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CentreCOM AR300/AR700 シリーズ 設定例集 2.3 #104

L2TPによるリモートアクセス型VPN


L2TPによるリモートアクセス型VPNの基本設定です。この形態のVPNは、リモートユーザー(PCやダイヤルアップルーター)、LAC(L2TP Access Concentrator)、LNS(L2TP Network Server)の3者によって構成されます。動作的には、(1)ユーザーがLACにダイヤルアップ、(2)LACがLNSとの間にL2TPトンネルを張り、リモートユーザーからのPPPフレームをLNSに中継、(3)LNSはトンネル経由でPPPフレームを受け入れ、ユーザー・LNS間の仮想PPPセッションを確立、の手順になります。

ここでは、次のような構成のネットワークを例に解説します。

最初にルーターA(LNS)、ルーターB(LAC)のインターネット接続設定とL2TPの基本設定についてまとめます。ルーターA、Bは、インターネット経由でL2TPのトンネルを張ります。この例では、トンネルは必ずLAC(ルーターB)側から張られます。

表 1:ISP接続とL2TPの基本設定
 
ルーターA
ルーターB
TDMグループ名 ISPA ISPB
回線速度 128Kbps 128Kbps
WAN側(ppp0)IPアドレス Unnumbered Unnumbered
LAN側(eth0-0)IPアドレス 200.100.10.1/28 200.100.20.1/28
LAN側(eth0-1)IPアドレス 192.168.10.1/24
L2TP終端アドレス 200.100.10.1 200.100.20.1
L2TPサーバーモード LNS LAC
L2TPサーバーパスワード l2tpA
BAY0 BRIインターフェースカード(AR021) BRIインターフェースカード(AR021)
BAY1 BRIインターフェースカード(AR021)


LNS(ルーターA)の設定は次のとおりです。LNSは、トンネル(LAC)経由でリモートユーザーからのダイヤルアップ接続を受け入れるルーターです。ユーザーが接続してきたときに動的にPPPインターフェースを作成し、IPアドレスプールから空きアドレスを割り当てます。

表 2:LNS(ルーターA)の設定
IPアドレスプール POOL(192.168.10.20〜192.168.10.30)
登録ユーザー(パスワード)(1) AAA(PasswordA)
登録ユーザー(パスワード)(2) BBB(PasswordB)


LAC(ルーターB)の設定は次のとおりです。LACは、ISDN経由でリモートユーザーからの接続を受け付け、LNSとの間にL2TPトンネルを確立し、ユーザーからのPPPフレームをトンネル経由でLNSに中継するルーターです。

表 3:LAC(ルーターB)の設定
ISDN番号 03-1234-1111
ISDNコール名 RMT(ダイヤルアップ受け入れ用)
ISDN発着優先 着呼優先(専用)


最後にリモートユーザー(ルーターC)の設定についてまとめます。リモートユーザーは、通常のダイヤルアップPPP接続ができればよく、L2TPに対応している必要はありません。ルーターCは、LAN側端末からの通信要求に応じてLACにダイヤルアップします(ダイヤルオンデマンド)。これは、物理的にはLACとの接続ですが、L2TPの働きにより実際にはLNSにダイヤルアップしたことになります。LNSとの間にPPPセッションが確立すると、通常の認証処理を受け、ルーターAのLAN側アドレスを1つ動的に割り当てられます。端末型の接続になるため、ダイナミックENATを使ってルーターCのLAN側端末が外に出られるようにしています。

表 4:リモートユーザー(ルーターC)の設定
ISDNコール名 LAC(LACへのダイヤルアップ用)
ISDN発着優先 発呼優先(専用)
PPPユーザー名 AAA
PPPパスワード PasswordA
WAN側(ppp0)IPアドレス LNS(ルーターA)から動的割り当て
LAN側(eth0)IPアドレス 192.168.20.1/24


なお、PC-Dの設定については、ご使用のTA、オペレーティングシステムのマニュアルをご覧ください。インターネットサービスプロバイダー(ISP)にダイヤルアップするときと同様の設定になります。



