バーチャルシャーシスタック(VCS) / 導入


本バージョンにおけるVCSの仕様
基本仕様
併用不可機能
その他注意事項
初期設定から運用までの流れ
必要な機材の準備
スタックメンバーの初期設定
スイッチポートをスタックポートとして使用する
設定手順
関連する情報表示コマンド
スタックメンバーの接続
VCSグループの起動
VCSグループの初期設定
VCSグループの運用設定と運用開始


VCSの設定/運用方法について、各機器に対する初期設定、各機器の接続、VCSグループの起動、VCSグループとしての設定から運用開始まで、順を追って説明します。

本バージョンにおけるVCSの仕様

ファームウェアバージョン5.5.4-0.3におけるVCSの仕様は以下のとおりです。VCSの設定は、以下の各項目を念頭に置きながら進めてください。

基本仕様

Note

併用不可機能

VCS構成時は以下の機能を使用できません。

その他注意事項


初期設定から運用までの流れ

VCSの初期設定から運用までの流れは次のようになります。
  1. 必要な機材の準備
    スタックメンバーとなるスイッチ、スタックモジュールなどを準備します。

    「必要な機材の準備」をご覧ください。

  2. スタックメンバーの初期設定
    VCSの物理的な接続をする前に、各メンバーの設定状態を確認し、必要な初期設定を行っておきます。

    「スタックメンバーの初期設定」をご覧ください。

  3. スタックメンバーの接続
    各メンバーの初期設定が終わったら、メンバー同士を接続してVCSの物理的構成を完成させます。

    「スタックメンバーの接続」をご覧ください。

  4. VCSグループの起動
    接続が完了したら、各メンバーの電源を入れてVCSグループを起動します。各スイッチのVCS LEDを見て、マスター(緑点灯)とスレーブ(消灯)が1台ずつ存在していることを確認してください。また、スタックポートのL/A LEDが緑に点灯していることを確認してください。

    「VCSグループの起動」をご覧ください。

  5. VCSグループの初期設定
    VCSグループが正しく起動したことを確認したら、その後の設定や運用をしやすくするため、IDやプライオリティーの調整など、いくつかの初期設定を行います。

    「VCSグループの初期設定」をご覧ください。

  6. VCSグループの運用設定と運用開始
    VCSグループの初期設定が完了したら、その後はVCSグループを1台のスイッチと見なして、運用ネットワークのための設定を行い、運用を開始します。

    「VCSグループの運用設定と運用開始」をご覧ください。

  7. VCSグループの運用状態確認
    VCSグループの運用を開始したら、CLIで運用状態を定期的に確認します。

    → 運用編の「VCSグループの運用状態確認」をご覧ください。

  8. VCSグループ運用中のメンテナンス作業
    VCSグループ運用中に構成を変更する場合や障害が発生した場合は、メンテナンス作業が必要です。

    → 運用編の「VCSグループ運用中のメンテナンス作業」をご覧ください。

必要な機材の準備

VCSグループを構築するのに必要な機材を手元に準備してください。
Note
本体カッパーポートをスタックポートとして使うこともできます。詳しくは「スイッチポートをスタックポートとして使用する」をご覧ください。

スタックメンバーの初期設定

スタックメンバーとなるスイッチを用意したら、最初に各スイッチを単体で起動し、以下の作業を行ってください。


また、必要に応じて下記の初期設定も実施してください。

以下、具体的な手順を説明します。
  1. スタックモジュールやスタックケーブルを装着しない状態でスイッチを単体起動したら、コンソールからログインしてください。

  2. enableコマンドを実行して、特権EXECモードに移行します。
    awplus> enable
    awplus# 
    

  3. show bootコマンドを実行して、通常用と緊急用のファームウェアイメージを確認します。すべてのスイッチで「Current boot image」と「Backup boot image」の設定が同じになっていることを確認してください。違いがある場合は、必要に応じてイメージファイルをダウンロードし、boot systemコマンドを実行して、これらの設定をあわせてください。
    awplus# show boot
    Boot configuration
    --------------------------------------------------------------------------------
    Current software   : x540-5.5.4-0.3.rel
    Current boot image : flash:/x540-5.5.4-0.3.rel (file exists)
    Backup  boot image : Not set
    Default boot config: flash:/default.cfg
    Current boot config: flash:/default.cfg (file exists)
    Backup boot config : Not set
    Autoboot status    : disabled
    

  4. 同じshow bootコマンドの出力にある「Current boot config」欄を確認します。「(file exists)」と表示されている場合は、スタートアップコンフィグが存在していることを示していますので、その内容をファイルにバックアップしておいてください。これにはcopyコマンドを使って次のようにします。ここでは、例として「StandaloneConfig.cfg」というファイルにバックアップしています。
    awplus# copy startup-config StandaloneConfig.cfg
    Copying..
    Successful operation
    

