<前頁 次頁> << >> 目次 (番号順 (詳細)回線別 (詳細)機能別 (詳細)

CentreCOM AR260S V2 設定例集 3.3.3 #8

PPPoE接続環境における3点間IPsec VPN(支社間通信は本社経由。1支店のみアドレス不定)


PPPoEでインターネットに接続している3つの拠点をIPsec(ESP)トンネルで結ぶVPN構築例です。本社(ルーターA:AR550S)と各支社(ルーターB、C:AR260S V2)のみを接続する構成とし、支社間の通信は本社経由で行うものとします。また、1支社のみグローバルアドレス1個を動的に割り当てられ、その他の拠点はグローバルアドレス1個が固定で割り当てられていると仮定しています。


インターネットサービスプロバイダー(ISP)からは、次の情報が提供されているものとします。

表 1
 
ルーターA
ルーターB
ルーターC
ユーザーID(PPPユーザー名) user1@example user2@example user3@example
パスワード(PPPパスワード) password password password
サービス名 指定なし 指定なし 指定なし
グローバルIPアドレス 10.0.0.1/32 10.0.0.2/32 不定(動的取得)


ルーターB、Cは、それぞれ以下のように設定するものとします。

表 2
 
ルーターB
ルーターC
WAN側IPアドレス 自動取得(10.0.0.2/32を取得) 自動取得(取得アドレスは不定)
LAN側IPアドレス 192.168.20.1/24 192.168.30.1/24
VPN接続設定
ローカルセキュアグループ〜リモートセキュアグループ [1]192.168.20.0/24 〜 192.168.10.0/24 [1]192.168.30.0/24 〜 192.168.10.0/24
[2]192.168.20.0/24 〜 192.168.30.0/24 [2]192.168.30.0/24 〜 192.168.20.0/24
ローカルゲートウェイ pppoe0 pppoe0
リモートゲートウェイ 10.0.0.1 10.0.0.1
IKE設定
交換モード メイン アグレッシブ
事前共有鍵 secret_ab secret_ac
暗号化認証アルゴリズム 3DES & SHA1-DH2 3DES & SHA1-DH2
ローカルID/リモートID なし/なし vpn_ac/なし
IPsec設定
暗号化認証アルゴリズム ESP 3DES HMAC SHA1 ESP 3DES HMAC SHA1
PFSグループ なし なし



本構成における設定のポイントは、次の通りです。

Note - ルーターCの設定内容につきましては、文中の「ルーターCは〜」をご参照ください。

ルーターA(AR550S)の設定

  1. セキュリティーモードで各種設定を行うことができるSecurity Officerレベルのユーザー「secoff」を作成します。パスワードも「secoff」とします。


  2. ISPへ接続するため、eth0インターフェース上にppp0を作成します。


  3. ISPから通知されたユーザー名、パスワードを設定します。ISDN回線向けの機能であるBAPは無効化し、LCP ECHOによるPPPセッション監視を有効化します。


  4. IPルーティングを行うため、IPモジュールを有効化します。


  5. IPインターフェースvlan1にIPアドレス192.168.10.1/24を設定します。


  6. ISPへ接続するppp0に、IPアドレス10.0.0.1/32を設定します。


  7. デフォルトルートをppp0に設定します。


  8. ppp0がISPに接続した際、通知されたDNSサーバーアドレスを使用するように設定します。


    Note - ISPからDNSサーバーアドレスが指定されている場合は、次のように設定します。


  9. DNSリレーを有効化します。


  10. ファイアウォールを有効化します。


  11. ファイアウォールの動作を規定するポリシー「net」を作成します。
    ICMPはUnreachable、Echo/Echo reply(ping)のみ透過するよう設定し、identプロキシー機能は無効化します。(メールサーバー等からのident要求に対してTCP RSTを返します)


  12. ファイアウォールポリシー「net」に、IPインターフェースを追加します。
    ppp0をpublic、vlan1をprivateとして設定し、ppp0側から開始される通信は遮断しつつvlan1側から開始される通信は透過します。


  13. インターネットアクセスを実現するため、vlan1〜ppp0間にダイナミックENATを設定します。


  14. ルーターB、CからのISAKMP(UDP500番宛)を受信できるよう、透過ルールを設定します。


  15. ルーターB、Cからの通信を受信できるよう、透過ルールを設定します。192.168.10.0/24宛に加え、ルーターB、C間の通信を実現するため 192.168.20.0/24、30.0/24宛も受信できるよう設定します。


