IP / VRRP


プロトコル概要
基本設定
IPv4
ルーターA
ルーターB
IPv6
ルーターA
ルーターB


VRRP(Virtual Router Redundancy Protocol)は、複数のルーターをグループ化し、あたかも1台のルーターであるかのように見せかけることで、デフォルトゲートウェイを冗長化し、IPネットワークに冗長性を与えるプロトコルです。

本製品は、IPv4/IPv6両対応のVRRPv3をサポートしています。
Note
VRRPv3は、AlliedWare Plusバージョン5.4.2以前で使用されていたVRRPv2とは互換性がありませんのでご注意ください。
Note
IPv6でVRRPを使用する場合はIPv6機能の有効化が必要です。IPv6機能を有効化する方法については、「IPv6」/「一般設定」をご覧ください。

プロトコル概要

VRRPの基本的な考え方は次のとおりです。
Note
本製品は、本製品が所属するIPv4/IPv6ネットワークからバーチャルIP/IPv6アドレスへのICMP/ICMPv6に応答します。

基本設定

次に、実際に2台のルーターを用いてIPv4/IPv6のデフォルトゲートウェイを冗長化するための設定方法を示します。
IPv4用の設定とIPv6用の設定は下記の箇所を除いて同一です。


IPv4

ここでは、次のようなネットワーク構成を例にIPv4用のVRRP設定手順を示します。


この例では通常ルーターAが使用されますが、ルーターAが故障すると、同ルーターが定期的に送信しているVRRP AdvertisementパケットをルーターBが受信できなくなります。この場合、ルーターBはルーターAがダウンしたものと見なしてバックアップルーターからマスタールーターに移行し、両方のセグメントに対するデフォルトゲートウェイアドレスを引き継ぎます。ルーターAが復旧すると、ルーターBは元のバックアップルーターに戻ります。

なお、以下の各例では、VLANの作成とIPアドレスの設定は完了しているものとします。VLANの設定については、「L2スイッチング」の「バーチャルLAN」をご覧ください。IPアドレスの設定については、「IP」の「IPインターフェース」をご覧ください。

ルーターA

  1. router vrrpコマンドを実行して、vlan100インターフェース上にVRID=100のバーチャルルーター(以下、VR100)を作成し、該当バーチャルルーターの設定を行うためのVRRPモードに移行します。
    RouterA(config)# router vrrp 100 vlan100
    

  2. virtual-ipコマンドでVR100のバーチャルIPアドレスを設定します。ここではバーチャルIPアドレス10.100.100.32がインターフェースの実アドレスではないので、キーワードbackupを指定します。
    RouterA(config-router)# virtual-ip 10.100.100.32 backup
    

  3. priorityコマンドでVR100における優先度を設定します。こちらをデフォルトのマスタールーターにするため、優先度を初期値の100よりも高い101に設定します。
    RouterA(config-router)# priority 101
    

  4. circuit-failoverコマンドを用いて、vlan200(VR200)がダウンした場合にvlan100側(VRID=100)の優先度を引き下げ、ルーターBがマスタールーターになるよう設定します。
    RouterA(config-router)# circuit-failover vlan200 2
    

  5. enableコマンドを実行してVR100の動作を有効化します。これでVR100の設定は完了です。exitコマンドでグローバルコンフィグモードに戻り、次にVR200の設定に移ります。
    RouterA(config-router)# enable
    RouterA(config-router)# exit
    

  6. router vrrpコマンドを実行して、vlan200インターフェース上にVRID=200のバーチャルルーター(以下、VR200)を作成し、該当バーチャルルーターの設定を行うためのVRRPモードに移行します。
    RouterA(config)# router vrrp 200 vlan200
    

  7. virtual-ipコマンドでVR200のバーチャルIPアドレスを設定します。ここではバーチャルIPアドレス10.100.200.32がインターフェースの実アドレスではないので、キーワードbackupを指定します。
    RouterA(config-router)# virtual-ip 10.100.200.32 backup
    

  8. priorityコマンドでVR200における優先度を設定します。こちらをデフォルトのマスタールーターにするため、優先度を初期値の100よりも高い101に設定します。
    RouterA(config-router)# priority 101
    

  9. circuit-failoverコマンドを用いて、vlan100(VR100)がダウンした場合にvlan200側(VR200)の優先度を引き下げ、ルーターBがマスタールーターになるよう設定します。
    RouterA(config-router)# circuit-failover vlan100 2
    

  10. enableコマンドを実行してVR200の動作を有効化します。
    RouterA(config-router)# enable
    

ルーターB

  1. router vrrpコマンドを実行して、vlan100インターフェース上にVRID=100のバーチャルルーター(以下、VR100)を作成し、該当バーチャルルーターの設定を行うためのVRRPモードに移行します。
    RouterB(config)# router vrrp 100 vlan100
    

  2. virtual-ipコマンドでVR100のバーチャルIPアドレスを設定します。ここではバーチャルIPアドレス10.100.100.32がインターフェースの実アドレスではないので、キーワードbackupを指定します。
    RouterB(config-router)# virtual-ip 10.100.100.32 backup
    