  5. スタートアップコンフィグをバックアップしたら、erase startup-configコマンドでスタートアップコンフィグを削除します。show bootコマンドで再度確認すると、「Current boot config」欄の末尾に「(file not found)」と表示されていればスタートアップコンフィグは削除されています。
    awplus# erase startup-config
    Deleting..
    Successful operation
    awplus# show boot
    Boot configuration
    --------------------------------------------------------------------------------
    Current software   : x540-5.5.4-0.3.rel
    Current boot image : flash:/x540-5.5.4-0.3.rel (file exists)
    Backup  boot image : Not set
    Default boot config: flash:/default.cfg
    Current boot config: flash:/default.cfg (file not found)
    Backup boot config : Not set
    Autoboot status    : disabled
    

  6. 最後に、フィーチャーライセンスの必要な機能を利用する場合は、show licenseコマンドを実行して有効化されているライセンスを確認します。すべてのメンバーで同じライセンスが有効化されていることを確認してください。

    Note
    フィーチャーライセンスが適用された機器でVCS 構成を利用する場合は、各VCS メンバーに同一の「License issue date」を持つフィーチャーライセンスがインストールされている必要があります。各VCS メンバー間でフィーチャーライセンスの「License issue date」が異なる場合には、ライセンスパスワードを更新する必要がありますので、弊社窓口までご連絡ください。フィーチャーライセンスの「License issue date」は、show licenseコマンドでご確認いただけます。

  7. 以上でスタックメンバーの初期設定は完了です。
    スイッチポートをスタックポートとして使用する場合は、以下の説明にしたがい追加の初期設定を行ってください。
    追加設定が不要な場合は、各スイッチの電源を切ってください。


スイッチポートをスタックポートとして使用する

本製品の初期設定では、下記がスタックポートに設定されていますが、stackportコマンドによりスタックポートを変更することも可能です。
stackportコマンドで設定可能なポートは次のとおりです。
ポート種類
ポート番号
ポート数
機種
本体カッパーポート
(100/1000/2.5G/5G/10GBASE-Tポート)
1 ~ 24 2 AT-x540L-28XTm
SFP/SFP+スロット 1 ~ 28 2 AT-x540L-28XS
25 ~ 28 2 AT-x540L-28XTm
Note
スタック接続に使用できるポート、モジュール、ケーブルについては、基本仕様をご参照ください。

設定手順

スタックポートとして使用するスイッチポートを変更するには、以下の手順を実行します。
Note
以下の説明では、すでにスタートアップコンフィグの確認・バックアップ・消去、ファームウェアバージョン、フィーチャーライセンスの確認と統一は完了しているものとします。

  1. グローバルコンフィグモードに移行します。
    awplus> enable
    awplus# configure terminal
    Enter configuration commands, one per line.  End with CNTL/Z.
    awplus(config)# 
    

  2. 現時点のスタックポートを指定し、インターフェースモードに移行します。
    stackportコマンドをno形式で実行し、スイッチポートとして設定します。
    awplus(config)# interface port1.0.27-1.0.28
    % port1.0.27 is currently configured as a stack-port. Use caution when altering its config
    % port1.0.28 is currently configured as a stack-port. Use caution when altering its config
    
    awplus(config-if)# no stackport
    % Save the config and restart the system for this change to take effect.
    awplus(config-if)# exit
    

  3. switch provisionコマンドを実行し、スタックメンバー1と2の機種を事前設定します。
    Note
    スタックメンバー分の設定が必要です。
    awplus(config)# switch 1 provision x540-28
    awplus(config)# switch 2 provision x540-28
    

  4. スタックポートとして使用したいインターフェースを指定し、インターフェースモードに移行します。
    stackportコマンドを実行し、ポート1.0.1-1.0.2、ポート2.0.1-2.0.2をスタックポートとして設定します。
    awplus(config)# interface port1.0.1-1.0.2
    awplus(config-if)# stackport
    % Save the config and restart the system for this change to take effect.
    awplus(config-if)# exit
    
    awplus(config)# interface port2.0.1-2.0.2
    awplus(config-if)# stackport
    % Save the config and restart the system for this change to take effect.
    awplus(config-if)# end
    

  5. ここまでに行った設定内容をスタートアップコンフィグに保存します。
    awplus# write
    Building configuration...
    [OK]
    

以上で設定は完了です。各スイッチの電源を切ってください。

Note
stackportコマンドによる設定は、設定を保存し、機器を再起動するまで有効になりません。

Note
スタックポートはSFP/SFP+スロット×2ポートもしくは100/1000/2.5G/5G/10GBASE-Tポート×2ポートで構成してください(初期設定はこちらを参照)。

