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CentreCOM AR570S 設定例集 2.9 #133

PPPoEインターネット接続環境における3点間IPsec VPN(支社間通信なし、支社はアドレス不定)


PPPoEでインターネットに接続している3つの拠点をIPsec(ESP)トンネルで結ぶVPN構築例です。この例では本社と各支社のみを接続する構成とし、支社間の通信は行わないものとします。またこの例では、本社にのみグローバルアドレス1個が固定的に割り当てられており、各支社のルーターのアドレスは不定(動的割り当て)であると仮定しています。




各拠点は、ISPから次の情報を提供されているものとします。

表 1:ISPから提供された情報
 
ルーターA(本社)
ルーターB(支社)
ルーターC(支社)
PPPユーザー名 user@ispA user@ispB user@ispC
PPPパスワード isppasswdA isppasswdB isppasswdC
PPPoEサービス名 指定なし 指定なし 指定なし
使用できるIPアドレス 200.100.10.1/32 接続時に割り当て 接続時に割り当て
接続形態 端末型(アドレス1個固定) 端末型(アドレス1個不定) 端末型(アドレス1個不定)


本社、支社のルーター(A、B、C)は、ファイアウォールとダイナミックENATを使用した通常の端末型設定(Aはアドレス1個固定。BとCはアドレス不定)です。

以下、各ルーターの基本設定についてまとめます。

表 2:ルーターの基本設定
 
ルーターA(本社)
ルーターB(支社)
ルーターC(支社)
WAN側物理インターフェース eth0 eth0 eth0
WAN側IPアドレス 200.100.10.1/32(ppp0) 動的割り当て(ppp0) 動的割り当て(ppp0)
LAN側IPアドレス 192.168.10.1/24(vlan1) 192.168.20.1/24(vlan1) 192.168.30.1/24(vlan1)



IPsec関連の設定は次のようになります。

表 3:IKEフェーズ1(ISAKMP SAのネゴシエーション)
ルーター間の認証方式 事前共有鍵(pre-shared key)
IKE交換モード Aggressiveモード
事前共有鍵(1) secret-ab(ルーターA・B間)
事前共有鍵(2) secret-ac(ルーターA・C間)
ルーターAの認証ID IPアドレス:200.100.10.1(デフォルト)
ルーターBの認証ID 名前:client_B
ルーターCの認証ID 名前:client_C
Oakleyグループ 1(デフォルト)
ISAKMPメッセージの暗号化方式 DES(デフォルト)
ISAKMPメッセージの認証方式 SHA1(デフォルト)
ISAKMP SAの有効期限(時間) 86400秒(24時間)(デフォルト)
ISAKMP SAの有効期限(KByte数) なし(デフォルト)
起動時のISAKMPネゴシエーション 行わない


表 4:IKEフェーズ2(IPsec SAのネゴシエーション)
SAモード トンネルモード
セキュリティープロトコル ESP(暗号化+認証)
暗号化方式 DES
認証方式 SHA1
IPsec SAの有効期限(時間) 28800秒(8時間)(デフォルト)
IPsec SAの有効期限(KByte数) なし(デフォルト)
トンネリング対象IPアドレス(1) 192.168.10.0/24 ←→ 192.168.20.0/24
トンネル終端アドレス(1) 200.100.10.1(A)・不定(B)
トンネリング対象IPアドレス(2) 192.168.10.0/24 ←→ 192.168.30.0/24
トンネル終端アドレス(2) 200.100.10.1(A)・不定(C)
インターネットとの平文通信 行う


ルーターAの設定

  1. セキュリティーモードで各種設定を行うことのできるSecurity Officerレベルのユーザー「secoff」を作成します。パスワードは「PasswordS」とします。


    Note - Security Officerレベルのユーザーを作成しておかないと、セキュリティーモードに移行できませんのでご注意ください。

  2. WAN側Ethernetインターフェース(eth0)上にPPPインターフェースを作成します。「OVER=eth0-XXXX」の「XXXX」の部分には、ISPから通知されたPPPoEの「サービス名」を記述します。ISPから指定がない場合は、どのサービス名タグでも受け入れられるよう、「ANY」を設定します。