  3. priorityコマンドでVR100における優先度を設定します。こちらをデフォルトのバックアップルーターにするため、優先度は初期値100のままとします。
    RouterB(config-router)# priority 100
    
    Note
    優先度100は初期値なので、実際には本コマンドを入力する必要はありません。

  4. enableコマンドを実行してVR100の動作を有効化します。これでVR100の設定は完了です。exitコマンドでグローバルコンフィグモードに戻り、次にVR200の設定に移ります。
    RouterB(config-router)# enable
    RouterB(config-router)# exit
    

  5. router vrrpコマンドを実行して、vlan200インターフェース上にVRID=200のバーチャルルーター(以下、VR200)を作成し、該当バーチャルルーターの設定を行うためのVRRPモードに移行します。
    RouterB(config)# router vrrp 200 vlan200
    

  6. virtual-ipコマンドでVR200のバーチャルIPアドレスを設定します。ここではバーチャルIPアドレス10.100.200.32がインターフェースの実アドレスではないので、キーワードbackupを指定します。
    RouterB(config-router)# virtual-ip 10.100.200.32 backup
    

  7. priorityコマンドでVR200における優先度を設定します。こちらをデフォルトのバックアップルーターにするため、優先度は初期値100のままとします。
    RouterB(config-router)# priority 100
    
    Note
    優先度100は初期値なので、実際には本コマンドを入力する必要はありません。

  8. enableコマンドを実行してVR200の動作を有効化します。
    RouterB(config-router)# enable
    

基本設定は以上です。

LAN上の各IPv4ホストには、デフォルトゲートウェイとして、バーチャルルーターのIPアドレス(バーチャルIPアドレス)を設定します。通常時には、ルーターAがマスタールーターとして機能し、VLAN間のトラフィックを転送します。ルーターAのインターフェースのどちらか(vlan100、vlan200)がリンクダウンした場合は、ルーターBがマスタールーターとなりバーチャルルーターとしての役割を引き継ぎます。このとき、バーチャルルーターのIPアドレスとMACアドレスは変化しないため、LAN上のホストがルーターの切り替えを意識することはありません。

Note
VLANインターフェースは、所属ポートがすべてリンクダウンして初めて「リンクダウン」状態になります。一方、VLAN所属ポートが1ポートでもリンクアップすれば、該当VLANインターフェースは「リンクアップ」状態になります。VRRPでは、VLANインターフェースのリンクアップ、リンクダウンを検出してマスタールーターを切り替えるため、VLAN所属ポートの設定に注意してください。上図のように、マスター、バックアップともVLAN所属ポートを1ポートのみとし、レイヤー2スイッチを介してクライアントや他のルーターと接続すると、確実にリンクダウンを検出させることができます。

IPv6

ここでは、次のようなネットワーク構成を例にIPv6用のVRRP設定手順を示します。


この例では通常ルーターAが使用されますが、ルーターAが故障すると、同ルーターが定期的に送信しているVRRP AdvertisementパケットをルーターBが受信できなくなります。この場合、ルーターBはルーターAがダウンしたものと見なしてバックアップルーターからマスタールーターに移行し、両方のセグメントに対するデフォルトゲートウェイアドレスを引き継ぎます。ルーターAが復旧すると、ルーターBは元のバックアップルーターに戻ります。

なお、以下の各例では、VLANの作成とIPv6アドレスの設定は完了しているものとします。VLANの設定については、「L2スイッチング」の「バーチャルLAN」をご覧ください。IPv6アドレスの設定については、「IPv6」の「IPv6インターフェース」をご覧ください。

ルーターA

  1. router ipv6 vrrpコマンドを実行して、vlan100インターフェース上にVRID=100のバーチャルルーター(以下、VR100)を作成し、該当バーチャルルーターの設定を行うためのVRRPモードに移行します。
    RouterA(config)# router ipv6 vrrp 100 vlan100
    

  2. virtual-ipv6コマンドでVR100のバーチャルIPv6アドレスを設定します。ここではバーチャルIPv6アドレス fe80::1 がインターフェースの実アドレスではないので、キーワードbackupを指定します。
    RouterA(config-router)# virtual-ipv6 fe80::1 backup
    
    Note
    バーチャルIPv6アドレスには、リンクローカルアドレスを指定する必要があります。

  3. priorityコマンドでVR100における優先度を設定します。こちらをデフォルトのマスタールーターにするため、優先度を初期値の100よりも高い101に設定します。
    RouterA(config-router)# priority 101
    

  4. circuit-failoverコマンドを用いて、vlan200(VR200)がダウンした場合にvlan100側(VRID=100)の優先度を引き下げ、ルーターBがマスタールーターになるよう設定します。
    RouterA(config-router)# circuit-failover vlan200 2
    

  5. enableコマンドを実行してVR100の動作を有効化します。これでVR100の設定は完了です。exitコマンドでグローバルコンフィグモードに戻り、次にVR200の設定に移ります。
    RouterA(config-router)# enable
    RouterA(config-router)# exit
    

