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CentreCOM AR260S V2 設定例集 3.3.3 #9

CUGサービス(端末型)における3点間IPsec VPN(インターネットアクセス・支社間通信は本社経由)


本社(ルーターA:AR550S)と支社(ルーターB、C:AR260S V2)をCUG(Closed Users Group)サービス(NTT東日本のフレッツ・グループアクセス(ライト)およびNTT西日本のフレッツ・グループ(ベーシックメニュー))の「端末型払い出し」に接続します。本社〜拠点間にIPsec(ESP)トンネルを構築して拠点間通信を実現しつつ、本社(ルーターA)経由でインターネットアクセスも行います。


インターネットサービスプロバイダー(以下 ISP)からは、次の情報が提供されているものとします。

表 1
 
ルーターA
PPPユーザー名 user1@example
PPPパスワード password
サービス名 指定なし
IPアドレス グローバルアドレス1個(動的割り当て)
DNSサーバー 接続時に通知される


CUGサービスからは、次の情報が提供されているものとします。

表 2
 
ルーターA
ルーターB
ルーターC
ユーザーID(PPPユーザー名) router1 router2 router3
パスワード(PPPパスワード) password password password
サービス名 指定なし 指定なし 指定なし
IPアドレス 172.16.0.1/32 172.16.0.2/32 172.16.0.3/32


ルーターB、Cは、それぞれ以下のように設定するものとします。

表 3
 
ルーターB
ルーターC
WAN側IPアドレス 自動取得(172.16.0.2/32を取得) 自動取得(172.16.0.3/32を取得)
LAN側IPアドレス 192.168.20.1/24 192.168.30.1/24
VPN接続設定
ローカルセキュアグループ〜リモートセキュアグループ 192.168.20.0/24 〜 すべて 192.168.30.0/24 〜 すべて
ローカルゲートウェイ pppoe0 pppoe0
リモートゲートウェイ 172.16.0.1 172.16.0.1
IKE設定
交換モード メイン メイン
事前共有鍵 secret_ab secret_ac
暗号化認証アルゴリズム 3DES & SHA1-DH2 3DES & SHA1-DH2
IPsec設定
暗号化認証アルゴリズム ESP 3DES HMAC SHA1 ESP 3DES HMAC SHA1
PFSグループ なし なし



本構成における設定のポイントは、次の通りです。


Note - ルーターB、Cの設定手順は同一です。ルーターCの設定内容につきましては、文中の「ルーターCは〜」をご参照ください

ルーターA(AR550S)の設定

  1. セキュリティーモードで各種設定を行うことができるSecurity Officerレベルのユーザー「secoff」を作成します。パスワードも「secoff」とします。


  2. ISPへ接続するため、eth0インターフェース上にppp0を作成します。


  3. ISPから通知されたユーザー名、パスワードを設定します。ISDN回線向けの機能であるBAPは無効化し、LCP ECHOによるPPPセッション監視を有効化します。


  4. CUGサービスに接続するため、eth0インターフェース上にppp1を作成します。


  5. CUGサービスから提供されたユーザー名、パスワードを設定します。ISDN回線向けの機能であるBAPは無効化し、LCP ECHOによるPPPセッション監視を有効化します。


  6. IPルーティングを行うためIPモジュールを有効化します。また、IPインターフェースがIPアドレスを自動取得できるよう、リモートアサインも有効化します。


  7. IPインターフェースvlan1にIPアドレス192.168.10.1/24を設定します。


  8. ISPに接続するppp0はIPアドレスを自動取得するので、IPアドレスに0.0.0.0を設定します。


  9. CUGサービスへ接続するppp1には、CUGサービスから提供された172.16.0.1/32 を設定します。


  10. デフォルトルートをppp0に設定します。


  11. 対向ルーターのIPアドレスと、対向拠点サブネット向けのルートをppp1に設定します。


  12. ppp0がISPに接続した際、通知されたDNSサーバーアドレスを使用するように設定します。


    Note - ISPからDNSサーバーアドレスが指定されている場合は、次のように設定します。


  13. DNSリレーを有効化します。


  14. ファイアウォールを有効化します。


  15. ファイアウォールの動作を規定するポリシー「net」を作成します。
    ICMPはUnreachable、Echo/Echo reply(ping)のみ透過するよう設定し、identプロキシー機能は無効化します。(メールサーバー等からのident要求に対してTCP RSTを返します)


  16. ファイアウォールポリシー「net」に、IPインターフェースを追加します。
    ppp0をpublic、ppp1/vlan1をprivateとして設定し、ppp0側から開始される通信は遮断しつつppp1/vlan1側から開始される通信は透過します。


