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左から アライドテレシス 佐藤、株式会社インプレス 石井氏

新たなネットワークの在り方とは?①~特別対談~

新たなネットワークの在り方とは?①~特別対談~

近年の企業や組織を取り巻く環境は、デジタルトランスフォーメーションの推進や働き方改革、またコロナ禍の影響など、大きな変化を迎えている。しかし、これらの変化を乗り越えていくためにはITインフラ、ネットワークへの投資と整備が必要となる。そこで今回は、長年IT業界の最前線を見てきたクラウド Watch編集長の石井 一志氏を招き、当社製品企画部門 責任者の佐藤 誠一郎と「ITに関わるヒト・モノ・コト」の今の課題を紐解き、今後どのような対策や解決策が求められるのかを聞いた。

目 次

「分散」から「集中」へと回帰しながらも双方が求められる時代

昨今のIT業界、とくにITインフラ・ネットワークで特徴になっていることはなんでしょうか。

クラウド Watch 石井編集長

石井編集長

クラウド Watch 石井編集長
皆さんがご存知のようにコロナ禍でさまざまなことがそれまでと大きく変わりました。とくにネットワークで言いますと、リモートを利用した働き方を多くの企業が取り入れました。これによりITインフラも「分散」せざるを得ませんでした。そして世間的にもコロナに対する取り組みが変わって行く中で、近頃は「集中」への流れが回帰しています。
ただし、分散したものが全て戻るのではなくて、必要なところを集中させて、便利なところはリモート(分散)のままという方向です。分散と集中、流れが全く異なる2つを追っていかなくてはいけないというのが、今のITインフラ業界の特徴かと思っています。

働き方がコロナ前に完全に戻るわけではないということですね。

クラウド Watch 石井編集長

石井編集長

クラウド Watch 石井編集長
コロナ前の集合形態の方がやはり良い、とリモートワークを完全に廃止する企業もありますし、部分的にリモートを残してハイブリッドワークにする企業もあります。
一方でITインフラの管理となると、これまでの3年間リモートで対応できた、もしくは対応できるようにインフラを構築してきたものもあります。それらを生かしたままハイブリッドで管理する、言わば「ハイブリッドマネジメント」で進めていこうという流れが大きくなっています。

クラウド Watchで読者が興味をもっている内容やキーワードなどについてお教えください。

クラウド Watch 石井編集長

石井編集長

クラウド Watch 石井編集長
読者の皆さんも「分散と集中」に関しては非常に興味があるところですので、それを実現するためのソリューションは関心が高くなっていると感じます。
とくにインフラ担当者レベルで言うと、勤務地が元に戻りつつある中で当然インフラは各地に分散しています。それをオフィスに居ながらにしてどう効率的に管理していくか、管理業務の煩雑さをどう解消するかという点に、本当に高い関心があります。

アライドテレシスではお客様と直接話をするケースも多いと思いますが、現状をどのように考えられていますか。

アライドテレシス 佐藤

佐藤

アライドテレシス 佐藤
エンドユーザー様やパートナー様から日々お話を伺っていますが、石井編集長からあったように、元の生活に戻りつつも完全に戻っているわけではないという状況です。それは環境だったり、状況だったり、“人”自体も戻ってきていないわけです。
ただ、どんな状況でもネットワークは管理しなければなりません。そこで当社では、運用・管理を簡素化・自動化するAMF1(Autonomous Management Framework)を提供していて、たくさんの好評のお声をいただいてきました。

用語解説
  • 1

    AMF:Autonomous Management Frameworkの略。アライドテレシスが独自開発した技術で、複数のネットワーク機器の一括設定や一括アップデート、遠隔地からの管理・設定変更、事前設定不要の機器交換といった運用を可能とする。AMFの導入により運用・管理工数とコストの大幅な削減、障害時の自動復旧を実現する。

AMFではどのような機能が好評でしょうか。

アライドテレシス 佐藤

佐藤

アライドテレシス 佐藤
AMFは2013年に提供を開始して10年、ITインフラにまつわるさまざまな問題を解決・矛盾を解消してきました。その中でとくに好評だったのは「オートリカバリー(自動復旧)」や「ゼロタッチコンフィグ(自動構築)」といった機能です。それまでのネットワークは、コア・スイッチ、ディストリビューション・スイッチ、エッジ・スイッチ2とある中で、コアしか保守に入らないというケースも多々ありました。その場合、ディストリビューションやエッジに問題が生じると、販売店さんやSIerさんが手弁当でなんとかせざるを得ないような状態でした。
これに一石を投じたのがAMFのオートリカバリー機能、ゼロタッチコンフィグ機能です。機器の不具合で差し替える対応が必要となったとしてもITに詳しくない人、どなたがやっても同じ水準でネットワークを復旧できるようになりました。予備機運用もAMFの場合は工場出荷状態の1台を用意しておけばいい。いわゆる「保守どうするんだ問題」を解決に導いたわけです。

