バーチャルシャーシスタック(VCS) / 導入


本バージョンにおけるVCSの仕様
取扱説明書の補足
SwitchBlade x908の広帯域スタックポートについて
初期設定から運用までの流れ
必要な機材の準備
スタックメンバーの初期設定
スタックメンバーの接続
VCSグループの起動
VCSグループの初期設定
VCSグループの運用設定と運用開始


VCSの設定/運用方法について、各機器に対する初期設定、各機器の接続、VCSグループの起動、VCSグループとしての設定から運用開始まで、順を追って説明します。

本バージョンにおけるVCSの仕様

ファームウェアバージョン5.4.4-4.15におけるVCSの仕様は以下のとおりです。VCSの設定は、以下の各項目を念頭に置きながら進めてください。


取扱説明書の補足

VCS構成に必要な機器の取り扱いに関して、取扱説明書を補足します。これ以降の作業では、取扱説明書の記載事項に加え、以下の情報も念頭に置きながら進めてください。

SwitchBlade x908の広帯域スタックポートについて

SwitchBlade x908では、スタックポートとして本体背面の広帯域スタックポートを使用してください。

Note - SwitchBlade x908バージョン5.4.3-0.2以降では、スタックモジュール(AT-XEM-STK)をサポートしなくなりました。

Note - システム起動時にスタックモジュール(AT-XEM-STK)が検出された場合は広帯域スタックポートが無効化されるため、SwitchBlade x908にはスタックモジュール(AT-XEM-STK)を装着しないでください。

次にx900シリーズで使用するスタックモジュールAT-XEM-STKと、SwitchBlade x908で使用する広帯域スタックポートのおもな違いを列挙します。


Note - なお、以降の説明では原則としてx900シリーズでスタックモジュールを使用するものと仮定しています。SwitchBlade x908で広帯域スタックポートを使用する場合は、これらの差異を念頭に置きつつ、適宜説明を読み替えてください。

初期設定から運用までの流れ

VCSの初期設定から運用までの流れは次のようになります。
  1. 必要な機材の準備
    スタックメンバーとなるスイッチ、スタックモジュール、スタックケーブル、レジリエンシーリンク用のイーサネットケーブルなどを準備します。

    「必要な機材の準備」をご覧ください。

  2. スタックメンバーの初期設定
    VCSの物理的な接続をする前に、各メンバーの設定状態を確認し、必要な初期設定を行っておきます。

    「スタックメンバーの初期設定」をご覧ください。

  3. スタックメンバーの接続
    各メンバーの初期設定が終わったら、メンバー同士を接続してVCSの物理的構成を完成させます。

    「スタックメンバーの接続」をご覧ください。

  4. VCSグループの起動
    接続が完了したら、各メンバーの電源を入れてVCSグループを起動します。スタックモジュール上のLEDを見ることで、VCSグループが正常に起動したか、どのスイッチがマスターで、IDはどのように割り振られているかがわかります。

    「VCSグループの起動」をご覧ください。

  5. VCSグループの初期設定
    VCSグループが正しく起動したことを確認したら、その後の設定や運用をしやすくするため、IDやプライオリティーの調整など、いくつかの初期設定を行います。

    「VCSグループの初期設定」をご覧ください。

  6. VCSグループの運用設定と運用開始
    VCSグループの初期設定が完了したら、その後はVCSグループを1台のスイッチと見なして、運用ネットワークのための設定を行い、運用を開始します。

    「VCSグループの運用設定と運用開始」をご覧ください。

  7. 障害発生時の対応
    VCSグループの構成要素に障害が発生した場合は、障害箇所に応じた手順で対応します。

    → 運用編の「障害発生時の対応」をご覧ください。

必要な機材の準備

VCSグループを構築するのに必要な機材を手元に準備してください。


スタックメンバーの初期設定

スタックメンバーとなるスイッチを用意したら、最初に各スイッチを単体で起動し、以下の作業を行ってください。


以下、具体的な手順を説明します。
  1. スタックモジュールやスタックケーブルを装着しない状態でスイッチを単体起動したら、コンソールからログインしてください。

  2. enableコマンドを実行して、特権EXECモードに移行します。

    awplus> enable
    awplus# 
    


  3. show bootコマンドを実行して、通常用と緊急用のファームウェアイメージを確認します。すべてのスイッチで「Current boot image」と「Backup boot image」の設定が同じになっていることを確認してください。違いがある場合は、必要に応じてイメージファイルをダウンロードし、boot systemコマンドを実行して、これらの設定をあわせてください。