Note
SFP/SFP+スロットを使用する場合は同一のスタックモジュールを使用してください。

Note
なお、以降の説明では原則としてスタックモジュールを使用するものと仮定しています。任意のポートを使用する場合は、これらの差異を念頭に置きつつ、適宜説明を読み替えてください。

関連する情報表示コマンド

上記の設定は、show stackコマンドをdetailオプション付きで実行したときに表示される「Stack portX.Y.Z status」欄で確認できます。

Note
表示される内容は機種やファームウェアのバージョンによって異なります。下記はあくまでも一例ですので、ご了承ください。
awplus# show stack detail
Virtual Chassis Stacking detailed information
...
Stack member 1:
------------------------------------------------------------------
...
Stack port1.0.x status                  Learnt neighbor 2
Stack port1.0.y status                  Learnt neighbor 2

Stack member 2:
------------------------------------------------------------------
...
Stack port2.0.X status                  Learnt neighbor 1
Stack port2.0.Y status                  Learnt neighbor 1

以下の情報表示コマンドにもスタックポートの情報が表示されます。

スタックメンバーの接続

スタックメンバーの初期設定が終わったら、各スイッチを実際に接続します。
モジュールやケーブルの具体的な装着方法や注意事項については、取扱説明書をご覧ください。
  1. 各スイッチの電源が入っていないことを確認してください。

  2. 各スイッチにスタックモジュールを取り付けます。

  3. 各スイッチをスタックケーブルで接続し、スタックリンクを形成します。
    スイッチ間を接続するときは、必ず番号の異なるスタックポート同士を接続するようにしてください。

    たとえばスイッチA、Bの2台構成の場合は、スイッチAのスタックポート1をスイッチBのスタックポート2に、スイッチBのスタックポート1をスイッチAのスタックポート2に接続します。

    Note
    スタックリンクに冗長性を持たせ、耐障害性を高めるため、通常はスタックケーブルをリング状に接続することをおすすめします。これ以降の説明はすべて、リング状に接続していることを前提としています。


  4. 以上でスタックメンバーの接続は完了です。

VCSグループの起動

スタックメンバーの接続が終わったら、いよいよVCSグループを起動します。これは以下の手順で行います。
  1. 各スイッチに同時に電源を入れます。

  2. 各メンバーは、起動後にメッセージを交換してマスターを選出します。これらが済むと、VCSグループの起動は完了です。各スイッチのVCS LEDを見て、マスター(緑点灯)とスレーブ(消灯)が1台ずつ存在していることを確認してください。また、スタックポートのL/A LEDが緑に点灯していることを確認してください。

  3. LED表示に問題がなければVCSグループの起動は完了です。

VCSグループの初期設定

VCSグループが起動したら、その後の設定や運用がしやすいように、スタックメンバーIDやプライオリティーを調整します。また、運用ネットワークとVCS管理用VLAN/サブネットアドレスが重複しないことを確認し、必要なら管理用VLAN/サブネットアドレスを変更します。

たとえば、2台のスイッチでVCSグループを構成している場合、2台のスイッチを配置順にID=1、ID=2としておき、ID=1をマスターにするのがもっとも直感的で、ケーブルの接続時やポートの設定時にもわかりやすく便利です。

ここでは、例としてVCSグループ起動直後のID割り当てが次のようになったと仮定して、これを前記のようなわかりやすい構成に変更する手順を示します。



  1. いずれかのスイッチにコンソールを接続してログインします。どちらのスイッチにコンソールを接続しても、表示されるのはマスター(VCSグループ)のコンソール画面となります。

  2. enableコマンドを実行して、特権EXECモードに移行します。
    awplus> enable
    awplus# 
    

  3. スタックメンバーIDを変更するため、次のコマンドを実行します。これによりスイッチAがID=1となり、スイッチBがID=2になります。stack renumber cascadeコマンドを実行すると、新しいIDを有効にするため、各スイッチが自動的に再起動します。
    awplus# configure terminal
    Enter configuration commands, one per line.  End with CNTL/Z.
    awplus(config)# stack 2 renumber cascade
    Any existing interface configuration may no longer be valid
    Are you sure you want to renumber and reboot the entire stack? (y/n): y 
    

  4. 各スイッチのVCS LEDを見て、マスター(緑点灯)とスレーブ(消灯)が1台ずつ存在していることを確認してください。また、スタックポートのL/A LEDが緑に点灯していることを確認してください。手順3の操作により、VCSグループのID割り当てと役割分担は次のようになるはずです。


    次にスイッチAをマスターにするため、プライオリティーの変更を行います。

  5. もう一度ログインしたら、hostnameコマンドでVCSグループとしてのホスト名を設定し、VCSグループを識別しやすくします。
    awplus> enable
    awplus# configure terminal
    Enter configuration commands, one per line.  End with CNTL/Z.
    awplus(config)# hostname vcg
    

