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CentreCOM AR550S 設定例集 2.9 #160
PPPoEインターネット接続環境におけるPPTPパススルー
PPPoEインターネット接続環境において、ルーター配下のPPTPクライアントから対向のPPTPサーバーへPPTP接続を行えるようにします。この例は、ダイナミックENATで1個のグローバルアドレスを共用し、ファイアウォールで外部からの不正アクセスを防止します。また、LAN側クライアントの設定を簡単にするため、DNSリレーとDHCPサーバーも利用します。
ISP からは次の情報を提供されているものとします。
表 1:ISPから提供された情報
PPPユーザー名 |
user@isp |
PPPパスワード |
isppasswd |
PPPoEサービス名 |
指定なし |
IPアドレス |
12.34.56.78/32(固定) |
DNSサーバー |
12.34.11.11、12.34.11.22 |
ルーターには、次のような方針で設定を行います。
- ファイアウォールを利用して、外部からの不正アクセスを遮断しつつ、内部からは自由にインターネットへのアクセスができるようにします。
- ファイアウォールのダイナミックENAT機能を利用して、LAN側ネットワークのプライベートIPアドレスを、ISPから与えられたグローバルIPアドレスに変換します。これにより、LANに接続された複数のコンピューターからインターネットへの同時アクセスが可能になります。また、ルーター配下のPPTPクライアントからWAN側のPPTPサーバーへもアクセスが可能になります。
- ルーターをDHCPサーバーとして動作させ、LANに接続されたコンピューターにIPアドレス、サブネットマスク、デフォルトゲートウェイ、DNSサーバーアドレスの情報を提供します。
- ルーターのDNSリレー機能をオンにして、LAN側コンピューターからのDNSリクエストを、ISPのDNSサーバーに転送します。
以下、ルーターの基本設定とDHCPサーバーの設定についてまとめます。
表 2:ルーターの基本設定
WAN側物理インターフェース |
eth0 |
WAN側(ppp0)IPアドレス |
12.34.56.78/32(固定) |
LAN側(vlan1)IPアドレス |
192.168.10.1/24 |
DNSリレー機能 |
有効 |
表 3:ルーターのDHCPサーバーの設定
DHCPポリシー名 |
BASE |
使用期限 |
7200(秒) |
サブネットマスク |
255.255.255.0 |
デフォルトルート |
192.168.10.1 |
DNSサーバー |
192.168.10.1 |
DHCPレンジ名 |
LOCAL |
提供するIPアドレスの範囲 |
192.168.10.100〜192.168.10.131(32個) |
■ "10.10.10.1/32" および "10.10.10.10/32" はPPTP経由の通信にて使用されるIPアドレスです。
- WAN側Ethernetインターフェース(eth0)上にPPPインターフェースを作成します。「OVER=eth0-XXXX」の「XXXX」の部分には、ISPから通知されたPPPoEの「サービス名」を記述します。ISPから指定がない場合は、どのサービス名タグでも受け入れられるよう、「ANY」を設定します。
CREATE PPP=0 OVER=eth0-ANY ↓
- ISPから通知されたPPPユーザー名とパスワードを指定します。LQRはオフにし、代わりにLCP Echoパケットを使ってPPPリンクの状態を監視するようにします。また、ISDN向けの機能であるBAPはオフにします。
SET PPP=0 OVER=eth0-ANY USER=user@isp PASSWORD=isppasswd LQR=OFF BAP=OFF ECHO=ON ↓
- IPモジュールを有効にします。
- LAN側(vlan1)インターフェースにIPアドレスを設定します。
ADD IP INT=vlan1 IP=192.168.10.1 MASK=255.255.255.0 ↓
- WAN側(ppp0)インターフェースにISPから割り当てられたIPアドレスを設定します。
ADD IP INT=ppp0 IP=12.34.56.78 MASK=255.255.255.255 ↓
- デフォルトルートを設定します。
ADD IP ROUTE=0.0.0.0 INT=ppp0 NEXTHOP=0.0.0.0 ↓
- ISPから通知されたDNSサーバーのアドレスを設定します。
ADD IP DNS PRIMARY=12.34.11.11 SECONDARY=12.34.11.22 ↓
- DNSリレー機能を有効にします。
- ファイアウォール機能を有効にします。
- ファイアウォールの動作を規定するファイアウォールポリシー「net」を作成します。
CREATE FIREWALL POLICY=net ↓
- ICMPパケットはPing(Echo/Echo Reply)と到達不可能(Unreachable)のみ双方向で許可します。
ENABLE FIREWALL POLICY=net ICMP_F=PING,UNREACH ↓
Note
- デフォルト設定では、ICMPはファイアウォールを通過できません。
- ルーターのidentプロキシー機能を無効にし、外部のメール(SMTP)サーバーなどからのident要求に対して、ただちにTCP RSTを返すよう設定します。