    awplus# show boot
    Boot configuration
    --------------------------------------------------------------------------------
    Current software   : x900-5.4.4-4.15.rel
    Current boot image : flash:/x900-5.4.4-4.15.rel (file exists)
    Backup  boot image : Not set
    Default boot config: flash:/default.cfg
    Current boot config: flash:/default.cfg (file exists)
    Backup boot config : Not set
    Autoboot status    : disabled
    


  4. 同じshow bootコマンドの出力にある「Current boot config」欄を確認します。「(file exists)」と表示されている場合は、スタートアップコンフィグが存在していることを示していますので、その内容をファイルにバックアップしておいてください。これにはcopyコマンドを使って次のようにします。ここでは、例として「StandaloneConfig.cfg」というファイルにバックアップしています。

    awplus# copy startup-config StandaloneConfig.cfg
    Copying..
    Successful operation
    


  5. スタートアップコンフィグをバックアップしたら、erase startup-configコマンドでスタートアップコンフィグを削除します。show bootコマンドで再度確認すると、「Current boot config」欄の末尾に「(file not found)」と表示されていればスタートアップコンフィグは削除されています。

    awplus# erase startup-config
    Deleting..
    Successful operation
    awplus# show boot
    Boot configuration
    --------------------------------------------------------------------------------
    Current software   : x900-5.4.4-4.15.rel
    Current boot image : flash:/x900-5.4.4-4.15.rel (file exists)
    Backup  boot image : Not set
    Default boot config: flash:/default.cfg
    Current boot config: flash:/default.cfg (file not found)
    Backup boot config : Not set
    Autoboot status    : disabled
    


  6. 最後に、フィーチャーライセンスの必要な機能を利用する場合は、show licenseコマンドを実行して有効化されているライセンスを確認します。すべてのメンバーで同じライセンスが有効化されていることを確認してください。

    Note - フィーチャーライセンスが適用された機器でVCS 構成を利用する場合は、各VCS メンバーに同一の「License issue date」を持つフィーチャーライセンスがインストールされている必要があります。各VCS メンバー間でフィーチャーライセンスの「License issue date」が異なる場合には、ライセンスパスワードを更新する必要がありますので、弊社窓口までご連絡ください。フィーチャーライセンスの「License issue date」は、show licenseコマンドでご確認いただけます。

  7. 以上でスタックメンバーの初期設定は完了です。各スイッチの電源を切ってください。

スタックメンバーの接続

スタックメンバーの初期設定が終わったら、各スイッチを実際に接続します。
モジュールやケーブルの具体的な装着方法や注意事項については、取扱説明書をご覧ください。
  1. 各スイッチの電源が入っていないことを確認してください。

  2. 各スイッチにスタックモジュールを取り付けます(広帯域スタックポートを使う場合は不要)。
    スイッチAのスタックポート1をスイッチBのスタックポート2に、スイッチBのスタックポート1をスイッチAのスタックポート2に接続します。スイッチ間を接続するときは、必ず番号の異なるスタックポート同士を接続するようにしてください。

    Note - スタックケーブルは1本でも動作しますが、スタックリンクに冗長性を持たせ、耐障害性を高めるため、通常は2本使ってリング状に接続することをおすすめします。これ以降の説明はすべて、リング状に接続していることを前提としています。


