GIGAスクール対応のインフラ要件と構築ポイント|失敗しない機器選定と進め方を解説

GIGAスクール構想の進展により、教育現場では1人1台端末の活用が日常化しました。
しかし、利用頻度が高まるにつれ、「通信が遅い」「よく切れる」といったインフラの課題に直面している学校も少なくありません。NEXT GIGA(第2期)を見据えた環境整備では、どのような要件定義や機器選定が必要なのでしょうか。
本記事では、GIGAスクール対応のインフラに求められる要件や、失敗しないための構築ポイントを解説します。

目次

GIGAスクールの現状とインフラの課題

GIGAスクール構想は、端末を配備するフェーズから、実際に授業で使いこなすフェーズへと移行しています。
ここでは、現在の教育現場を取り巻く状況の変化と、それに伴って浮き彫りになってきたインフラの課題について解説します。

整備から日常的な活用への移行

GIGAスクール構想の初期段階では、「1人1台端末の急速な配備」が最優先で進められました。しかし、GIGAスクール構想第2期(NEXT GIGA) を迎える現在、フェーズは「日常的な活用とさらなる発展」 へと移行しています。
授業での端末利用が常態化し、頻繁にクラウドへアクセスするようになったことで、初期導入時のネットワーク設計では想定していなかった負荷がかかり始めているのが実情です。
単につなぐだけでなく、「どれだけ快適に学びを支えられるか」という質の向上が、現在のインフラには強く求められています。

動画やCBTによる通信負荷の増大

授業スタイルの変化もインフラへの負担を加速させています。
高画質な動画教材の視聴、デジタル教科書の全教科導入、さらには全国学力・学習状況調査のCBT(コンピュータ上での試験)化など、大容量のデータ通信が発生する場面が急増したためです。
従来のWeb閲覧程度の設計では、クラス全員が一斉に動画を再生した瞬間に通信が止まってしまいます。こうした通信量の爆発的な増加が、現在の学校ネットワークにおける最大の課題となっています。

「遅い・つながらない」問題

文部科学省の「校内通信ネットワーク環境整備等に関する調査結果(令和5年2月)」によると、全校生徒が一斉に端末を利用した際に「ネットワークに接続しにくくなる」不具合が発生した自治体等は約5割(50.7%)に達しています。
また、クラス単位での利用時でも約4.5割(45.5%)が「教材に接続できない」等のトラブルを経験しており、授業進行に支障が出ている実態が明らかになりました。
これらの主な原因は回線の帯域不足や機器の処理能力不足です。学習環境を維持し続けるためには、一度整備して終わりではなく、変化する利用実態に合わせてインフラを定期的に見直すことがより重要視されています。

安定したGIGAスクール対応インフラの構築ポイント

通信トラブルを解消し、止まらない授業を実現するためには、どのようなインフラが必要なのでしょうか。
ここでは、無線・有線・セキュリティの3つの観点から、安定稼働のための具体的な構築ポイントを解説します。

最新規格に対応した無線LAN環境へ刷新する

混雑した通信環境を改善するには、無線LAN環境の刷新が不可欠です。
第2期に向けた更新では、6GHz帯を利用でき干渉に強い「Wi-Fi 6E」や、超高速・低遅延を実現する次世代規格「Wi-Fi 7」への対応が重要なポイントとなります。
さらに、教室ごとにAP(アクセスポイント)を設置する際の電波干渉を防ぐため、周囲の状況に合わせてチャンネルや出力を自律的に最適化する機能(AWC等)を持つ機器を選定することで、常に安定した無線環境を維持できます。

大容量通信に耐えうる有線ネットワークを整備する

無線だけでなく、有線LANの増強も必須です。文部科学省の「学校のネットワーク改善ガイドブック(令和7年6月版)」では、「学校規模ごとの当面の推奨帯域」が示されています。
例えば、児童生徒数が525人の学校では511Mbps、1,050人の学校では711Mbpsの帯域確保が目安とされています。

しかし、これはあくまで「当面の」基準です。今後のデジタル教科書の普及や動画活用の増加を見据えると、校内LANの基幹部分(コアスイッチ等)については、より余裕を持った10Gbpsクラスでの広帯域設計が望ましいでしょう。その際、LANケーブルも「Cat6A」以上へ交換が必要な点に注意してください。
また、センターサーバーへのアクセス集中が遅延原因なら、特定の通信を直接インターネットへ逃がす「ローカルブレイクアウト(LBO)」を導入するなど、物理と論理の両面からボトルネックを解消する構成が求められます。

トラブルに強く安全なネットワークを構築する

セキュリティと通信の安定性を向上させるアップデートも必要です。
従来の境界型防御ではなく、「すべての通信を信頼しないことを前提とした考え方」であるゼロトラストセキュリティの導入が推奨されます。
具体的には、VLAN等でネットワークを論理的に分離し、認証システムと連携して柔軟なアクセス制御を行う設計が有効です。
あわせて、授業を止めないために基幹スイッチの電源二重化や通信経路の冗長化を行い、トラブルに強い可用性の高いインフラを構築することが重要です。