  3. ISPから通知されたPPPユーザー名とパスワードを指定します。LQRはオフにし、代わりにLCP Echoパケットを使ってPPPリンクの状態を監視するようにします。また、ISDN向けの機能であるBAPはオフにします。






  4. IPモジュールを有効にします。


  5. LAN側(vlan1)インターフェースにIPアドレスを設定します。


  6. WAN側(ppp0)インターフェースにISPから割り当てられたIPアドレスを設定します。


  7. デフォルトルートを設定します。


  8. ファイアウォール機能を有効にします。


  9. ファイアウォールの動作を規定するファイアウォールポリシーを作成します。


  10. ICMPパケットはPing(Echo/Echo Reply)と到達不可能(Unreachable)のみ双方向で許可します。


    Note - デフォルト設定では、ICMPはファイアウォールを通過できません。

  11. ルーターのidentプロキシー機能を無効にし、外部のメール(SMTP)サーバーなどからのident要求に対して、ただちにTCP RSTを返すよう設定します。


  12. ファイアウォールポリシーの適用対象となるインターフェースを指定します。


  13. LAN側ネットワークに接続されているすべてのコンピューターがENAT機能を使用できるよう設定します。グローバルアドレスには、ppp0のIPアドレスを使用します。


  14. 相手ルーターから受信したIKEパケット(UDP500番)がファイアウォールを通過できるように設定します。


  15. 支社(ルーターB側)宛パケット(192.168.10.0/24→192.168.20.0/24)をNATの対象から除外するよう設定します。


  16. 支社(ルーターC側)宛パケット(192.168.10.0/24→192.168.30.0/24)をNATの対象から除外するよう設定します。


  17. 基本ルールのままではIPsecパケットまで遮断されてしまうので、これらのパケットを通過させるためのルールを設定します。「ENCAP=IPSEC」は、IPsecパケットからオリジナルのパケットを取り出したあとでこのルールを適用することを示します。よって、以下のコマンドは、「取り出したパケットの終点が192.168.10.1〜192.168.10.254、つまり、本社宛ならばNATの対象外とする」の意味になります。


  18. ISAKMP用の事前共有鍵(pre-shared key)を作成します。ここでは鍵番号を「1」、「2」番とし、鍵の値は「secret-ab」、「secret-ac」という文字列で指定します(ルーターB、Cと同じに設定)。


    Note - CREATE ENCO KEYコマンドは、コンソール上でログインしている場合のみ有効なコマンドです。そのため、EDITコマンド(内蔵スクリーンエディター)などで設定スクリプトファイル(.CFG)にこのコマンドを記述しても無効になりますのでご注意ください。

    Note - CREATE ENCO KEYコマンドで作成された鍵は、ノーマルモードでは、ルーターの再起動によって消去されます。暗号鍵を使用する場合は、必ずセキュリティーモードに移行して鍵が保存されるようにしてください。

  19. ルーターBとのIKEネゴシエーション要求を受け入れるISAKMPポリシー「i_B」を作成します。KEYには、前の手順で作成した事前共有鍵(鍵番号「1」)を、PEERにはルーターBのIPアドレスを指定します。また、この例では相手のアドレスが不定なため、PEERにANYを、REMOTEIDで相手の認証IDを指定し、「MODE=AGGRESSIVE」でAggressiveモードを使うよう設定します。


  20. ルーターCとのIKEネゴシエーション要求を受け入れるISAKMPポリシー「i_C」を作成します。KEYには、前の手順で作成した事前共有鍵(鍵番号「2」)を、PEERにはルーターCのIPアドレスを指定します。また、この例では相手のアドレスが不定なため、PEERにANYを、REMOTEIDで相手の認証IDを指定し、「MODE=AGGRESSIVE」でAggressiveモードを使うよう設定します。


  21. IPsec通信の仕様を定義するSAスペック「1」を作成します。トンネルモード(デフォルト)、鍵管理方式「ISAKMP」、プロトコル「ESP」、暗号化方式「DES」、認証方式「SHA」に設定します。


  22. SAスペック「1」だけからなるSAバンドルスペック「1」を作成します。鍵管理方式は「ISAKMP」を指定します。


  23. ISAKMPメッセージを素通しさせるIPsecポリシー「isa」を作成します。ポリシーの適用対象を、ローカルの500番ポートからリモートの500番ポート宛のUDPパケット(ISAKMP)に設定します。


    Note - ISAKMPを使用する場合は、必ず最初のIPsecポリシーでISAKMPメッセージが通過できるような設定を行ってください。「IPsecポリシー」は設定順に検索され、最初にマッチしたものが適用されるため、設定順序には注意が必要です。検索順はSHOW IPSEC POLICYコマンドで確認できます。また、検索順を変更するには、SET IPSEC POLICYコマンドのPOSITIONパラメーターを使用します。

