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CentreCOM AR300/AR700 シリーズ 設定例集 2.3 #67

IPフィルター


IPフィルターは、IP、TCP、UDP、ICMPなどのヘッダー情報をもとに、パケットの通過・拒否を制御する機能です。この例では、IPフィルターの基本的な設定方法を、ISDNによるIP2点間接続の構成例をもとに解説します。

ここでは、次のような構成のネットワークを例に解説します。

表 1:ルーターの基本設定
 
ルーターA
ルーターB
ISDN番号 03-1234-1111 06-1234-2222
ISDNコール名 TOOS TOOS
ISDN発着優先 発呼優先 着呼優先
ISDN識別方式 サブアドレス識別 サブアドレス識別
WAN側物理インターフェース bri0 bri0
PPPユーザー名 AAA BBB
PPPパスワード PasswordA PasswordB
PPP認証方式 CHAP CHAP
マルチリンクPPP(MP) 使用しない 使用しない
WAN側(ppp0)IPアドレス 192.168.100.1/24 192.168.100.2/24
LAN側(eth0)IPアドレス 192.168.10.1/24 192.168.20.1/24



IPフィルターは、原則としてすべての通信を拒否する「デフォルト拒否」の設定とし、以下の通信だけを許可するよう設定します。



ルーターAの設定

  1. 接続先情報(ISDNコール)を定義します。ここではコール名を「TOOS」とし、接続先番号として「0612342222」を指定しています。「PRECEDENCE=OUT」は、ルーターBと同時に通信が発生した場合に、発呼を優先するよう指示するものです。また、「INTREQ=bri0」により、発呼に使用する物理インターフェースとしてbri0を指定します。


  2. サブアドレスを設定します。「OUTSUB=LOCAL」により、自分のコール名(TOOS)をサブアドレスとして相手側に送信するよう指示します。また、「SEARCHSUB=LOCAL」により、自分のコール名と同じサブアドレスの着信呼にのみ応答するよう設定します。


  3. ISDNコール「TOOS」上にPPPインターフェース「0」を作成します。また、「IDLE=ON」により、必要に応じて自動発呼するダイヤルオンデマンド機能を有効にします。


  4. 接続相手(ルーターB)のPPPユーザー名とパスワードをユーザー認証データベースに登録します。これは、PPPのネゴシエーションで相手を認証するためのものです。


  5. 自分のPPPユーザー名とパスワードを設定します。これは、PPPのネゴシエーションで相手から認証を受けるためのものです。


  6. PPP認証方式(相手を認証するときの方式)をCHAPに設定します。


  7. IPモジュールを有効にします。


  8. LAN側(eth0)インターフェースにIPアドレスを設定します。


  9. WAN側(ppp0)インターフェースにIPアドレスを設定します。


  10. 経路情報を設定します。


  11. WAN側(ppp0)インターフェースに適用するIPフィルター「1」の設定を行います。

    なお、IPフィルターの設定ではコマンドラインが長くなりがちなので、適宜省略形を用いてください。この例でも省略形を用いています。


    Note - IPフィルターのデフォルト動作は「すべて拒否(EXCLUDE)」です。すなわち、明示的に指定した条件にマッチしなかったパケットはすべて破棄されます。この例では、上で設定したホストA、B、CからUNIXサーバーのTELNET、FTPポートへの通信以外はすべて拒否されます。

  12. LAN側(eth0)インターフェースに適用するIPフィルター「2」の設定を行います。


    Note - IPフィルターのデフォルト動作は「すべて拒否(EXCLUDE)」です。すなわち、明示的に指定した条件にマッチしなかったパケットはすべて破棄されます。この例では、上で設定したUNIXサーバーのTELNET、FTPポートからホストA、B、Cへの通信以外はすべて拒否されます。

