バーチャルシャーシスタック(VCS) / 導入


本バージョンにおけるVCSの仕様
初期設定から運用までの流れ
必要な機材の準備
スタックメンバーの初期設定
スタックメンバーの接続
VCSグループの起動
VCSグループの初期設定
VCSグループの運用設定と運用開始


VCSの設定/運用方法について、各機器に対する初期設定、各機器の接続、VCSグループの起動、VCSグループとしての設定から運用開始まで、順を追って説明します。

本バージョンにおけるVCSの仕様

ファームウェアバージョン5.4.7-1.1におけるVCSの仕様は以下のとおりです。VCSの設定は、以下の各項目を念頭に置きながら進めてください。


初期設定から運用までの流れ

VCSの初期設定から運用までの流れは次のようになります。
  1. 必要な機材の準備
    スタックメンバーとなるスイッチ、スタックモジュール、スタックケーブル、レジリエンシーリンク用のイーサネットケーブルなどを準備します。

    「必要な機材の準備」をご覧ください。

  2. スタックメンバーの初期設定
    VCSの物理的な接続をする前に、各メンバーの設定状態を確認し、必要な初期設定を行っておきます。

    「スタックメンバーの初期設定」をご覧ください。

  3. スタックメンバーの接続
    各メンバーの初期設定が終わったら、メンバー同士を接続してVCSの物理的構成を完成させます。

    「スタックメンバーの接続」をご覧ください。

  4. VCSグループの起動
    接続が完了したら、各メンバーの電源を入れてVCSグループを起動します。本製品は、専用のLED表示でマスターの確認はできませんが、LED ON/OFFボタンによってLED OFF(エコLED)に設定することで、ステータスLED(LED ON設定時にスタックメンバーIDが表示されている場所)の横3セグメントに、マスターであれば上側のライン" ̄"、スレーブであれば下側のライン"_"が点灯します。LED ON設定時にはステータスLEDの表示でメンバーIDがどのように割り振られているか確認できます。また、CLIコマンドを使うことによっても、VCSグループの情報を知ることができます。

    「VCSグループの起動」をご覧ください。

  5. VCSグループの初期設定
    VCSグループが正しく起動したことを確認したら、その後の設定や運用をしやすくするため、IDやプライオリティーの調整など、いくつかの初期設定を行います。

    「VCSグループの初期設定」をご覧ください。

  6. VCSグループの運用設定と運用開始
    VCSグループの初期設定が完了したら、その後はVCSグループを1台のスイッチと見なして、運用ネットワークのための設定を行い、運用を開始します。

    「VCSグループの運用設定と運用開始」をご覧ください。

  7. VCSグループの運用状態確認
    VCSグループの運用を開始したら、CLIで運用状態を定期的に確認します。

    → 運用編の「VCSグループの運用状態確認」をご覧ください。

  8. VCSグループ運用中のメンテナンス作業
    VCSグループ運用中に構成を変更する場合や障害が発生した場合は、メンテナンス作業が必要です。

    → 運用編の「VCSグループ運用中のメンテナンス作業」をご覧ください。

必要な機材の準備

VCSグループを構築するのに必要な機材を手元に準備してください。


スタックメンバーの初期設定

スタックメンバーとなるスイッチを用意したら、最初に各スイッチを単体で起動し、以下の作業を行ってください。


以下、具体的な手順を説明します。
  1. スタックモジュールやスタックケーブルを装着しない状態でスイッチを単体起動したら、コンソールからログインしてください。

  2. enableコマンドを実行して、特権EXECモードに移行します。
    awplus> enable
    awplus# 
    

  3. show bootコマンドを実行して、通常用と緊急用のファームウェアイメージを確認します。すべてのスイッチで「Current boot image」と「Backup boot image」の設定が同じになっていることを確認してください。違いがある場合は、必要に応じてイメージファイルをダウンロードし、boot systemコマンドを実行して、これらの設定をあわせてください。
    awplus# show boot
    Boot configuration
    --------------------------------------------------------------------------------
    Current software   : x930-5.4.7-1.1.rel
    Current boot image : flash:/x930-5.4.7-1.1.rel (file exists)
    Backup  boot image : Not set
    Default boot config: flash:/default.cfg
    Current boot config: flash:/default.cfg (file exists)
    Backup boot config : Not set
    Autoboot status    : disabled
    

  4. 同じshow bootコマンドの出力にある「Current boot config」欄を確認します。「(file exists)」と表示されている場合は、スタートアップコンフィグが存在していることを示していますので、その内容をファイルにバックアップしておいてください。これにはcopyコマンドを使って次のようにします。ここでは、例として「StandaloneConfig.cfg」というファイルにバックアップしています。
    awplus# copy startup-config StandaloneConfig.cfg
    Copying..
    Successful operation
    