  24. ルーターBとのIPsec通信に使用するIPsecポリシー「vpn_B」をPPPインターフェース「0」に対して作成します。相手のIPアドレスが不定なので、ISAKMPの認証をパスしたものだけを指定する意味で、PEERにDYNAMICを指定します。


  25. IPsecポリシー「vpn_B」に対して実際にIPsec通信を行うIPアドレスの範囲を指定します。コマンドが長くなるため、できるだけ省略形を用いてください。


  26. ルーターCとのIPsec通信に使用するIPsecポリシー「vpn_C」をPPPインターフェース「0」に対して作成します。相手のIPアドレスが不定なので、ISAKMPの認証をパスしたものだけを指定する意味で、PEERにDYNAMICを指定します。


  27. IPsecポリシー「vpn_C」に対して実際にIPsec通信を行うIPアドレスの範囲を指定します。コマンドが長くなるため、できるだけ省略形を用いてください。


  28. インターネットへの平文通信を許可するIPsecポリシー「inet」をPPPインターフェース「0」に対して作成します。


    Note - インターネットにもアクセスしたい場合は、必ず最後のIPsecポリシーですべてのパケットを通過させる設定を行ってください。いずれのIPsecポリシーにもマッチしなかったトラフィックはデフォルトで破棄されてしまうため、上記の設定がないとVPN以外との通信ができなくなります。

  29. IPsecモジュールを有効にします。


  30. ISAKMPモジュールを有効にします。


  31. Security Officerレベルのユーザーでログインしなおします。


  32. 動作モードをセキュリティーモードに切り替えます。


    Note - セキュリティーモードでは、Security OfficerレベルでのTelnetログインが原則として禁止されています。セキュリティーモードにおいて、Security OfficerレベルでTelnetログインしたい場合は、あらかじめRSO(Remote Security Officer)の設定を行っておいてください(本章末尾のメモを参照)。

  33. 設定は以上です。設定内容をファイルに保存し、SET CONFIGコマンドで起動時設定ファイルに指定します。


ルーターBの設定

  1. セキュリティーモードで各種設定を行うことのできるSecurity Officerレベルのユーザー「secoff」を作成します。パスワードは「PasswordS」とします。


    Note - Security Officerレベルのユーザーを作成しておかないと、セキュリティーモードに移行できませんのでご注意ください。

  2. WAN側Ethernetインターフェース(eth0)上にPPPインターフェースを作成します。「OVER=eth0-XXXX」の「XXXX」の部分には、ISPから通知されたPPPoEの「サービス名」を記述します。ISPから指定がない場合は、どのサービス名タグでも受け入れられるよう、「ANY」を設定します。


  3. ISPから通知されたPPPユーザー名とパスワードを指定し、接続時にIPアドレス割り当ての要求を行うように設定します。LQRはオフにし、代わりにLCP Echoパケットを使ってPPPリンクの状態を監視するようにします。また、ISDN向けの機能であるBAPはオフにします。






  4. IPモジュールを有効にします。


  5. IPCPネゴシエーションで与えられたIPアドレスをPPPインターフェースで使用するように設定します。


  6. LAN側(vlan1)インターフェースにIPアドレスを設定します。


  7. WAN側(ppp0)インターフェースにIPアドレス「0.0.0.0」を設定します。ISPとの接続が確立するまで、IPアドレスは確定しません。


  8. デフォルトルートを設定します。


  9. ファイアウォール機能を有効にします。


  10. ファイアウォールの動作を規定するファイアウォールポリシーを作成します。


  11. ICMPパケットはPing(Echo/Echo Reply)と到達不可能(Unreachable)のみ双方向で許可します。


    Note - デフォルト設定では、ICMPはファイアウォールを通過できません。

  12. ルーターのidentプロキシー機能を無効にし、外部のメール(SMTP)サーバーなどからのident要求に対して、ただちにTCP RSTを返すよう設定します。


  13. ファイアウォールポリシーの適用対象となるインターフェースを指定します。


  14. LAN側ネットワークに接続されているすべてのコンピューターがENAT機能を使用できるよう設定します。グローバルアドレスには、ppp0のIPアドレスを使用します。


  15. 本社(ルーターA側)宛のパケット(192.168.20.0/24→192.168.10.0/24)をNATの対象から除外するよう設定します。


  16. 基本ルールのままではIPsecパケットまで遮断されてしまうので、これらのパケットを通過させるためのルールを設定します。「ENCAP=IPSEC」は、IPsecパケットからオリジナルのパケットを取り出したあとでこのルールを適用することを示します。よって、以下のコマンドは、「取り出したパケットの終点が192.168.20.1〜192.168.20.254、つまり、自拠点宛ならばNATの対象外とする」の意味になります。


