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CentreCOM AR300/AR700 シリーズ 設定例集 2.3 #48
PPPoEによる端末型インターネット接続(スタティックENAT)
PPPoEを使ってインターネットサービスプロバイダー(ISP)に接続します。「ブロードバンド」系サービスプロバイダーの中には、ベストエフォート型ながらも、常時接続の性質を活かしてIPアドレスを1個固定的に割り当てるサービスが見られます。このようなサービスを利用すると、接続形態は端末型でも、固定アドレスの利点を活かしてサーバーの公開やVPNの構築が容易になります。この例では、ダイナミックENATで1個のアドレスを共用し、ファイアウォールで外部からの不正アクセスを防止しつつ、スタティックENATを利用してWebサーバーを外部に公開します。また、LAN側クライアントの設定を簡単にするため、DNSリレーとDHCPサーバーも利用します。
ISPからは次の情報を提供されているものとします。
表 1:ISPから提供された情報
PPPユーザー名 |
user@isp |
PPPパスワード |
isppasswd |
PPPoEサービス名 |
指定なし |
IPアドレス |
12.34.56.78/32(固定) |
DNSサーバー |
12.34.11.11、12.34.11.22 |
ルーターには、次のような方針で設定を行います。
- ファイアウォールを利用して、外部からの不正アクセスを遮断しつつ、内部からは自由にインターネットへのアクセスができるようにします。
- ファイアウォールのダイナミックENAT機能を利用して、LAN側ネットワークのプライベートIPアドレスを、ISPから与えられたグローバルIPアドレスに変換します。これにより、LANに接続された複数のコンピューターからインターネットへの同時アクセスが可能になります。
- ファイアウォールのスタティックENAT機能を利用して、ルーターの80番ポートに送られてきたTCPパケットをLAN側のWebサーバー(192.168.10.5)に転送します(ポート転送)。これにより、IPアドレスが1個であっても、サーバーを外部に公開することができます。
- トリガー機能を使ってPPPインターフェースを監視し、PPPoEのセッションが局側から切断されたような場合に、自動的に再接続するよう設定します。
- ルーターをDHCPサーバーとして動作させ、LANに接続されたコンピューターにIPアドレス、サブネットマスク、デフォルトゲートウェイ、DNSサーバーアドレスの情報を提供します。
- ルーターのDNSリレー機能をオンにして、LAN側コンピューターからのDNSリクエストを、ISPのDNSサーバーに転送します。上記DHCPサーバーの設定により、LAN側コンピューターに対しては、DNSサーバーアドレスとしてルーター自身のIPアドレスを教えます。
以下、ルーターの基本設定とDHCPサーバーの設定についてまとめます。
表 2:ルーターの基本設定
WAN側物理インターフェース |
eth1 |
WAN側(ppp0)IPアドレス |
12.34.56.78/32(固定) |
LAN側(eth0)IPアドレス |
192.168.10.1/24 |
DHCPサーバー機能 |
有効 |
表 3:ルーターのDHCPサーバーの設定
DHCPポリシー名 |
BASE |
使用期限 |
7200(秒) |
サブネットマスク |
255.255.255.0 |
デフォルトルート |
192.168.10.1 |
DNSサーバー |
192.168.10.1 |
DHCPレンジ名 |
LOCAL |
提供するIPアドレスの範囲 |
192.168.10.100〜192.168.10.131(32個) |

Note
- 本設定例では、PPPインターフェースのリンクアップ・ダウンによって、トリガーの状態が動的に変化します。そのため、以下の設定コマンドはルーターのWAN側インターフェース(eth1)にケーブルを接続していない状態(PPPインターフェースがリンクアップしない状態)で入力してください。詳細については章末の「メモ」をご覧ください。
- WAN側Ethernetインターフェース(eth1)上にPPPインターフェースを作成します。「OVER=eth1-XXXX」の「XXXX」の部分には、ISPから通知されたPPPoEの「サービス名」を記述します。ISPから指定がない場合は、どのサービス名タグでも受け入れられるよう、「any」を設定します。