用語解説
  • 2

    コア・スイッチ、ディストリビューション・スイッチ、エッジ・スイッチ:ネットワークの拡張性や管理性を向上するため、役割や機能ごとに分けられた階層設計。エッジ層はアクセス層とも呼ばれる。一般的に、バックボーンと接続するコア・スイッチが配下のディストリビューション・スイッチを束ね、中間のディストリビューション・スイッチが末端のエッジ・スイッチを束ねる。

なるほど。平常時でもコロナ禍でもとても有用な機能ですね。人が戻りきってないという話もありましたが、たしかにネットワークに詳しい担当者が周りにいなくても復旧や拡張がしやすいですね。工数を低減するという意味では近年、AI(人工知能)/ML(機械学習)をソリューションに取り入れる動きも活発です。

クラウド Watch 石井編集長

石井編集長

クラウド Watch 石井編集長
一時期は経営者の方も「うちはAIできないのか」「何か使えないのか」と曖昧な感じに理解されていましたが、最近は比較的現実的な理解が得られるようになっていると思います。
つまりは、そのソリューションがAI/MLを使っているかどうかではなくて、自分の仕事にどうインパクトがあるのかを、客観的に見られるようになってきたのではないかなというのが今の印象ですね。
例えばOCR3の技術などはAIが当たり前になっていますし、AI/ML4を用いたデータの解析に効果があるというのは皆さんご存知かと思いますので、現実的にどういうメリットがあるかを客観的にご覧になっていると思います。

用語解説
  • 3

    OCR (オーシーアール):Optical Character Recognition(もしくはReader)の略。光学文字認識の意味で、スキャナーやデジタルカメラなどで取り込んだ画像から文字部分をテキストデータに変換する機能。

  • 4

    ML(機械学習):Machine Learningの略。AIが特定の大量データ(=経験)を反復的に学習して、特徴やパターンを発見し、それにあてはめて予測や判断、解析などができる仕組み。教師あり学習、教師なし学習、強化学習の3つの手法がある。

ネットワーク管理は「AMF」から「AMF Plus」へ

アライドテレシスでは今回、そうした“AI/ML”を“ネットワーク”に適用して、ITインフラの運用管理の精度を上げられる「AMF Plus」を発表して提供を開始していますね。

アライドテレシス 佐藤

佐藤

アライドテレシス 佐藤
今も今後もネットワークはどんな状況にあっても管理が必要なことに変わりはありません。確かに、AMFは運用管理の簡素化も自動化も出来るメリットをお客様に提供してきましたが、それこそ今と今後を見据えると今以上に運用管理に素早く効くブラッシュアップが必要です。

AMF Plusは、AMFにネットワークAI/MLの要素を組み込んだことで、例えばスイッチなど機器ごとに分散していた通信品質や接続経路といった情報が集約できます。そこで終わりではなくて、ITインフラ全体の情報として分析、ITインフラ全体の通信品質や接続経路の最適化が実現できます。

各機器の情報ではなく“ITインフラ全体”の情報として収集と分析を重ねていけば、AMF Plusが俯瞰的にITインフラの状況を人に代わって監視も改善策の検討も出来るので、ITインフラ自体の最適なバランスを保ってくれます。

自律的にネットワーク全体の優先制御を最適化:インテントベースQoS

AI/MLを使って、ネットワーク全体の通信品質を最適化。
音声や映像など優先度の高い通信も含めてバランスが取れる。

ネットワーク全体のポリシーを一目で把握・簡単変更:スマートACL

マトリックスで表すアクセス制御のポリシーを使うため、端末・機器ごとの通信経路の細かい設定いらず。
簡単にポリシーに合わない割り当てを防止できる。

詳しくは「AMF Plus」紹介ページへ

AMF Plusの特徴を教えて下さい。

アライドテレシス 佐藤

佐藤

アライドテレシス 佐藤
AMF Plusで1番に意識したのは、やはりエンドユーザー様に実際の利益があること、目に見えたメリットがあることです。もう一つは、継続性と拡張性というところで一見相反するのですが、当社は自分たちで開発して製造して35年以上続いているメーカーですので、そうしたところも意識して作っています。先ほどから話に出ている分散していたものが集中し始めていて、ただ戻りきっていないという状態の中で、目に見えたメリットでいうと、従来よく出てきてしまうようなベンダーロックがなく、AMF Plusは自社製品以外のデバイス、サーバーやストレージ、それにそれらの情報も集積して分析をすることで総合的な保守・運用・管理という仕組みを提供します。AI/MLは実際のメリットが見えにくいところがありますので、シンプルに実利が見えるような提供の仕方を強く意識しています。
継続性と拡張性の面では、今ある機器をそのままお使いいただき、そこにAMF Plusのライセンスだけ入れていただければ使えます。3年前、4年前に買った機器でも大丈夫です。

