[index] CentreCOM 9424T/SP-E、9424Ts/XP-E コマンドリファレンス 2.4

スパニングツリープロトコル/Multiple STP


   - MSTインスタンス
   - MSTリージョン
   - CIST
  - 基本設定
   - マルチプルスパニングツリープロトコルの基本設定
  - パラメーターの設定変更
   - マルチプルスパニングツリープロトコルの設定


マルチプルスパニングツリープロトコル(MSTP)は、複数のVLANをまとめたMSTインスタンスごとにスパニングツリーを作成して管理します。VLANごとに1つのツリーを作成するのに比べて、VLAN数の増加によるCPUやネットワークの負荷の増加を抑えることができます。
またネットワーク構成を、MSTリージョンと呼ばれる、複数の装置のまとまりとして分割して設計することができます。

Note - 本製品のマルチプルスパニングツリープロトコルは、IEEE802.1s Standardに準拠しております。IEEE802.1s ドラフトバージョンに準拠した装置とは接続できません。

Note - マルチプルスパニングツリープロトコルとRRP Snooping、ポートトランキングは併用できません。

 

MSTインスタンス


マルチプルスパニングツリープロトコルでは、複数のVLANをまとめたものをMSTインスタンスと呼び、MSTインスタンスごとにスパニングツリーが作成されます。


本製品のMSTインスタンスの仕様は、次のとおりです。

Note - MSTインスタンスに割り当てられていないVLANのポートから送出されるBPDUには、MSTインスタンスの情報が追加されていません。

 

MSTリージョン


マルチプルスパニングツリープロトコルでは、ネットワーク内の複数の装置を一つにまとめてMSTリージョンとして扱うことができます。これにより、MSTリージョン内のトポロジーチェンジはネットワーク全体に影響を与えることがなくなります。

本製品のMSTリージョンの仕様は、次のとおりです。

MSTインスタンスは、1つのMSTリージョン内で、独立したスパニングツリーとして機能します。

MSTインスタンスのルートブリッジはリージョナルルート(regional root)と呼ばれ、MSTインスタンスのプライオリティーとMACアドレスによって決定されます。

マルチプルスパニングツリーが有効になっている装置では、その装置のMSTリージョンの設定とは異なる設定を含むMSTP BPDUを受信すると、そのポートがMSTリージョンの境界に位置するものと認識します。また、スパニングツリープロトコル(STP)やラピッドスパニングツリープロトコル(RSTP)が有効になっている装置も、別のMSTリージョンとして認識されます。

 

CIST


マルチプルスパニングツリープロトコルでは、デフォルトで、ID=0のMSTインスタンスが作成されています。これはCISTと呼ばれ、MSTリージョン間をつなぎ、MSTリージョンを1つの装置としたネットワーク全体のスパニングツリーを作成するのに使用されます。

作成したVLANは、デフォルトでは、すべてCISTに対応づけられています。デフォルトVLANもCISTに対応づけられています。


Note - マルチプルスパニングツリープロトコル(MSTP)は、スパニングツリープロトコル(STP)およびラピッドスパニングツリープロトコル(RSTP)と互換性があります。マルチプルスパニングツリーが有効な装置のポートで、STP BPDUを受信した場合は、STP BPDUを送信します。RSTP BPDUを受信した場合は、ラピッドスパニングツリープロトコルでは、MSTP BPDUを処理することができるため、MSTP BPDUを送信します。


 

基本設定

本製品は、スパニングツリープロトコル(STP。STP Compatible Modeで動作)、ラピッドスパニングツリープロトコル(Rapid STP。IEEE802.1w準拠)およびマルチプルスパニングツリープロトコル(Multiple STP。IEEE802.1s準拠)をサポートしています。どちらのプロトコルを使用するかを決定してから、それぞれのプロトコルに関する基本設定を行います。(デフォルトは、ラピッドスパニングツリープロトコルが起動。)

 

マルチプルスパニングツリープロトコルの基本設定


本製品で、マルチプルスパニングツリープロトコルを使用するための基本設定について説明します。ここでは、VLANはすでに作成済みであるものと仮定します。
  1. マルチプルスパニングツリープロトコルを起動します。


