<前頁 次頁> << >> 目次 (番号順 (詳細)回線別 (詳細)機能別 (詳細)

CentreCOM AR550S 設定例集 2.9 #138

PPPoEマルチセッションによる端末型インターネット接続+CUGサービス接続(LAN型)


PPPoEセッションを2本使い、インターネット(ISP)接続とCUG(Closed Users Group)サービス(フレッツ・VPNワイド、フレッツ・グループアクセス(プロ、NTT東日本)、フレッツ・グループ(ビジネスメニュー、NTT西日本))の「LAN型払い出し」を同時に利用します。パケットの振り分けはスタティックな経路制御により行います。

インターネットサービスプロバイダー(ISP)からは、次の情報を提供されているものとします。

表 1:ISPから提供された情報
 
ルーターA
ルーターB
PPPユーザー名 user@ispA user@ispB
PPPパスワード isppasswdA isppasswdB
PPPoEサービス名 指定なし 指定なし
IPアドレス グローバルアドレス1個(動的割り当て) グローバルアドレス1個(動的割り当て)
DNSサーバー 接続時に通知される 接続時に通知される


CUGサービスのプライベートグループ(以下、グループ)管理者からは、次の情報を提供されているものとします。グループのメンバーは、userA(ルーターA)とuserB(ルーターB)だけであると仮定しています。

表 2:グループ管理者から提供された情報
 
ルーターA
ルーターB
ユーザーID(PPPユーザー名) userA userB
パスワード(PPPパスワード) passwdA passwdB
IPアドレス 192.168.10.0/24(LAN型) 192.168.20.0/24(LAN型)


ルーターには、次のような方針で設定を行います。


以下、ルーターの基本設定についてまとめます。

表 3:ルーターの基本設定
 
ルーターA
ルーターB
WAN側物理インターフェース eth0 eth0
WAN側(ppp0)IPアドレス(1) 接続時にISP-Aから取得する 接続時にISP-Bから取得する
WAN側(ppp1)IPアドレス(2) Unnumbered Unnumbered
LAN側(vlan1)IPアドレス 192.168.10.1/24 192.168.20.1/24
DNSリレー機能 有効 有効



ルーターAの設定


  1. WAN側Ethernetインターフェース(eth0)上にインターネット(ISP)接続用のPPPインターフェース「0」を作成します。「OVER=eth0-XXXX」の「XXXX」の部分には、ISPから通知されたPPPoEの「サービス名」を記述します。ISPから指定がない場合は、どのサービス名タグでも受け入れられるよう、「ANY」を設定します。


  2. ISPから通知されたPPPユーザー名とパスワードを指定し、接続時にIPアドレス割り当ての要求を行うように設定します。LQRはオフにし、代わりにLCP Echoパケットを使ってPPPリンクの状態を監視するようにします。また、ISDN向けの機能であるBAPはオフにします。






  3. WAN側Ethernetインターフェース(eth0)上にCUGサービス接続用のPPPインターフェース「1」を作成します。「OVER=eth0-XXXX」の「XXXX」の部分には、グループ管理者から通知されたPPPoEの「サービス名」を記述します。指定がない場合は、どのサービス名タグでも受け入れられるよう、「ANY」を設定します。


  4. グループ管理者から通知されたPPPユーザー名とパスワードを指定し、接続時にIPアドレス割り当ての要求を行うように設定します。LQRはオフにし、代わりにLCP Echoパケットを使ってPPPリンクの状態を監視するようにします。また、ISDN向けの機能であるBAPはオフにします。






  5. IPモジュールを有効にします。


  6. IPCPネゴシエーションで与えられたIPアドレスをPPPインターフェースで使用するように設定します。


  7. LAN側(vlan1)インターフェースにIPアドレスを設定します。グループ管理者から指定されたアドレスを設定してください。


  8. インターネット接続用のWAN側(ppp0)インターフェースにIPアドレス「0.0.0.0」を設定します。ISPとの接続が確立するまで、IPアドレスは確定しません。


  9. CUGサービス接続用のWAN側(ppp1)インターフェースをUnnumberedに設定します。


  10. デフォルトルートをインターネット(ISP)側に向けます。


  11. ルーターBのLAN側への経路をスタティックに登録します。


  12. DNSリレー機能を有効にします。


  13. DNSリレーの中継先を指定します。通常、中継先にはDNSサーバーのアドレスを指定しますが、IPCPによりアドレスを取得するまでは不明であるため、ここではインターフェース名を指定します。


  14. ファイアウォール機能を有効にします。


  15. ファイアウォールの動作を規定するファイアウォールポリシー「net」を作成します。


  16. ICMPパケットはPing(Echo/Echo Reply)と到達不可能(Unreachable)のみ双方向で許可します。


    Note - デフォルト設定では、ICMPはファイアウォールを通過できません。

  17. ルーターのidentプロキシー機能を無効にし、外部のメール(SMTP)サーバーなどからのident要求に対して、ただちにTCP RSTを返すよう設定します。