CREATE PPP=0 OVER=eth1-any ↓
- ISPから通知されたPPPユーザー名とパスワードを指定します。LQRはオフにし、代わりにLCP Echoパケットを使ってPPPリンクの状態を監視するようにします。また、ISDN向けの機能であるBAPはオフにします。
SET PPP=0 OVER=eth1-any USER=user@isp PASSWORD=isppasswd LQR=OFF BAP=OFF ECHO=ON ↓
- IPモジュールを有効にします。
- LAN側(eth0)インターフェースにIPアドレスを設定します。
ADD IP INT=eth0 IP=192.168.10.1 MASK=255.255.255.0 ↓
- WAN側(ppp0)インターフェースにISPから割り当てられたIPアドレスを設定します。
ADD IP INT=ppp0 IP=12.34.56.78 MASK=255.255.255.255 ↓
- デフォルトルートを設定します。
ADD IP ROUTE=0.0.0.0 INT=ppp0 NEXTHOP=0.0.0.0 ↓
- ISPから通知されたDNSサーバーのアドレスを設定します。
ADD IP DNS PRIMARY=12.34.11.11 SECONDARY=12.34.11.22 ↓
- DNSリレー機能を有効にします。
- ファイアウォール機能を有効にします。
- ファイアウォールの動作を規定するファイアウォールポリシー「net」を作成します。
CREATE FIREWALL POLICY=net ↓
- ICMPパケットはPing(Echo/Echo Reply)と到達不可能(Unreachable)のみ双方向で許可します。
ENABLE FIREWALL POLICY=net ICMP_F=PING,UNREACH ↓
Note
- デフォルト設定では、ICMPはファイアウォールを通過できません。
- ルーターのidentプロキシー機能を無効にし、外部のメール(SMTP)サーバーなどからのident要求に対して、ただちにTCP RSTを返すよう設定します。
DISABLE FIREWALL POLICY=net IDENTPROXY ↓
- ファイアウォールポリシーの適用対象となるインターフェースを指定します。
- LAN側インターフェース(eth0)をPRIVATE(内部)に設定します。
ADD FIREWALL POLICY=net INT=eth0 TYPE=PRIVATE ↓
- WAN側インターフェース(ppp0)をPUBLIC(外部)に設定します。
ADD FIREWALL POLICY=net INT=ppp0 TYPE=PUBLIC ↓
- LAN側ネットワークに接続されているすべてのコンピューターがENAT機能を使用できるよう設定します。グローバルアドレスには、ppp0のIPアドレスを使用します。
ADD FIREWALL POLICY=net NAT=ENHANCED INT=eth0 GBLINT=ppp0 ↓
- ルーターのWAN側のインターフェース(ppp0)の80番ポート宛てに送られたTCPパケットを、LAN側のWebサーバー(192.168.10.5)に転送するスタティックENATの設定を行います。
ADD FIREWALL POLICY=net RULE=1 AC=ALLOW INT=ppp0 PROTO=TCP GBLIP=12.34.56.78 GBLPORT=80 IP=192.168.10.5 PORT=80 ↓
- LAN側PCのためにDHCPサーバー機能を有効にします。
- DHCPポリシー「BASE」を作成します。IPアドレスの使用期限は7,200秒(2時間)とします。
CREATE DHCP POLICY=BASE LEASETIME=7200 ↓
- DHCPクライアントに提供する情報を設定します。ここでは、DNSサーバーアドレスとして、ルーターのLAN側インターフェースのIPアドレスを指定しています。
ADD DHCP POLICY=BASE SUBNET=255.255.255.0 ROUTER=192.168.10.1 DNSSERVER=192.168.10.1 ↓
- DHCPクライアントに提供するIPアドレスの範囲を設定します。
