インターフェース / Power over Ethernet
本製品のPoE(Power over Ethernet)給電機能について説明します。
x530/x530Lシリーズにおいて、PoE給電機能に対応しているのは下記の製品です。本解説編における「本製品」はこれらのPoE対応製品を指します。
- AT-x530-28GPXm
- AT-x530-52GPXm
- AT-x530DP-28GHXm
- AT-x530DP-52GHXm
- AT-x530L-28GPX
- AT-x530L-52GPX
- AT-x530L-10GHXm
PoE(Power over Ethernet)は、UTPケーブルを使って、データと電力を同時に伝送する技術です。PoEの規格(IEEE 802.3af、IEEE 802.3at、IEEE 802.3bt)では、電力を供給する側を「給電機器(PSE: Power Sourcing Equipment)」、電力の供給を受ける側を「受電機器(PD: Powered Device)」と呼びます。
本製品のPoE仕様
本製品のPoE給電仕様は、機種により次の3種類に大別できます。
- 90W PoE++モデル(IEEE 802.3bt)
AT-x530L-10GHXm
- 60W PoE++モデル(IEEE 802.3bt)
AT-x530DP-28GHXm、AT-x530DP-52GHXm
- 30W PoE+モデル(IEEE 802.3at)
AT-x530-28GPXm、AT-x530-52GPXm、AT-x530L-28GPX、AT-x530L-52GPX
90W PoE++モデル(IEEE 802.3bt)
AT-x530L-10GHXmは、PoE規格 IEEE 802.3bt に準拠した給電機器として、1ポートあたり最大90Wの電力供給が可能です。
装置全体の最大供給電力は下記のとおりです。
PoE給電機能に対応しているのは本体内蔵の下記ポートです。
- AT-x530L-10GHXm
- 100/1000/2.5G/5GBASE-T PoEポート1~8
60W PoE++モデル(IEEE 802.3bt)
AT-x530DP-28GHXm、AT-x530DP-52GHXmは、PoE規格 IEEE 802.3bt に準拠した給電機器として、1ポートあたり最大60Wの電力供給が可能です。
AT-x530DP-52GHXmはポート25~48のみ60W給電(IEEE 802.3bt)が可能です。ポート1~24は最大30W(IEEE 802.3at)までです。
装置全体の最大供給電力は、装着している電源ユニットの数によって下記のとおり異なります。
- AT-x530DP-28GHXm、AT-x530DP-28GHXm
- AC電源ユニット(AT-PWR800-70) ×1 使用時:370W
- AC電源ユニット(AT-PWR800-70) ×2 使用時:740W
- AC電源ユニット(AT-PWR1200-70) ×1 使用時:740W
- AC電源ユニット(AT-PWR1200-70) ×2 使用時:1480W
上記以外の電源ユニットを装着している場合、PoE給電機能は使用できません。
電源の冗長化を目的として電源ユニットを2台装着する場合は、PoE給電量が電源ユニット1台分の電力を超えないようにしてください。
PoE給電機能に対応しているのは本体内蔵の下記ポートです。
- AT-x530DP-28GHXm
- 10/100/1000BASE-T PoEポート1~20(ポートあたり60W)
- 100/1000/2.5G/5GBASE-T PoEポート21~24(ポートあたり60W)
- AT-x530DP-52GHXm
- 10/100/1000BASE-T PoEポート1~24(ポートあたり30W)
- 10/100/1000BASE-T PoEポート25~40(ポートあたり60W)
- 100/1000/2.5G/5GBASE-T PoEポート41~48(ポートあたり60W)
30W PoE+モデル(IEEE 802.3at)
AT-x530-28GPXm、AT-x530-52GPXm、AT-x530L-28GPX、AT-x530L-52GPXは、PoE規格 IEEE 802.3at に準拠した給電機器として、1ポートあたり最大30Wの電力供給が可能です。
装置全体の最大供給電力※は、実際に使用する電源の数によって下記のとおり異なります。
- AT-x530-28GPXm、AT-x530L-28GPX
- AC電源(内蔵)×1 使用時:370W
- AC電源(内蔵)×2 使用時:720W(740W)
- AT-x530-52GPXm、AT-x530L-52GPX
- AC電源(内蔵)×1 使用時:370W
- AC電源(内蔵)×2 使用時:740W