  17. ISAKMP用の事前共有鍵(pre-shared key)を作成します。ここでは鍵番号を「1」番とし、鍵の値は「secret-ab」という文字列で指定します(ルーターAと同じに設定)。


    Note - CREATE ENCO KEYコマンドは、コンソール上でログインしている場合のみ有効なコマンドです。そのため、EDITコマンド(内蔵スクリーンエディター)などで設定スクリプトファイル(.CFG)にこのコマンドを記述しても無効になりますのでご注意ください。

    Note - CREATE ENCO KEYコマンドで作成された鍵は、ノーマルモードでは、ルーターの再起動によって消去されます。暗号鍵を使用する場合は、必ずセキュリティーモードに移行して鍵が保存されるようにしてください。

  18. ルーターAとのIKEネゴシエーション要求を受け入れるISAKMPポリシー「i_A」を作成します。KEYには、前の手順で作成した事前共有鍵(鍵番号「1」)を、PEERにはルーターAのIPアドレスを指定します。また、自分のアドレスが不定なため、LOCALIDで自分の認証IDを指定し、「MODE=AGGRESSIVE」でAggressiveモードを使うよう設定します。


  19. IPsec通信の仕様を定義するSAスペック「1」を作成します。トンネルモード(デフォルト)、鍵管理方式「ISAKMP」、プロトコル「ESP」、暗号化方式「DES」、認証方式「SHA」に設定します。


  20. SAスペック「1」だけからなるSAバンドルスペック「1」を作成します。鍵管理方式は「ISAKMP」を指定します。


  21. ISAKMPメッセージを素通しさせるIPsecポリシー「isa」を作成します。ポリシーの適用対象を、ローカルの500番ポートからリモートの500番ポート宛のUDPパケット(ISAKMP)に設定します。


    Note - ISAKMPを使用する場合は、必ず最初のIPsecポリシーでISAKMPメッセージが通過できるような設定を行ってください。「IPsecポリシー」は設定順に検索され、最初にマッチしたものが適用されるため、設定順序には注意が必要です。検索順はSHOW IPSEC POLICYコマンドで確認できます。また、検索順を変更するには、SET IPSEC POLICYコマンドのPOSITIONパラメーターを使用します。

  22. ルーターAとのIPsec通信に使用するIPsecポリシー「vpn_A」をPPPインターフェース「0」に対して作成します。

    鍵管理方式には「ISAKMP」を、PEERにはルーターAのIPアドレスを、BUNDLEにはSAバンドルスペック「1」を指定します。


  23. IPsecポリシー「vpn_A」に対して実際にIPsec通信を行うIPアドレスの範囲を指定します。コマンドが長くなるため、できるだけ省略形を用いてください。


  24. インターネットへの平文通信を許可するIPsecポリシー「inet」をPPPインターフェース「0」に対して作成します。


    Note - インターネットにもアクセスしたい場合は、必ず最後のIPsecポリシーですべてのパケットを通過させる設定を行ってください。いずれのIPsecポリシーにもマッチしなかったトラフィックはデフォルトで破棄されてしまうため、上記の設定がないとVPN以外との通信ができなくなります。

  25. IPsecモジュールを有効にします。


  26. ISAKMPモジュールを有効にします。


  27. Security Officerレベルのユーザーでログインしなおします。


  28. 動作モードをセキュリティーモードに切り替えます。


    Note - セキュリティーモードでは、Security OfficerレベルでのTelnetログインが原則として禁止されています。セキュリティーモードにおいて、Security OfficerレベルでTelnetログインしたい場合は、あらかじめRSO(Remote Security Officer)の設定を行っておいてください(本章末尾のメモを参照)。

  29. 設定は以上です。設定内容をファイルに保存し、SET CONFIGコマンドで起動時設定ファイルに指定します。


ルーターCの設定

  1. セキュリティーモードで各種設定を行うことのできるSecurity Officerレベルのユーザー「secoff」を作成します。パスワードは「PasswordS」とします。


    Note - Security Officerレベルのユーザーを作成しておかないと、セキュリティーモードに移行できませんのでご注意ください。

  2. WAN側Ethernetインターフェース(eth0)上にPPPインターフェースを作成します。「OVER=eth0-XXXX」の「XXXX」の部分には、ISPから通知されたPPPoEの「サービス名」を記述します。ISPから指定がない場合は、どのサービス名タグでも受け入れられるよう、「ANY」を設定します。