  6. router ipv6 vrrpコマンドを実行して、vlan200インターフェース上にVRID=200のバーチャルルーター(以下、VR200)を作成し、該当バーチャルルーターの設定を行うためのVRRPモードに移行します。
    RouterA(config)# router ipv6 vrrp 200 vlan200
    

  7. virtual-ipv6コマンドでVR200のバーチャルIPv6アドレスを設定します。ここではバーチャルIPアドレス fe80::1 がインターフェースの実アドレスではないので、キーワードbackupを指定します。
    RouterA(config-router)# virtual-ipv6 fe80::1 backup
    
    Note
    バーチャルIPv6アドレスには、リンクローカルアドレスを指定する必要があります。

  8. priorityコマンドでVR200における優先度を設定します。こちらをデフォルトのマスタールーターにするため、優先度を初期値の100よりも高い101に設定します。
    RouterA(config-router)# priority 101
    

  9. circuit-failoverコマンドを用いて、vlan100(VR100)がダウンした場合にvlan200側(VR200)の優先度を引き下げ、ルーターBがマスタールーターになるよう設定します。
    RouterA(config-router)# circuit-failover vlan100 2
    

  10. enableコマンドを実行してVR200の動作を有効化します。
    RouterA(config-router)# enable
    

ルーターB

  1. router ipv6 vrrpコマンドを実行して、vlan100インターフェース上にVRID=100のバーチャルルーター(以下、VR100)を作成し、該当バーチャルルーターの設定を行うためのVRRPモードに移行します。
    RouterB(config)# router ipv6 vrrp 100 vlan100
    

  2. virtual-ipv6コマンドでVR100のバーチャルIPv6アドレスを設定します。ここではバーチャルIPv6アドレス fe80::1 がインターフェースの実アドレスではないので、キーワードbackupを指定します。
    RouterB(config-router)# virtual-ipv6 fe80::1 backup
    
    Note
    バーチャルIPv6アドレスには、リンクローカルアドレスを指定する必要があります。

  3. priorityコマンドでVR100における優先度を設定します。こちらをデフォルトのバックアップルーターにするため、優先度は初期値100のままとします。
    RouterB(config-router)# priority 100
    
    Note
    優先度100は初期値なので、実際には本コマンドを入力する必要はありません。

  4. enableコマンドを実行してVR100の動作を有効化します。これでVR100の設定は完了です。exitコマンドでグローバルコンフィグモードに戻り、次にVR200の設定に移ります。
    RouterB(config-router)# enable
    RouterB(config-router)# exit
    

  5. router ipv6 vrrpコマンドを実行して、vlan200インターフェース上にVRID=200のバーチャルルーター(以下、VR200)を作成し、該当バーチャルルーターの設定を行うためのVRRPモードに移行します。
    RouterB(config)# router ipv6 vrrp 200 vlan200
    

  6. virtual-ipv6コマンドでVR200のバーチャルIPv6アドレスを設定します。ここではバーチャルIPv6アドレス fe80::1 がインターフェースの実アドレスではないので、キーワードbackupを指定します。
    RouterB(config-router)# virtual-ipv6 fe80::1 backup
    
    Note
    バーチャルIPv6アドレスには、リンクローカルアドレスを指定する必要があります。

  7. priorityコマンドでVR200における優先度を設定します。こちらをデフォルトのバックアップルーターにするため、優先度は初期値100のままとします。
    RouterB(config-router)# priority 100
    
    Note
    優先度100は初期値なので、実際には本コマンドを入力する必要はありません。

  8. enableコマンドを実行してVR200の動作を有効化します。
    RouterB(config-router)# enable
    

基本設定は以上です。

LAN上の各IPv6ホストには、デフォルトゲートウェイとして、バーチャルルーターのIPv6リンクローカルアドレス(バーチャルIPv6アドレス)を設定します。通常時には、ルーターAがマスタールーターとして機能し、VLAN間のトラフィックを転送します。ルーターAのインターフェースのどちらか(vlan100、vlan200)がリンクダウンした場合は、ルーターBがマスタールーターとなりバーチャルルーターとしての役割を引き継ぎます。このとき、バーチャルルーターのIPv6リンクローカルアドレスとMACアドレスは変化しないため、LAN上のホストがルーターの切り替えを意識することはありません。

Note
VLANインターフェースは、所属ポートがすべてリンクダウンして初めて「リンクダウン」状態になります。一方、VLAN所属ポートが1ポートでもリンクアップすれば、該当VLANインターフェースは「リンクアップ」状態になります。VRRPでは、VLANインターフェースのリンクアップ、リンクダウンを検出してマスタールーターを切り替えるため、VLAN所属ポートの設定に注意してください。上図のように、マスター、バックアップともVLAN所属ポートを1ポートのみとし、レイヤー2スイッチを介してクライアントや他のルーターと接続すると、確実にリンクダウンを検出させることができます。


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