  3. 各スイッチのレジリエンシーリンク用ポート(eth0か任意のスイッチポート)同士をUTPケーブルで接続し、レジリエンシーリンクを形成します。


    Note - eth0をレジリエンシーリンクだけでなく、通常のマネージメントポートとしても利用したい場合は、eth0間にリピーターHUBをはさんでください。スイッチポートをレジリエンシーリンクに設定する場合は、該当スイッチポートはレジリエンシーリンク専用となり、他の用途には使用できません。なお、リピーターHUBとの接続方法については、リピーターHUBのマニュアルをご参照ください。また、以降の説明ではeth0同士をUTPケーブルで直結しているものと仮定しています。


  4. 以上でスタックメンバーの接続は完了です。

VCSグループの起動

スタックメンバーの接続が終わったら、いよいよVCSグループを起動します。これは以下の手順で行います。
  1. 各スイッチに同時に電源を入れます。

  2. 各メンバーは、起動後にメッセージを交換してマスターを選出し、必要に応じてIDの再割り当てを行います。これらが済むと、VCSグループの起動は完了です。これは、各スイッチのスタックモジュール上のLED(広帯域スタックポート使用時は本体前面のスタックLED)を見ることで確認できます。


    LED
    状態
    表示内容
    PORT 1/2
    点灯 リンクが確立しています
    点滅 リンクに異常が発生しています
    消灯 リンクが確立していません
    STATUS
    点灯 マスターとして動作しています
    点滅 スタックトポロジーの構築中およびスタックマスターの選出中です
    点灯 スレーブとして動作しています
    消灯 スタックメンバーとして動作していません
    ID(AT-XEM-STKのみ)
    1〜8 スタックメンバーIDが1〜8の数字で表示されます
    消灯 スタックメンバーとして動作していません



  3. LED表示に問題がなければVCSグループの起動は完了です。

VCSグループの初期設定

VCSグループが起動したら、その後の設定や運用がしやすいように、スタックメンバーIDやプライオリティーを調整します。また、運用ネットワークとVCS管理用VLAN/サブネットアドレスが重複しないことを確認し、必要なら管理用VLAN/サブネットアドレスを変更します。

たとえば、2台のスイッチでVCSグループを構成している場合、2台のスイッチを配置順にID=1、ID=2としておき、ID=1をマスターにするのがもっとも直感的で、ケーブルの接続時やポートの設定時にもわかりやすく便利です。

ここでは、例としてVCSグループ起動直後のID割り当てが次のようになったと仮定して、これを前記のようなわかりやすい構成に変更する手順を示します。


  1. スイッチAのスタックモジュール上のセレクトボタンを押します。これによりスイッチAがID=1となり、スイッチBがID=2になります。セレクトボタンを押すと、新しいIDを有効にするため、各スイッチが自動的に再起動します。
    Note - 広帯域スタックポート使用時はセレクトボタンを使用できないため、stack renumberコマンドでIDを変更してください。またIDの確認はshow stackコマンドで行ってください。

  2. スタックモジュール上のLED(広帯域スタックポート使用時は本体前面のスタックLED)でVCSグループの再起動が完了したことを確認します。手順1の操作により、VCSグループのID割り当てと役割分担は次のようになるはずです。


    次にスイッチAをマスターにするため、プライオリティーの変更を行います。

  3. いずれかのスイッチにコンソールを接続してログインします。どちらのスイッチにコンソールを接続しても、表示されるのはマスター(VCSグループ)のコンソール画面となります。

  4. enableコマンドを実行して、特権EXECモードに移行します。

    awplus> enable
    awplus# 
    


  5. hostnameコマンドでVCSグループとしてのホスト名を設定し、VCSグループを識別しやすくします。

    awplus# configure terminal
    Enter configuration commands, one per line.  End with CNTL/Z.
    awplus(config)# hostname vcg
    


