ITインフラストラクチャー
新たなネットワークの在り方とは?②~開発者インタビュー~
2023.04.20
新たなネットワークの在り方とは?②~開発者インタビュー~
アライドテレシスは2023年2月、AI(人工知能)/ML(機械学習)とネットワークを連携し数値化・機械化することでITインフラの運用管理の手間やコストをさらに削減し、かつデータ集積と活用でビジネスの成長をも支援する新ソリューション「AMF Plus」を発表、提供開始しました。そこで前回の記事を踏まえ、「新たなネットワークの在り方」を実現するAMF Plusの開発について、ニュージーランドのR&D(開発)センターに所属し、開発に携わった2人にインタビューしました。
世界各国で研究・開発に取り組む
アライドテレシスでは、最先端のネットワークテクノロジーを、セキュアかつ簡単で、快適にお客様にお使いいただけるよう全力で製品開発に取り組んでいます。
日本国内をはじめ、米国シリコンバレー(カリフォルニア州)、ニュージーランドのクライストチャーチ、フィリピンのマニラ、台湾、イスラエル、シンガポールなど、世界各国の研究・開発拠点で、最新技術の調査研究とマーケットニーズに基づいた製品やソリューションを研究・開発しています。
中でも今回発表した「AMF Plus」は、ニュージーランドの研究・開発拠点を中心に開発を進めていました。そこで、開発の総責任者である佐藤 誠一郎にニュージーランドに開発拠点を設けている意義を尋ねました。
佐藤
なぜニュージーランドに開発拠点を設置しているのでしょうか。
ニュージーランドは国を挙げてITに力を入れています。大手IT企業の研究施設なども多く、また技術者の離職率が低いのも特徴です。
離職率が低い、というのは開発にとってどんなメリットがあるのでしょうか。
お客様に安定したITインフラをご提供していくには、10年、20年と長いスパンで安定的に開発できる環境が必要になります。特にソフトウェア開発を安定して長く続けていくために、組織・仕組み・ワークグループなどによってソースコードを維持する手法はあります。しかし、本質的には人間が作るものですので、人間に紐づく、依存してしまうことは結構あるものです。メーカーですので同じ品質を維持しようと考えると、安定した環境や開発者が必須になってくるのです。
ニュージーランドではどのような開発を進めているのでしょうか。
ニュージーランドではAMF1やVista Managerシリーズ2、スイッチのOSなど、ネットワーク技術やソフトウェアを開発し、全世界で共通化させ提供しています。AMF Plusについてもメインの開発はニュージーランドで行いました。
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AMF:Autonomous Management Frameworkの略。アライドテレシスが独自開発した技術で、複数のネットワーク機器の一括設定や一括アップデート、遠隔地からの管理・設定変更、事前設定不要の機器交換といった運用を可能とする。AMFの導入により運用・管理工数とコストの大幅な削減、障害時の自動復旧を実現する。
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Vista Managerシリーズ:アライドテレシスが提供している有線/無線、WAN/LANを問わずネットワークを一元管理するマネージメントソリューション。ソフトウェア型の「AT-Vista Manager EX」、アプライアンス型の「AT-VST-APLシリーズ」、機器バンドル型の「Vista Manager mini」がある。グラフィカルで直感的な画面操作により、簡単、シンプル、リアルタイムにネットワークの運用・管理ができる。
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アライドテレシス株式会社 上級執行役員 Global Product Marketing本部 本部長
佐藤 誠一郎
今回、アライドテレシス ニュージーランドのR&D(開発)センターに所属し、AMF Plusの開発に携わった2名に話を聞きました。
AMF Plus開発者インタビュー
自己紹介をお願いします。
Alex
Alex Murrayといいます。アライドテレシスニュージーランドでマネージングディレクターのポジションを務めています。New Zealand Certificate in Engineering(ニュージーランドのエンジニアリング証明書)、コンピューターサイエンスの学士号、MBAを取得しており、30年以上にわたって電子工学とソフトウェア工学の分野に携わっています。アライドテレシスの一員になって21年以上になります。