※ 実際にポートに供給される電力の総和(括弧内は本製品のPoE電源の最大供給能力)
PoE給電機能に対応しているのは本体内蔵の下記ポートです。
- AT-x530-28GPXm
- 10/100/1000BASE-T PoEポート1~20
- 100/1000/2.5G/5GBASE-T PoEポート21~24
- AT-x530-52GPXm
- 10/100/1000BASE-T PoEポート1~40
- 100/1000/2.5G/5GBASE-T PoEポート41~48
- AT-x530L-28GPX
- 10/100/1000BASE-T PoEポート1~24
- AT-x530L-52GPX
- 10/100/1000BASE-T PoEポート1~48
PoE利用時は、意図せずに給電優先度の高いPoE受電機器がダウンしないように、あらかじめpower-inline priorityコマンドで優先的に電力を提供するポートを設定してください。
PoE給電機能のオン・オフ
初期状態では、すべてのPoEポートでPoE給電機能が有効になっており、接続された受電機器(PD)の検出、電力クラスの識別を自動的に行い、必要に応じて給電を開始します。
接続されている機器が受電機器ではなく通常のEthernet機器だった場合は、給電を行わず通常のEthernetポートとして動作します。
本製品を給電機器(PSE)とカスケード接続する場合は、本製品のカスケードポートのPoE給電機能を無効に設定してください(power-inline enableコマンドをno形式で実行する)。
■ 指定したポートでPoE給電機能を無効にするには、該当ポートを対象とするインターフェースモードにおいて、power-inline enableコマンドをno形式で実行します。
awplus(config)# interface port1.0.1-1.0.4 ↓
awplus(config-if)# no power-inline enable ↓
■ 指定したポートでPoE給電機能を再度有効にするには、power-inline enableコマンドを通常形式で実行します。
awplus(config)# interface port1.0.1-1.0.4 ↓
awplus(config-if)# power-inline enable ↓
電力配分方法
本製品では、受電機器が接続されたポートに対して、受電機器が必要とする分だけ電力を供給するという電力配分方法を採用しています。
システム全体の供給電力に余裕があるかぎり、新たに接続された受電機器への給電を開始する仕様で、ポートへの出力電力は、受電機器の実際の電力使用量にもとづいて決まります。
受電機器が必要とする分だけ電力を供給するため、PoE 電源の電力を無駄なく割り振ることができますが、不意の給電停止を避けるため、ケーブルでの内部損失分や受電機器の電力使用量の変動を考慮して、電力配分の見積もりを行う必要があります。
給電時の優先順位
PoE電源の電力使用量が装置全体の最大供給電力を上回った場合は、給電中のポートのうち、もっとも優先順位の低いポートへの給電を停止します。優先順位は次のようにして決定されます。
- ポートの給電優先度(power-inline priorityコマンドで設定)。critical(最高)、high(高)、low(低)の3段階。
- 給電優先度の同じポート間では、ポート番号の小さいほうが優先順位が高くなる。
PoEポートからの出力電力が受電機器の電力クラスで規定された上限値(クラス1:4W、クラス2:7W、クラス3:15.4W、クラス4:30W、クラス5:45W、クラス6:60W、クラス7:75W、クラス8:90W)、または、power-inline maxコマンドで設定した「ポートからの出力電力の上限」を超えた場合は、給電優先順位に関係なく該当ポートへの給電を停止します。
※クラス5 ~ 6は 60W PoE++モデルと90W PoE++モデルのみ、クラス7 ~ 8は 90W PoE++モデルのみ対応しています。
初期状態では、すべてのPoEポートで給電優先度がlowに設定されています。したがって、給電時の優先順位はポート番号の順になります(ポート1が優先順位最高)
■ ポートの給電優先度を変更するには、power-inline priorityコマンドを使います。
awplus(config)# interface port1.0.2 ↓
awplus(config-if)# power-inline priority critical ↓
ポートからの出力電力の上限
power-inline maxコマンド を使用すると、ポートごとに最大出力電力を任意に設定することができます。
