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CentreCOM AR550S 設定例集 2.9 #54
Ethernet上でのファイアウォール・スタティックNAT
Ethernet上でファイアウォールのスタティックNAT機能を使用する場合の注意点について説明します。この例では、既設のxDSLモデムルーター(ルーター機能付きモデム)の背後にファイアウォール兼NATボックスとして本製品を導入する環境を想定しています。インターネットサービスプロバイダー(ISP)からは、複数のグローバルIPアドレスをブロック単位で固定的に割り当てられているものとします。ダイナミックENATで本製品のLAN側クライアントがインターネットにアクセスできるようにし、ファイアウォールで外部からの不正アクセスを防止します。また、LAN側に置かれたサーバー(プライベートアドレスで運用)を、スタティックNATで外部に公開します。
ここでは、次のような方針で設定を行います。
- ISPからはアドレスブロック4.4.4.0/29(4.4.4.0〜4.4.4.7)を固定的に割り当てられています。アドレスは8個ですが、4.4.4.0(ネットワークアドレス)と4.4.4.7(ブロードキャストアドレス)は使用できないため、端末に設定できるアドレスは4.4.4.1〜4.4.4.6の6個となります。このうち、4.4.4.6はすでにxDSLモデムルーターのLAN側(内側)インターフェースに割り当てられています。
- ISPとはxDSLモデムルーターによって接続されています。モデムルーターではアドレス変換やパケットフィルタリングを行わず、モデムルーターのLAN側セグメントに接続した本製品でファイアウォールを動作させ、ここでアクセス制御を行うものとします。
- 本製品のWAN側(eth0)インターフェースには4.4.4.1を割り当てます。これで残るアドレスは4.4.4.2〜4.4.4.5の4個となります。これらのアドレスはサーバー用に使いますが、直接サーバーに割り当てることはせずに、ファイアウォールルールNAT(スタンダード)を介して使用します。
- 本製品のLAN側(vlan1)インターフェースにはプライベートアドレス192.168.10.1を割り当て、クライアントはすべてプライベートアドレスで運用します。
- サーバーにもプライベートアドレスを設定し、本製品のLAN側セグメントに配置します。サーバーはモデムルーター・本製品のあるセグメントに置くこともできますが、ファイアウォールで保護したいため、本製品の内側に配置しています。また、外部からアクセスさせるため、スタティックNATを使って外からはグローバルアドレスを持っているように見せかけます。変換ルールは次のとおりとします。
- Webサーバー:192.168.10.2 → 4.4.4.2
- SMTPサーバー:192.168.10.3 → 4.4.4.3
- DNSサーバー:192.168.10.4 → 4.4.4.4
- 本製品のファイアウォールを利用して、外部からの不正アクセスを遮断しつつ、内部からは自由にインターネットへのアクセスができるようにします。
- ファイアウォールのダイナミックENAT機能を使用して、LAN側ネットワークのプライベートIPアドレスを、ISPから与えられたグローバルIPアドレスのうちの1つに変換します。これにより、LANに接続された複数のコンピューターからインターネットへの同時アクセスが可能になります。
以下、ルーターの基本設定についてまとめます。
表 1:ルーターの基本設定
WAN側(eth0)IPアドレス |
4.4.4.1/29 |
LAN側(vlan1)IPアドレス |
192.168.10.1/24 |
デフォルトゲートウェイ |
4.4.4.6(モデムルーター) |
- IPモジュールを有効にします。
- WAN側(eth0)インターフェースにISPから割り当てられたグローバルアドレスのうちの1つを設定します。
ADD IP INT=eth0 IP=4.4.4.1 MASK=255.255.255.248 ↓
- LAN側(vlan1)インターフェースにプライベートIPアドレスを設定します。
ADD IP INT=vlan1 IP=192.168.10.1 MASK=255.255.255.0 ↓
- デフォルトルートを設定します。ISPとの接続に使用しているxDSLモデムルーターがゲートウェイになります。
ADD IP ROUTE=0.0.0.0 INT=eth0 NEXT=4.4.4.6 ↓
- ファイアウォール機能を有効にします。
- ファイアウォールの動作を規定するファイアウォールポリシー「net」を作成します。
CREATE FIREWALL POLICY=net ↓
