[index] CentreCOM AR550S コマンドリファレンス 2.9

GRE/概要・基本設定


  - 設定手順
  - 設定例
   - 基本設定
   - IP NATとの併用
   - ファイアウォールNATとの併用


GRE(Generic Routing Encapsulation)は、任意のネットワーク層プロトコルパケットを、別のネットワーク層プロトコルパケットに包み込んで送信する汎用のトンネリングプロトコルです。

本製品では、IPパケットを別のIPパケットでカプセル化することにより、プライベートIPアドレスで運用しているLAN同士をインターネット経由で接続することが可能です。


GREは設定がシンプルでわかりやすいところが特徴ですが、他のトンネリングプロトコル(L2TPやIPsecのトンネルモード)と比べて、以下の欠点があります。


使用するネットワークの構成や要件に応じて、どのトンネリングプロトコルを使用するかを選択してください。一般的に、IPXやAppleTalkのトンネリングが必要ならL2TPを、IPだけのトンネリングでセキュリティー機能が必要ならIPsec(ESP)を、IPXやAppleTalkのトンネリングでセキュリティーが必要ならL2TPとIPsec(ESP)の併用を考えるとよいでしょう。

 

設定手順

GREの設定はIPフィルターとよく似ています。各ルーターで以下の設定を行います。

  1. 最初にGREトンネルを作成します。GREトンネルは、カプセル化したパケットの送信先(トンネルの終点)を定義するものです。対向ルーターのIPアドレスを指定してください。また、オプションでトンネル鍵を指定することもできます。トンネル鍵は32ビットの数値で最高8桁の16進数で指定します。有効範囲は1〜FFFFFFFFです。トンネル鍵を指定する場合は、対向ルーターにも同じ鍵を指定してください。

  2. GREフィルターを作成し、トンネリングするパケットの条件を指定します。始点・終点IPアドレスの組み合わせで指定する方法と、受信インターフェースで指定する方法があります。たとえば、次のような指定が可能です。


  3. 同じくGREフィルターで、カプセル化したパケットの送信先(トンネルの終点)を指定します。具体的には、対向ルーターのIPアドレスを指定します。こちらのルーターから到達できるアドレスでなくてはなりません。また、あらかじめ作成したGREトンネルで指定したアドレスでなくてはなりません。

  4. 手順1、2の設定内容(GREフィルター)を、トンネル対象パケットの受信インターフェースに適用します。設定内容をIPインターフェースに適用しないとGREの設定は有効になりませんのでご注意ください。

  5. GREモジュールを有効化します。

以下、実際にコマンド例を示しながら解説します。

■ GREモジュールはデフォルトでは無効になっています。有効にするにはENABLE GREコマンドを使います。


■ GREトンネルを作成するには、ADD GRE TUNNELコマンドを使います。REMOTEパラメーターに対向ルーターのアドレスを指定してください。また、KEYパラメーターでトンネル鍵を指定することもできます。トンネル鍵は32ビットの数値で最高8桁の16進数で指定します。有効範囲は1〜FFFFFFFFです。トンネル鍵を指定する場合は、対向ルーターにも同じ鍵を指定してください。


■ トンネリングするアドレスの範囲を指定するには、ADD GREコマンドを使います。GREフィルターには1〜100の任意の番号を付けます。たとえば、192.168.10.0/24→192.168.20.0/24のパケットをカプセル化して、対向ルーター2.2.2.2に送る場合は、次のようにします。対向ルーターのアドレスは、GREトンネルのREMOTEパラメーターで指定したアドレスでなくてはなりません。


■ 次のように複数の条件を同時に指定することもできます。これにより、複数拠点をインターネット経由で結ぶことも可能です。たとえば、192.168.10.0/24→192.168.20.0/24のパケットを2.2.2.2へ、192.168.10.0/24→192.168.30.0/24のパケットは3.3.3.3へ送る場合は、次のようにします(あらかじめ、2.2.2.2と3.3.3.3へのGREトンネルを作成しておいてください)。


■ また、特定のIPインターフェースで受信したパケットすべてをカプセル化したい場合は、SOURCE/SMASK、DESTINATION/DMASKの代わりにINTERFACEパラメーターを使用します。このときアドレスは指定できません。たとえば、vlan1で受信したすべてのパケットをカプセル化して、対向ルーター2.2.2.2に送る場合は、次のようにします。


■ GREフィルターの設定を変更するには、SET GREコマンドを使います。このコマンドはENTRYパラメーターが必須です(SHOW GREコマンドで確認できます)。


■ GREフィルターをIPインターフェースに適用するには、SET IP INTERFACEコマンドのGREパラメーターを使います。GREの設定はインターフェースに適用して初めて効果を持ちます。通常、GREフィルターはトンネリング対象パケットを受信するインターフェースに適用します。


■ GREフィルターの設定を確認するには、SHOW GREコマンドを使います。


■ GREモジュールの状態を確認するには、SHOW GREコマンドのGENERALオプションを使います。


■ IPインターフェースに適用されているGREフィルターは、SHOW IP INTERFACEコマンドで確認できます。GREフィルターが適用されていれば、「GRE」欄にフィルター番号が表示されます。