Adrian
こんにちは、Adrian Tingです。ニュージーランドのクライストチャーチに住んでいます。アライドテレシスで24年間、カスタマーサポートをグローバルに任されています。
これまでアライドテレシスで、どんな仕事に関わってきましたか。
Alex
私は2001年にアライドテレシスで働き始めたのですが、その時からニュージーランドの拠点にいて、はじめは組込用ソフトウェアのエンジニアとして働きはじめました。その後、新しいソフトウェアチームの設立に携わりました。ちなみに、現在アライドテレシスが独自OSとして提供しているAlliedWare Plusが、チーム設立後に後続の最新OSとして開発したソフトウェアになります。そのチームでは、開発者としてだけではなくリーダーとしての経験も積むことが出来ました。
その後、ソフトウェア部門のマネージメントを経て、2017年にはマネージングディレクターの役割を引き継ぎました。仕事を通じて、ソフトウェア、テスト、ハードウェア、プロダクトマネジメント、セールス、サポートなど、さまざまな事業領域で、才能にあふれたたくさんの仲間と情熱を持って働くことができ、充実しています。
Adrian
私がアライドテレシスで働き始めたのは1993年のことです。ちょうどその時アライドテレシスが募集していた「ハードウェアエンジニア」の仕事に応募したのです。希望通りの職には就けませんでしたが、幸運にも「システムテストエンジニア」として採用されました。数年後、カスタマーサポート部門に携わる機会ができ、そのままチームリーダー、マネージャーへと昇格していきました。
ニュージーランド開発拠点での現在のあなたの役割をお聞かせください。
Alex
マネージングディレクターとして、ニュージーランドのエンジニアチームを率いています。ポジション柄、アライドテレシスグループの他のセンターとも密接に連携する機会も多く、非常に充実し、興味深い役割です。チームメンバーが一丸となって作ったソフトウェアやハードウェアが、お客さまのビジネスの効率化や生活の向上に役立っているのを見たり、聞いたりすることが、自分のやりがいになっています。そして、アライドテレシスグループの全チーム間の強い関係と信頼があるからこそ実現できることだと確信しています。
Adrian
カスタマーサポートグループのマネージャーとして、グループ全体で大きく分けて2つあるサポートチームを統括しています。日本、EMEA(ヨーロッパ、中東、アフリカ)、アメリカ、APACの各地域のプリセールスやポストセールスのあらゆる種類の技術的サポートを行っています。
私たちカスタマーサポートにとって、最も重要な仕事は、すべてのお客様を取りこぼしなく、確実にサポートすることです。そのため、例えばメンテナンス用ファームウェアのリリースの管理などにも細かく対応しています。こと細かく対応することで影響を受けるお客様に対して、質の高い「ファームウェアの強化」や「バグ修正」を効果的かつタイムリーにリリースできるように日々心掛けています。
カスタマーサポートにとって、エンジニアのリソース管理と計画は重要で、常に慎重に進めなければいけません。そうしないと、お困りのお客様に適切なサポートを適切なタイミングで提供することができないからです。常にお客様を第一に考えるように努め、お客様に最高のサービスとサポートを提供出来たとき、非常にやりがいを感じます。
自己紹介、ありがとうございました。ここからはAMF Plusについて聞いていきます。まず、AMF Plusのプロジェクトをはじめて聞いたときどう思いましたか。
Alex
次世代的で非常にインテリジェントなネットワーク管理ツールになることが伺えて大きな興奮と誇りを感じました。
正直、AMF Plusの実現に向けた挑戦は、非常に野心的なものだと感じていました。そのビジョンを達成するためには、現在そして次世代のネットワークにおいて、お客様が現場で直面している問題を明確に理解する必要がありました。
同時に、この大きな挑戦に臨むには、アライドテレシスグループのこれまでの長年の経験を生かすこと、そしてチームだけでなく他のグループと密接に連携することが非常に重要だと考えました。AMF Plusは、セールス、マーケティング、エンジニアリング、サポートの各担当者の理解と知識を結集し、共に作り上げたソリューションです。このプロジェクトに携われたことで、達成感を強く感じられたと共に、最先端のネットワーク技術への見識を深めることができました。