  5. スタートアップコンフィグをバックアップしたら、erase startup-configコマンドでスタートアップコンフィグを削除します。show bootコマンドで再度確認すると、「Current boot config」欄の末尾に「(file not found)」と表示されていればスタートアップコンフィグは削除されています。
    awplus# erase startup-config
    Deleting..
    Successful operation
    awplus# show boot
    Boot configuration
    --------------------------------------------------------------------------------
    Current software   : x930-5.4.7-1.1.rel
    Current boot image : flash:/x930-5.4.7-1.1.rel (file exists)
    Backup  boot image : Not set
    Default boot config: flash:/default.cfg
    Current boot config: flash:/default.cfg (file not found)
    Backup boot config : Not set
    Autoboot status    : disabled
    
  6. 最後に、フィーチャーライセンスの必要な機能を利用する場合は、show licenseコマンドを実行して有効化されているライセンスを確認します。すべてのメンバーで同じライセンスが有効化されていることを確認してください。

    Note
    フィーチャーライセンスが適用された機器でVCS 構成を利用する場合は、各VCS メンバーに同一の「License issue date」を持つフィーチャーライセンスがインストールされている必要があります。各VCS メンバー間でフィーチャーライセンスの「License issue date」が異なる場合には、ライセンスパスワードを更新する必要がありますので、弊社窓口までご連絡ください。フィーチャーライセンスの「License issue date」は、show licenseコマンドでご確認いただけます。

  7. 以上でスタックメンバーの初期設定は完了です。各スイッチの電源を切ってください。


スタックメンバーの接続

スタックメンバーの初期設定が終わったら、各スイッチを実際に接続します。
モジュールやケーブルの具体的な装着方法や注意事項については、取扱説明書をご覧ください。
  1. 各スイッチの電源が入っていないことを確認してください。

  2. 各スイッチにスタックモジュールを取り付けます。
    Note
    本体前面のSFP+スロットと背面に装着される拡張モジュールのQSFP+スロットは、同時にスタックポートとして使用することはできません。 拡張モジュールが装着されていないときは、本体前面のSFP+スロットは、初期設定で、スタックポートとして動作します。拡張モジュールが装着されたときは、拡張モジュールのQSFP+スロットがスタックポートとなり、本体前面のSFP+スロットは通常のスイッチポートとして機能します。 拡張モジュールが装着された状態で、本体前面のSFP+スロットをスタックポートにしたい場合は、CLIでstack enableコマンドにbuiltin-portsパラメーターを、拡張モジュールのQSFP+スロットをスタックポートに戻したい場合は、expansion-portsパラメーターを指定します。いずれの場合も、コマンドの反映にはシステムの再起動が必要です。

    スイッチAのスタックポート1をスイッチBのスタックポート2に、スイッチBのスタックポート1をスイッチAのスタックポート2に接続します。スイッチ間を接続するときは、必ず番号の異なるスタックポート同士を接続するようにしてください。

    Note
    スタックケーブルは1本でも動作しますが、スタックリンクに冗長性を持たせ、耐障害性を高めるため、通常は2本使ってリング状に接続することをおすすめします。これ以降の説明はすべて、リング状に接続していることを前提としています。


  3. 各スイッチのレジリエンシーリンク用ポート(eth0か任意のスイッチポート)同士をUTPケーブルで接続し、レジリエンシーリンクを形成します。


    Note
    eth0をレジリエンシーリンクだけでなく、通常のマネージメントポートとしても利用したい場合は、eth0間にリピーターHUBをはさんでください。スイッチポートをレジリエンシーリンクに設定する場合は、該当スイッチポートはレジリエンシーリンク専用となり、他の用途には使用できません。なお、リピーターHUBとの接続方法については、リピーターHUBのマニュアルをご参照ください。また、以降の説明ではeth0同士をUTPケーブルで直結しているものと仮定しています。


  4. 以上でスタックメンバーの接続は完了です。

VCSグループの起動

スタックメンバーの接続が終わったら、いよいよVCSグループを起動します。これは以下の手順で行います。
  1. 各スイッチに同時に電源を入れます。

  2. 各メンバーは、起動後にメッセージを交換してマスターを選出し、必要に応じてIDの再割り当てを行います。これらが済むと、VCSグループの起動は完了です。これは、各スイッチの本体前面にあるSFP+スロットLEDとステータスLED、または拡張モジュールのQSFP+スロットLEDを見ることで確認できます。



  3. LED表示に問題がなければVCSグループの起動は完了です。

VCSグループの初期設定

VCSグループが起動したら、その後の設定や運用がしやすいように、スタックメンバーIDやプライオリティーを調整します。また、運用ネットワークとVCS管理用VLAN/サブネットアドレスが重複しないことを確認し、必要なら管理用VLAN/サブネットアドレスを変更します。

たとえば、2台のスイッチでVCSグループを構成している場合、2台のスイッチを配置順にID=1、ID=2としておき、ID=1をマスターにするのがもっとも直感的で、ケーブルの接続時やポートの設定時にもわかりやすく便利です。

