[index] CentreCOM GS900M V2シリーズ コマンドリファレンス 2.3.2

スパニングツリープロトコル/Multiple STP


   - MSTインスタンス
   - MSTリージョン
   - CIST
  - 基本設定
   - マルチプルスパニングツリープロトコルの基本設定
  - パラメーターの設定変更
   - マルチプルスパニングツリープロトコルの設定


マルチプルスパニングツリープロトコル(MSTP)は、複数のVLANをまとめたMSTインスタンスごとにスパニングツリーを作成して管理します。VLANごとに1つのツリーを作成するのに比べて、VLAN数の増加によるCPUやネットワークの負荷の増加を抑えることができます。

またネットワーク構成を、MSTリージョンと呼ばれる、複数の装置のまとまりとして分割して設計することができます。

Note - 本製品のマルチプルスパニングツリープロトコルは、IEEE802.1s Standardに準拠しております。IEEE802.1s ドラフトバージョンに準拠した装置とは接続できません。

Note - ポート認証のダイナミックVLANにおいて、ユーザー(MACアドレス)単位でダイナミックVLANを設定するマルチプルダイナミックVLANと併用しないでください。通信ができなくなる場合があります。

ここでは、コマンドラインインターフェースによる設定方法を中心に説明します。なお、Web GUIでは「スイッチ設定」-「MSTP」で設定できます。(詳細は「Web GUI」/「スイッチ設定」をご覧ください。)

 

MSTインスタンス


マルチプルスパニングツリープロトコルでは、複数のVLANをまとめたものをMSTインスタンスと呼び、MSTインスタンスごとにスパニングツリーが作成されます。


本製品のMSTインスタンスの仕様は、次のとおりです。

Note - MSTインスタンスに割り当てられていないVLANのポートから送出されるBPDUには、MSTインスタンスの情報が追加されていません。

 

MSTリージョン


マルチプルスパニングツリープロトコルでは、ネットワーク内の複数の装置を一つにまとめてMSTリージョンとして扱うことができます。これにより、MSTリージョン内のトポロジーチェンジはネットワーク全体に影響を与えることがなくなります。

本製品のMSTリージョンの仕様は、次のとおりです。

MSTインスタンスは、1つのMSTリージョン内で、独立したスパニングツリーとして機能します。

MSTインスタンスのルートブリッジはリージョナルルート(regional root)と呼ばれ、MSTインスタンスのプライオリティーとMACアドレスによって決定されます。

マルチプルスパニングツリーが有効になっている装置では、その装置のMSTリージョンの設定とは異なる設定を含むMSTP BPDUを受信すると、そのポートがMSTリージョンの境界に位置するものと認識します。また、スパニングツリープロトコル(STP)やラピッドスパニングツリープロトコル(RSTP)が有効になっている装置も、別のMSTリージョンとして認識されます。

 

CIST


マルチプルスパニングツリープロトコルでは、デフォルトで、ID=0のMSTインスタンスが作成されています。これはCISTと呼ばれ、MSTリージョン間をつなぎ、MSTリージョンを1つの装置としたネットワーク全体のスパニングツリーを作成するのに使用されます。

作成したVLANは、デフォルトでは、すべてCISTに対応付けられています。デフォルトVLANもCISTに対応付けられています。

CISTのルートブリッジはCISTリージョナルルート(regional root)と呼ばれ、CISTのプライオリティーによって決定されます。

Note - マルチプルスパニングツリープロトコル(MSTP)は、スパニングツリープロトコル(STP)およびラピッドスパニングツリープロトコル(RSTP)と互換性があります。マルチプルスパニングツリーが有効な装置のポートで、STP BPDUを受信した場合は、STP BPDUを送信します。RSTP BPDUを受信した場合は、ラピッドスパニングツリープロトコルでは、MSTP BPDUを処理することができるため、MSTP BPDUを送信します。


 