CREATE DHCP RANGE=LOCAL POLICY=BASE IP=192.168.10.100 NUMBER=32 ↓
- PPPoEセッションを自動再接続するためのトリガースクリプトを作成します。
- ppp0をリセットするスクリプトreset.scpを作成します。
ADD SCRIPT=reset.scp TEXT="RESET PPP=0" ↓
- トリガー「1」を無効状態にするスクリプトup.scpを作成します。
ADD SCRIPT=up.scp TEXT="DISABLE TRIGGER=1" ↓
- トリガー「1」を有効状態にするスクリプトdown.scpを作成します。
ADD SCRIPT=down.scp TEXT="ENABLE TRIGGER=1" ↓
Note
- ADD SCRIPTコマンドは、コンソールなどからログインした状態で、コマンドラインから実行するコマンドです。そのため、EDITコマンド(内蔵フルスクリーンエディター)等を使って設定スクリプトファイル(.CFG)にこのコマンドを記述しても意図した結果にならない場合がありますのでご注意ください。
- トリガー機能を有効にします。
- PPPoEセッションを自動再接続するためのトリガーを作成します。
- 3分ごとにreset.scpを実行する定期トリガー「1」を作成します。このトリガーは、ppp0インターフェースがダウンすると同時に有効になり(トリガー「3」による)、アップすると無効になります(トリガー「2」による)。
CREATE TRIGGER=1 PERIODIC=3 SCRIPT=reset.scp ↓
- ppp0のアップ時にup.scpを実行するインターフェーストリガー「2」を作成します。
CREATE TRIGGER=2 INTERFACE=ppp0 EVENT=UP CP=IPCP SCRIPT=up.scp ↓
- ppp0のダウン時にdown.scpを実行するインターフェーストリガー「3」を作成します。
CREATE TRIGGER=3 INTERFACE=ppp0 EVENT=DOWN CP=IPCP SCRIPT=down.scp ↓
- 設定は以上です。設定内容をファイルに保存し、SET CONFIGコマンドで起動時設定ファイルに指定します。
CREATE CONFIG=router.cfg ↓
SET CONFIG=router.cfg ↓
Note
- WAN側のケーブルを抜いた状態でここまでの設定を行った場合は、ファイル保存後にケーブルを接続してください。
■ 本構成例では、PPPリンクのアップ・ダウンによってトリガー「1」の状態(有効・無効)が動的に変化します。そのため、WAN側インターフェースにケーブルを接続したまま設定を行うと、コマンド入力時と設定保存時でトリガー「1」の状態が変わってしまうことがあります。その場合、PPP の自動再接続機能が働かなくなりますので、必ず次のいずれかの方法で設定を行ってください。
- WAN側インターフェースのケーブルを抜いた状態でコマンドを入力し、設定保存後にケーブルを接続する。
- PC上で設定ファイルを作成し、ZMODEMかTFTPでルーターに転送する。
- ルーターのEDITコマンドで設定ファイルを作成する。
設定が正しく保存されているかどうかを確認するには、SHOW FILEコマンドかSHOW SCRIPTコマンドで設定ファイルを表示し、トリガー「1」の設定内容を確認してください。正しく保存されている場合、トリガー「1」の設定は次のようになります。
create trigger=1 periodic=3 script=reset.scp
|
手順が正しくなかった場合は、次のように「state=disabled」というパラメーターが付きます。この設定では、ルーター起動直後に再接続機能が働きません。
create trigger=1 periodic=3 state=disabled script=reset.scp
|
この場合は、EDITコマンドで設定ファイルを開き、「state=disabled」を削除して上書き保存してください。
■ 本設定では、ルーター起動直後にPPPoEセッションが確立され、以後常時接続された状態となります。したがって、PPPoEセッションの切断、再接続は手動で行う必要があります。
- セッションを切断するには、次のコマンドでPPPインターフェースをディセーブルにします。
- 再接続するには次のコマンドでPPPインターフェースをイネーブルにします。
