つの方針ではあります。しかし目的とすべきは、やはりクラウドなどを活用しながら、どう業務効率を上げて働き方を変えていくか、かつ、インシデントを起こさない業務環境をどう作るか。これらがインフラ構築の本質であると思います。当社のようなITインフラ業からすると、αモデルとβ、β’モデルで勝負というのは理想像ではあるのですが、両極端なモデルだとも考えています。そこでそれぞれの課題を埋めるような形で、バランスを取ったモデルがあっても良いよねというお話をさせていただいています。これを当社独自モデル(αモデル+ローカルブレイクアウト)として展開しています。
当社内のインフラもゼロトラストセキュリティモデルで運用しています。構築する苦労もよく知っており、全ての自治体様が一足飛びにそこに行けないであろうことも想像がつきます。
そうしたときには自治体様の特性も考え合わせて、どう現実的なモデルを描くかを一緒に考えたいと思い、選択肢の一つとして提示させていただいたのが当社独自のモデルです。すべてのお客様に当てはまらないかもしれないですが、選択肢の一つにはなり得るのではないかなと思います。

αモデルをベースにした当社独自モデル ソリューション一覧

由利本荘市様の自治体DXではテレワークを積極的に利用されていますね。

秋田県由利本荘市 情報政策課 今野氏

今野氏

秋田県由利本荘市 情報政策課 今野 薫氏
由利本荘市の場合は、東京から遠い、そして市域が広大ですので、オンラインを主戦場にしないと何もかもが回らないのが実情です。移動時間を削減するのは短期的にすごく効果が大きいので、サイバースペースを活用して、そのハンデを埋めていくということはこれからも進めていかなければいけないと思っています。

KUコンサルティング 高橋氏

高橋氏

KUコンサルティング 高橋氏
私は岩手県一関市のCIO補佐官を務めていますが、一関市はとても広い自治体です。他にもそうした広い自治体はありますが、平成の大合併で広くなったような自治体では、旧役場が支所として活用されていますので、その支所との連絡・連携体制を考えると、やはり今野さんがおっしゃるように、オンラインを生かすべきだと思います。

コロナ禍では多くの自治体様でもテレワークを取り入れられました。

KUコンサルティング 高橋氏

高橋氏

KUコンサルティング 高橋氏
昨今は災害が激甚化しておりますので、そうしたときのためにも、テレワークはBCP(事業継続計画)として必須でしょう。普段使いができているから、いざというときにもそのまま使える、そうしたテレワーク環境を今から全自治体が考えるべきだと思います。
秋田県由利本荘市 情報政策課 今野氏

今野氏

秋田県由利本荘市 情報政策課 今野 薫氏
テレワークは結果だと思っています。オンラインコミュニケーションが十分に生きる環境ができていれば、テレワークは自然とできますので、テレワークが目的にならないようにしないといけません。

なるほど。由利本荘市の職員さんはオンラインでのコミュニケーションには積極的でしょうか。

秋田県由利本荘市 情報政策課 今野氏

今野氏

秋田県由利本荘市 情報政策課 今野 薫氏
そうですね。導入しているTeamsに関しては素直に受け入れられています。ベンチマークのスコアも出ています。何より支所との連絡などが、ビデオ会議やチャットで気軽にとれるようになったのが感触としては大きいですね。
昔ながらのグループウェアと違ってビジネスチャットは、支所に限らず各部署との連携スピードを上げています。これは紙を持って説明に回ったり、毎回会議室に人を集めて協議したりといった従来のやり方に比べれば格段に速度が違います。

KUコンサルティング 高橋氏

高橋氏

KUコンサルティング 高橋氏
私がいた東京都豊島区役所でも今回のパンデミックで第一波が来たときに、各部署のトップが集まる危機管理会議をいち早くTeamsを使ってやりました。他の自治体が会議室に集まっているようなときに、迅速に動けたというのは、やはり日頃からツールが活用できていて、それが良い結果に繋がったのだと思います。

コミュニケーションツールはどんどん進化して、機能や使い勝手も良くなっていますよね。

秋田県由利本荘市 情報政策課 今野氏

今野氏

秋田県由利本荘市 情報政策課 今野 薫氏
逆に、気が付いたらUIが変わってしまって、今までと使い勝手が違うと苦痛に思う職員もいます。ですが、そうして環境は常に変わっていくものです。しかも概ね良い方向に。ですので、それはカルチャーとして身につけて、「変わらない業務はない」のだと考えられるようになって欲しいですね。
実は、そうしたことに慣れてもらう意味もあって、今回マイクロソフトさんのソリューションを選定しています。特定のバージョンに固定されたビジネスチャットをオンプレミスで導入するというやり方も、選択肢としてはあります。ビジネスチャットの話だけで済ませるのであればそれはそれで良いのですが、このたびの事業の本質は変化していく時代についていくためのカルチャー作りという部分が大きいので、そこはやっぱりTeamsとか、Google MeetとかSlackとか、そうした時代に合わせてどんどん進化するクラウドのツールを使っていければと考えました。

(後編に続きます)

登場者

秋田県由利本荘市 今野氏

秋田県由利本荘市
企画振興部 情報政策課 情報政策班
主査
今野 薫氏

総務省地域情報化アドバイザー 高橋氏

総務省地域情報化アドバイザー
総務省テレワーク・マネージャー
合同会社KUコンサルティング代表社員
高橋 邦夫氏

後藤 雅宏

アライドテレシス株式会社
執行役員
東日本営業本部 本部長
兼 公共推進室 室長
後藤 雅宏

中村 徹

アライドテレシス株式会社
IT DevOps本部 本部長
中村 徹

  • 本記事の内容は公開日時点の情報です。
  • 本記事の取材および撮影は感染予防対策を講じた上で行っております。
  • 記載されている商品またはサービスの名称等はアライドテレシスホールディングス株式会社、アライドテレシス株式会社およびグループ各社、ならびに第三者や各社の商標または登録商標です。
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