給電中のポートにおいて、なんらかの理由で出力電力が上限値を超えた場合は、給電優先順位に関係なく該当ポートへの給電が停止されます。
初期状態では、すべてのPoEポートで上限値が未設定です。未設定時は、接続された受電機器の電力クラスにおける最大出力電力が上限となります。
ポートからの出力電力が、クラス1 受電機器の場合4W、クラス2 受電機器の場合7W、クラス3 受電機器の場合15.4W、クラス4 受電機器の場合30W、クラス5受電機器の場合45W、クラス6 受電機器の場合60W、クラス7 受電機器の場合75W、クラス8受電機器の場合90W を超えると、該当ポートへの給電が停止されます。
クラス5 ~ 6は 60W PoE++モデルと90W PoE++モデルのみ、クラス7 ~ 8は 90W PoE++モデルのみ対応しています。
power-inline maxコマンド設定時は、接続された受電機器の電力クラスにおける最大出力電力よりも小さい値を設定している場合、設定された上限値を超えると給電を停止します。
■ ポート1.0.1からの出力電力を6000mW(6W)までに制限するには次のようにします。
awplus(config)# interface port1.0.1 ↓
awplus(config-if)# power-inline max 6000 ↓
給電拒否動作
前述のとおり、本製品はシステム全体の供給電力に余裕があるかぎり、新たに接続された受電機器への給電を開始する仕様ですが、不意の給電停止を避けるため、電力使用量が一定量を超えた場合には、新たに接続された受電機器への給電を拒否するという動作を行います。
最初にこれ以降の説明で使用する用語についてまとめておきます。
用語 |
解説 |
PoE電源の最大供給電力 |
本製品に搭載されているPoE用電源(システム全体)の最大給電電力 |
PoE電源の電力使用量 |
本製品に搭載されているPoE用電源(システム全体)の実際の電力使用量 |
PoE電源の余剰電力 |
「PoE電源の最大供給電力」から「PoE電源の電力使用量」を差し引いた値 |
受電機器の電力クラスやPoE電源の電力使用量などのPoE関連情報は、show power-inlineコマンドで確認できます。
空きポートに新たに受電機器が接続されると、本製品は受電機器の電力クラスを識別し、該当クラスで規定されている最大電力と、受電機器が接続された時点でのPoE電源の余剰電力とを比較して、新たな受電機器への給電を開始するかどうかを判断します。
新たな受電機器接続時に、「該当クラスの電力」が「余剰電力」を上回る場合は受電機器への給電を拒否し、「該当クラスの電力」が「余剰電力」を下回る場合は受電機器への給電を開始します。
「該当クラスの電力」とは次表の「給電機器の電力」のことで、この値とPoE電源の余剰電力とを比較します。
表 2:電力クラス(参考)
クラス |
受電機器の電力(最大) |
給電機器の電力 |
0 |
13.0 W |
15.4 W |
1 |
3.84 W |
4.0 W |
2 |
6.49 W |
7.0 W |
3 |
13.0 W |
15.4 W |
4 |
25.5 W |
30.0W |
5 |
40.0W |
45.0W |
6 |
51.0W |
60.0W |
7 |
62.0W |
75.0W |
8 |
71.3W |
90.0W |
クラス5 ~ 6は 60W PoE++モデルと90W PoE++モデルのみ、クラス7 ~ 8は 90W PoE++モデルのみ対応しています。
本製品では受電機器のクラス0 はクラス3 と同等に扱われますので、以降の説明ではクラス0 の表記は省略します。
PoE 電源の余剰電力に対して、新たに接続された受電機器への給電が拒否されるクラスの分類は以下のとおりです。
PoE 電源の余剰電力 |
新たに接続された受電機器への給電可否 |
75W 以上90W未満 |
クラス8受電機器への給電拒否(クラス1 ~ 7 は給電可) |
60W 以上75W未満 |
クラス7 ~ 8受電機器への給電拒否(クラス1 ~ 6 は給電可) |
40W 以上60W未満 |
クラス6 ~ 8受電機器への給電拒否(クラス1 ~ 5 は給電可) |
30W 以上40W未満 |
クラス5 ~ 8受電機器への給電拒否(クラス1 ~ 4 は給電可) |
15.4W 以上30W未満 |
クラス4 ~ 8 受電機器への給電拒否(クラス1 ~ 3 は給電可) |
7W 以上15.4W未満 |
クラス3 ~ 8 受電機器への給電拒否(クラス1 ~ 2は給電可) |
4W 以上7W 未満 |
クラス2 ~ 8 受電機器への給電拒否(クラス1 は給電可) |
4W 未満 |
全クラスの受電機器への給電拒否 |
クラス5 ~ 6は 60W PoE++モデルと90W PoE++モデルのみ、クラス7 ~ 8は 90W PoE++モデルのみ対応しています。