  6. スイッチAをマスターにするため、スイッチAのプライオリティーを初期値の128より小さく設定します。ここでは例として64にします。これには、グローバルコンフィグモードのstack priorityコマンドを使います。このコマンドでは対象メンバーをIDで指定するため、ここではスイッチAのIDである1を指定しています。
    vcg(config)# stack 1 priority 64
    

  7. VCSマスター障害発生時のマスター切り替えをスムーズに行うため、stack virtual-macコマンドでバーチャルMACアドレス機能を有効化します。
    また、stack virtual-chassis-idコマンドで、バーチャルMACアドレスの下位12ビットとして使用されるバーチャルシャーシIDを設定します。

    vcg(config)# stack virtual-mac
    vcg(config)# stack virtual-chassis-id 127
    
    Note
    同一ネットワーク上に複数のVCSグループが存在するときは、該当するVCSグループ間でバーチャルシャーシID(stack virtual-chassis-id)が重複しないよう注意して設定してください。バーチャルシャーシIDは、show stackコマンドをdetailオプション付きで実行したときに表示される「Virtual Chassis ID」欄で確認できます。
    Note
    バーチャルMACアドレス機能の有効化は、stack virtual-macコマンドで行います。バーチャルMACアドレス機能は初期設定では無効ですが、VCS使用時は必ずバーチャルMACアドレス機能を有効にした状態で運用してください。無効状態での運用はサポート対象外となります。

  8. VCS管理用VLANとサブネットアドレスの確認をし、必要に応じて変更します。運用ネットワークの設計資料を参照して、以下の2点を確認してください。


  9. ここまでに行ったVCSグループに対する初期設定内容をshow running-configコマンドで確認した上でスタートアップコンフィグに保存し、reloadコマンドかrebootコマンドでVCSグループを再起動します。
    vcg(config)# end
    vcg# show running-config
    ...(表示されるコンフィグに問題がないことを確認) ...
    vcg# copy running-config startup-config
    Building configuration...
    [OK]
    Synchronizing file across the stack, please wait..
    File synchronization with stack member-1 successfully completed
    [DONE]
    vcg# reload
    Are you sure you want to reboot the whole stack? (y/n): y 
    

  10. 各スイッチのVCS LEDを見て、マスター(緑点灯)とスレーブ(消灯)が1台ずつ存在していることを確認してください。また、スタックポートのL/A LEDが緑に点灯していることを確認してください。ここまでの操作により、VCSグループのID割り当てと役割分担は次のようになったはずです。


これでVCSグループとしての初期設定は完了です。

VCSグループの運用設定と運用開始

スタックメンバーの初期設定が完了したら、運用ネットワークのための設定に入ります。VCSグループを仮想的な1台のスイッチと見なして、通常どおりネットワークの設定を行ってください。設定が完了したら最後にレジリエンシーリンクを有効化し、設定を保存してください。
  1. いずれかのスイッチにコンソールを接続してログインします。どちらのスイッチにコンソールを接続しても、表示されるのはマスター(VCSグループ)のコンソール画面となります。

    ログインしたら、単独のスイッチを設定するときと同じようにネットワーク構成に応じたインターフェースやプロトコルの設定を行ってください。

    設定コマンドでスイッチポート番号を指定するときは、「portX.Y.Z」の形式で指定します。

  2. ネットワークの設定が終わったら、レジリエンシーリンクを接続します。
    カッパーポート、ダイレクトアタッチケーブルを使用する場合、レジリエンシーリンクを使用しない構成はサポート対象外ですので、運用に入る前に必ずこの設定を行ってください。
    なお、ファイバースタックモジュールを使用する場合、レジリエンシーリンクの使用は任意ですが、使用するときは下記の手順にしたがって設定・接続してください。レジリエンシーリンクを使用しない場合、本手順は不要です。


  3. 設定内容を確認し、スタートアップコンフィグに保存します。
    vcg(config)# end
    vcg# show running-config
    ...(表示されるコンフィグに問題がないことを確認) ...
    vcg# copy running-config startup-config
    Building configuration...
    [OK]
    Synchronizing file across the stack, please wait..
    File synchronization with stack member-2 successfully completed
    [DONE]
    vcg# 
    

  4. これで運用前の設定は完了です。各スイッチのポートを実ネットワークに接続し、運用を開始してください。VCSグループとしての動作状況は、スタンドアローン時にも使用する各種コマンドで確認できるほか、SNMPやログでも確認可能です。
    接続が完了している場合、マスター側のVCS LEDが緑点灯、スレーブ側のVCS LEDが消灯し、スタックポートのL/A LEDが緑に点灯します。

ナビゲーション

■ VCS導入後の日常作業の基本手順については、第3部 運用編をご覧ください。


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