Adrian
AMF Plusのプロジェクトの話を聞いたとき、その内容はエンジニアとして非常に刺激的かつ興味深いものでした。お客様のビジネス発展に貢献できる技術の開発チームの一員として携われると分かったからです。なので、非常に前向きな気持ちと熱意でプロジェクトに取り組めましたし、アライドテレシスが“次世代のインテリジェントなネットワーク管理”実現に向け第一歩を踏み出すことができ、とても誇らしく嬉しい気持ちです。
最先端ネットワーク技術への理解を深める機会に恵まれただけでなく、更にはプロジェクトを通じて国内外のさまざまなチームとの連携力の強化も図ることが出来ました。AMF Plusで目指したビジョンは、正直優れたチームワークがなければ達成できないものでした。この成果を誇りに思い、そして開発に関わる機会を与えてくれたことに心から感謝しています。ですが、これはネットワークAIソリューションの実現に向けた私たちの旅の始まりに過ぎません。
実際にAMF Plusの開発を進めるにあたって、どのような課題や壁がありましたか。
Alex
AMF Plusは実現していく機能の仕様も規模も非常に幅広かったため、実際のお客様の要件やニーズを深く理解しなければならないということが一番の課題でした。ですが、機能や操作性を開発する中でフィードバックからデモンストレーションを一貫して行うことで解決しました。
どういうことかというと、機能の確認に、これまで規定としていたレベル以上の開発者テストとユーザーテストを実施したのです。特に、シンプルであるか、使いやすいか、費用対効果の高いネットワーク管理になっているか、そしてビジネスの成長促進などお客様のニーズを満たすソリューションであるかどうかに重点を置きフィードバックと開発を継続的かつ入念に行いました。
Adrian
私が思った最初の課題は“どこから手をつけるか”でした。最初から間違った道を歩んでいたら、あるいは最初に間違った設計をしていたら、プロジェクトはうまくいかないですから。なので、莫大なリソースを投入し、時間と労力をかけて、仕様を固めていきました。
2つ目の課題は“お客様の要求に応えられる”ものにすることでした。というのも、アライドテレシスは1987年からネットワーク業界に参入し、常にお客様の要望やサポートを非常に大切にしてきました。だからこそ、非常に多くのお客様に愛されてきました。ですので、お客様の声に耳を傾け、マーケティングリサーチを重ねながら、ビジネスニーズに応える技術の開発を目指しました。
3つ目の課題は“どこまで突き詰めるか”です。AMF Plusのような最先端のネットワーク技術の開発には終わりがありません。ですから、リリースのタイミングにも慎重にならざるを得ません。つまり「十分な成果」を出しながら、「Time-to-Market」の要件もクリアしなければなりませんでした。時流に乗せることも大事なので、突き詰めながらどこを一旦のカットオーバーとするかという判断が難しかったですね。ですが、努力の甲斐あって、シンプルで使いやすく、費用対効果に優れ、お客様のビジネスの成長に貢献する革新的な技術を生み出すことができました。
AMF Plusが実現すること、特筆すべき機能はなんでしょうか。
Alex
AMF Plusの開発を進める上で、お客様のネットワーク管理の総所有コストを削減することを目標にしていました。そのためにもインテント(意思)ベースのネットワーク技術の概念のもと、お客様のネットワーク管理全体の簡素化が必要になります。AMF Plusはネットワーク機器の設定とプロビジョニング3のプロセスを自動化することで、ネットワーク運用管理のヒューマンエラーを減らしかつ迅速化します。
もう一つの特筆すべき重要な機能は、ネットワークの可視性が向上したことです。ネットワークが一元化されたGUIでこれまで以上に分かりやすく表示できるようになり、問題の診断とトラブルシューティング対応を容易にしています。AMF Plusを利用したネットワークは、対応の迅速化を可能とし、例えば新しいアプリケーションやデバイスの追加、設定の自動化、運用の容易な更新などを実現し、お客様のビジネス要件の変化に柔軟に対応することができます。
- 用語解説
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プロビジョニング:直訳で「供給/準備/設備」を意味する。ITの世界では、あらかじめ回線設備や通信帯域を準備しておくことを指す。なお最近では、回線の提供やアカウント発行・管理・運用保守など非常に幅広いシーンで使われる言葉となっている。