ルーターA(LNS)の設定

  1. 最初に、ISP-Aとの接続のための設定を行います。BRIインターフェース「0」の全スロット(1〜2)を、常時起動のTDM(専用線)モードに設定します。


  2. bri0のスロット1〜2(128Kbps)に対して、TDMグループ「ISPA」を作成します。


  3. PPPインターフェース「0」を、TDMグループ「ISPA」上に作成します。


  4. IPモジュールを有効にします。


  5. LAN側(eth0)インターフェースをマルチホーミングし、eth0-0にグローバルアドレスを、eth0-1にプライベートアドレスを設定します。


  6. WAN側(ppp0)インターフェースをUnnumberedに設定します。


  7. デフォルトルートを設定します。


  8. L2TPトンネル経由で接続してくるリモートユーザー(ルーターCとPC-D)のための設定を行います。最初に、リモートユーザーをユーザー認証データベースに登録します。


  9. トンネル経由でユーザーが接続してきた時に動的に作成するPPPインターフェースのテンプレート「1」を作成します。接続時の認証はCHAP、PAPのどちらでも行えるようにし、アドレス割り当てにはIPアドレスプール「POOL」を使うようにします。


  10. IPアドレスプール「POOL」を作成し、ユーザーに割り当てるアドレスの範囲を指定します。


  11. ここから、L2TPの設定を行います。最初にL2TPモジュールを有効にします。


  12. L2TPサーバーをLNSモードで起動します。


  13. LAC(ルーターB)からのトンネル接続要求時に相手を認証するためのパスワード「l2tpA」を設定します。


  14. LAC「200.100.20.1」からの接続時に動的作成するPPPインターフェースの雛形として、PPPテンプレート「1」を使うよう指定します。


  15. 設定は以上です。設定内容をファイルに保存し、SET CONFIGコマンドで起動時設定ファイルに指定します。


ルーターB(LAC)の設定

  1. 最初にISP-Bとの接続のための設定を行います。BRIインターフェース「1」の全スロット(1〜2)を、常時起動のTDM(専用線)モードに設定します。


  2. bri1のスロット1〜2(128Kbps)に対して、TDMグループ「ISPB」を作成します。


  3. PPPインターフェース「0」を、TDMグループ「ISPB」上に作成します。


  4. IPモジュールを有効にします。


  5. LAN側(eth0)インターフェースにISPから割り当てられたグローバルアドレスを設定します。


  6. WAN側(ppp0)インターフェースをUnnumberedに設定します。


  7. デフォルトルートを設定します。


  8. リモートユーザー(ルーターCとPC-D)からの接続に対し、アクセスサーバーとしての役割を果たすための設定を行います。最初にPPPテンプレート「1」を作成し、ISDN経由でユーザーが接続してきた時に動的に作成するPPPインターフェースの基本属性を設定します。


  9. ユーザーからの接続を受け入れるISDNコール「RMT」を作成します。接続先番号「0」は自分からは発呼しないことを示します。また、不特定ユーザーからの着呼を受け入れるため「INANY=ON」を指定し、「USER=PPP」で着呼時にPPPインターフェースを動的作成するよう指定しています。動的作成するインターフェースの属性は、PPPテンプレート「1」で定義します。


  10. 次にL2TPの設定を行います。最初にL2TPモジュールを有効にします。


  11. L2TPサーバーをLACモードで起動します。


  12. ユーザーがダイヤルアップ接続してきたときに、どのLNSに中継するかを設定します。以下の設定では、LACにダイヤルアップ接続してきたすべてのPPPユーザー(USER=ALL)をLNS「200.100.10.1」(IP=200.100.10.1)に中継します。PASSWORDはLNSに接続するためのパスワードです。また、「ACTION=DATABASE」は、LNSのアドレスとしてIPパラメーターの値を使うことを示します。