DISABLE FIREWALL POLICY=net IDENTPROXY ↓
- ファイアウォールポリシーの適用対象となるインターフェースを指定します。
- LAN側インターフェース(vlan1)をPRIVATE(内部)に設定します。
ADD FIREWALL POLICY=net INT=vlan1 TYPE=PRIVATE ↓
- WAN側インターフェース(ppp0)をPUBLIC(外部)に設定します。
ADD FIREWALL POLICY=net INT=ppp0 TYPE=PUBLIC ↓
- LAN側ネットワークに接続されているすべてのコンピューターがENAT機能を使用できるよう設定します。グローバルアドレスには、ppp0のIPアドレスを使用します。
ADD FIREWALL POLICY=net NAT=ENHANCED INT=vlan1 GBLINT=ppp0 ↓
- LAN側PCのためにDHCPサーバー機能を有効にします。
- DHCPポリシー「BASE」を作成します。IPアドレスの使用期限は7,200秒(2時間)とします。
CREATE DHCP POLICY=BASE LEASETIME=7200 ↓
- DHCPクライアントに提供する情報を設定します。ここでは、DNSサーバーアドレスとして、ルーターのLAN側インターフェースのIPアドレスを指定しています。
ADD DHCP POLICY=BASE SUBNET=255.255.255.0 ROUTER=192.168.10.1 DNSSERVER=192.168.10.1 ↓
- DHCPクライアントに提供するIPアドレスの範囲を設定します。
CREATE DHCP RANGE=LOCAL POLICY=BASE IP=192.168.10.100 NUMBER=32 PROBE=ARP ↓
- 設定は以上です。上記のようにPPTPパススルー機能は基本的なファイアウォールの設定のみで有効となり、特別な設定は必要ありません。
設定内容をファイルに保存し、SET CONFIGコマンドで起動時設定ファイルに指定します。
CREATE CONFIG=router.cfg ↓
SET CONFIG=router.cfg ↓
■ WAN側のPPTPクライアント(たとえば 1.1.1.1)からルーター配下のPPTPサーバー(たとえば 192.168.10.5)へのPPTP接続を開始する場合、ルーターのWAN側のインターフェース(ppp0)の1723番ポート宛に送られたPPTPクライアントからのTCPパケットを、LAN側のPPTPサーバーに通すためのスタンダードNATルールの設定を行います。
ADD FIREWALL POLICY=net RULE=1 AC=NAT NATTYPE=STANDARD INT=ppp0 PROTO=TCP GBLIP=12.34.56.78 GBLPORT=1723 IP=192.168.10.5 PORT=1723 REMOTEIP=1.1.1.1 ↓
ルーターのコンフィグ
[テキスト版]
CREATE PPP=0 OVER=eth0-ANY ↓
SET PPP=0 OVER=eth0-ANY USER=user@isp PASSWORD=isppasswd LQR=OFF BAP=OFF ECHO=ON ↓
ENABLE IP ↓
ADD IP INT=vlan1 IP=192.168.10.1 MASK=255.255.255.0 ↓
ADD IP INT=ppp0 IP=12.34.56.78 MASK=255.255.255.255 ↓
ADD IP ROUTE=0.0.0.0 INT=ppp0 NEXTHOP=0.0.0.0 ↓
ADD IP DNS PRIMARY=12.34.11.11 SECONDARY=12.34.11.22 ↓
ENABLE IP DNSRELAY ↓
ENABLE FIREWALL ↓
CREATE FIREWALL POLICY=net ↓
ENABLE FIREWALL POLICY=net ICMP_F=PING,UNREACH ↓
DISABLE FIREWALL POLICY=net IDENTPROXY ↓
ADD FIREWALL POLICY=net INT=vlan1 TYPE=PRIVATE ↓
ADD FIREWALL POLICY=net INT=ppp0 TYPE=PUBLIC ↓
ADD FIREWALL POLICY=net NAT=ENHANCED INT=vlan1 GBLINT=ppp0 ↓
ENABLE DHCP ↓
CREATE DHCP POLICY=BASE LEASETIME=7200 ↓
ADD DHCP POLICY=BASE SUBNET=255.255.255.0 ROUTER=192.168.10.1 DNSSERVER=192.168.10.1 ↓
CREATE DHCP RANGE=LOCAL POLICY=BASE IP=192.168.10.100 NUMBER=32 PROBE=ARP ↓
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CentreCOM AR550S 設定例集 2.9 #160
(C) 2005-2014 アライドテレシスホールディングス株式会社
PN: J613-M0710-04 Rev.P
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