  3. ISPから通知されたPPPユーザー名とパスワードを指定し、接続時にIPアドレス割り当ての要求を行うように設定します。LQRはオフにし、代わりにLCP Echoパケットを使ってPPPリンクの状態を監視するようにします。また、ISDN向けの機能であるBAPはオフにします。






  4. IPモジュールを有効にします。


  5. IPCPネゴシエーションで与えられたIPアドレスをPPPインターフェースで使用するように設定します。


  6. LAN側(vlan1)インターフェースにIPアドレスを設定します。


  7. WAN側(ppp0)インターフェースにIPアドレス「0.0.0.0」を設定します。ISPとの接続が確立するまで、IPアドレスは確定しません。


  8. デフォルトルートを設定します。


  9. ファイアウォール機能を有効にします。


  10. ファイアウォールの動作を規定するファイアウォールポリシーを作成します。


  11. ICMPパケットはPing(Echo/Echo Reply)と到達不可能(Unreachable)のみ双方向で許可します。


    Note - デフォルト設定では、ICMPはファイアウォールを通過できません。

  12. ルーターのidentプロキシー機能を無効にし、外部のメール(SMTP)サーバーなどからのident要求に対して、ただちにTCP RSTを返すよう設定します。


  13. ファイアウォールポリシーの適用対象となるインターフェースを指定します。


  14. LAN側ネットワークに接続されているすべてのコンピューターがENAT機能を使用できるよう設定します。グローバルアドレスには、ppp0のIPアドレスを使用します。


  15. 本社(ルーターA側)宛のパケット(192.168.30.0/24→192.168.10.0/24)をNATの対象から除外するよう設定します。


  16. 基本ルールのままではIPsecパケットまで遮断されてしまうので、これらのパケットを通過させるためのルールを設定します。「ENCAP=IPSEC」は、IPsecパケットからオリジナルのパケットを取り出したあとでこのルールを適用することを示します。よって、以下のコマンドは、「取り出したパケットの終点が192.168.30.1〜192.168.30.254、つまり、自拠点宛ならばNATの対象外とする」の意味になります。


  17. ISAKMP用の事前共有鍵(pre-shared key)を作成します。ここでは鍵番号を「1」番とし、鍵の値は「secret-ac」という文字列で指定します(ルーターAと同じに設定)。


    Note - CREATE ENCO KEYコマンドは、コンソール上でログインしている場合のみ有効なコマンドです。そのため、EDITコマンド(内蔵スクリーンエディター)などで設定スクリプトファイル(.CFG)にこのコマンドを記述しても無効になりますのでご注意ください。

    Note - CREATE ENCO KEYコマンドで作成された鍵は、ノーマルモードでは、ルーターの再起動によって消去されます。暗号鍵を使用する場合は、必ずセキュリティーモードに移行して鍵が保存されるようにしてください。

  18. ルーターAとのIKEネゴシエーション要求を受け入れるISAKMPポリシー「i_A」を作成します。KEYには、前の手順で作成した事前共有鍵(鍵番号「1」)を、PEERにはルーターAのIPアドレスを指定します。また、自分のアドレスが不定なため、LOCALIDで自分の認証IDを指定し、「MODE=AGGRESSIVE」でAggressiveモードを使うよう設定します。


  19. IPsec通信の仕様を定義するSAスペック「1」を作成します。トンネルモード(デフォルト)、鍵管理方式「ISAKMP」、プロトコル「ESP」、暗号化方式「DES」、認証方式「SHA」に設定します。


  20. SAスペック「1」だけからなるSAバンドルスペック「1」を作成します。鍵管理方式は「ISAKMP」を指定します。


  21. ISAKMPメッセージを素通しさせるIPsecポリシー「isa」を作成します。ポリシーの適用対象を、ローカルの500番ポートからリモートの500番ポート宛のUDPパケット(ISAKMP)に設定します。


    Note - ISAKMPを使用する場合は、必ず最初のIPsecポリシーでISAKMPメッセージが通過できるような設定を行ってください。「IPsecポリシー」は設定順に検索され、最初にマッチしたものが適用されるため、設定順序には注意が必要です。検索順はSHOW IPSEC POLICYコマンドで確認できます。また、検索順を変更するには、SET IPSEC POLICYコマンドのPOSITIONパラメーターを使用します。