  16. 192.168.10.0/24に所属するホストから、192.168.20.0/24、30.0/24宛の通信に対して透過ルールを設定します。これらの通信にはNATを適用する必要が無いため、ac=nonatとします。


  17. DHCPサーバー機能を有効化します。


  18. DHCPポリシー「base」を作成します。オプションとして サブネット:255.255.255.0、ゲートウェイ:192.168.10.1、DNSサーバーアドレス:192.168.10.1を配布するよう設定します。


  19. DHCPレンジ「lan」を作成します。192.168.10.10から254までの245個を配布するよう設定します。


  20. ルーター間の鍵交換に使用される事前共有鍵を設定します。


    Note - create enco keyコマンドはコンフィグファイルには保存されず、装置内に別途保存されます。

  21. ルーター間で鍵交換を行うためのISAKMPポリシーを定義します。暗号化プロトコルには3DESを指定します。


    Note - 3DESではなくDESを使用する場合は、encalg パラメーターの値を des に変更します。

  22. ルーターA〜B間、A〜C間でハートビートを設定します。


  23. IPsec SAを生成するための SAスペックとバンドルSAスペックを定義します。
    暗号化プロトコルには3DESを指定しています。


    Note - 3DESではなくDESを使用する場合は、encalg パラメーターの値を des に変更します。

  24. ISAKMPパケットを透過するためのIPsecポリシー「isa」を定義します。


  25. ルーターA〜B間で拠点間通信を実現するためのIPsecポリシー「vpn_ab」を定義します。


  26. ルーターC〜B間で拠点間通信を実現するためのIPsecポリシー「vpn_cb」を定義します。


  27. ルーターA〜C間で拠点間通信を実現するためのIPsecポリシー「vpn_ac」を定義します。


  28. ルーターB〜C間で拠点間通信を実現するためのIPsecポリシー「vpn_bc」を定義します。


  29. インターネット向け通信を平文で透過するためのIPsecポリシー「inet」を定義します。


  30. IPsecモジュール、ISAKMPモジュールを有効化します。


  31. Security Officerレベルのユーザーで再ログインを行います。loginコマンドを実行するとパスワード入力を求められますので、1で設定したパスワードを入力します。


  32. セキュリティーモードへ移行します。


  33. 設定内容を router.cfg という名前で保存し、起動時に読み込まれるよう設定します。


    ルーターAの設定は以上です。

ルーターB、ルーターC(AR260S V2)の設定

  1. IPアドレスを自動取得するよう設定したPCを接続し、Webブラウザーを起動します。
    Webブラウザーから「http://192.168.1.1/」を開くとユーザー名、パスワードの入力を求められますのでユーザー名「manager」、パスワード「friend」を入力すると、次の画面が表示されます。


    次に、左側のメニューから[LAN]-[IP]を選択します。
    [IPアドレス]を192.168.20.1 (ルーターCは192.168.30.1)に変更して[適用]を押します。


    [適用]を押した後、IPアドレスを再取得するためにPCを再起動します。PCが起動完了したら、再度Webブラウザーを起動して「http://192.168.20.1/」(ルーターCは http://192.168.30.1/)を開きます。

  2. 左側のメニューから[LAN]-[DHCP]を選択します。
    [始点IPアドレス]を192.168.20.10(ルーターCは192.168.30.10)に、[終点IPアドレス]を192.168.20.41(ルーターCは192.168.30.41)に変更して[適用]を押します。


  3. 左側のメニューから[WAN]-[WAN]を選択します。
    [WAN設定]の[接続モード]に PPPoE を選択し、[デフォルトゲートウェイ]を pppoe0 とします。
    pppoe0の[ユーザー名][パスワード]に、ISPから提供された内容を入力します。
    [MSSクランプ]を「手動設定」にします。
    [クランプ値]を40から120に変更して[適用]を押します。


    その他のパラメーターは、初期状態のままでかまいません。

  4. 左側のメニューから[ファイアウォール/NAT]-[アクセス制御]を選択します。
    [pppoe0(WAN)] タブを開き、[アクセスリスト設定]に次の設定を行います。

    表 3
    [方向] Inbound
    [動作] 通過
    [優先度] 1
    [送信元]-[タイプ] サブネット
    [ネットワークアドレス] 192.168.10.0
    [サブネットマスク] 255.255.255.0
    [宛先]-[タイプ] サブネット
    [ネットワークアドレス] 192.168.20.0(ルーターCの場合192.168.30.0)
    [サブネットマスク] 255.255.255.0
    [送信元ポート] すべて
    [宛先ポート] すべて
    [プロトコル] すべて
    [ログ] 無効