    Note - ACTIVATE MSTPコマンドを実行しないと、マルチプルスパニングツリープロトコルに関するコマンドを実行できません。

  2. マルチプルスパニングツリープロトコルを有効にします。


  3. MSTインスタンスを作成します。


  4. MSTインスタンスにVLANを割り当てます。


  5. MSTの設定を行います。同一のMSTリージョンに所属させたい装置では、リージョン名とレビジョンの設定を同じにします。


■ マルチプルスパニングツリープロトコルを無効にするには、DISABLE MSTPコマンドを使います。


■ MSTインスタンスを削除するには、DESTROY MSTPコマンドを使います。


■ MSTIとVLANの対応関係の設定を消去するには、DELETE MSTPコマンドを使います。


■ マルチプルスパニングツリープロトコルに関する設定を確認するには、SHOW MSTPコマンドを使います。


■ マルチプルスパニングツリーのポート情報を確認するには、SHOW MSTPコマンドを使います。ポートの設定を表示するには、PORTCONFIGを指定します。ポートの状態を表示するには、PORTSTATEを指定します。


■ MSTインスタンスに関する設定を確認するには、SHOW MSTPコマンドで、MSTISTATEを指定します。


■ MSTインスタンスとVLANの対応付けの設定を確認するには、SHOW MSTPコマンドで、MSTIVLANASSOCを指定します。


■ CISTに関する設定を確認するには、SHOW MSTPコマンドで、CISTを指定します。


 

パラメーターの設定変更

マルチプルスパニングツリープロトコルの詳細な設定について解説します。

 

マルチプルスパニングツリープロトコルの設定

■ マルチプルスパニングツリーパラメーター(各種タイマーとリージョンの設定)を変更するには、SET MSTPコマンドを使います。変更できるパラメーターは次のとおりです。

表 1
パラメーター
説明
FORCEVERSION Multiple STPの動作モード。NORMALMSTP(MSTP BPDUを使う)、STPCONPATIBLE/FORCESTPCOMPATIBLE(MSTPの設定を使用するが、STP BPDUを使う)から選択する。デフォルトは、NORMALMSTP。
FORWARDDELAY STP compatibleモードで使用する。フォワードディレイタイム。ネットワーク構成の変更後に、ルートブリッジ内のポートがディスカーディングからラーニング、ラーニングからフォワーディング状態に遷移するまでの最大時間(秒)を示す。有効範囲は4〜30秒。デフォルトは15秒。
HELLOTIME ハロータイム。ルートブリッジがBPDU(Bridge Protocol Data Unit)を送信する間隔(秒)。有効範囲は1〜10秒。デフォルトは2秒。
MAXAGE ネットワーク内に、STPまたはRapid STPで動作するスイッチがある場合に使用する。最大エージタイム。ルートブリッジからBPDUが届かなくなったことを認識するまでの時間(秒)。この時間内にBPDUを受信できなかった場合、STPD内の各ブリッジはスパニングツリーの再構成を開始する。2×(HELLOTIME + 1) 以上、かつ、2× (FORWARDDELAY - 1) 以下でなくてはならない。有効範囲は6〜40秒。デフォルトは20秒。
MAXHOP BPDUがMSTPブリッジを抜けるごとにカウントダウンされる、BPDUの寿命カウンター。有効範囲は1〜40。デフォルトは20。
CONFIG MSTリージョンに与える名前。同一リージョンに所属させたい装置には、同じ名前を指定する。
REVISIONLEVEL MSTリージョン設定のレビジョン。有効範囲は、0〜255。同一リージョンに所属させたい装置には、同じ数値を指定する。
DEFAULT Multiple STPの設定をデフォルト状態に戻す。他のパラメーターと同時に指定することはできない。Multiple STPが無効の場合にのみ使用可能。


■ MSTインスタンスのプライオリティーを変更するには、SET MSTP MSTIコマンドを使います。変更できるパラメーターは次のとおりです。

表 2
パラメーター
説明
MSTIID 設定するMSTインスタンスのID。
PRIORITY MSTIプライオリティー。小さいほど優先度が高く、MSTI内のルートブリッジ(regional root)になる可能性が高くなる。設定できる値の範囲は、0〜15。実際に使用される値は、設定値×4096で、本製品でのブリッジプライオリティーの範囲は0〜61440。設定できる値とプライオリティー値の対応は下記の表参照。デフォルトは8(32768)。