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「新たなネットワーク」ですが、どのような未来を描いていますか。
Alex
AMF Plusの導入は、お客様がネットワーク運用管理の体制も方法も、大きく変えることができる第一歩となります。将来的には、さらにネットワークの自動化機能を増やしていき、その機能のアルゴリズムをもっとAI/ML4と連動させていきたいと考えています 。
また、AMF Plusは将来を見据え、クラウドベースの管理とネットワークセキュリティも視野に入れて開発された機能であり、それに適切なプラットフォームです。今後、クラウドシフトによってネットワークを効果的に移行・管理したいとき、規模や複雑さに関係なく、AMF Plusは必要な柔軟性と拡張性でその真価を発揮していくと考えています。
- 用語解説
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ML(機械学習):Machine Learningの略。AIが特定の大量データ(=経験)を反復的に学習して、特徴やパターンを発見し、それにあてはめて予測や判断、解析などができる仕組み。教師あり学習、教師なし学習、強化学習の3つの手法がある。
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Adrian
AMF Plus、ここまで機能の特徴としてお話してきたとおり、お客様のネットワーク管理のあり方に大きな変化をもたらすと考えています。開発チームは今後も、ネットワークを運用していくうえでのコストを下げられるよう尽力していこうと考えています。またお客様にとってAMF Plusの機能が常に適切であるように、お客様の進化するニーズや将来のビジネス上の課題に効果的に対応できるよう、常に調査を続けていきます。
AMF Plusは、さまざまな産業/業種の効率性と生産性を向上するような革命をもたらし、未来を形作っていく上で、重要な役割を担っていきます。近い将来、AMF Plusは、自律システムやパーソナライズドサービス、予測分析など、新たな応用分野への拡大や機能の成長が期待できます。さまざまな分野で人工知能や機械学習と融合することで、さまざまな問題に対して新しい革新的な解決策をもたらすと確信しています。
直近でいえば、Alexが話していた通り、今後のクラウドシフトやクラウドベースの管理に理想的なプラットフォームとしても機能していくので、その機能の有用性をお客様には身をもって実感してもらいたいと考えています。
記事を読まれている方へのメッセージをお願いします。
Alex
AMF Plusが、お客様のコスト削減、ビジネスの成長に貢献することを確信しています。お客様との関係をより良いものにするために、開発チームはこの開発に大変な努力を重ねてきました。私たちは、お客様からのフィードバックを重要視していますので、今後も有用なソリューションの提供が出来るよう引き続き情熱を注いで開発を進めていきます。“NETWORK SMARTER”の考えの基、これからも期待いただけると嬉しいです。
Adrian
引き続き、アライドテレシスというブランドに期待いただきたいです。私たちは、お客様からのフィードバックや要件に実直に向き合ってきたことで、最先端のネットワークソリューションを牽引する企業のひとつになりました。
現時点での私たちの最終目標は、企業が業務改善やコスト削減により収益の拡大にハードルなく進めるよう支援することです。そのためにも、これからもお客様からのフィードバックに応えられるよう、その姿勢を維持し、ニーズを理解し、お客様のITにまつわる課題を解決するソリューションの開発を進めていく事をお約束します。
お客様のビジネスの成功と、今後の明るい未来を願って、アライドテレシスではインテリジェントで革新的なネットワークソリューションを提供することに全力を注いでいます。お客様と共に素晴らしい未来を築き上げることを楽しみにしています。
関連リンク
登場者
Allied Telesis New Zealand
Managing Director
Alex Murray
Allied Telesis New Zealand
Customer Support Group Manager
Adrian Ting
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