  13. 設定は以上です。設定内容をファイルに保存し、SET CONFIGコマンドで起動時設定ファイルに指定します。



ルーターCの設定

  1. LACにダイヤルアップするためのISDNコール「LAC」を作成します。


  2. ISDNコール「LAC」上にダイヤルオンデマンドのPPPインターフェースを作成します。「IPREQUEST=ON」を指定して、LNS(ルーターA)からIPアドレスを取得するように設定します。


  3. LNSにPPP接続するためのユーザー名とパスワードを設定します。


  4. IPモジュールを有効にします。


  5. IPCPネゴシエーションでLNS(ルーターA)から割り当てられたIPアドレスを、PPPインターフェースで使用できるように設定します。


  6. LAN側(eth0)インターフェースにIPアドレスを設定します。


  7. WAN側(ppp0)インターフェースにIPアドレス「0.0.0.0」を設定します。これは、LNS(ルーターA)との接続が確立するまでIPアドレスが確定しないことを示します。


  8. デフォルトルートを設定します。


  9. LNSとの接続がIPアドレスを1つだけ割り当てられる端末型なので、LAN側端末が外に出られるようにダイナミックENATを使用します。最初にIP NATモジュールを有効にします。


  10. LAN側ネットワークに接続されているすべてのコンピューターがENAT機能を使用できるよう設定し、グローバルアドレスとしてppp0のIPアドレス(LNSから割り当てられたアドレス)を使用するよう指定します。


  11. 設定は以上です。設定内容をファイルに保存し、SET CONFIGコマンドで起動時設定ファイルに指定します。

まとめ

ルーターA(LNS)のコンフィグ [テキスト版]
SET BRI=0 MODE=TDM ACTIVATION=ALWAYS TDMSLOTS=1-2
CREATE TDM GROUP=ISPA INT=bri0 SLOTS=1-2
CREATE PPP=0 OVER=TDM-ISPA LQR=OFF
ENABLE IP
ADD IP INT=eth0-0 IP=200.100.10.1 MASK=255.255.255.240
ADD IP INT=eth0-1 IP=192.168.10.1 MASK=255.255.255.0
ADD IP INT=ppp0 IP=0.0.0.0
ADD IP ROUTE=0.0.0.0 INT=ppp0 NEXT=0.0.0.0
ADD USER=AAA PASSWORD=PasswordA LOGIN=NO
ADD USER=BBB PASSWORD=PasswordB LOGIN=NO
CREATE PPP TEMPLATE=1 IPPOOL=POOL AUTHENTICATION=EITHER
CREATE IP POOL=POOL IP=192.168.10.20-192.168.10.30
ENABLE L2TP
ENABLE L2TP SERVER=LNS
SET L2TP PASSWORD=l2tpA
ADD L2TP IP=200.100.20.1 PPPTEMPLATE=1


ルーターB(LAC)のコンフィグ [テキスト版]
SET BRI=1 MODE=TDM ACTIVATION=ALWAYS TDMSLOTS=1-2
CREATE TDM GROUP=ISPB INT=bri1 SLOTS=1-2
CREATE PPP=0 OVER=TDM-ISPB LQR=OFF
ENABLE IP
ADD IP INT=eth0 IP=200.100.20.1 MASK=255.255.255.240
ADD IP INT=ppp0 IP=0.0.0.0
ADD IP ROUTE=0.0.0.0 INT=ppp0 NEXT=0.0.0.0
CREATE PPP TEMPLATE=1 LOGIN=USER AUTHENTICATION=EITHER
ADD ISDN CALL=RMT NUMBER=0 PREC=IN INANY=ON INTREQ=bri0 USER=PPP PPPTEMPLATE=1
ENABLE L2TP
ENABLE L2TP SERVER=LAC
ADD L2TP USER=ALL ACTION=DATABASE IP=200.100.10.1 PASSWORD=l2tpA


ルーターCのコンフィグ [テキスト版]
ADD ISDN CALL=LAC NUMBER=0312341111 PREC=OUT INTREQ=bri0
CREATE PPP=0 OVER=ISDN-LAC IPREQUEST=ON IDLE=60
SET PPP=0 USER=AAA PASSWORD=PasswordA
ENABLE IP
ENABLE IP REMOTEASSIGN
ADD IP INT=eth0 IP=192.168.20.1 MASK=255.255.255.0
ADD IP INT=ppp0 IP=0.0.0.0
ADD IP ROUTE=0.0.0.0 INT=ppp0 NEXT=0.0.0.0
ENABLE IP NAT
ADD IP NAT IP=192.168.20.0 MASK=255.255.255.0 GBLINT=ppp0





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