  22. ルーターAとのIPsec通信に使用するIPsecポリシー「vpn_A」をPPPインターフェース「0」に対して作成します。

    鍵管理方式には「ISAKMP」を、PEERにはルーターAのIPアドレスを、BUNDLEにはSAバンドルスペック「1」を指定します。


  23. IPsecポリシー「vpn_A」に対して実際にIPsec通信を行うIPアドレスの範囲を指定します。コマンドが長くなるため、できるだけ省略形を用いてください。


  24. インターネットへの平文通信を許可するIPsecポリシー「inet」をPPPインターフェース「0」に対して作成します。


    Note - インターネットにもアクセスしたい場合は、必ず最後のIPsecポリシーですべてのパケットを通過させる設定を行ってください。いずれのIPsecポリシーにもマッチしなかったトラフィックはデフォルトで破棄されてしまうため、上記の設定がないとVPN以外との通信ができなくなります。

  25. IPsecモジュールを有効にします。


  26. ISAKMPモジュールを有効にします。


  27. Security Officerレベルのユーザーでログインしなおします。


  28. 動作モードをセキュリティーモードに切り替えます。


    Note - セキュリティーモードでは、Security OfficerレベルでのTelnetログインが原則として禁止されています。セキュリティーモードにおいて、Security OfficerレベルでTelnetログインしたい場合は、あらかじめRSO(Remote Security Officer)の設定を行っておいてください(本章末尾のメモを参照)。

  29. 設定は以上です。設定内容をファイルに保存し、SET CONFIGコマンドで起動時設定ファイルに指定します。


メモ

■ ファイアウォールで遮断されたパケットのログをとるには、次のコマンドを実行します。


記録されたログを見るには、次のコマンドを実行します。ここでは、「TYPE=FIRE」により、ファイアウォールが出力したログメッセージだけを表示させています。


■ インターネット側からのPING(ICMP Echo Requestパケット)を拒否するには、次のようなIPフィルターをWAN側インターフェースに設定します。この例では、「LOG=HEADER」により、フィルターで拒否したパケットをログに記録しています。


記録されたログを見るには、次のコマンドを実行します。ここでは、「TYPE=IPFIL」により、IPフィルターが出力したログメッセージだけを表示させています。


■ セキュリティーモードに移行すると、Security OfficerレベルでルーターにTelnetログインすることができなくなります。セキュリティーモードにおいて、Security OfficerレベルでTelnetログインしたい場合は、あらかじめRSO(Remote Security Officer)コマンドを使ってログインを許可するホストのIPアドレスを指定しておく必要があります。

たとえば、ネットワーク192.168.10.0/24、192.168.20.0/24、192.168.30.0/24上のすべてのホストからSecurity OfficerレベルでのTelnetログインを許可する場合は、次のようにします。


■ セキュリティーモードでは、たとえSecurity Officerでログインした場合であっても、セキュリティーコマンドを一定期間入力しないでいると、次回セキュリティーコマンドを入力したときにパスワードの再入力を求められます。このタイムアウト値は、下記コマンドによって変更できますが、IPsecの設定を行うときは、ノーマルモードで設定を行った後、セキュリティーモードに変更することをおすすめします。

■ セキュリティー関連コマンドのタイムアウトは、次のコマンドで変更できます。SECUREDELAYパラメーターには、10〜3600(秒)を指定します。デフォルトは60秒です。