基本設定

本製品は、スパニングツリープロトコル(STP。STP Compatible Modeで動作)、ラピッドスパニングツリープロトコル(Rapid STP。IEEE802.1w準拠)およびマルチプルスパニングツリープロトコル(Multiple STP。IEEE802.1s準拠)をサポートしています。どちらのプロトコルを使用するかを決定してから、それぞれのプロトコルに関する基本設定を行います。(デフォルトは、ラピッドスパニングツリープロトコルが起動。)

 

マルチプルスパニングツリープロトコルの基本設定


本製品で、マルチプルスパニングツリープロトコルを使用するための基本設定について説明します。ここでは、VLANはすでに作成済みであるものと仮定します。
  1. マルチプルスパニングツリープロトコルを有効にします。


  2. MSTインスタンスを作成します。


  3. MSTインスタンスにVLANを割り当てます。


  4. MSTの設定を行います。同一のMSTリージョンに所属させたい装置では、リージョン名とリビジョンの設定を同じにします。


■ マルチプルスパニングツリープロトコルを無効にするには、DISABLE MSTPコマンドを使います。


■ MSTインスタンスを削除するには、DESTROY MSTP MSTIコマンドを使います。


■ MSTIとVLANの対応関係の設定を消去するには、DELETE MSTP MSTI VLANコマンドを使います。


■ マルチプルスパニングツリープロトコルに関する設定を確認するには、SHOW MSTPコマンドを使います。


■ マルチプルスパニングツリーのポート情報を確認するには、SHOW MSTPコマンドを使います。ポートの設定を表示するには、PORTCONFIGを指定します。ポートの状態を表示するには、PORTSTATEを指定します。


■ MSTインスタンスに関する設定を確認するには、SHOW MSTPコマンドで、MSTISTATEを指定します。


■ MSTインスタンスとVLANの対応付けの設定を確認するには、SHOW MSTPコマンドで、MSTIVLANASSOCを指定します。


■ CISTに関する設定を確認するには、SHOW MSTPコマンドで、CISTを指定します。


 

パラメーターの設定変更

マルチプルスパニングツリープロトコルの詳細な設定について解説します。

 

マルチプルスパニングツリープロトコルの設定

■ マルチプルスパニングツリーパラメーター(各種タイマーとリージョンの設定)を変更するには、SET MSTPコマンドを使います。変更できるパラメーターは次のとおりです。

表 1
パラメーター
説明
CONFIGNAME MSTリージョン名。同一リージョンに所属させたい装置には、同じ名前を指定する。デフォルトは製品のMACアドレス(xx-xx-xx-xx-xx-xxの型式)。
REVISIONLEVEL MSTリージョン設定のリビジョン。同一リージョンに所属させたい装置には、同じ数値を指定する。デフォルトは0。
MAXHOPS 最大ホップ数。BPDUがMSTPブリッジを抜けるごとにカウントダウンされるされる、BPDUの寿命カウンター。デフォルトは20。
MAXAGE 最大エージタイム。ルートブリッジからBPDUが届かなくなったことを認識するまでの時間(秒)。この時間内にBPDUを受信できなかった場合、各ブリッジはスパニングツリーの再構成を開始する。2×(HELLOTIME + 1)以上、かつ、2× (FORWARDDELAY - 1) 以下でなくてはならない。デフォルトは20秒。
HELLOTIME ハロータイム。ルートブリッジがBPDU(Bridge Protocol Data Unit)を送信する間隔(秒)。デフォルトは2秒。
FORWARDDELAY フォワードディレイタイム。ネットワーク構成の変更後に、ルートブリッジ内のポートがディスカーディングからラーニング、ラーニングからフォワーディング状態に遷移するまでの最大時間(秒)を示す。デフォルトは15秒。
PROTOCOLVERSION MSTPの動作モード。MSTP(MSTP BPDUを使う)、STPCOMPATIBLE(MSTPの設定を使用するが、STP BPDUを使う)から選択する。デフォルトはMSTP。