  17. インターネットアクセスを実現するため、vlan1〜ppp0間とppp1〜ppp0間にダイナミックENATを設定します。


  18. DHCPサーバー機能を有効化します。


  19. DHCPポリシー「base」を作成します。オプションとして サブネット:255.255.255.0、ゲートウェイ:192.168.10.1、DNSサーバーアドレス:192.168.10.1を配布するよう設定します。


  20. DHCPレンジ lan を作成します。192.168.10.10から254までの245個を配布するよう設定します。


  21. 暗号化に使用する事前共有鍵を設定します。


    Note - create enco keyコマンドはコンフィグファイルには保存されず、装置内に別途保存されます。

  22. ルーター間で鍵交換を行うためのISAKMPポリシーを定義します。暗号化プロトコルには3DESを指定してます。


    Note - 3DESではなくDESを使用する場合は、encalg パラメーターの値を des に変更します。

  23. ルーターA〜B間、A〜C間でハートビートを設定します。


  24. IPsec SAを生成するための SAスペックとバンドルSAスペックを定義します。暗号化プロトコルには3DESを指定しています。


    Note - 3DESではなくDESを使用する場合は、encalg パラメーターの値を des に変更します。

  25. ISAKMPパケットを透過するためのIPsecポリシー「isa」を定義します。


  26. ルーターBのLANとVPNを行うため、ルーターB向けのIPsecポリシー「vpn_ab」を定義します。ladを0.0.0.0とすることで 送信元IPにかかわらず、宛先IPアドレスのみを条件にポリシーが適用されます。


  27. ルーターCのLANとVPNを行うため、ルーターC向けのIPsecポリシー「vpn_ac」を定義します。ladを0.0.0.0とすることで 送信元IPにかかわらず、宛先IPアドレスのみを条件にポリシーが適用されます。


  28. インターネット向け通信を平文で透過するためのIPsecポリシー「inet」を定義します。


  29. IPsecモジュール、ISAKMPモジュールを有効化します。


  30. Security Officerレベルのユーザーで再ログインを行います。loginコマンドを実行するとパスワード入力を求められますので、1で設定したパスワードを入力します。


  31. セキュリティーモードへ移行します。


  32. 設定内容を router.cfg という名前で保存し、起動時に読み込まれるよう設定します。


    ルーターAの設定は以上です。


ルーターB、ルーターC(AR260S V2)の設定

  1. IPアドレスを自動取得するよう設定したPCを接続し、Webブラウザーを起動します。
    Webブラウザーから「http://192.168.1.1/」を開くとユーザー名、パスワードの入力を求められますのでユーザー名「manager」、パスワード「friend」を入力すると、次の画面が表示されます。


    次に、左側のメニューから[LAN]-[IP]を選択します。
    [IPアドレス]を192.168.20.1 (ルーターCは192.168.30.1)に変更して[適用]を押します。


    [適用]を押した後、IPアドレスを再取得するためにPCを再起動します。PCが起動完了したら、再度Webブラウザーを起動して「http://192.168.20.1/」(ルーターCは http://192.168.30.1/)を開きます。

  2. 左側のメニューから[LAN]-[DHCP]を選択し、[始点IPアドレス]を192.168.20.10(ルーターCは192.168.30.10)に、[終点IPアドレス]を192.168.20.41(ルーターBは192.168.30.41)に変更します。
    [プライマリーDNSサーバー]を172.16.0.1に変更して[適用]を押します。


  3. 左側のメニューから[WAN]-[WAN]を選択します。
    [WAN設定]の[接続モード]に PPPoE を選択し、[デフォルトゲートウェイ]を pppoe0 とします。

    pppoe0の[ユーザー名][パスワード]に、CUGサービスから提供された内容を入力します。[MSSクランプ]を「手動設定」にします。[クランプ値]を40から120に変更して[適用]を押します。


    その他のパラメーターは、初期状態のままでかまいません。

  4. 左側のメニューから[ファイアウォール/NAT]-[アクセス制御]を選択します。
    [pppoe0(WAN)] タブを開き、[アクセスリスト設定]に次の設定を行います。

    表 4
    [方向] Inbound
    [動作] 通過
    [優先度] 1
    [送信元]-[タイプ] すべて
    [宛先]-[タイプ] サブネット
    [ネットワークアドレス] 192.168.20.0(ルーターCの場合192.168.30.0)
    [サブネットマスク] 255.255.255.0
    [送信元ポート] すべて
    [宛先ポート] すべて
    [プロトコル] すべて
    [ログ] 無効