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GIGAスクール対応のインフラ整備・運用に関する注意点

インフラは導入して終わりではありません。限られた人員で長く安定して使い続けるためには、選定段階から運用面を考慮しておく必要があります。
ここでは、整備・運用時に注意すべき3つのポイントを解説します。

導入後の「管理の手間」を考える

機器選定をスペックや価格だけで行うのは危険です。専任管理者が不在の学校では、トラブル対応が教職員の負担になります。
注意すべきは導入後の「運用管理コスト」です。安価でも、不具合のたびに現地対応が必要では本末転倒でしょう。
遠隔から一括で設定変更ができるクラウド管理や、異常を即座に検知・可視化できる機能が不可欠です。管理者の負担を極小化する「運用のしやすさ」を、選定基準の優先事項に置く必要があります。

将来の台数増加を見越しておく

インフラの更新サイクルは通常5年程度であり、現時点の必要要件を満たすだけの設計では将来の変化に対応できません。
CBTやデジタル教科書の普及に加え、高校では「DXハイスクール」等による高負荷な通信(動画編集や3D CAD)の増加も予想されます。
ポート数に余裕を持たせることはもちろん、ライセンス追加で機能拡張可能な機器を選ぶなど、将来的な負荷増大や高度活用を見据えた拡張性のある構成にしておくことが重要です。

あわせて、インターネット回線についても拡張性を考慮すべきです。将来的に帯域が不足した際に、回線契約をスムーズにアップグレードできるか、あるいはIPoE方式などの高速な接続方式に対応しているか等を確認しておきましょう。

故障時にすぐ直せる体制を作る

機器故障によるネットワーク停止は、授業の進行を妨げる最大のリスクです。
専任のIT担当者が常駐していない学校では、故障から復旧までに数日かかり、その間学習がストップしてしまうケースも珍しくありません。
注意すべきは「現場の教員だけで復旧できるか」という点です。予備機の配備に加え、壊れた機器を交換してケーブルを差し替えるだけで、設定が自動復元される機能を持つ機器を選定したいところです。
高度な専門知識がなくても、数分でリカバリーできる体制を整えることが、学びを止めない学校運営には不可欠です。

GIGAスクール対応のインフラ導入・改善に向けた進め方

最適なインフラを構築するためには、適切な手順でプロジェクトを進めることが成功の鍵となります。ここでは、現状把握から導入、検証に至るまでの具体的な進め方を解説します。

ネットワークアセスメント(現状調査)を実施する

インフラ改善の第一歩は、通信環境を数値で把握することです。
「遅い気がする」という感覚だけで機器を更新してはいけません。文部科学省もその徹底を求めている「ネットワークアセスメント」を実施すべきです。
特に、国の「GIGAスクール構想支援体制整備事業」等の補助金を活用してネットワーク環境の改善を行う場合、アセスメントの実施(または実施済みであること)が必須要件となっている点には注意が必要です。
専門ツールでトラフィック量や電波干渉状況などを詳細に診断することで、真の原因が回線、機器、設定のどこにあるかが明確になります。これにより、無駄のない的確な投資計画を立案できるようになります。

アライドテレシスでもアセスメントサービスをご提供しています。ネットワーク機器専門メーカーによるサービスですので、結果に応じた機器やソリューションのご提案もお任せください。

管理が楽になる要件を仕様書に盛り込む

課題特定後は調達仕様書の作成です。単に「Wi-Fi 7対応」等のスペックを並べるだけでなく、運用面での要件記述が鍵となります。
電波干渉の自動回避機能」「ネットワーク全体の一元管理」「故障時の自動設定復旧」といった具体的機能を盛り込むべきです。
これにより、安価だが管理が煩雑な提案を排除し、長期的に安定稼働しつつ担当者の手間を減らせるソリューションを持つ、信頼できる業者を選定できます。

計画的に導入して効果を検証する

一斉刷新が難しい場合は、アセスメント結果に基づき優先順位をつけ、段階的に導入します。例えばボトルネックとなっているセンター回線やコアスイッチから更新し、次に各教室のAPを順次入れ替える進め方です。
重要なのは導入後も終わりではない点です。稼働後も定期的にトラフィックを監視し、想定通りの性能が出ているか検証(事後アセスメント)を行いましょう。
このPDCAサイクルにより、常に最適なGIGAスクール環境を維持できます。

まとめ

GIGAスクール構想第2期において、学校インフラには「快適な通信品質」と「管理のしやすさ」が強く求められています。トラブルのない安定した環境を実現するには、最新要件への対応と、現状を正しく把握するアセスメントが不可欠です。
しかし、最適な構成を独自に判断するのは容易ではありません。失敗しないインフラ構築のために、まずは実績豊富な専門家へ相談することをおすすめします。

アライドテレシスでは、課題を可視化するネットワークアセスメントから、運用負荷を削減するソリューションまで幅広く提供しています。通信環境にお悩みの方は、ぜひお気軽にご相談ください。

  • 本記事の内容は公開日時点の情報です。
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S.A.

IT初心者やエンドユーザーに向けて、「難しいことをわかりやすく」をモットーに執筆中。
仕組みの背景や用語の意味など「いまさら聞けない」ことも丁寧に説明するスタイルが信条です。
普段は猫と静かに過ごすのが好きなインドア派。

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