運用・管理 / RADIUSプロキシー


基本設定
複数のNASを集約する
ドメイン(レルム)によって転送先を振り分ける
任意の属性値によって転送先を振り分ける
RADIUSクライアント(NAS)側の設定
RADIUSサーバー側の設定
状況確認
その他
RADIUSクライアント機能とRADIUSプロキシーの併用
ローカルRADIUSサーバーとRADIUSプロキシーの併用


RADIUSプロキシーは、RADIUSクライアント(NAS)とRADIUSサーバーの間でRADIUSパケットを中継する機能です。

RADIUSプロキシーは、NASに対してはRADIUSサーバーとして、実際のRADIUSサーバーに対してはNASとしてふるまいます。
次図のように各拠点に多数のNASが散在する場合、各拠点にRADIUSプロキシーを配置すれば、中央のRADIUSサーバーから見たNASの数は少なくなります。
また、RADIUSサーバーの増設時やアドレスの変更時にも、RADIUSプロキシーの設定だけを変更すればよく、個々のNASの設定は変える必要がありません。


さらにRADIUSプロキシーでは、RADIUS要求パケットに含まれる属性値によって転送先のRADIUSサーバーを振り分けることもできます。
特に「username@DOMAIN」、「DOMAIN/username」のような形式のユーザー名を用いる環境において、DOMAIN部分(ドメインまたはレルムと呼びます)の値によって異なるRADIUSサーバーに転送する設定はよく使われます。

基本設定

複数のNASを集約する

ここではもっとも基本的な設定として、複数のNASをRADIUSプロキシーで集約し、実際のRADIUSサーバーから見たNASの数を少なくする設定を示します。
  1. RADIUSプロキシーの設定を行うため、RADIUSプロキシーモードに移動します。これには、radius-server proxy-serverコマンドを使います。
    awplus(config)# radius-server proxy-server
    awplus(config-radproxy)# 
    

  2. RADIUSプロキシーが上位RADIUSサーバーと通信するときに始点アドレスとして使用するIPアドレスを固定設定します。これには、source-interfaceコマンドを使います。
    上位RADIUSサーバーにはこのアドレスをNASアドレスとして登録することになります。
    awplus(config-radproxy)# source-interface 192.168.100.1
    

  3. 転送先のRADIUSサーバーを登録します。これには、serverコマンド(RADIUSプロキシーモード)を使います。
    keyにはRADIUSサーバー側で設定した共有パスワードを指定してください。
    転送先RADIUSサーバーを複数登録している場合は、NASからRADIUS要求を受信した時点で利用可能な(ダウンしていない)サーバーのうち、登録順の一番早いものに転送します。
    awplus(config-radproxy)# server 192.168.10.5 key secret5
    awplus(config-radproxy)# server 192.168.10.6 key secret6
    

  4. NASを登録します。これには、nasコマンドを使います。
    awplus(config-radproxy)# nas 192.168.10.101 key himitsu101
    awplus(config-radproxy)# nas 192.168.10.102 key himitsu102
    awplus(config-radproxy)# nas 192.168.10.103 key himitsu103
    awplus(config-radproxy)# nas 192.168.10.104 key himitsu104
    awplus(config-radproxy)# nas 192.168.10.105 key himitsu105
    

  5. RADIUSプロキシーは初期状態で無効化されているため、明示的に有効化する必要があります。これには、proxy enableコマンドを使います。
    awplus(config-radproxy)# proxy enable
    

ドメイン(レルム)によって転送先を振り分ける

ここでは、NASから受け取ったRADIUS要求のユーザー名(User-Name属性値)に含まれるドメイン(レルム)によって、下記のとおり転送先のRADIUSサーバーを振り分けるものとします。
ルール番号
ドメイン(レルム)
ユーザー名の例
転送先RADIUSサーバー
10 A user1@A
A\user1
user1%A
A/user1
172.16.10.5
172.16.10.6
20 B user1@B
B\user1
user1%B
B/user1
172.17.10.5
172.17.10.6
  その他(レルムなしを含む) user1
Z\user1
...
192.168.10.5
192.168.10.6

ドメイン(レルム)は、User-Name属性に含まれるユーザー名が次の形式の文字列のときだけ認識されます。
下記の例では、domainの部分がレルムとしてルールと照合されます。
照合後は、domain部分と区切り記号(@ % / \)は削除されてからRADIUSサーバーに転送されます(オプションにより削除しない設定も可能)。
username@DOMAIN
username%DOMAIN
DOMAIN/username
DOMAIN\username

  1. RADIUSプロキシーの設定を行うため、RADIUSプロキシーモードに移動します。これには、radius-server proxy-serverコマンドを使います。
    awplus(config)# radius-server proxy-server
    awplus(config-radproxy)# 
    

  2. RADIUSプロキシーが上位RADIUSサーバーと通信するときに始点アドレスとして使用するIPアドレスを固定設定します。これには、source-interfaceコマンドを使います。
    上位RADIUSサーバーにはこのアドレスをNASアドレスとして登録することになります。
    awplus(config-radproxy)# source-interface 192.168.100.1
    