- ICMPパケットはPing(Echo/Echo Reply)と到達不可能(Unreachable)のみ双方向で許可します。
ENABLE FIREWALL POLICY=net ICMP_F=PING,UNREACH ↓
Note
- デフォルト設定では、ICMPはファイアウォールを通過できません。
- ルーターのidentプロキシー機能を無効にし、外部のメール(SMTP)サーバーなどからのident要求に対して、ただちにTCP RSTを返すよう設定します。
DISABLE FIREWALL POLICY=net IDENTPROXY ↓
- ファイアウォールポリシーの適用対象となるインターフェースを指定します。
- LAN側(vlan1)インターフェースをPRIVATE(内部)に設定します。
ADD FIREWALL POLICY=net INT=vlan1 TYPE=PRIVATE ↓
- WAN側(eth0)インターフェースをPUBLIC(外部)に設定します。
ADD FIREWALL POLICY=net INT=eth0 TYPE=PUBLIC ↓
- LAN側ネットワークに接続されているすべてのコンピューターがENAT機能を使用できるよう設定します。グローバルアドレスには、WAN側(eth0)インターフェースのIPアドレスを使用します。
ADD FIREWALL POLICY=net NAT=ENHANCED INT=vlan1 GBLINT=eth0 ↓
- 外部からのパケットをすべて拒否するファイアウォールの基本ルールに対し、サーバーへのパケットを通すための設定を行います。
ファイアウォールルールNATを使用し、NAT後のグローバルアドレス(GBLIP、GBLPORT)とNAT前のプライベートアドレス(IP、PORT)の両方を指定します。
Note
- GBLIPで指定したIPへのARPリクエストに応答します。
- Webサーバー(4.4.4.2のTCP80番)へのパケットは通過させます。
ADD FIREWALL POLICY=net RULE=1 AC=NAT NATTYPE=STANDARD INT=eth0 PROTO=TCP GBLIP=4.4.4.2 GBLPORT=80 IP=192.168.10.2 PORT=80 ↓
- SMTPサーバー(4.4.4.3のTCP25番)へのパケットは通過させます。
ADD FIREWALL POLICY=net RULE=2 AC=NAT NATTYPE=STANDARD INT=eth0 PROTO=TCP GBLIP=4.4.4.3 GBLPORT=25 IP=192.168.10.3 PORT=25 ↓
- DNSサーバー(4.4.4.4のTCP、UDP53番)へのパケットは通過させます。
ADD FIREWALL POLICY=net RULE=3 AC=NAT NATTYPE=STANDARD INT=eth0 PROTO=TCP GBLIP=4.4.4.4 GBLPORT=53 IP=192.168.10.4 PORT=53 ↓
ADD FIREWALL POLICY=net RULE=4 AC=NAT NATTYPE=STANDARD INT=eth0 PROTO=UDP GBLIP=4.4.4.4 GBLPORT=53 IP=192.168.10.4 PORT=53 ↓
- LAN側サーバー(192.168.10.2〜192.168.10.4)からのパケットにNATが適用されるように、LAN側インターフェース(vlan1)にファイアウォールルールNATを設定します。
- Webサーバー(192.168.10.2)からのパケットにファイアウォールルールを適用します。
ADD FIREWALL POLICY=net RULE=5 AC=NAT NATTYPE=STANDARD INT=vlan1 PROTO=TCP GBLIP=4.4.4.2 GBLPORT=80 IP=192.168.10.2 PORT=80 ↓
- SMTPサーバー(192.168.10.3)からのパケットにファイアウォールルールを適用します。
ADD FIREWALL POLICY=net RULE=6 AC=NAT NATTYPE=STANDARD INT=vlan1 PROTO=TCP GBLIP=4.4.4.3 GBLPORT=25 IP=192.168.10.3 PORT=25 ↓
- DNSサーバー(192.168.10.4)からのパケットにファイアウォールルールを適用します。
ADD FIREWALL POLICY=net RULE=7 AC=NAT NATTYPE=STANDARD INT=vlan1 PROTO=TCP GBLIP=4.4.4.4 GBLPORT=53 IP=192.168.10.4 PORT=53 ↓