  6. スイッチAをマスターにするため、スイッチAのプライオリティーを初期値の128より小さく設定します。ここでは例として64にします。これには、グローバルコンフィグモードのstack priorityコマンドを使います。このコマンドでは対象メンバーをIDで指定するため、ここではスイッチAのIDである1を指定しています。

    vcg(config)# stack 1 priority 64
    


  7. マスター切り替えを高速化するVCS-FF(VCSファストフェイルオーバー)を有効に機能させるため、stack virtual-macコマンドでバーチャルMACアドレス機能を有効化します。
    また、stack virtual-chassis-idコマンドで、バーチャルMACアドレスの下位12ビットとして使用されるバーチャルシャーシIDを設定します。

    vcg(config)# stack virtual-mac
    vcg(config)# stack virtual-chassis-id 127
    

    Note - 同一ネットワーク上に複数のVCSグループが存在するときは、該当するVCSグループ間でバーチャルシャーシID(stack virtual-chassis-id)が重複しないよう注意して設定してください。バーチャルシャーシIDは、show stackコマンドをdetailオプション付きで実行したときに表示される「Virtual Chassis ID」欄で確認できます。

    Note - バーチャルMACアドレス機能は初期設定では無効ですが、VCS使用時はバーチャルMACアドレス機能を必ず有効化してください。無効状態での運用はサポート対象外となります。
    Note - ファームウェアバージョン5.4.3-0.2以降では、VCS使用時にバーチャルMACアドレス機能の有効化(stack virtual-mac)が必須となりました。

  8. VCS管理用VLANとサブネットアドレスの確認をし、必要に応じて変更します。運用ネットワークの設計資料を参照して、以下の2点を確認してください。


  9. ここまでに行ったVCSグループに対する初期設定内容をshow running-configコマンドで確認した上でスタートアップコンフィグに保存し、reloadコマンドかrebootコマンドでVCSグループを再起動します。

    vcg(config)# end
    vcg# show running-config
    ...(表示されるコンフィグに問題がないことを確認) ...
    vcg# copy running-config startup-config
    Building configuration...
    [OK]
    vcg# reload
    Are you sure you want to reboot the whole stack? (y/n): y 
    


  10. スタックモジュール上のLED(広帯域スタックポート使用時は本体前面のスタックLED)でVCSグループの再起動が完了したことを確認します。ここまでの操作により、VCSグループのID割り当てと役割分担は次のようになったはずです。


これでVCSグループとしての初期設定は完了です。

VCSグループの運用設定と運用開始

スタックメンバーの初期設定が完了したら、運用ネットワークのための設定に入ります。VCSグループを仮想的な1台のスイッチと見なして、通常どおりネットワークの設定を行ってください。設定が完了したら最後にレジリエンシーリンクを有効化し、設定を保存してください。
  1. いずれかのスイッチにコンソールを接続してログインします。どちらのスイッチにコンソールを接続しても、表示されるのはマスター(VCSグループ)のコンソール画面となります。

    ログインしたら、単独のスイッチを設定するときと同じようにネットワーク構成に応じたインターフェースやプロトコルの設定を行ってください。

    設定コマンドでスイッチポート番号を指定するときは、「portX.Y.Z」の形式で指定します。



  2. ネットワークの設定が終わったら、レジリエンシーリンクを有効化します。レジリエンシーリンクを使用しない構成はサポート対象外ですので、運用に入る前に必ずこの設定を行ってください。


  3. 設定内容を確認し、スタートアップコンフィグに保存します。

    vcg(config)# end
    vcg# show running-config
    ...(表示されるコンフィグに問題がないことを確認) ...
    vcg# copy running-config startup-config
    Building configuration...
    [OK]
    VCS synchronizing file across the stack, please wait..
    File synchronization with stack member-2 successfully completed
    [DONE]
    vcg# 
    


  4. これで運用前の設定は完了です。各スイッチのポートを実ネットワークに接続し、運用を開始してください。VCSグループとしての動作状況は、スタンドアローン時にも使用する各種コマンドで確認できるほか、SNMPやログ、LEDなどでも確認可能です。

ナビゲーション

■ VCS導入後の日常作業の基本手順については、第3部 運用編をご覧ください。


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PN: 613-002380 Rev.A