■ GREフィルターからエントリーを削除するには、DELETE GREコマンドを使います。


■ IPインターフェースからGREフィルターの適用を解除するには、SET IP INTERFACEコマンドのGREパラメーターにNONEを指定します。


■ GREモジュールを無効にするには、DISABLE GREコマンドを使います。


 

設定例

GREトンネリングを用いて、2つのプライベートネットワークを接続する設定例をいくつか示します。

ここでは、次のような構成を想定します。ルーターA、Bとも、WAN側(ppp0)インターフェースにグローバルアドレスが固定的に割り当てられているものとします。

なお以下の例では、IPの設定までは完了しているものと仮定しています。


 

基本設定

プライベートLAN間の通信だけを行う設定です。NATの設定がされていないため、プライベートLANからインターネットにはアクセスできません。

ルーターA
  1. GREモジュールを有効にします。


  2. ルーターB(2.2.2.2)を対向とするGREトンネルを作成します。トンネル鍵はbebeebeeとします。ルーターBにも同じ鍵を指定してください。


  3. ローカルLAN(192.168.10.0/24)からリモートLAN(192.168.20.0/24)へのパケットをカプセル化してルーターB(2.2.2.2)に送るGREフィルター「1」を作成します。


  4. GREフィルター「1」をvlan1に適用します。


ルーターB
  1. GREモジュールを有効にします。


  2. ルーターA(1.1.1.1)を対向とするGREトンネルを作成します。トンネル鍵はルーターAに設定したのと同じbebeebeeとします。


  3. ローカルLAN(192.168.20.0/24)からリモートLAN(192.168.10.0/24)へのパケットをカプセル化してルーターA(1.1.1.1)に送るGREフィルター「1」を作成します。


  4. GREフィルター「1」をvlan1に適用します。


 

IP NATとの併用

上記の基本設定にIP NAT(レンジNAT)の設定を追加して、プライベートLAN間だけでなく、それぞれのプライベートLANからインターネットにもアクセスできるようにします。

ルーターA
  1. GREモジュールを有効にします。


  2. ルーターB(2.2.2.2)を対向とするGREトンネルを作成します。トンネル鍵はbebeebeeとします。ルーターBにも同じ鍵を指定してください。


  3. ローカルLAN(192.168.10.0/24)からリモートLAN(192.168.20.0/24)へのパケットをカプセル化してルーターB(2.2.2.2)に送るGREフィルター「1」を作成します。


  4. GREフィルター「1」をvlan1に適用します。


  5. IP NATモジュールを有効にします。


  6. ローカルLAN側ホストのプライベートIPアドレスを、ppp0のグローバルアドレスに変換するダイナミックENATの設定を行います。


ルーターB
  1. GREモジュールを有効にします。


  2. ルーターA(1.1.1.1)を対向とするGREトンネルを作成します。トンネル鍵はルーターAに設定したのと同じbebeebeeとします。


  3. ローカルLAN(192.168.20.0/24)からリモートLAN(192.168.10.0/24)へのパケットをカプセル化してルーターA(1.1.1.1)に送るGREフィルター「1」を作成します。


  4. GREフィルター「1」をvlan1に適用します。


  5. IP NATモジュールを有効にします。


  6. ローカルLAN側ホストのプライベートIPアドレスを、ppp0のグローバルアドレスに変換するダイナミックENATの設定を行います。


Note - この設定では、NAT用グローバルアドレスとしてppp0のインターフェースアドレスを使っているため、ルーターA、Bは外部からのPingに応えません。接続性をテストするときなどにはご注意ください。詳細は「IP」/「レンジNAT」をご覧ください。

 

ファイアウォールNATとの併用

上記の基本設定にファイアウォールNATの設定を追加して、プライベートLAN間だけでなく、それぞれのプライベートLANからインターネットにもアクセスできるようにします。

GREとファイアウォールを併用するときは、次のポイントに注意してください。


ルーターA
  1. GREモジュールを有効にします。


  2. ルーターB(2.2.2.2)を対向とするGREトンネルを作成します。トンネル鍵はbebeebeeとします。ルーターBにも同じ鍵を指定してください。


  3. ローカルLAN(192.168.10.0/24)からリモートLAN(192.168.20.0/24)へのパケットをカプセル化してルーターB(2.2.2.2)に送るGREフィルター「1」を作成します。


  4. GREフィルター「1」をvlan1に適用します。


  5. ファイアウォールとダイナミックENATの基本設定をします。


  6. 外側インターフェースで受信したGREパケットをNATの対象からはずします。


  7. 内側インターフェースで受信したパケットのうち、トンネリング対象のパケットをNATの対象からはずします。


ルーターB
  1. GREモジュールを有効にします。


  2. ルーターA(1.1.1.1)を対向とするGREトンネルを作成します。トンネル鍵はルーターAに設定したのと同じbebeebeeとします。


  3. ローカルLAN(192.168.20.0/24)からリモートLAN(192.168.10.0/24)へのパケットをカプセル化してルーターA(1.1.1.1)に送るGREフィルター「1」を作成します。


  4. GREフィルター「1」をvlan1に適用します。


  5. ファイアウォールとENATの基本設定をします。


  6. 外側インターフェースで受信したGREパケットをNATの対象からはずします。


  7. 内側インターフェースで受信したパケットのうち、トンネリング対象のパケットをNATの対象からはずします。








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