石井編集長がAMF Plusの発表を聞かれて、良いと思われた点はどこでしょう。

クラウド Watch 石井編集長

石井編集長

クラウド Watch 石井編集長
そうですね、一番良いと思ったのは、マルチベンダーのところですね。基本的に日本のインフラ環境はマルチベンダーですから、今回さまざまな機能追加や拡張がありましたが、その一つとしてマルチベンダー化があるのは非常に良いと思います。
アライドテレシスの製品が中心でありながら、他のものも踏まえてユーザーさんにメリットがある形で答えを出していくというのは、すごくポイントとして大きいと思います。
分散と集中への対応も両方踏まえて作られているので、今の時代には非常に合っているという印象を受けます。

これからもユーザーは在宅だったりサテライトオフィスだったりさまざまなところから業務を行います。

アライドテレシス 佐藤

佐藤

アライドテレシス 佐藤
分散と集中にもしっかり対応できるネットワーク管理が大事になってきます。とくに認証面です。リモートワークではさまざまな種類のパソコンが使われますし、デバイスがアクセスしてくる場所やその方法も変わっていますので、従来のユーザー認証やデバイス認証で捉え切るというのが段々難しくなってきています。
AMF PlusはAI/MLにより、誰のアクセスか、どんなデバイスなのかなど、ネットワークアクセスを見える化、明確化して、ネットワークの安全を守ります。

クラウド Watch 石井編集長

石井編集長

クラウド Watch 石井編集長
コロナ禍では、例えば本社は最小限の形にしてリモートワークを推進する方法として小さなリモートオフィスやサテライトオフィスを作るといった施策を進めていた企業もありました。コロナが落ち着いてもそれを維持するハイブリッドな働き方を選択するのであれば、「分散」拠点を維持したまま「集中」にも対応しなければなりませんので、確かに管理性の向上はこれまで以上に要望が強くなりますね。

アライドテレシス 佐藤

佐藤

アライドテレシス 佐藤
おっしゃる通りです。ただ、分散と集中の過渡期では難しい問題もあります。例えば、クラウド上で管理していたものを引き上げるときに、データの移行や譲渡が問題になるケースがあります。
AMF Plusでは、クラウド上で管理をしながらデータの蓄積はオンプレミス5で行う、といった管理手法が選択できます。例えば、管理やグラフィカルな部分はクラウド上のサーバーから提供して、データは各企業様のサーバールームなどに置くといった仕組みを提供しています。

用語解説
  • 5

    オンプレミス:オンプレとも略される。自社内や運用・管理しているデータセンター内にシステムを構築、所有、運用するコンピューティング形態。クラウドコンピューティングと対義的な用語として用いられることが多い。

クラウド Watch 石井編集長

石井編集長

クラウド Watch 石井編集長
まだまだデータを引き上げることも結構あるのですね。

アライドテレシス 佐藤

佐藤

アライドテレシス 佐藤
そうなんです。やはり顧客情報など機密性が求められる情報については、手元に置いておきたいという企業様はまだいらっしゃいますね。

石井編集長と佐藤

新しい時代にビジネスを成長させるネットワークの在り方

AMF Plusのコピーには「新たなネットワークの在り方」とあります。これはどういった意味でしょうか。

アライドテレシス 佐藤

佐藤

アライドテレシス 佐藤
DX(デジタルトランスフォーメーション)6を実現していくうえで、デジタル情報の活用は必要不可欠です。しかし現実には、さまざまなシステムとデータが別々に独立して存在して、データを生かしきれない、もったいない状態になっています。
アライドテレシスはAMF Plusにより、さまざまなシステムやデータ、そしてネットワーク機器を連携し、ITインフラをビジネスインフラとして、企業活動の品質向上を支援し、ひいては企業の変化と成長をもたらします。これがアライドテレシスが考える新たなネットワークの形です。

用語解説
  • 6

    DX(ディーエックス):Digital Transformationの略。企業や組織が社会的な現象やビジネスを取り巻く激しい変化に対して、IoTやAIなど最新のデジタル技術を活用し、経済や社会に新たな価値を生み出しより良い変革を起こすこと。デジタル化が進んだ今日、企業や組織が生き残るためのキーワードとして注目を集めている。