電力使用量は常に一定ではないため、実環境においてしきい値は多少増減する可能性があります。
たとえば、最大供給電力が370W(AC電源×1個使用時)の本製品において、PoE 電源の電力使用量が360W だった場合、余剰電力は 10W となります。この状態で、新たにクラス3 受電機器を接続した場合、クラス3 = 15.4W > 10W となり、実際の電力使用量が 10W 未満であっても、給電は開始されません。同じ条件でクラス1 ~ 2 の受電機器を接続した場合は、給電が行われます。
なお、接続ポートに「ポートからの出力電力の上限」が設定されている場合は、給電可否の判断には受電機器の該当クラスではなく、設定値が使用されます。たとえば、余剰電力が10Wの状態で、新たな受電機器の接続ポートに 8W の上限値が設定されている場合は、8W < 10Wとなるため、給電が開始されます。ただし、受電機器が必要とする電力が設定値を上回れば、該当ポートへの給電は停止されます。
その他
■ PoE電源の電力使用量を監視するため、ログメッセージの出力、および、SNMPトラップ送信のしきい値を設定することができます。これには、power-inline usage-thresholdコマンドを使います。しきい値は、装置全体の最大供給電力に対する割合(%)で指定します。初期設定は80%です。
awplus(config)# power-inline usage-threshold 90 ↓
PoE電源の電力使用量がしきい値を下から上、あるいは、上から下にまたぐと、ログメッセージが出力されます。また、SNMPトラップの設定がなされている場合はSNMPトラップメッセージも送信されます。
SNMPトラップの設定については、「運用・管理」の「SNMP」をご覧ください。
■ PoE給電機能の各種情報を確認するには、show power-inlineコマンド、show power-inline countersコマンド、show power-inline interfaceコマンドを使います。
Non-stop PoE機能
本製品は、Non-stop PoE機能に対応しています。
本機能を有効にすることで、PoE給電を維持したままPoE給電機器を再起動できます(ご購入時は無効)。
ファームウェアのアップグレードなどで本製品の再起動が必要な場合でも、受電機器側への給電を維持したまま再起動が可能です。
なお、システムの再起動中に、別の受電機器につなぎかえるなどしてPoEポートの状態が変更された場合は、自動で電力を再ネゴシエーションします。
本機能を使用するには、フィーチャーライセンスが必要です。
電源を抜き差しするなど、コマンド以外の方法で再起動した場合は、本機能は動作しません。再起動時には給電を停止しますのでご注意ください。
再起動中、本製品側のLED(ステータスLED以外)は消灯します。
再起動中、給電は維持されますが、トラフィックの転送は一度停止します。再起動完了後、トラフィックの転送を再開します。
■ 本機能を有効にするには、グローバルコンフィグモードのpower-inline hanpコマンドを実行します(無効化する場合はno形式で実行します)。
これにより本製品のすべてのPoEポートで本機能が有効になります。
awplus(config)# power-inline hanp ↓
■ 特定のPoEポートに対してのみ本機能を無効化したい場合は、グローバルコンフィグモードのpower-inline hanpコマンドを実行後、無効化したいポートを指定して、インターフェースモードのpower-inline hanpコマンドをno形式で実行します(再度有効化したい場合は、power-inline hanpコマンドを通常形式で実行します)。
awplus(config)# power-inline hanp ↓
awplus(config)# interface port1.0.4 ↓
awplus(config-if)# no power-inline hanp ↓
本機能を有効にした状態で再起動したとき、新しく読み込んだコンフィグで本機能が無効になっていた場合は、一度給電を停止し、再度PoEネゴシエーションが開始されます。
■ 本機能の設定状態を確認したい場合は、show power-inlineコマンドまたは、show power-inline interfaceコマンドを使います。
■ 本機能によって、最後にPoE電力をネゴシエーションした時刻を確認したい場合は、show power-inline interfaceコマンドでdetailオプションを指定します。
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