  13. IPフィルター「1」をWAN側(ppp0)インターフェースに適用します。


  14. IPフィルター「2」をLAN側(eth0)インターフェースに適用します。


  15. 設定は以上です。設定内容をファイルに保存し、SET CONFIGコマンドで起動時設定ファイルに指定します。



ルーターBの設定

  1. 接続先情報(ISDNコール)を定義します。ここではコール名を「TOOS」とし、接続先番号として「0312341111」を指定しています。「PRECEDENCE=IN」は、ルーターAと同時に通信が発生した場合に、着呼を優先するよう指示するものです。また、「INTREQ=bri0」により、発呼に使用する物理インターフェースとしてbri0を指定します。


  2. サブアドレスを設定します。「OUTSUB=LOCAL」により、自分のコール名(TOOS)をサブアドレスとして相手側に送信するよう指示します。また、「SEARCHSUB=LOCAL」により、自分のコール名と同じサブアドレスの着信呼にのみ応答するよう設定します。


  3. ISDNコール「TOOS」上にPPPインターフェース「0」を作成します。また、「IDLE=ON」により、必要に応じて自動発呼するダイヤルオンデマンド機能を有効にします。


  4. 接続相手(ルーターA)のPPPユーザー名とパスワードをユーザー認証データベースに登録します。これは、PPPのネゴシエーションで相手を認証するためのものです。


  5. 自分のPPPユーザー名とパスワードを設定します。これは、PPPのネゴシエーションで相手から認証を受けるためのものです。


  6. PPP認証方式(相手を認証するときの方式)をCHAPに設定します。


  7. IPモジュールを有効にします。


  8. LAN側(eth0)インターフェースにIPアドレスを設定します。


  9. WAN側(ppp0)インターフェースにIPアドレスを設定します。


  10. 経路情報を設定します。


  11. 設定は以上です。設定内容をファイルに保存し、SET CONFIGコマンドで起動時設定ファイルに指定します。



メモ

■ IPフィルターはパラメーターが多いため、コマンドラインが長くなりがちです。コマンドラインの入力文字数制限によりコマンドを入力できない場合は、省略形を使ったり、コマンドを複数行に分けるなどして対処してください。

また、コマンドパラメーターの詳細についてはコマンドリファレンスをご覧ください。

■ IPフィルターの設定状況を確認するには次のコマンドを使います。


■ どのIPインターフェースにどのIPフィルターが適用されているかを確認するには、次のコマンドを使います。


■ IPインターフェースからIPフィルターを削除するには、SET IP INTERFACEコマンドのFILTERパラメーターにNONEを指定します。IPインターフェースeth0からIPフィルターの適用を取り消すには、次のようにします。