  3. 転送先のRADIUSサーバーを登録します。
    keyにはRADIUSサーバー側で設定した共有パスワードを指定してください。
    ここでは、ユーザーの所属するドメイン(レルム)によって異なるサーバー群に転送させるため、ドメインごとにサーバーグループを定義します。
    サーバー自体の登録はserverコマンド(RADIUSプロキシーモード)で行います。
    awplus(config-radproxy)# server 172.16.10.5 key secret5A
    awplus(config-radproxy)# server 172.16.10.6 key secret6A
    awplus(config-radproxy)# server 172.17.10.5 key secret5B
    awplus(config-radproxy)# server 172.17.10.6 key secret6B
    awplus(config-radproxy)# server 192.168.10.5 key secret5
    awplus(config-radproxy)# server 192.168.10.6 key secret6
    

  4. 個々のサーバーを登録したら、groupコマンドでグループを作成し、serverコマンド(RADIUSプロキシー・サーバーグループモード)で登録済みのサーバーをグループに追加します。
    awplus(config-radproxy)# group A
    awplus(config-radproxy-gr)# server 172.16.10.5
    awplus(config-radproxy-gr)# server 172.16.10.6
    awplus(config-radproxy-gr)# exit
    awplus(config-radproxy)# group B
    awplus(config-radproxy-gr)# server 172.17.10.5
    awplus(config-radproxy-gr)# server 172.17.10.6
    awplus(config-radproxy-gr)# exit
    

  5. ドメイン(レルム)による振り分けルールを作成します。これには、rule realmコマンドを使います。
    awplus(config-radproxy)# rule 10 realm A group A
    awplus(config-radproxy)# rule 20 realm B group B
    

  6. NASを登録します。これには、nasコマンドを使います。
    awplus(config-radproxy)# nas 192.168.10.101 key himitsu101
    awplus(config-radproxy)# nas 192.168.10.102 key himitsu102
    awplus(config-radproxy)# nas 192.168.10.103 key himitsu103
    awplus(config-radproxy)# nas 192.168.10.104 key himitsu104
    awplus(config-radproxy)# nas 192.168.10.105 key himitsu105
    awplus(config-radproxy)# nas 192.168.10.106 key himitsu106
    awplus(config-radproxy)# nas 192.168.10.107 key himitsu107
    awplus(config-radproxy)# nas 192.168.10.108 key himitsu108
    awplus(config-radproxy)# nas 192.168.10.109 key himitsu109
    awplus(config-radproxy)# nas 192.168.10.110 key himitsu110
    

  7. RADIUSプロキシーは初期状態で無効化されているため、明示的に有効化する必要があります。これには、proxy enableコマンドを使います。
    awplus(config-radproxy)# proxy enable
    

任意の属性値によって転送先を振り分ける

ここでは、NASから受け取ったRADIUS要求の属性値によって、下記のとおり転送先のRADIUSサーバーを振り分けるものとします。
ルール番号
属性名
マッチ条件
属性値の例
転送先RADIUSサーバー
10 NAS-IP-Address 192.168.10.10* 192.168.10.101
192.168.10.102
...
172.16.10.5
172.16.10.6
20 NAS-IP-Address 192.168.10.11* 192.168.10.111
192.168.10.112
...
172.17.10.5
172.17.10.6
  その他 - 192.168.10.121
192.168.10.122
...
192.168.10.5
192.168.10.6

振り分けに使用できる属性は次のとおりです。

なお、User-Name属性はドメインベース転送ルール(rule realm)でもパターンマッチの対象になりますが、ドメインベース転送ルールではUser-Name属性値内のドメイン(レルム)文字列だけが照合されるのに対し、属性ベース転送ルールではUser-Name属性に含まれる文字列全体が照合されます。また、ドメインベース転送ルールではデフォルトでUser-Name属性値のドメイン部分を削除しますが、属性ベース転送ルールでは属性値の変更は行いません。

  1. RADIUSプロキシーの設定を行うため、RADIUSプロキシーモードに移動します。これには、radius-server proxy-serverコマンドを使います。
    awplus(config)# radius-server proxy-server
    awplus(config-radproxy)# 
    

  2. RADIUSプロキシーが上位RADIUSサーバーと通信するときに始点アドレスとして使用するIPアドレスを固定設定します。これには、source-interfaceコマンドを使います。
    上位RADIUSサーバーにはこのアドレスをNASアドレスとして登録することになります。
    awplus(config-radproxy)# source-interface 192.168.100.1
    

  3. 転送先のRADIUSサーバーを登録します。
    keyにはRADIUSサーバー側で設定した共有パスワードを指定してください。
    ここでは、NASのIPアドレス範囲によって異なるサーバー群に転送させるため、IP範囲ごとにサーバーグループを定義します。
    サーバー自体の登録はserverコマンド(RADIUSプロキシーモード)で行います。
    awplus(config-radproxy)# server 172.16.10.5 key secret5nas10x
    awplus(config-radproxy)# server 172.16.10.6 key secret6nas10x
    awplus(config-radproxy)# server 172.17.10.5 key secret5nas11x
    awplus(config-radproxy)# server 172.17.10.6 key secret6nas11x
    awplus(config-radproxy)# server 192.168.10.5 key secret5
    awplus(config-radproxy)# server 192.168.10.6 key secret6
    