    設定が完了したら、[追加]を押します。


    引き続き、[アクセスリスト設定]に次の設定を行います。

    表 4
    [方向] Inbound
    [動作] 通過
    [優先度] 1
    [送信元]-[タイプ] サブネット
    [ネットワークアドレス] 192.168.30.0(ルーターCの場合192.168.20.0)
    [サブネットマスク] 255.255.255.0
    [宛先]-[タイプ] サブネット
    [ネットワークアドレス] 192.168.20.0(ルーターCの場合192.168.30.0)
    [サブネットマスク] 255.255.255.0
    [送信元ポート] すべて
    [宛先ポート] すべて
    [プロトコル] すべて
    [ログ] 無効



    設定が完了したら、[追加]を押します。

  5. 左側のメニューから[VPN]-[VPN接続]を選択します。
    [VPN接続設定]に、1つ目のVPNポリシーとして次の内容を設定します。

    表 5
    [簡易設定/詳細設定] 簡易設定
    [ポリシー名] vpn_ab(ルーターCの場合はvpn_ac)
    [キープアライブ] 有効
    [種別] ハートビート
    [仮想トンネルインターフェース] 無効
    [ローカルセキュアグループ]-[種類] サブネット
    [ネットワークアドレス] 192.168.20.0(ルーターCの場合は192.168.30.0)
    [サブネットマスク] 255.255.255.0
    [リモートセキュアグループ]-[種類] サブネット
    [アドレス] 192.168.10.0
    [マスク] 255.255.255.0
    [ローカルゲートウェイ] pppoe0
    [リモートゲートウェイ]-[種類] IPアドレス
    [IPアドレス] 10.0.0.1



    次に、[IKE設定]を設定します。

    表 6
    [IKE交換モード] メイン(ルーターCの場合はアグレッシブ)
    [事前共有鍵] secret-ab(ルーターCの場合はsecret-ac)


    ルーターCの場合は、上記に加えて[フェーズ1ローカルID]-[種類]を FQDN に、[FQDN]を vpn_ac とします。

    設定が完了したら、[追加]を押します。


    次に、[VPN接続設定]に2つ目のVPNポリシーを設定します。

    表 7
    [簡易設定/詳細設定] 簡易設定
    [ポリシー名] vpn_cb(ルーターCの場合はvpn_bc)
    [キープアライブ] 有効
    [種別] ハートビート
    [仮想トンネルインターフェース] 無効
    [ローカルセキュアグループ]-[種類] サブネット
    [ネットワークアドレス] 192.168.20.0(ルーターCの場合は192.168.30.0)
    [サブネットマスク] 255.255.255.0
    [リモートセキュアグループ]-[種類] サブネット
    [ネットワークアドレス] 192.168.30.0(ルーターCの場合は192.168.20.0)
    [サブネットマスク] 255.255.255.0
    [ローカルゲートウェイ] pppoe0
    [リモートゲートウェイ]-[種類] IPアドレス
    [IPアドレス] 10.0.0.1



    次に、[IKE設定]を設定します。

    表 8
    [IKE交換モード] メイン(ルーターCの場合はアグレッシブ)
    [事前共有鍵] secret-ab(ルーターCの場合はsecret-ac)


    ルーターCの場合は、上記に加えて[フェーズ1ローカルID]-[種類]を FQDN に、[FQDN]を vpn_ac とします。

    設定が完了したら、[追加]を押します。


  6. 画面左上の[設定保存]を押します。
    設定保存ボタン下の「設定が保存されていません」という表示が消えれば設定完了です。
    設定は以上です。


Note - 本設定例では以下のIKEとIPsec設定を設定します。暗号化方式などを変更する必要がある場合は、<手順5>の[VPN接続設定]で[詳細設定]を選択してください。

表 9
IKE設定
暗号化認証アルゴリズム 3DES & SHA1-DH2
IPsec設定
暗号化認証アルゴリズム ESP 3DES HMAC SHA1
PFSグループ なし