■ ファイアウォールで遮断されたパケットのログをとるには、次のコマンドを実行します。
ENABLE FIREWALL POLICY=net LOG=DENY ↓
記録されたログを見るには、次のコマンドを実行します。ここでは、「TYPE=FIRE」により、ファイアウォールが出力したログメッセージだけを表示させています。
■ インターネット側からのPING(ICMP Echo Requestパケット)を拒否するには、次のようなIPフィルターをWAN側インターフェースに設定します。この例では、「LOG=HEADER」により、フィルターで拒否したパケットをログに記録しています。
ADD IP FILTER=0 SO=0.0.0.0 PROTO=ICMP ICMPTYPE=ECHO LOG=HEADER ACTION=EXCLUDE ↓
ADD IP FILTER=0 SO=0.0.0.0 ACTION=INCLUDE ↓
SET IP INT=ppp0 FILTER=0 ↓
記録されたログを見るには、次のコマンドを実行します。ここでは、「TYPE=IPFIL」により、IPフィルターが出力したログメッセージだけを表示させています。
ルーターのコンフィグ
[テキスト版]
CREATE PPP=0 OVER=eth1-any ↓
SET PPP=0 OVER=eth1-any USER=user@isp PASSWORD=isppasswd LQR=OFF BAP=OFF ECHO=ON ↓
ENABLE IP ↓
ADD IP INT=eth0 IP=192.168.10.1 MASK=255.255.255.0 ↓
ADD IP INT=ppp0 IP=12.34.56.78 MASK=255.255.255.255 ↓
ADD IP ROUTE=0.0.0.0 INT=ppp0 NEXTHOP=0.0.0.0 ↓
ADD IP DNS PRIMARY=12.34.11.11 SECONDARY=12.34.11.22 ↓
ENABLE IP DNSRELAY ↓
ENABLE FIREWALL ↓
CREATE FIREWALL POLICY=net ↓
ENABLE FIREWALL POLICY=net ICMP_F=PING,UNREACH ↓
DISABLE FIREWALL POLICY=net IDENTPROXY ↓
ADD FIREWALL POLICY=net INT=eth0 TYPE=PRIVATE ↓
ADD FIREWALL POLICY=net INT=ppp0 TYPE=PUBLIC ↓
ADD FIREWALL POLICY=net NAT=ENHANCED INT=eth0 GBLINT=ppp0 ↓
ADD FIREWALL POLICY=net RULE=1 AC=ALLOW INT=ppp0 PROTO=TCP GBLIP=12.34.56.78 GBLPORT=80 IP=192.168.10.5 PORT=80 ↓
ENABLE DHCP ↓
CREATE DHCP POLICY=BASE LEASETIME=7200 ↓
ADD DHCP POLICY=BASE SUBNET=255.255.255.0 ROUTER=192.168.10.1 DNSSERVER=192.168.10.1 ↓
CREATE DHCP RANGE=LOCAL POLICY=BASE IP=192.168.10.100 NUMBER=32 ↓
ENABLE TRIGGER ↓
CREATE TRIGGER=1 PERIODIC=3 SCRIPT=reset.scp ↓
CREATE TRIGGER=2 INTERFACE=ppp0 EVENT=UP CP=IPCP SCRIPT=up.scp ↓
CREATE TRIGGER=3 INTERFACE=ppp0 EVENT=DOWN CP=IPCP SCRIPT=down.scp ↓
|
スクリプト「reset.scp」
[テキスト版]
スクリプト「up.scp」
[テキスト版]
スクリプト「down.scp」
[テキスト版]
CentreCOM AR300/AR700 シリーズ 設定例集 2.3 #48
(C) 1997 - 2005 アライドテレシスホールディングス株式会社
PN: J613-M0507-00 Rev.H
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