まとめ

ルーターAのコンフィグ [テキスト版]
* 「#」で始まる行は、コンソールから入力しないと意味を持たないコマンドか、設定ファイル(.cfg)に記述しても無効なコマンドを示しています。詳細は本文の説明をご覧ください。
ADD USER=secoff PASSWORD=PasswordS PRIVILEGE=SECURITYOFFICER
CREATE PPP=0 OVER=eth0-ANY
SET PPP=0 OVER=eth0-ANY USER=user@ispA PASSWORD=isppasswdA LQR=OFF BAP=OFF ECHO=ON
ENABLE IP
ADD IP INT=vlan1 IP=192.168.10.1 MASK=255.255.255.0
ADD IP INT=ppp0 IP=200.100.10.1 MASK=255.255.255.255
ADD IP ROUTE=0.0.0.0 INT=ppp0 NEXTHOP=0.0.0.0
ENABLE FIREWALL
CREATE FIREWALL POLICY=net
ENABLE FIREWALL POLICY=net ICMP_F=PING,UNREACHABLE
DISABLE FIREWALL POLICY=net IDENTPROXY
ADD FIREWALL POLICY=net INT=vlan1 TYPE=PRIVATE
ADD FIREWALL POLICY=net INT=ppp0 TYPE=PUBLIC
ADD FIREWALL POLICY=net NAT=ENHANCED INT=vlan1 GBLINT=ppp0
ADD FIREWALL POLICY=net RULE=1 AC=ALLOW INT=ppp0 PROT=UDP PORT=500 IP=200.100.10.1 GBLIP=200.100.10.1 GBLPORT=500
ADD FIREWALL POLICY=net RULE=2 AC=NONAT INT=vlan1 PROT=ALL IP=192.168.10.1-192.168.10.254
SET FIREWALL POLICY=net RULE=2 REMOTEIP=192.168.20.1-192.168.20.254
ADD FIREWALL POLICY=net RULE=3 AC=NONAT INT=vlan1 PROT=ALL IP=192.168.10.1-192.168.10.254
SET FIREWALL POLICY=net RULE=3 REMOTEIP=192.168.30.1-192.168.30.254
ADD FIREWALL POLICY=net RULE=4 AC=NONAT INT=ppp0 PROT=ALL IP=192.168.10.1-192.168.10.254 ENCAP=IPSEC
# CREATE ENCO KEY=1 TYPE=GENERAL VALUE="secret-ab"
# CREATE ENCO KEY=2 TYPE=GENERAL VALUE="secret-ac"
CREATE ISAKMP POLICY="i_B" PEER=ANY KEY=1 SENDN=TRUE REMOTEID="client_B" MODE=AGGRESSIVE HEARTBEATMODE=BOTH
CREATE ISAKMP POLICY="i_C" PEER=ANY KEY=2 SENDN=TRUE REMOTEID="client_C" MODE=AGGRESSIVE HEARTBEATMODE=BOTH
CREATE IPSEC SASPEC=1 KEYMAN=ISAKMP PROTOCOL=ESP ENCALG=DES HASHALG=SHA
CREATE IPSEC BUNDLE=1 KEYMAN=ISAKMP STRING="1"
CREATE IPSEC POLICY="isa" INT=ppp0 ACTION=PERMIT LPORT=500 RPORT=500 TRANSPORT=UDP
CREATE IPSEC POLICY="vpn_B" INT=ppp0 ACTION=IPSEC KEYMAN=ISAKMP BUNDLE=1 PEER=DYNAMIC
SET IPSEC POLICY="vpn_B" LAD=192.168.10.0 LMA=255.255.255.0 RAD=192.168.20.0 RMA=255.255.255.0
CREATE IPSEC POLICY="vpn_C" INT=ppp0 ACTION=IPSEC KEYMAN=ISAKMP BUNDLE=1 PEER=DYNAMIC
SET IPSEC POLICY="vpn_C" LAD=192.168.10.0 LMA=255.255.255.0 RAD=192.168.30.0 RMA=255.255.255.0
CREATE IPSEC POLICY="inet" INT=ppp0 ACTION=PERMIT
ENABLE IPSEC
ENABLE ISAKMP
# LOGIN secoff
# ENABLE SYSTEM SECURITY_MODE


ルーターBのコンフィグ [テキスト版]
* 「#」で始まる行は、コンソールから入力しないと意味を持たないコマンドか、設定ファイル(.cfg)に記述しても無効なコマンドを示しています。詳細は本文の説明をご覧ください。
ADD USER=secoff PASSWORD=PasswordS PRIVILEGE=SECURITYOFFICER
CREATE PPP=0 OVER=eth0-ANY
SET PPP=0 OVER=eth0-ANY USER=user@ispB PASSWORD=isppasswdB LQR=OFF BAP=OFF IPREQUEST=ON ECHO=ON
ENABLE IP
ENABLE IP REMOTEASSIGN
ADD IP INT=vlan1 IP=192.168.20.1 MASK=255.255.255.0
ADD IP INT=ppp0 IP=0.0.0.0
ADD IP ROUTE=0.0.0.0 INT=ppp0 NEXTHOP=0.0.0.0
ENABLE FIREWALL
CREATE FIREWALL POLICY=net
ENABLE FIREWALL POLICY=net ICMP_F=PING,UNREACHABLE
DISABLE FIREWALL POLICY=net IDENTPROXY
ADD FIREWALL POLICY=net INT=vlan1 TYPE=PRIVATE
ADD FIREWALL POLICY=net INT=ppp0 TYPE=PUBLIC
ADD FIREWALL POLICY=net NAT=ENHANCED INT=vlan1 GBLINT=ppp0
ADD FIREWALL POLICY=net RULE=1 AC=NONAT INT=vlan1 PROT=ALL IP=192.168.20.1-192.168.20.254
SET FIREWALL POLICY=net RULE=1 REMOTEIP=192.168.10.1-192.168.10.254
ADD FIREWALL POLICY=net RULE=2 AC=NONAT INT=ppp0 PROT=ALL IP=192.168.20.1-192.168.20.254 ENCAP=IPSEC
# CREATE ENCO KEY=1 TYPE=GENERAL VALUE="secret-ab"
CREATE ISAKMP POLICY="i_A" PEER=200.100.10.1 KEY=1 SENDN=TRUE LOCALID="client_B" MODE=AGGRESSIVE HEARTBEATMODE=BOTH
CREATE IPSEC SASPEC=1 KEYMAN=ISAKMP PROTOCOL=ESP ENCALG=DES HASHALG=SHA
CREATE IPSEC BUNDLE=1 KEYMAN=ISAKMP STRING="1"
CREATE IPSEC POLICY="isa" INT=ppp0 ACTION=PERMIT LPORT=500 RPORT=500 TRANSPORT=UDP
CREATE IPSEC POLICY="vpn_A" INT=ppp0 ACTION=IPSEC KEYMAN=ISAKMP BUNDLE=1 PEER=200.100.10.1
SET IPSEC POLICY="vpn_A" LAD=192.168.20.0 LMA=255.255.255.0 RAD=192.168.10.0 RMA=255.255.255.0
CREATE IPSEC POLICY="inet" INT=ppp0 ACTION=PERMIT
ENABLE IPSEC
ENABLE ISAKMP
# LOGIN secoff
# ENABLE SYSTEM SECURITY_MODE