ここでは、例としてVCSグループ起動直後のID割り当てが次のようになったと仮定して、これを前記のようなわかりやすい構成に変更する手順を示します。


  1. いずれかのスイッチにコンソールを接続してログインします。どちらのスイッチにコンソールを接続しても、表示されるのはマスター(VCSグループ)のコンソール画面となります。

  2. enableコマンドを実行して、特権EXECモードに移行します。
    awplus> enable
    awplus# 
    

  3. hostnameコマンドでVCSグループとしてのホスト名を設定し、VCSグループを識別しやすくします。
    awplus# configure terminal
    Enter configuration commands, one per line.  End with CNTL/Z.
    awplus(config)# hostname vcg
    

  4. スイッチAをマスターにするため、スイッチAのプライオリティーを初期値の128より小さく設定します。ここでは例として64にします。これには、グローバルコンフィグモードのstack priorityコマンドを使います。このコマンドでは対象メンバーをIDで指定するため、ここではスイッチAのIDである1を指定しています。
    vcg(config)# stack 1 priority 64
    
    Note
    ブートローダー バージョン 3.1.3 以降 とバージョン 3.1.2 以前の組み合わせでVCSグループを構成している場合、同時に電源を入れた時やコマンドで再起動した時はプライオリティーの設定にかかわらず、ブートローダー バージョン 3.1.3 以降のメンバーがマスターになります。

  5. VCSマスター障害発生時のマスター切り替えをスムーズに行うため、stack virtual-macコマンドでバーチャルMACアドレス機能を有効化します。
    また、stack virtual-chassis-idコマンドで、バーチャルMACアドレスの下位12ビットとして使用されるバーチャルシャーシIDを設定します。
    vcg(config)# stack virtual-mac
    vcg(config)# stack virtual-chassis-id 127
    
    Note
    同一ネットワーク上に複数のVCSグループが存在するときは、該当するVCSグループ間でバーチャルシャーシID(stack virtual-chassis-id)が重複しないよう注意して設定してください。バーチャルシャーシIDは、show stackコマンドをdetailオプション付きで実行したときに表示される「Virtual Chassis ID」欄で確認できます。

    Note
    バーチャルMACアドレス機能は初期設定では無効ですが、VCS使用時はバーチャルMACアドレス機能を必ず有効化してください。無効状態での運用はサポート対象外となります。
    Note
    VCS使用時はバーチャルMACアドレス機能の有効化(stack virtual-mac)が必須です。

  6. VCS管理用VLANとサブネットアドレスの確認をし、必要に応じて変更します。運用ネットワークの設計資料を参照して、以下の2点を確認してください。


  7. ここまでに行ったVCSグループに対する初期設定内容をshow running-configコマンドで確認した上でスタートアップコンフィグに保存し、reloadコマンドかrebootコマンドでVCSグループを再起動します。
    vcg(config)# end
    vcg# show running-config
    ...(表示されるコンフィグに問題がないことを確認) ...
    vcg# copy running-config startup-config
    Building configuration...
    [OK]
    vcg# reload
    Are you sure you want to reboot the whole stack? (y/n): y 
    

  8. ステータスLEDやスロットLEDでVCSグループの再起動が完了したことを確認します。ここまでの操作により、VCSグループのID割り当てと役割分担は次のようになったはずです。


これでVCSグループとしての初期設定は完了です。

VCSグループの運用設定と運用開始

スタックメンバーの初期設定が完了したら、運用ネットワークのための設定に入ります。VCSグループを仮想的な1台のスイッチと見なして、通常どおりネットワークの設定を行ってください。設定が完了したら最後にレジリエンシーリンクを有効化し、設定を保存してください。
  1. いずれかのスイッチにコンソールを接続してログインします。どちらのスイッチにコンソールを接続しても、表示されるのはマスター(VCSグループ)のコンソール画面となります。

    ログインしたら、単独のスイッチを設定するときと同じようにネットワーク構成に応じたインターフェースやプロトコルの設定を行ってください。

    設定コマンドでスイッチポート番号を指定するときは、「portX.Y.Z」の形式で指定します。



  2. ネットワークの設定が終わったら、レジリエンシーリンクを有効化します。レジリエンシーリンクを使用しない構成はサポート対象外ですので、運用に入る前に必ずこの設定を行ってください。

  3. 設定内容を確認し、スタートアップコンフィグに保存します。
    vcg(config)# end
    vcg# show running-config
    ...(表示されるコンフィグに問題がないことを確認) ...
    vcg# copy running-config startup-config
    Building configuration...
    [OK]
    VCS synchronizing file across the stack, please wait..
    File synchronization with stack member-2 successfully completed
    [DONE]
    vcg# 
    

  4. これで運用前の設定は完了です。各スイッチのポートを実ネットワークに接続し、運用を開始してください。VCSグループとしての動作状況は、スタンドアローン時にも使用する各種コマンドで確認できるほか、SNMPやログ、LEDなどでも確認可能です。

ナビゲーション

■ VCS導入後の日常作業の基本手順については、第3部 運用編をご覧ください。


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