ADD FIREWALL POLICY=net RULE=8 AC=NAT NATTYPE=STANDARD INT=vlan1 PROTO=UDP GBLIP=4.4.4.4 GBLPORT=53 IP=192.168.10.4 PORT=53 ↓
- 設定は以上です。設定内容をファイルに保存し、SET CONFIGコマンドで起動時設定ファイルに指定します。
CREATE CONFIG=router.cfg ↓
SET CONFIG=router.cfg ↓
■ ファイアウォールで遮断されたパケットのログをとるには、次のコマンドを実行します。
ENABLE FIREWALL POLICY=net LOG=DENY ↓
記録されたログを見るには、次のコマンドを実行します。ここでは、「TYPE=FIRE」により、ファイアウォールが出力したログメッセージだけを表示させています。
ルーターのコンフィグ
[テキスト版]
ENABLE IP ↓
ADD IP INT=eth0 IP=4.4.4.1 MASK=255.255.255.248 ↓
ADD IP INT=vlan1 IP=192.168.10.1 MASK=255.255.255.0 ↓
ADD IP ROUTE=0.0.0.0 INT=eth0 NEXT=4.4.4.6 ↓
ENABLE FIREWALL ↓
CREATE FIREWALL POLICY=net ↓
ENABLE FIREWALL POLICY=net ICMP_F=PING,UNREACH ↓
DISABLE FIREWALL POLICY=net IDENTPROXY ↓
ADD FIREWALL POLICY=net INT=vlan1 TYPE=PRIVATE ↓
ADD FIREWALL POLICY=net INT=eth0 TYPE=PUBLIC ↓
ADD FIREWALL POLICY=net NAT=ENHANCED INT=vlan1 GBLINT=eth0 ↓
ADD FIREWALL POLICY=net RULE=1 AC=NAT NATTYPE=STANDARD INT=eth0 PROTO=TCP GBLIP=4.4.4.2 GBLPORT=80 IP=192.168.10.2 PORT=80 ↓
ADD FIREWALL POLICY=net RULE=2 AC=NAT NATTYPE=STANDARD INT=eth0 PROTO=TCP GBLIP=4.4.4.3 GBLPORT=25 IP=192.168.10.3 PORT=25 ↓
ADD FIREWALL POLICY=net RULE=3 AC=NAT NATTYPE=STANDARD INT=eth0 PROTO=TCP GBLIP=4.4.4.4 GBLPORT=53 IP=192.168.10.4 PORT=53 ↓
ADD FIREWALL POLICY=net RULE=4 AC=NAT NATTYPE=STANDARD INT=eth0 PROTO=UDP GBLIP=4.4.4.4 GBLPORT=53 IP=192.168.10.4 PORT=53 ↓
ADD FIREWALL POLICY=net RULE=5 AC=NAT NATTYPE=STANDARD INT=vlan1 PROTO=TCP GBLIP=4.4.4.2 GBLPORT=80 IP=192.168.10.2 PORT=80 ↓
ADD FIREWALL POLICY=net RULE=6 AC=NAT NATTYPE=STANDARD INT=vlan1 PROTO=TCP GBLIP=4.4.4.3 GBLPORT=25 IP=192.168.10.3 PORT=25 ↓
ADD FIREWALL POLICY=net RULE=7 AC=NAT NATTYPE=STANDARD INT=vlan1 PROTO=TCP GBLIP=4.4.4.4 GBLPORT=53 IP=192.168.10.4 PORT=53 ↓
ADD FIREWALL POLICY=net RULE=8 AC=NAT NATTYPE=STANDARD INT=vlan1 PROTO=UDP GBLIP=4.4.4.4 GBLPORT=53 IP=192.168.10.4 PORT=53 ↓
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CentreCOM AR550S 設定例集 2.9 #54
(C) 2005-2014 アライドテレシスホールディングス株式会社
PN: J613-M0710-04 Rev.P
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