ルーターCのコンフィグ [テキスト版]
* 「#」で始まる行は、コンソールから入力しないと意味を持たないコマンドか、設定ファイル(.cfg)に記述しても無効なコマンドを示しています。詳細は本文の説明をご覧ください。
ADD USER=secoff PASSWORD=PasswordS PRIVILEGE=SECURITYOFFICER
CREATE PPP=0 OVER=eth0-ANY
SET PPP=0 OVER=eth0-ANY USER=user@ispC PASSWORD=isppasswdC LQR=OFF BAP=OFF IPREQUEST=ON ECHO=ON
ENABLE IP
ENABLE IP REMOTEASSIGN
ADD IP INT=vlan1 IP=192.168.30.1 MASK=255.255.255.0
ADD IP INT=ppp0 IP=0.0.0.0
ADD IP ROUTE=0.0.0.0 INT=ppp0 NEXTHOP=0.0.0.0
ENABLE FIREWALL
CREATE FIREWALL POLICY=net
ENABLE FIREWALL POLICY=net ICMP_F=PING,UNREACHABLE
DISABLE FIREWALL POLICY=net IDENTPROXY
ADD FIREWALL POLICY=net INT=vlan1 TYPE=PRIVATE
ADD FIREWALL POLICY=net INT=ppp0 TYPE=PUBLIC
ADD FIREWALL POLICY=net NAT=ENHANCED INT=vlan1 GBLINT=ppp0
ADD FIREWALL POLICY=net RULE=1 AC=NONAT INT=vlan1 PROT=ALL IP=192.168.30.1-192.168.30.254
SET FIREWALL POLICY=net RULE=1 REMOTEIP=192.168.10.1-192.168.10.254
ADD FIREWALL POLICY=net RULE=2 AC=NONAT INT=ppp0 PROT=ALL IP=192.168.30.1-192.168.30.254 ENCAP=IPSEC
# CREATE ENCO KEY=1 TYPE=GENERAL VALUE="secret-ac"
CREATE ISAKMP POLICY="i_A" PEER=200.100.10.1 KEY=1 SENDN=TRUE LOCALID="client_C" MODE=AGGRESSIVE HEARTBEATMODE=BOTH
CREATE IPSEC SASPEC=1 KEYMAN=ISAKMP PROTOCOL=ESP ENCALG=DES HASHALG=SHA
CREATE IPSEC BUNDLE=1 KEYMAN=ISAKMP STRING="1"
CREATE IPSEC POLICY="isa" INT=ppp0 ACTION=PERMIT LPORT=500 RPORT=500 TRANSPORT=UDP
CREATE IPSEC POLICY="vpn_A" INT=ppp0 ACTION=IPSEC KEYMAN=ISAKMP BUNDLE=1 PEER=200.100.10.1
SET IPSEC POLICY="vpn_A" LAD=192.168.30.0 LMA=255.255.255.0 RAD=192.168.10.0 RMA=255.255.255.0
CREATE IPSEC POLICY="inet" INT=ppp0 ACTION=PERMIT
ENABLE IPSEC
ENABLE ISAKMP
# LOGIN secoff
# ENABLE SYSTEM SECURITY_MODE





CentreCOM AR570S 設定例集 2.9 #133

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