■ 現在の設定内容を表示するには、次のコマンドを使います。

まとめ

ルーターAのコンフィグ [テキスト版]
ADD ISDN CALL=TOOS NUMBER=0612342222 PRECEDENCE=OUT INTREQ=bri0
SET ISDN CALL=TOOS OUTSUB=LOCAL SEARCHSUB=LOCAL
CREATE PPP=0 OVER=ISDN-TOOS IDLE=ON
ADD USER=BBB PASSWORD=PasswordB LOGIN=NO
SET PPP=0 USER=AAA PASSWORD=PasswordA
SET PPP=0 OVER=ISDN-TOOS AUTHENTICATION=CHAP
ENABLE IP
ADD IP INT=eth0 IP=192.168.10.1 MASK=255.255.255.0
ADD IP INT=ppp0 IP=192.168.100.1 MASK=255.255.255.0
ADD IP ROUTE=192.168.20.0 MASK=255.255.255.0 INT=ppp0 NEXTHOP=192.168.100.2
ADD IP FILT=1 SO=192.168.20.4 SM=255.255.255.255 DEST=192.168.10.2 DM=255.255.255.255 AC=INCLUDE
SET IP FILT=1 ENTRY=1 DPORT=TELNET PROT=TCP SESS=ANY
ADD IP FILT=1 SO=192.168.20.5 SM=255.255.255.255 DEST=192.168.10.2 DM=255.255.255.255 AC=INCLUDE
SET IP FILT=1 ENTRY=2 DPORT=FTPDATA PROT=TCP SESS=ESTABLISHED
ADD IP FILT=1 SO=192.168.20.5 SM=255.255.255.255 DEST=192.168.10.2 DM=255.255.255.255 AC=INCLUDE
SET IP FILT=1 ENTRY=3 DPORT=FTP PROT=TCP SESS=ANY
ADD IP FILT=1 SO=192.168.20.5 SM=255.255.255.255 DEST=192.168.10.2 DM=255.255.255.255 AC=INCLUDE
SET IP FILT=1 ENTRY=4 DPORT=TELNET PROT=TCP SESS=ANY
ADD IP FILT=1 SO=192.168.20.6 SM=255.255.255.255 DEST=192.168.10.2 DM=255.255.255.255 AC=INCLUDE
SET IP FILT=1 ENTRY=5 DPORT=FTPDATA PROT=TCP SESS=ESTABLISHED
ADD IP FILT=1 SO=192.168.20.6 SM=255.255.255.255 DEST=192.168.10.2 DM=255.255.255.255 AC=INCLUDE
SET IP FILT=1 ENTRY=6 DPORT=FTP PROT=TCP SESS=ANY
ADD IP FILT=2 SO=192.168.10.2 SM=255.255.255.255 DEST=192.168.20.4 DM=255.255.255.255 PROT=TCP AC=INCLUDE
SET IP FILT=2 ENTRY=1 SPORT=TELNET SESS=ESTABLISHED
ADD IP FILT=2 SO=192.168.10.2 SM=255.255.255.255 DEST=192.168.20.5 DM=255.255.255.255 PROT=TCP AC=INCLUDE
SET IP FILT=2 ENTRY=2 SPORT=TELNET SESS=ESTABLISHED
ADD IP FILT=2 SO=192.168.10.2 SM=255.255.255.255 DEST=192.168.20.5 DM=255.255.255.255 PROT=TCP AC=INCLUDE
SET IP FILT=2 ENTRY=3 SPORT=FTPDATA SESS=ANY
ADD IP FILT=2 SO=192.168.10.2 SM=255.255.255.255 DEST=192.168.20.5 DM=255.255.255.255 PROT=TCP AC=INCLUDE
SET IP FILT=2 ENTRY=4 SPORT=FTP SESS=ESTABLISHED
ADD IP FILT=2 SO=192.168.10.2 SM=255.255.255.255 DEST=192.168.20.6 DM=255.255.255.255 PROT=TCP AC=INCLUDE
SET IP FILT=2 ENTRY=5 SPORT=FTPDATA SESS=ANY
ADD IP FILT=2 SO=192.168.10.2 SM=255.255.255.255 DEST=192.168.20.6 DM=255.255.255.255 PROT=TCP AC=INCLUDE
SET IP FILT=2 ENTRY=6 SPORT=FTP SESS=ESTABLISHED
SET IP INT=ppp0 FILT=1
SET IP INT=eth0 FILT=2


ルーターBのコンフィグ [テキスト版]
ADD ISDN CALL=TOOS NUMBER=0312341111 PRECEDENCE=IN INTREQ=bri0
SET ISDN CALL=TOOS OUTSUB=LOCAL SEARCHSUB=LOCAL
CREATE PPP=0 OVER=ISDN-TOOS IDLE=ON
ADD USER=AAA PASSWORD=PasswordA LOGIN=NO
SET PPP=0 USER=BBB PASSWORD=PasswordB
SET PPP=0 OVER=ISDN-TOOS AUTHENTICATION=CHAP
ENABLE IP
ADD IP INT=eth0 IP=192.168.20.1 MASK=255.255.255.0
ADD IP INT=ppp0 IP=192.168.100.2 MASK=255.255.255.0
ADD IP ROUTE=192.168.10.0 MASK=255.255.255.0 INT=ppp0 NEXTHOP=192.168.100.1





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