  4. 個々のサーバーを登録したら、groupコマンドでグループを作成し、serverコマンド(RADIUSプロキシー・サーバーグループモード)で登録済みのサーバーをグループに追加します。
    awplus(config-radproxy)# group nas10x
    awplus(config-radproxy-gr)# server 172.16.10.5
    awplus(config-radproxy-gr)# server 172.16.10.6
    awplus(config-radproxy-gr)# exit
    awplus(config-radproxy)# group nas11x
    awplus(config-radproxy-gr)# server 172.17.10.5
    awplus(config-radproxy-gr)# server 172.17.10.6
    awplus(config-radproxy-gr)# exit
    

  5. 属性値による振り分けルールを作成します。これには、rule attributeコマンドを使います。
    awplus(config-radproxy)# rule 10 attribute NAS-IP-Address 192.168.10.10* group nas10x
    awplus(config-radproxy)# rule 20 attribute NAS-IP-Address 192.168.10.11* group nas11x
    

  6. NASを登録します。これには、nasコマンドを使います。
    awplus(config-radproxy)# nas 192.168.10.101 key himitsu101
    awplus(config-radproxy)# nas 192.168.10.102 key himitsu102
    awplus(config-radproxy)# nas 192.168.10.111 key himitsu111
    awplus(config-radproxy)# nas 192.168.10.112 key himitsu112
    awplus(config-radproxy)# nas 192.168.10.121 key himitsu121
    awplus(config-radproxy)# nas 192.168.10.122 key himitsu122
    

  7. RADIUSプロキシーは初期状態で無効化されているため、明示的に有効化する必要があります。これには、proxy enableコマンドを使います。
    awplus(config-radproxy)# proxy enable
    

RADIUSクライアント(NAS)側の設定

RADIUSプロキシーを使用する環境では、RADIUSクライアント(NAS)の設定時に、使用するRADIUSサーバーとしてRADIUSプロキシーのアドレスやポート番号を指定し、共有パスワードもRADIUSプロキシーのNAS設定(nasコマンド(RADIUSプロキシーモード))で指定した文字列を指定します。

RADIUSサーバー側の設定

RADIUSプロキシーを使用する環境では、RADIUSサーバーにおいて、RADIUSプロキシーのアドレスをNASのアドレスとして登録します。
前記設定例のように source-interfaceコマンド(RADIUSプロキシーモード)を設定している場合は、同コマンドで指定したアドレスをNASとして登録します。
RADIUSプロキシーの設定で上位サーバーを登録するときには、RADIUSサーバー側でNASごとに設定した共有パスワードが必要です。

状況確認

■ RADIUSプロキシーの転送先として登録した上位RADIUSサーバーの設定と状態は、show radius proxy-serverコマンドで確認できます。

■ RADIUSプロキシーの転送先として登録した上位RADIUSサーバーグループの設定と状態は show radius proxy-server groupコマンドで確認できます。

■ RADIUSプロキシーの転送先として登録した上位RADIUSサーバーごとの統計情報は show radius proxy-server statisticsコマンドで確認できます。

その他

RADIUSクライアント機能とRADIUSプロキシーの併用

同一装置上でRADIUSクライアント機能とRADIUSプロキシーを併用することもできます。

■ RADIUSクライアント機能の設定において、同一装置上のRADIUSプロキシーを使用するよう設定するには、以下に示す2つのコマンドで装置自身のIPアドレスと共有パスワードを設定します。
以下の例では装置のIPアドレスが「192.168.1.1」、共有パスワードが「secretA」であると仮定しています。

ローカルRADIUSサーバーとRADIUSプロキシーの併用

RADIUSプロトコルでは、デフォルトで下記のUDPポートを使います。

同一装置上でローカルRADIUSサーバーとRADIUSプロキシーを併用する場合は、上記のポート番号が重複するため、どちらかの機能で待ち受けに使うUDPポート番号を変更する必要があります。また、これにともない、RADIUSクライアント(NAS)側でも、接続先ポート番号の設定を変更する必要があります。
Note
ローカルRADIUSサーバーはアカウンティングをサポートしていないため、認証用のポート(デフォルト1812)だけを使います。

■ ローカルRADIUSサーバー側の待ち受けポートを変更するには、server auth-portコマンド(RADIUSサーバーモード)を使います。
また、ローカルRADIUSサーバーにアクセスするNAS側でも接続先ポート番号の設定を適宜変更してください。
awplus(config-radsrv)# server auth-port 11812

■ RADIUSプロキシー側の待ち受けポートを変更するには、proxy auth-portコマンド(RADIUSプロキシーモード)を使います。
また、RADIUSプロキシーにアクセスするNAS側でも接続先ポート番号の設定を適宜変更してください。
awplus(config-radproxy)# proxy auth-port 11812 acct-port 11813



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