    設定が完了したら、[追加]を押します。


  5. 左側のメニューから[VPN]-[VPN接続]を選択し、[VPN接続設定]を次の内容で設定します。

    表 5
    [簡易設定/詳細設定] 簡易設定
    [ポリシー名] vpn
    [キープアライブ] 有効
    [種別] ハートビート
    [仮想トンネルインターフェース] 無効
    [ローカルセキュアグループ]-[種類] サブネット
    [ネットワークアドレス] 192.168.20.0(ルーターCの場合は192.168.30.0)
    [サブネットマスク] 255.255.255.0
    [リモートセキュアグループ]-[種類] すべて
    [ローカルゲートウェイ] pppoe0
    [リモートゲートウェイ]-[種類] IPアドレス
    [IPアドレス] 172.16.0.1



    次に、[IKE設定]の設定を行います。

    表 6
    [IKE交換モード] メイン
    [事前共有鍵] secret-ab(ルーターCの場合secret-ac)


    設定が完了したら、[追加]を押します。


  6. 画面左上の[設定保存]を押します。
    設定保存ボタン下の「設定が保存されていません」という表示が消えれば設定完了です。
    設定は以上です。

    Note - 本設定例では以下のIKEとIPsec設定を設定します。暗号化方式などを変更する必要がある場合は、<手順5>の[VPN接続設定]で[詳細設定]を選択してください。

    表 7
    IKE設定
    暗号化認証アルゴリズム 3DES & SHA1-DH2
    IPsec設定
    暗号化認証アルゴリズム ESP 3DES HMAC SHA1
    PFSグループ なし


まとめ

ルーターA(AR550S)のコンフィグ [テキスト版]
* 「#」で始まる行は、コンソールから入力しないと意味を持たないコマンドか、設定ファイル(.cfg)に記述しても無効なコマンドを示しています。詳細は本文の説明をご覧ください。
add user=secoff password=secoff priv=sec
cre ppp=0 over=eth0-any
set ppp=0 over=eth0-any user=user1@example password=password iprequest=on lqr=off bap=off echo=on
cre ppp=1 over=eth0-any
set ppp=1 over=eth0-any user=router1 password=password lqr=off bap=off echo=on
ena ip
ena ip remote
add ip int=vlan1 ip=192.168.10.1 mask=255.255.255.0
add ip int=ppp0 ip=0.0.0.0
add ip int=ppp1 ip=172.16.0.1 mask=255.255.255.255
add ip rou=0.0.0.0 mask=0.0.0.0 int=ppp0 next=0.0.0.0
add ip rou=172.16.0.2 mask=255.255.255.255 int=ppp1 next=0.0.0.0
add ip rou=172.16.0.3 mask=255.255.255.255 int=ppp1 next=0.0.0.0
add ip rou=192.168.20.0 mask=255.255.255.0 int=ppp1 next=0.0.0.0
add ip rou=192.168.30.0 mask=255.255.255.0 int=ppp1 next=0.0.0.0
add ip dns int=ppp0
ena ip dnsrelay
ena fire
cre fire poli=net
ena fire poli=net icmp_f=unreach,ping
dis fire poli=net identproxy
add fire poli=net int=vlan1 type=private
add fire poli=net int=ppp0 type=public
add fire poli=net int=ppp1 type=private
add fire poli=net nat=enhanced int=vlan1 gblint=ppp0
add fire poli=net nat=enhanced int=ppp1 gblint=ppp0
ena dhcp
cre dhcp poli=base lease=7200
add dhcp poli=base subnet=255.255.255.0
add dhcp poli=base router=192.168.10.1 dnss=192.168.10.1
cre dhcp range=lan poli=base ip=192.168.10.10 num=245 probe=ARP
# create enco key=1 type=gene value="secret-ab"
# create enco key=2 type=gene value="secret-ac"
cre isakmp poli="ike_ab" peer=172.16.0.2 key=1 sendn=true encalg=3desouter hashalg=sha group=2
cre isakmp poli="ike_ac" peer=172.16.0.3 key=2 sendn=true encalg=3desouter hashalg=sha group=2
set isakmp poli="ike_ab" heartbeat=both
set isakmp poli="ike_ac" heartbeat=both
cre ipsec sas=1 keyman=isakmp prot=esp encalg=3desouter hashalg=sha
cre ipsec bundle=1 keyman=isakmp string="1"
cre ipsec poli="isa" int=ppp1 ac=permit lport=500 rport=500 transport=udp
cre ipsec poli="vpn_ab" int=ppp1 ac=ipsec keyman=isakmp bundle=1 peer=172.16.0.2
set ipsec poli="vpn_ab" lad=0.0.0.0 rad=192.168.20.0 rma=255.255.255.0
cre ipsec poli="vpn_ac" int=ppp1 ac=ipsec keyman=isakmp bundle=1 peer=172.16.0.3
set ipsec poli="vpn_ac" lad=0.0.0.0 rad=192.168.30.0 rma=255.255.255.0
cre ipsec poli="inet" int=ppp0 ac=permit
ena ipsec
ena isakmp
# login secoff
# enable system security_mode





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