まとめ

ルーターA(AR550S)のコンフィグ [テキスト版]
* 「#」で始まる行は、コンソールから入力しないと意味を持たないコマンドか、設定ファイル(.cfg)に記述しても無効なコマンドを示しています。詳細は本文の説明をご覧ください。
add user=secoff password=secoff priv=sec
cre ppp=0 over=eth0-any
set ppp=0 over=eth0-any user=user1@example password=password lqr=off bap=off echo=on
ena ip
add ip int=vlan1 ip=192.168.10.1 mask=255.255.255.0
add ip int=ppp0 ip=10.0.0.1 mask=255.255.255.255
add ip rou=0.0.0.0 mask=0.0.0.0 int=ppp0 next=0.0.0.0
add ip dns int=ppp0
ena ip dnsrelay
ena fire
cre fire poli=net
ena fire poli=net icmp_f=unreach,ping
dis fire poli=net identproxy
add fire poli=net int=vlan1 type=private
add fire poli=net int=ppp0 type=public
add fire poli=net nat=enhanced int=vlan1 gblint=ppp0
add fire poli=net ru=1 ac=allow int=ppp0 prot=udp po=500 gblpo=500 ip=10.0.0.1 gblip=10.0.0.1
add fire poli=net ru=2 ac=nonat int=ppp0 prot=all ip=192.168.10.1-192.168.10.254 encap=ipsec
add fire poli=net ru=3 ac=nonat int=ppp0 prot=all ip=192.168.20.1-192.168.20.254 encap=ipsec
add fire poli=net ru=4 ac=nonat int=ppp0 prot=all ip=192.168.30.1-192.168.30.254 encap=ipsec
add fire poli=net ru=5 ac=nonat int=vlan1 prot=all ip=192.168.10.1-192.168.10.254
set fire poli=net ru=5 remoteip=192.168.20.1-192.168.20.254
add fire poli=net ru=6 ac=nonat int=vlan1 prot=all ip=192.168.10.1-192.168.10.254
set fire poli=net ru=6 remoteip=192.168.30.1-192.168.30.254
ena dhcp
cre dhcp poli=base lease=7200
add dhcp poli=base subnet=255.255.255.0
add dhcp poli=base router=192.168.10.1 dnss=192.168.10.1
cre dhcp range=lan poli=base ip=192.168.10.10 num=245 probe=ARP
# create enco key=1 type=gene value="secret-ab"
# create enco key=2 type=gene value="secret-ac"
cre isakmp poli="ike_ab" peer=10.0.0.2 key=1 sendn=true encalg=3desouter hashalg=sha group=2
cre isakmp poli="ike_ac" peer=any key=2 sendn=true encalg=3desouter hashalg=sha group=2 mode=aggressive remoteid="vpn_ac"
set isakmp poli="ike_ab" heartbeat=both
set isakmp poli="ike_ac" heartbeat=both
cre ipsec sas=1 keyman=isakmp prot=esp encalg=3desouter hashalg=sha
cre ipsec bundle=1 keyman=isakmp string="1"
cre ipsec poli="isa" int=ppp0 ac=permit lport=500 rport=500 transport=udp
cre ipsec poli="vpn_ab" int=ppp0 ac=ipsec keyman=isakmp bundle=1 peer=10.0.0.2
set ipsec poli="vpn_ab" lad=192.168.10.0 lma=255.255.255.0 rad=192.168.20.0 rma=255.255.255.0
cre ipsec poli="vpn_cb" int=ppp0 ac=ipsec keyman=isakmp bundle=1 peer=10.0.0.2
set ipsec poli="vpn_cb" lad=192.168.30.0 lma=255.255.255.0 rad=192.168.20.0 rma=255.255.255.0
cre ipsec poli="vpn_ac" int=ppp0 ac=ipsec keyman=isakmp bundle=1 peer=dynamic
set ipsec poli="vpn_ac" lad=192.168.10.0 lma=255.255.255.0 rad=192.168.30.0 rma=255.255.255.0
cre ipsec poli="vpn_bc" int=ppp0 ac=ipsec keyman=isakmp bundle=1 peer=dynamic
set ipsec poli="vpn_bc" lad=192.168.20.0 lma=255.255.255.0 rad=192.168.30.0 rma=255.255.255.0
cre ipsec poli="inet" int=ppp0 ac=permit
ena ipsec
ena isakmp
# login secoff
# enable system security_mode





CentreCOM AR260S V2 設定例集 3.3.3 #8

(C) 2008-2013 アライドテレシスホールディングス株式会社

PN: 613-000902 Rev.H

<前頁 次頁> << >> 目次 (番号順 (詳細)回線別 (詳細)機能別 (詳細)