  18. ファイアウォールポリシーの適用対象となるインターフェースを指定します。


  19. LAN側からインターネットへの通信にENATを適用します。NATアドレスにはppp0のIPアドレスを使用します。この例では、グループ間の通信にはNATを使いません。


    Note - ファイアウォールのダイナミックENATでは、パケットがINTからGBLINTに転送されたときに、パケットの始点アドレスをGBLINTのアドレスに書き換えます。

  20. ルーターBのLAN側からの通信をすべて許可するルールを設定します。


  21. 設定は以上です。設定内容をファイルに保存し、SET CONFIGコマンドで起動時設定ファイルに指定します。


ルーターBの設定


  1. WAN側Ethernetインターフェース(eth0)上にインターネット(ISP)接続用のPPPインターフェース「0」を作成します。「OVER=eth0-XXXX」の「XXXX」の部分には、ISPから通知されたPPPoEの「サービス名」を記述します。ISPから指定がない場合は、どのサービス名タグでも受け入れられるよう、「ANY」を設定します。


  2. ISPから通知されたPPPユーザー名とパスワードを指定し、接続時にIPアドレス割り当ての要求を行うように設定します。LQRはオフにし、代わりにLCP Echoパケットを使ってPPPリンクの状態を監視するようにします。また、ISDN向けの機能であるBAPはオフにします。






  3. WAN側Ethernetインターフェース(eth0)上にCUGサービス接続用のPPPインターフェース「1」を作成します。「OVER=eth0-XXXX」の「XXXX」の部分には、グループ管理者から通知されたPPPoEの「サービス名」を記述します。指定がない場合は、どのサービス名タグでも受け入れられるよう、「ANY」を設定します。


  4. グループ管理者から通知されたPPPユーザー名とパスワードを指定し、接続時にIPアドレス割り当ての要求を行うように設定します。LQRはオフにし、代わりにLCP Echoパケットを使ってPPPリンクの状態を監視するようにします。また、ISDN向けの機能であるBAPはオフにします。






  5. IPモジュールを有効にします。


  6. IPCPネゴシエーションで与えられたIPアドレスをPPPインターフェースで使用するように設定します。


  7. LAN側(vlan1)インターフェースにIPアドレスを設定します。グループ管理者から指定されたアドレスを設定してください。


  8. インターネット接続用のWAN側(ppp0)インターフェースにIPアドレス「0.0.0.0」を設定します。ISPとの接続が確立するまで、IPアドレスは確定しません。


  9. CUGサービス接続用のWAN側(ppp1)インターフェースをUnnumberedに設定します。


  10. デフォルトルートをインターネット(ISP)側に向けます。


  11. ルーターAのLAN側への経路をスタティックに登録します。


  12. DNSリレー機能を有効にします。


  13. DNSリレーの中継先を指定します。通常、中継先にはDNSサーバーのアドレスを指定しますが、IPCPによりアドレスを取得するまでは不明であるため、ここではインターフェース名を指定します。


  14. ファイアウォール機能を有効にします。


  15. ファイアウォールの動作を規定するファイアウォールポリシー「net」を作成します。


  16. ICMPパケットはPing(Echo/Echo Reply)と到達不可能(Unreachable)のみ双方向で許可します。


    Note - デフォルト設定では、ICMPはファイアウォールを通過できません。

  17. ルーターのidentプロキシー機能を無効にし、外部のメール(SMTP)サーバーなどからのident要求に対して、ただちにTCP RSTを返すよう設定します。


  18. ファイアウォールポリシーの適用対象となるインターフェースを指定します。


  19. LAN側からインターネットへの通信にENATを適用します。NATアドレスにはppp0のIPアドレスを使用します。この例では、グループ間の通信にはNATを使いません。


    Note - ファイアウォールのダイナミックENATでは、パケットがINTからGBLINTに転送されたときに、パケットの始点アドレスをGBLINTのアドレスに書き換えます。

  20. ルーターAのLAN側からの通信をすべて許可するルールを設定します。


  21. 設定は以上です。設定内容をファイルに保存し、SET CONFIGコマンドで起動時設定ファイルに指定します。


メモ

■ グループメンバー(拠点)が追加されたときは、該当拠点への経路情報とファイアウォールルールを追加することによって対応できます。たとえば、新拠点192.168.30.0/24が追加された場合は、ルーターA、ルーターBの両方で次のコマンドを実行します。


■ 本設定では、ルーター起動直後にPPPoEセッションが確立され、以後常時接続された状態となります。したがって、PPPoEセッションの切断、再接続は手動で行う必要があります。