■ CISTのプライオリティーを変更するには、SET MSTP CISTコマンドを使います。変更できるパラメーターは次のとおりです。

表 3
パラメーター
説明
PRIORITY CISTプライオリティー。小さいほど優先度が高く、ネットワーク全体のルートブリッジになる可能性が高くなる。設定できる値の範囲は、0〜15。実際に使用される値は、設定値×4096で、本製品でのブリッジプライオリティーの範囲は0〜61440。設定できる値とプライオリティー値の対応は下記の表参照。デフォルトは8(32768)。


表 4:PRIORITYの設定値とブリッジプライオリティーの対応
設定値
ブリッジプライオリティーの値
0 0
1 4096
2 8192
3 12288
4 16384
5 20480
6 24576
7 28672
8 32768
9 36864
10 40960
11 45056
12 49152
13 53248
14 57344
15 61440


■ マルチプルスパニングツリーパラメーターをデフォルト値に戻したいときは、SET MSTPコマンドのDEFAULTオプションを使います。


■ スイッチポートのマルチプルスパニングツリーパラメーターを変更するには、SET MSTP PORTコマンドを使います。変更できるパラメーターは次のとおりです。

表 5
パラメーター
説明
INTPORTCOST MSTリージョン内でのトポロジー形成で使用されるポートコスト。有効範囲は、1〜200000000。AUTO(Auto-Detect(該当ポートの通信速度に従い、自動的に値を設定)。通信速度ごとのデフォルト値と推奨範囲は別表を参照のこと。
EXTPORTCOST ポートがリージョン外との接続点になったときに使用するポートコスト。有効範囲は、1〜200000000。AUTO(Auto-Detect(該当ポートの通信速度に従い、自動的に値を設定)。通信速度ごとのデフォルト値と推奨範囲は別表を参照のこと。
PORTPRIORITY MSTリージョン内のトポロジー形成で使用されるポートプライオリティー。小さいほど優先度が高く、ルートポートになる可能性が高くなる。設定できる値の範囲は0〜15。実際に使用する値は、設定値×16で、本製品でのポートプライオリティーの範囲は0〜240。設定できる値とプライオリティー値の対応は下記の表参照。デフォルトは8(128)。
EDGEPORT 該当ポートがエッジポートかどうかを指定する。エッジポートとは、他のブリッジが存在しない末端(エッジ)のLANに接続されているポートのこと。ただし、EDGEPORT=YESを指定した場合でも、同ポートでRSTP BPDUを受信した場合はエッジポートとしては扱われなくなる。デフォルトはNO。
PTP/POINTTOPOINT 該当ポートが他のブリッジとポイントツーポイントで接続されているかどうかを指定する。AUTOUPDATEを指定した場合は、本製品が自動判別する。デフォルトはAUTOUPDATE。
MIGRATIONCHECK 該当ポートでSTP BPDUを受信した場合に、MSTPからSTPに変更するためのチェック。YESを指定するとチェックを行う。デフォルトはYES。
STPID 有効範囲は、0〜15。デフォルトは0またはALL。


表 6:パスコストのデフォルト値
通信速度
デフォルト値
10Mbps 2000000
100Mbps 200000
1000Mbps 20000


表 7:PRIORITYの設定値とポートプライオリティーの対応
設定値
ポートプライオリティーの値
0 0
1 16
2 32
3 48
4 64
5 80
6 96
7 112
8 128
9 144
10 160
11 176
12 192
13 208
14 224
15 240


■ スパニングツリープロトコルの設定をすべて消去するには、PURGE MSTPコマンドを使います。パラメーターはすべてデフォルトに戻ります。


Note - ランタイムメモリー上にあるマルチプルスパニングツリープロトコル関連の設定がすべて削除されるため、運用中のシステムで本コマンドを実行するときは十分に注意してください。







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PN: 613-000699 Rev.C