■ MSTインスタンスのプライオリティーを変更するには、SET MSTP MSTIコマンドを使います。変更できるパラメーターは次のとおりです。

表 2
パラメーター
説明
MSTIID 設定するMSTインスタンスのID。
PRIORITY 該当MSTインスタンスにおけるブリッジプライオリティー。小さいほど優先度が高く、MSTインスタンス内のルートブリッジ(リージョナルルート)になる可能性が高くなる。設定できる値の範囲は0〜65535だが、実際に使用される値は4096の倍数に丸められる(指定値が4096の倍数でない場合、指定値よりも小さい直近の倍数が使われる)。デフォルトは32768。


■ CISTのプライオリティーを変更するには、SET MSTP CISTコマンドを使います。変更できるパラメーターは次のとおりです。

表 3
パラメーター
説明
PRIORITY CISTにおけるブリッジプライオリティー。小さいほど優先度が高く、ネットワーク全体のルートブリッジ(CISTルート)になる可能性が高くなる。設定できる値の範囲は0〜65535だが、実際に使用される値は4096の倍数に丸められる(指定値が4096の倍数でない場合、指定値よりも小さい直近の倍数が使われる)。デフォルトは32768。



■ CIST(Common and Internal Spanning Tree)における指定ポートのマルチプルスパニングツリー関連パラメーターを変更するには、SET MSTP CIST PORTコマンドを使います。変更できるパラメーターは次のとおりです。

表 4
パラメーター
説明
PORT ポート番号。複数指定が可能。ALLを指定した場合はすべてのポートが対象となる。
PRIORITY CIST内のトポロジー形成で使用されるポートプライオリティー。小さいほど優先度が高く、ルートポートになる可能性が高くなる。設定できる値の範囲は0〜255だが、実際に使用される値は16の倍数に丸められる(指定値が16の倍数でない場合、指定値よりも小さい直近の倍数が使われる)。デフォルトは128。
INTPATHCOST CISTリージョナルルート(MSTリージョン内におけるCISTツリーのルートブリッジ)までのパスに対するポート通過コスト。有効範囲は1〜200000000。デフォルトでは、ポートの通信速度に応じた既定値が使われる(別表を参照)。なお、一度値を設定した後でデフォルト状態に戻すときはキーワードDEFAULTを指定する
EXTPATHCOST CISTルートブリッジが所属するリージョンまでのパスに対するポート通過コスト。有効範囲は1〜200000000。デフォルトでは、ポートの通信速度に応じた既定値が使われる(別表を参照)。なお、一度値を設定した後でデフォルト状態に戻すときはキーワードDEFAULTを指定する
EDGEPORT 該当ポートがエッジポートかどうかを指定する。エッジポートとは、他のブリッジが存在しない末端(エッジ)のLANに接続されているポートのこと。ただし、EDGEPORT=YESを指定した場合でも、同ポートでMSTP BPDUを受信した場合はエッジポートとしては扱われなくなる。デフォルトはNO。
POINTTOPOINT 該当ポートが他のブリッジとポイントツーポイントで接続されているかどうかを指定する。AUTOを指定した場合は、本製品が自動判別する。デフォルトはAUTO。
MIGRATIONCHECK 該当ポートでSTP BPDUを受信しSTANDARDモードに変更された場合、MSTPモードに戻すために使用する。YES指定によってMSTPモードへ戻すことが可能。MIGRATIONCHECKの設定は、設定ファイルに保存されない。


表 5:パスコストの推奨範囲
通信速度 推奨範囲
10Mbps 200000〜2000000
100Mbps 20000〜200000
1000Mbps 2000〜20000
TrunkPort(10/100/1000Mbps) -(なし)


■ スパニングツリープロトコルの設定をすべて消去するには、PURGE MSTPコマンドを使います。パラメーターはすべてデフォルトに戻ります。


Note - ランタイムメモリー上にあるマルチプルスパニングツリープロトコル関連の設定がすべて削除されるため、運用中のシステムで本コマンドを実行するときは十分に注意してください。





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