■ 常時接続ではなく、LAN側からWAN側に対して通信要求が発生したときに自動的にPPPoEセッションを確立し、無通信状態が60秒続いたときにPPPoEセッションを切断するには、次のコマンドを入力します。


■ ファイアウォールで遮断されたパケットのログをとるには、次のコマンドを実行します。


記録されたログを見るには、次のコマンドを実行します。ここでは、「TYPE=FIRE」により、ファイアウォールが出力したログメッセージだけを表示させています。


■ インターネット側からのPING(ICMP Echo Requestパケット)を拒否するには、次のようなIPフィルターをWAN側インターフェースに設定します。この例では、「LOG=HEADER」により、フィルターで拒否したパケットをログに記録しています。


記録されたログを見るには、次のコマンドを実行します。ここでは、「TYPE=IPFIL」により、IPフィルターが出力したログメッセージだけを表示させています。

まとめ

ルーターAのコンフィグ [テキスト版]
CREATE PPP=0 OVER=eth0-ANY
SET PPP=0 OVER=eth0-ANY BAP=OFF IPREQUEST=ON USER=user@ispA PASSWORD=isppasswdA LQR=OFF ECHO=ON
CREATE PPP=1 OVER=eth0-ANY
SET PPP=1 OVER=eth0-ANY BAP=OFF IPREQUEST=ON USER=userA PASSWORD=passwdA LQR=OFF ECHO=ON
ENABLE IP
ENABLE IP REMOTEASSIGN
ADD IP INT=vlan1 IP=192.168.10.1 MASK=255.255.255.0
ADD IP INT=ppp0 IP=0.0.0.0
ADD IP INT=ppp1 IP=0.0.0.0
ADD IP ROUTE=0.0.0.0 INT=ppp0 NEXTHOP=0.0.0.0
ADD IP ROUTE=192.168.20.0 MASK=255.255.255.0 INT=ppp1 NEXTHOP=0.0.0.0
ENABLE IP DNSRELAY
SET IP DNSRELAY INT=ppp0
ENABLE FIREWALL
CREATE FIREWALL POLICY=net
ENABLE FIREWALL POLICY=net ICMP_F=PING,UNREACH
DISABLE FIREWALL POLICY=net IDENTPROXY
ADD FIREWALL POLICY=net INT=vlan1 TYPE=PRIVATE
ADD FIREWALL POLICY=net INT=ppp0 TYPE=PUBLIC
ADD FIREWALL POLICY=net INT=ppp1 TYPE=PUBLIC
ADD FIREWALL POLICY=net NAT=ENHANCED INT=vlan1 GBLINT=ppp0
ADD FIREWALL POLICY=net RULE=1 AC=ALLOW INT=ppp1 PROT=ALL REMOTEIP=192.168.20.1-192.168.20.254


ルーターBのコンフィグ [テキスト版]
CREATE PPP=0 OVER=eth0-ANY
SET PPP=0 OVER=eth0-ANY BAP=OFF IPREQUEST=ON USER=user@ispB PASSWORD=isppasswdB LQR=OFF ECHO=ON
CREATE PPP=1 OVER=eth0-ANY
SET PPP=1 OVER=eth0-ANY BAP=OFF IPREQUEST=ON USER=userB PASSWORD=passwdB LQR=OFF ECHO=ON
ENABLE IP
ENABLE IP REMOTEASSIGN
ADD IP INT=vlan1 IP=192.168.20.1 MASK=255.255.255.0
ADD IP INT=ppp0 IP=0.0.0.0
ADD IP INT=ppp1 IP=0.0.0.0
ADD IP ROUTE=0.0.0.0 INT=ppp0 NEXTHOP=0.0.0.0
ADD IP ROUTE=192.168.10.0 MASK=255.255.255.0 INT=ppp1 NEXTHOP=0.0.0.0
ENABLE IP DNSRELAY
SET IP DNSRELAY INT=ppp0
ENABLE FIREWALL
CREATE FIREWALL POLICY=net
ENABLE FIREWALL POLICY=net ICMP_F=PING,UNREACH
DISABLE FIREWALL POLICY=net IDENTPROXY
ADD FIREWALL POLICY=net INT=vlan1 TYPE=PRIVATE
ADD FIREWALL POLICY=net INT=ppp0 TYPE=PUBLIC
ADD FIREWALL POLICY=net INT=ppp1 TYPE=PUBLIC
ADD FIREWALL POLICY=net NAT=ENHANCED INT=vlan1 GBLINT=ppp0
ADD FIREWALL POLICY=net RULE=1 AC=ALLOW INT=ppp1 PROT=ALL REMOTEIP=192.168.10.1-192.168.10.254





CentreCOM AR550S 設定例集 2.9 #138

(C) 2005-2014 アライドテレシスホールディングス株式会社

PN: J613-M0710-04 Rev.P

<前頁 次頁> << >> 目次 (番号順 (詳細)回線別 (詳細)機能別 (詳細)