AMF Plus

詳しくは「AMF Plus」紹介ページへ

石井編集長は新たなネットワークをどのようにお考えですか。

クラウド Watch 石井編集長

石井編集長

クラウド Watch 石井編集長
なにを新しいと言うかにもよりますが、企業のあり方が変わっている中で、そうしたところに柔軟に対応できる新しいネットワークが求められていますし、当然これで終わりではありませんので、今後の変化も踏まえる必要があります。分散と集中の流れは依然としてありますので、どう変わっても対応できることが大切だと思います。
集中していると管理は楽なのですけど、絶対にそれだけではもう収まらない時代に来ています。

まだコロナは先が見えないところもありますね。

クラウド Watch 石井編集長

石井編集長

クラウド Watch 石井編集長
人が戻りきってないという部分は大きなポイントだと思っていまして、コロナを抜きにしても労働人口はただでさえ減っていきますので、人が少なくても対応できるというのは大きな要素になっていくと思います。
熟練のネットワーク技術者というのはどんどん減っていきますから、AIやMLなどの新しい技術で、そこが代替できるのであれば、本当に目に見えるメリットになると思います。
とくにネットワーク管理の効率化は絶対に避けられない部分ですので、管理のためのソリューションがどう支援してくれるかは皆さん大きな関心を持たれているところです。

この記事を読まれている読者にメッセージをお願いします。

クラウド Watch 石井編集長

石井編集長

クラウド Watch 石井編集長
これは、どのジャンルでも同じなのですが、「分散と集中」というのはどちらも今後必要とされていきますし、これからも長いスパンで見ればさまざまに変化していく部分です。ですので、どちらかに囚われず、広く状況やトレンドをウォッチしていただければと思います。
その上で現状は集中に戻りつつある、かつ分散を維持しなければいけないという状況ですので、その状況のもとで自分の仕事がどうすれば楽になるのか、またビジネスを成長させていけるか、さまざまなソリューションをウォッチしていただいて、把握していただければと思います。

アライドテレシス 佐藤

佐藤

アライドテレシス 佐藤
実は、AMF Plusは2008年にリリースした「VCS7(バーチャルシャーシスタック)」という技術が順々に進化を遂げていった結果となっています。当時、ネットワーク障害をどうやって少なくしたらお客様は安定した止まらないネットワーク環境が作れるかという時期でした。そこで、バーチャル(仮想的)に2台以上の機器をスタッキングする(まとめる)ことで、ネットワークの管理を簡素化、通信を安定する技術としてVCSの提供を開始しました。その後、ネットワーク全体の規模が大きくなる傾向を鑑みて管理面で課題感を感じるお客様が出てくるであろうと考え2013年にネットワーク全体をまとめる「u-VCF」という技術コンセプトを発表しました。当初はどうしてもネットワークの中にスペック差のある機器があるため、処理するデータ容量が小さい例えば無線LANアクセスポイントが全体に影響を与えてしまうため実現できるネットワークの規模が小さくなってしまっていました。

同時期、IT市場でSDN(Software Defined Networking)、ソフトウェアでネットワークを制御するという技術キーワードが注目し始められ、当社はネットワーク機器のOS開発から自社内で体制を作れていたため独自SDN技術のAMFとして提供を開始できました。データの流れや全体の経路が一括で制御できて、拡張性も担保できる。しかも自社内で開発することで柔軟な機能を応用が効く形で提供することができました。

ITインフラは今、激動の時代です。当社は、一つのプロトコル、一つの製品、一つのアーキテクチャーを長く提供して、サポートもできることが特徴だと考えています。AMF Plusもそうで、これまで提供してきている機器でも使えるソリューションです。そして、進化を遂げていった結果とお伝えしましたが、AMF Plusも長く使っていただけるような仕組みにしていけるよう、今後も新機能の開発や機能のブラッシュアップを続けていこうと思っています。

用語解説
  • 7

    VCS(ブイシーエス):スタックすることで、複数台のスイッチを仮想的に1台とするアライドテレシスの独自技術。接続されているスイッチが全てアクティブ状態で動作し障害発生時の経路切り分けなどが可能となり、シンプルかつ拡張性に優れた負荷分散型冗長ネットワークを安価に実現する。

後編では、AMF Plusについて、ニュージーランドの開発者の二人にインタビューしました。

登場者

株式会社インプレス 石井氏

株式会社インプレス
クラウド Watch 編集長
石井 一志氏

佐藤 誠一郎

アライドテレシス株式会社
上級執行役員
Global Product Marketing本部 本部長
佐藤 誠一郎

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